ドラマログテキストマイニング

テレビ番組(ドラマ)の字幕情報を対象に、テキストマイニングの研究をしておりますので、解析結果の公開をメインに関連グッズを交えた構成で記事にしてます。また、解析結果の信憑性が確認できるよう、解析用ソースも部分引用し掲載してあります。

おしん 一挙再放送 第45週・完結編 乙羽信子、田中好子、山下真司… ドラマの原作・キャスト・音楽など…

おしん 一挙再放送▽第45週・完結編』のテキストマイニング結果(キーワード出現数ベスト20&ワードクラウド

  1. 辰則
  2. 道子
  3. 初子
  4. 田倉
  5. 大学
  6. 結婚
  7. 手伝
  8. 気持
  9. 一緒
  10. お前
  11. 自分
  12. 川部
  13. お母さん
  14. 学校
  15. 今日
  16. 名古屋
  17. 大事
  18. レジ
  19. 一生
  20. 心配

f:id:dramalog:20200216070710p:plain

おしん 一挙再放送▽第45週・完結編』のEPG情報(出典)&解析用ソース(見逃した方はネタバレ注意)

 

解析用ソースを読めば、番組内容の簡易チェックくらいはできるかもしれませんが…、やはり番組の面白さは映像や音声がなければ味わえません。ためしに、人気のVOD(ビデオオンデマンド)サービスで、見逃し番組を探してみてはいかがでしょうか?

無料で民放各局の動画視聴ができるTVerティーバー)!まずはココから!
民放公式テレビポータル「TVer(ティーバー)」

他にも、無料お試し期間のあるVODサービスが増えてますので、以下バナーから各社のラインナップを調べてみるといいかもしれませんね。

(本ページの情報は投稿日時時点のものです。最新の配信状況は Paravi サイトにてご確認ください。)

(詳細はFODプレミアム公式ホームページにてご確認ください。)

 

おしん 一挙再放送▽第45週・完結編[字]

主人公おしんの明治から昭和に至る激動の生涯を描き、国内のみならず世界各地で大きな感動を呼んだ1983年度連続テレビ小説。全297回を1年にわたりアンコール放送。

詳細情報
番組内容
おしん乙羽信子)が新しくオープンしたセルフサービス方式の店は、市価より安い商品が人気を呼んで、売り上げだけは好調なすべり出しであった。しかし、安売りだけに利益は薄く、銀行の借金の返済を思うと、おしんは将来が不安で頭を痛めていた。そんなとき、息子の仁(山下真司)が思いがけないことを言い出した。店を手伝ってもらうために呼び寄せた友人の辰則と、妹の禎(てい)を結婚させたいというのである。
出演者
【出演】乙羽信子田中好子山下真司,渡辺寛二,浅沼友紀子,原亮介,家中宏,菊地浩二,【語り】奈良岡朋子
原作・脚本
【作】橋田壽賀子
音楽
【音楽】坂田晃一

 

 


♬~
(テーマ音楽)

♬~

おしんが セルフサービスに踏み切って
オープンした店は

市価より安い商品が 客を呼んで

売り上げだけは
好調な滑り出しであった。

…が 安売りだけに 利益は薄く

銀行の借金の返済を思い
おしんは 頭を痛めていた。

そんな時 仁が
思いがけない事を言いだした。

店を手伝ってもらうために
呼び寄せた 友人の辰則と

妹の禎を結婚させたいと
言うのである。

(初子)まだ起きてらしたんですか。
(おしん)うん。

初ちゃん 悪いね
いつも しまい湯で…。

私は 洗濯もしたいし

どうせ お風呂の掃除も
しとかなきゃならないし

一番 後に入るのが
気が楽だから。

あっ ビール もう一本
出しましょうか?

いいの いいの。 もう寝るからね。

(仁)じゃあ よく考えといてよ。
田倉の将来のためにも

母さんや禎のためにも
悪い話じゃないと思うんだよ。

とにかく そういう話はね
禎が 学校 出てからだよ。

せっかく入って
勉強してんだから。

(仁)禎が辰則と一緒になって
この店 やっていくんだったら

大学なんか行ってたって
何にもなりゃしないだろ。

私は 反対だね。

これからは 女だって 大学ぐらい
出しといてやらなきゃ。

それから
禎が どういう人生 選ぶか

それは 禎の自由なんだからね。

火の始末 いいね?
ええ。

じゃあ おやすみ。
母さん!

(禎)あれ みんな まだ寝ないの?
私なんか 一眠りしちゃった。

目が覚めたら
何だか おなか すいちゃって…。

何 言ってんのよ。
みんな もう 寝るんだから。

何かない? 食パンぐらいしか…。
結構 結構!

禎 いい加減にしなさい。
もう 夜中なんだよ。

禎 ちょっと 話があるんだよ。
(禎)何?

(仁)うん? お前の縁談の話だよ。

仁! なにも
今 そんな事 言わなくたって!

いいじゃないか! ちょっと
気持ち 聞いてみるだけだから。

へえ~。 私みたいな女でも

そんな話 あるの?
お前も もう 年だよ。

まだ 二十歳よ。
立派なもんじゃないか。

相手は どんな人?
うん?

禎にはね
まだ そんな話 早すぎるよ。

いいじゃない 聞くぐらいなら。

辰則だ。

禎が辰則と一緒になってくれたら
辰則は 田倉の人間になるんだよ。

田倉は 俺と辰則と
兄弟で やっていく事になる。

辰則だって 自分の店って事に
なれば もっともっと

田倉を立派な店にしようって
気持ちになってくれるだろ。

お兄ちゃん 私はね…。
お前だって

今度の春休み返上して 店のために
働いてくれたじゃないか。

兄ちゃん うれしかったぞ。
それはね…。

この店はな 母さんが
血の滲むような思いして

ここまでにしたんだよ。
母さんだって 俺だけじゃない

お前にだって
譲ってやりたいんだよ。

いえ 私はね…。
辰則はな お前を
絶対に大切にしてくれる。 なっ。

俺が 太鼓判 押すから
禎 考えてみてくれよ。 禎!

俺は なにもな
お前に 大学 行くなって

反対してる訳じゃないんだよ。
ただ 正直な話

新しい店になってからの経営は
苦しいんだよ。 仁!

いいじゃないか。 きれい事
言ってる場合じゃないだろ。

銀行の借金を返すまでは

苦しい経済状態を
覚悟しなきゃならんのだよ。

その中で お前の学費だとか
下宿代を工面するとなるとな…。

いいよ もう!
禎は禎でね 店とは関係なく

独り歩きできるように
しとかなきゃ!

仁の言う事なんか
気にしなくていいんだよ。

お前の学費ぐらい
母さん いくらでも

何とでもしてあげるから。
大学 出るつもりで

しっかり 勉強するんだよ。
いいね?

(仁)母さん!
禎は 禎の人生があるんだよ!

お前やね 店のために
勝手なまねは させないからね!

さあ 行こう! 寝よう。

どうして あんな男に
なってしまったんだろうね 仁は。

肩 もみましょうか。

百合ちゃんの事といい
道子さんとの結婚の時といい

随分 情けない思いをしたけど
とうとう 禎まで

自分の思うとおりにしようって
言うんだから。

それほど お店を
大事に思ってるんですよ。

一生懸命なんですよ
仁ちゃんだって…。

だからって 血を分けた妹まで
利用しようなんて

何だか 恐ろしくて…。

でも 辰則さんって
悪い人じゃありませんよ。

そりゃ 私だってね 辰則さんが

気に入らないって訳じゃないの。

でも 禎の人生なんだもの

せめて 禎の好きな人と…。

まあ そんな人が現れるかどうか
分からないけど…。

じゃ どんな人でもいいんですか?

禎は そんなバカな男を選ぶような
娘じゃないわ。

私だって 父さんが好きで
一緒になったから

どんなつらい事だって辛抱できた。

でもね 希望のお母さんは

お気の毒だった。

お店のために好きでもない人と…。

お互いに 一生 不幸だもんね

そんな結婚は…。

そんな思いだけは
誰にも させたくないんだよ。

♬~

あれ? 全然 軽い。

(辰則)そろそろ 開店です!
出来た分だけ 運びましょうか。

あっ すいません。
じゃあ そこのを。 はい!

禎さん。 今日も もう
表に お客様が並んでるんですよ。

子どもと婦人服のセールが
お目当てなんでしょうが

一旦 入ったら 必ず
ほかの物も買っていくんです。

そういった意味で
川部さんとこの商品が

安く入るっていうのは
ありがたい事なんですよね!

しかし レジは忙しくなります。
今日も よろしくお願いします。

禎さんが頼りです。

禎ちゃん…。
「禎さん 禎さん」って

なれなれしいったら
ありゃしない。

私 これ 手伝ったら
名古屋へ帰る。

あんな男の顔 見るのも嫌だ。

店が大変で
私でも 役に立つなら

せめて 春休み 終わるまで
働くつもりでいたの。

でも これ以上 ここにいたら
どんな事になるか

分かんないもんね。
あんな男と一緒にさせられたら

たまんないわ!
じゃあ…。

お兄ちゃんに見つかると 後が
うるさいから 黙って出ていく。

母さんには 初ちゃんから
後で そう伝えといて。

やっぱり 駄目? 辰則さんは。

商売熱心だし
商才には たけてるし

お兄ちゃんには 忠実だし

今の田倉には なくては
ならない人だって事は 認めるわ。

でも 私とは 何の関わり合いも
ありゃしない。 いい迷惑!

もし 店が大変で
仕送り もらえなかったら

自分で働きながら
学校 行ってもいい。

母さんには
「無理しないで」って言っといて。

大丈夫よ 心配しなくったって。
母さんはね 禎ちゃんを

無事 大学 卒業させたいから
頑張ってらっしゃるの。

禎ちゃんは 勉強する事だけを
考えれば それでいいの。

初ちゃん 母さんの事 よろしくね。

(次郎)
はい いらっしゃいませ! どうぞ
ニンジンお買い得ですよ 今日は!

はい いらっしゃいませ!
(征男)はい いらっしゃいませ!

初ちゃん! はい。
出来てるよ! はいはい。

あっ これも。
いかがですか? 奥さん。

ちょっと お願いします。
はい。

少々 お待ち下さい!

禎のやつ 何やってんだよ!

初ちゃん 初ちゃん。 レジが
忙しいんだよ。 禎に すぐ

レジ 手伝うように言ってくれよ。
辰則一人じゃ 無理だから。

私が レジへ入ります。 魚売り場は
夕方まで そう混まないでしょ。

母さん一人でも なんとか。
いや ちょっと…。

初ちゃん。 禎 どうかしたの?

(初子)お待たせ致しました!
どうぞ こちらの方にも!

いらっしゃいませ!
すいません!

禎 レジが忙しいんだよ!
店 手伝ってくれよ! 禎!

どこ行っちゃったんだ? もう!

あの お支払いの方は
ほかの商品と一緒に

レジの方で お願い致します。
ありがとう存じました。

ちょっと ヒジキの量り売りは
ないのんかいな?

300目ほど 欲しいんやけど。
申し訳ありません。

うちは セルフサービスですから
量り売りは 致しません。

こちらにあります 100目と50目の
包みだけになっております。

あんた よその店で
量り売り 買うたらな

ちっとは まけてくれるで。
これやったら

何でも きっちりやないか。
アホらしい。

あの~ そのかわり
うちは よそよりも

お安くなっておりますから どうぞ
お比べになってみて下さい。

毎度 ありがとうございました!
毎度 ありがとうございました!

毎度 ありがとうございます!

はい
どうも ありがとうございました。

じゃあ またね。
さようなら。 さようなら。

征男。

あのお客 気を付けろ。
それから 子どもたちにもな。

万引きされたら お前
安いもうけ とんじゃうんだぞ。

はい!

ちょっと 奥へ来なさい。
何だよ!

いいから来るんだ!
コラ! ちょっと来なさい!

ちょっと来なさい!

(仁)住所も名前も
言わないんだそうだよ。

ただ 学校は 分かってたからね。
あんな事しなくていいのに…。

だって
ポケットから チョコレートとかキャラメルが

いっぱい 出てきたんだよ。
それも 今日だけじゃないんだよ。

だから 今回は 見せしめに。
それで 先生が来たんですか?

うん。 自分の学校の生徒だったら
ほっとく訳にいかんだろ。

かわいそうに…。

こんな商売してる店にも
責任があるんだよ。

何だって すぐ取れるから
誰だって そういう気になるよ。

だからって 見逃してたら
かえって 子どもたちのために

ならないじゃないか。
罪は罪として 分からせなきゃ。

ルールってもんだよ それが。

あっ 初ちゃん。
禎 どこ行ったんだよ?

まだ 帰ってこないの?
あの野郎 店も手伝わないで。

名古屋へ帰ったんだよ。
えっ?

春休みっていったってね
いろいろ やる事があるんだって。

母さん 黙って 帰したのか?
開店記念セールに

あれだけ 手伝ったんだから
いいじゃないか もう。

ああ…。 あの縁談話が
気に入らなかったのか。

禎さん そんな お話が
あったんですか。

それが嫌で 逃げ出して
しまわれたんですか…。

せっかく レジ覚えて
よく手伝って下さっていたのに

残念ですね。
(仁)うん…。

じゃ 飯にしようか。 (辰則)はい。
はい。

(徹)やっぱり 帰ってきたのか。

店 手伝うなんて
殊勝な事 言って

辛抱できるはずないと思ってたよ。

寂しかったぞ。

♬~

バカだね お小遣いも持たないで
名古屋へ帰っちゃって…。

「自分で働く」って言ってましたよ
禎ちゃん。

冗談じゃないわよ。
そんな事したら

勉強できないじゃないの。

初ちゃん
お総菜の種類 増やそうか。

結構 人気あるしね。

調理場を新しくして
本腰 入れてやったら

禎の学費ぐらい
もうけられるんじゃないかしら。

ガス台も もっと増やして
ここを もっと広くしてね。

それからさ お炊事場もね…。

♬~
(テーマ音楽)

♬~

田倉家のために

妹の禎と友人の辰則を
結婚させようという仁の計画は

禎が 再び
名古屋の大学へ戻った事で

あっけなく潰れてしまい
おしんは ほっとしていた。

まだ スタートしたばかりの
新しい店は

銀行の借金を返すのが
精いっぱいの状態であった。

(おしん)恐れ入ります。 本日は
もう 閉店致しましたので…。

買い物じゃない! この店の
責任者に 話があって来たんだ!

責任者を出しなさい!

あの~ 私が この店の責任者で
ございますが…。

一昨日 ここで 子どもが2人
万引きしたって

学校へ通報しただろ?
あっ ああ…。

よくも そんな ひどい事が
できたもんやわね!

おかげで うちの子は
泥棒呼ばわりされて

学校へも行けんように
なってしまったんですよ!

たかがね
キャラメルやチョコレート 盗ったぐらいで

わざわざ 学校に言いつける事は
ないでしょ!

うちへ知らせてくれたら
それくらいのもん

なんぼでも お払いしますよ!
(仁)それは 違うでしょ!

たとえ1円の物でも 金を払わずに
持っていこうとしたら

それは 立派な万引きですよ!
大体 セルフサービスなんて店は

まるで 「万引きしてくれ」って
言ってるようなもんじゃないか!

子どもが 誘惑に負けるのも
無理ないだろ!

あんたの方にだって 責任は
あるんだよ。 それを一方的にだね。

そうですよ!
あんたらのおかげでな

うちの子の一生は 台なしに
されてしもうたんですよ!

子どもを盗っ人扱いされた
親の気持ちが

あんたたちには 分かりますか?
恨んでも 恨みきれへんわ!

こんな店 火 付けて
燃やしてやりたいわ もう!

とにかく PTAでは
みんなに働きかけて

こんな店からは
何も買わないように

不買運動する事に
決めましたから!

ああ。 何とでもなさったら
いいでしょう。

ただ 私どもとしては
万引きを見つけた以上

黙って見逃していては
子どもさんたちの教育上

よくないだろうという配慮で
学校に ご注意申し上げただけで

こちらに 手落ちがあったとは
思っておりませんけど!

仁! 私どもの方も行き過ぎた事が
あったかもしれません。

これからは もう
重々 注意致しますので

今回の事は どうか穏便に…。

あ~! なにも こっちが
頭 下げる事ないじゃないか!

ろくに
子どもの教育もできないで…。

万引きするような子どもに
育てたのは 親の責任だろ!

お客に 理屈は通りゃしない。
ただ 頭 下げてりゃいいんだよ。

万引きされる方だって悪いんだよ。
店の者の目が届いてたら

お客に そんな隙
与えやしないんだからね。

人手がないのに
そんな事 言ったって 無理だろ!

俺は レジに
入ってなきゃならないんだよ!

せめて こんな時
禎がいてくれたらと思っても

あいつは
勝手な事ばっかり してるし!

大体 母さん ちょっと
禎に甘すぎるぞ!

何だよ 俺たちばっかり
あくせくして…。

バカバカしくて やってられねえよ
もう!

やっぱり こんな店
やらない方が よかったかね。

借金までして
店 大きくしたって

忙しいばっかりで
大した もうけにもならないし

魚屋と八百屋を
しっかり 商いしてる方が

なんぼか ましだったか。
母さん!

(辰則)いつか きっと
黒字になる時も来ますよ。

だんだん この店の特徴が
分かってきたら

お客だって増えてくるんです。
そうだよ。 借金さえ

返してしまったら あとは もう
まるまる もうけになるんだから。

そこまで 持ちこたえられるか
どうかね…。

(初子)母さんらしくない…。
随分 弱気じゃありませんか。

今日みたいな事があるとね
何だか 気が めいっちゃって…。

昨夜だって お総菜の種類
増やしてみようって

張り切ってらしたじゃ
ありませんか。

そうだね。 禎の学費が
出るんじゃないかってね…。

(仁)母さん…。

ここまで来たら
もう 引き返せやしない。

売れる物は 何だって売らなきゃ。

今んところ ヒジキも うの花も
よく出てるもんね。

ええ。 夕方には
もう 売り切れてるでしょ。

よく聞かれますよ
「もう ないのか」って。

余計な事 やめてくれよ。

生鮮食料品は
手が かかるんだから

魚も野菜も
徐々に減らしていくからね。

また そんな事 言って!

毎日 食べる物を売るのが
一番なんだよ。

だから お客様だって
毎日 運んで下さる 足を。

あっ お総菜だって同じだよ。
(仁)けどね…。

調理場を造ると
何だって こしらえられるね。

母さん!
私は 賛成ですね!

せっかく 勤め帰りの人のために
閉店時間を延ばしたんですよ。

総菜は 絶対 当たります。
奥さんが その気なら…。

母さんや初ちゃんで
一体 何ができるんだよ!

人を雇ってたら
引き合わないんだよ!

調理場だって
タダじゃ 出来ないじゃないか!

そんな大したもんじゃないんだよ。

流しと かまどがね
いくつかあれば いいんだから。

やりましょう。 私も手伝います。
野菜 洗ったり切ったり

するぐらいなら
私だって できますよ! そう!

じゃあ 早速 計画してみようかね。
(辰則)ええ!

「元気ですか?

この間 お金を送りましたが
着いたでしょうか?

返事がないので心配しています。

今度 小さな調理場をこしらえて

店で売る総菜作りに
本腰を入れる事になりました。

コンニャクの煮たのや里芋の煮っ転がし
煮豆なんかも 甘さを抑えて

母さんらしい味を
出すつもりです。

例の縁談も あれっきりで
仁も 何も言わなくなりました。

安心して
時々は 帰ってらっしゃい。

イカの干したの 送りました。

下宿のおばさんにも
差し上げるように。

体だけは 気を付けて。 母より」。

≪(下宿のおばさん)
禎ちゃん 電話だよ!

(禎)はい!

いつも すいません!

もしもし?
ああ。 今 帰ってきたとこ。

うん。 すぐ行く。
いつものとこね。 はい。

ありがとうございました!
≪(下宿のおばさん)禎ちゃん!

出かけるのは ええけど
あんまり 遅うならんように…。

ここんとこ
よう 12時過ぎやすで…。
はい。

うるしゃあ事は
言いたかにゃあけどなも

お母さんから 頼まれとる
大事な娘さんだで…。

お前さんは 勉強に来とるやすで。

一生懸命 勉強しとりやすと
思うから

お母さんだって せっせと
学費を送ってくれるんだで。

それ 忘れやすななも。

(徹)ごめん 待たせて。

小遣い 無くなっちまってさ
金策に歩いてたんだ。

ご注文は?
あ~ いい。

明日辺り おふくろから
送ってくると思うんだけどさ。

軍資金 なくっちゃ
せっかく誘ったのに

どうしようもねえよな。
少しぐらいなら 持ってる。

よかった! 仲間が 例のダンスホール
待ってるんだよ。 いいだろ?

あそこなら なんとか足りそう。

腹 減ってない?
俺 欠食児童なんだ。

ラーメンぐらいなら…。
(徹)御の字だ!

じゃあ 腹ごしらえをして…。

(徹)きれいだよ 禎!
バカ! こんなとこで…。

(徹)愛してるよ!
徹!

♬~

どうして すぐ やめちゃうんだよ。
青春は 二度とないんだぜ!

大いに エンジョイしなきゃ!
そうだよ!

中学 高校と
「勉強 勉強」で 尻たたかれて

やっと 大学 入ったんだぜ。

大学 出たら 最後。
今度は 一生 馬車馬みたいに

働き続けなきゃならねえんだよ!
なあ!

そうよ。 卒業して 家へ帰ったら
たちまち 自由は無くなるのよ。

今のうちに やりたい事
やっとかなきゃ。 そうだな。

♬~

今夜は 離さないぜ。

いつまでも お茶 飲んだり
歩いたり 踊ったり

そんな事は もう 卒業だ。

愛し合ってるなら 俺たちだって。
それが 当然だろ?

ずっと 一緒に暮らしたって
いいと思ってるんだ。

今やっとかなきゃ
一生 後悔するぜ。

帰るのかよ!
離してよ!

ここの勘定は どうするんだよ!?

これで 全部!

♬~

♬~

母さん…。

♬~

(辰則)しかし 野菜のごった煮が
あんなに喜ばれるとは

思いませんでしたね!
ごった煮は ないでしょ。

筑前炊きっていうのよ あれは。
あ…。

加工品は 結構 利益もあるし
この調子で売れてくれたら

禎さんの学費どころじゃ
ありませんよ。

今に 田倉のイメージ商品に
なりかねませんよ!

お総菜屋になっても 困るけどね。
(辰則)それに 人助けです。

奥さんたちの手間を
省いてるんですから…。

どうかしらね。 奥さん方を
怠け者にしてんじゃないかしらね。

最近は 奥様たちも 習い事したり
お勤めしたりで 忙しいでしょ。

そういう ご夫婦には
お役に立ってるんですよ。

そういえばね 道子さんも禎も
何にも知らないもんね。

禎なんて とっても
お嫁に行けやしないわ。

料理できるだけが
能じゃありませんよ。

禎さんは 大学を出られたら
立派な仕事を持って

社会へ貢献されるんです。
料理なんて 二の次ですよ。

仕事 持ってたって 結婚しない
という訳に いかないでしょ。

しかしですね…。

禎さん…。
うん?

お帰りなさい!
どうしたの? あんた 今頃。

なかなか 使いやすそうな
調理場じゃない! 明るいし!

学校 お休みなの?
やめたの 学校は。

辰 そろそろ 開けるぞ。
はい!

禎!

♬~

禎さん。

♬~

♬~
(テーマ音楽)

♬~

(禎)毎度
ありがとうございました!

その朝 突然
名古屋から帰ってきた禎は

大学をやめると言ったきり
店のレジへ入ってしまい

わざと おしん
避けているようであった。

おしんには 何があったのか
さっぱり 見当もつかず

不安な思いで 店の終わるのを
待つよりほかなかった。

(おしん)あっ いらっしゃいまし!

やっと終わった! 手伝おうか?

(初子)いいのよ
いつも 一人でやってるんだから。

じゃあ 調理場でする事ある?

みんな あがるまで
時間があるから

少しでも できる事やっとくよ。

禎ちゃん
何があったのか知らないけど

これ以上 母さんに心配かけたら
母さん かわいそうよ。

黙って 明日は 名古屋へ
帰りなさい。 分かったわね?

あっ お鍋 噴いてる! 大根
入れるの? おみそ汁でしょ?

禎ちゃん! 少しは
母さんの気持ちも考えて…。

母さんは
禎ちゃんの学費のために…。

あれ? もう お店 いいの?

(仁)ああ。
辰則たちが やってくれてる。

禎 こっち いらっしゃい。

お風呂の火 見てくる。
禎 ここへ座んなさい!

(仁)何だって お前
大学 やめるんだって?

お前 そういう事は 軽々しく
口に出すもんじゃないぞ。

おまけに その度に 高い電車賃
使って 帰ってくるんじゃ お前。

ホントに やめるんだもん。
禎!

母さん。 でも お前も お前だよ。

この間は 何の断りもなしに
名古屋へ帰っちゃって…。

そうまでして行きたい学校なら
ちょっとぐらい

つらい事があったって
辛抱するのが当たり前だろうが!

何よ。 「大学なんて無駄だ。 学費も
ないのに」って言ったのは 誰?

まだ あんな事 根に持ってるのか
お前。

お金なら 母さんが 何とでも
してあげるって言ったじゃないの。

俺もな お前が その気なら
やってやるつもりなんだよ。

俺は ろくに
中学 卒業しなかっただろ。

母さん それを
すごく後悔してるんだよ。

だから お前には どうしてもって
気持ちなんだよ。

俺だって そういう気持ち
よく分かるから

もう お前には 何にも言わないで
お前の やりたいように

やらせてやろうと
思ってたんじゃないか。

それを お前 今になって…。
ありがとうございます。

苦しい時に 勝手な事させてくれて
ホントに 感謝してます。

禎!

でもね 人間の気持ちって
変わる事だってあるの。

それは しかたないでしょ?
一体 何があったのよ?

大学なんか行くのが
バカバカしくなっただけ。

私 お店を手伝う事に決めたの。
その方が ずっと有意義だもん。

店なんか手伝って
何になるって言うのよ。

商売なんてね
いつ どうなるか分からないのよ。

もし 失敗したら それこそ
丸裸で放り出されちゃうんだから。

そんな時だって 大学でも出てたら
学校の先生とか

なんとかして生きていけるでしょ。
母さんだって 若い時に もう

さんざん 苦労したから
せめて 禎だけには…。

大学 出たって 結婚したら
何の役にも立ちゃしないわ。

道子さん 見たって
よく分かるじゃない。

それは 結婚の相手に
よりけりでしょ。

共稼ぎをしなきゃならない人と
一緒になるかもしれないし…。

私は お母さんや お兄ちゃんや

みんなと 力を合わせて
働きたいの。

そういう気持ちに
なったんだから…。

お前 店が苦しいから
遠慮してるのか?

違う。 私 働いてるのが好き。

働いてる人が好き。

お店のオープンの時
手伝ってよかった。

働くって事の すばらしさを
知らなかったら

とんでもない間違い
するとこだったの。

分かった。
あんたの気持ちは 分かったわ。

だけどね もう一度 将来の事を
よ~く考えてみなさい。

もう遅いの! 下宿の荷物
みんな まとめて送り出してきた。

2~3日のうちには こっちに
着くんじゃないかな。 禎!

お前 何 考えてんだよ!
母さんに断りもなしに そんな事!

お兄ちゃん。 私…

辰則さんと結婚してもいいわよ。
(仁)えっ?

(禎)ただし 辰則さんが
どういう気持ちか知らないけど。

それだったら ほかの人でもいい。
お兄ちゃんの右腕になって

田倉を
やっていってくれる人ならね。

禎!

(辰則)みんな 帰りました!
今日の売り上げです!

あ… すいません。 大事なお話を
なさってたんじゃないですか?

気が付かなくて…。
何でもないのよ!

一日 御苦労さまでした。
さあ お夕飯の支度しないと。

明日のお総菜
間に合わなくなっちゃうよ!

終わった!

うわ~ 辰則さんって
何でも 上手なのね。

器用貧乏なんですよ。

お兄ちゃんは
さっさと引き揚げちゃったのよ。

辰則さんも もう お休みなさいよ。

いや 奥さんや初子さん
働いていらっしゃるのに そんな。

いいのよ。 こういう事は
女の領分なんだから

無理しないで 休んでちょうだい。
大丈夫です!

私も こういう事は
嫌いじゃありませんから。

それより 奥さんこそ
仕入れが早いのに 毎晩…。

体を壊されないかと 心配で…。

私はね 若い時から
鍛え方が違いますからね。

また 自慢話が始まった。

いや~ でも ホントですよ。
昔の女性は よく働きましたよね。

私の母なんかだって
「いつ 寝るんだろう?」って

子ども心に不思議でした。
いつ見ても 働いてて…。

空襲で死ななかったら ちょうど
奥さんと同じぐらいの年でした。

生きててくれたら どんな
親孝行だってしてやったのに…。

優しいのね 辰則さんって!

いないから そんな事が
言えるのかもしれませんよ。

生きてたら 親不孝ばっかり
してたかもしれません。 ハハハハハ!

(初子)はい 終わりました。
御苦労さま。

もう いいわ 辰則さんは。
あっ 私が 野菜 切ります。

禎さん もう お休み下さい。
いいの! よいしょ!

私も 今日から 本腰 入れて

田倉を手伝う事になったんだから
このぐらいの事しなくちゃ。

じゃあ 大学は
ホントに おやめになるんですか?

辰則さんに負けないで
レジも頑張ります。

どうぞ よろしく!
まさか…。

一時の気まぐれなのよ。
すぐ また変わるんだから。

初ちゃん お昆布 頂戴。
(初子)あっ はい。

そ… そうでしょうね。
いくら 嫌な事があっても

やっぱり 勉強できるっていう事は
幸せな事だし…。

禎さんには そういう暮らしが
一番ふさわしいんです。

せっかくの才能が泣きますよ
禎さん! ハハハハ!

今度からは
私が 母さんの肩 もんであげる。

初ちゃんより
下手かもしれないけど

まあ 我慢しなさい。

肩なんか もんでもらっても

ちっとも
うれしい事なんかないよ。

まあね そんなに嫌だったら
しばらく 遊んでっていいから

気が済んだら
さっさと 名古屋へ帰りなさい。

まだ言ってる~。 もう
下宿も引き揚げちゃったのよ。

名古屋へ帰ったって
寝る場所ないんだから。

禎…。

(初子)お布団 敷けました。
お休みになって下さい。

ありがとう。
禎ちゃん 御苦労さま。

あとは 2階で
私が もんでさしあげるわ。

じゃあ おやすみなさい!

辰則さんとの結婚
母さん 絶対 許さないよ。

どうして? いい人じゃない。
田倉のために 一生懸命だし

新しい店が ここまで来れたのは

辰則さんの努力が
あったからなのよ。

仁兄ちゃんだけじゃ
どうなってたか。

そんな事はね
あんたに言われなくても

母さん よ~く分かってます。
ホントに ありがたいと思ってるわ。

でもね それと
あんたの結婚とは 別でしょ。

私が好きなら 問題ない事でしょ?

なにもね 辰則さんと一緒になって
この店の苦労する事ないじゃない。

あんたは まだまだ ほかに…。

母さん 辰則さんには
親も兄弟もいないのよ。

姑や小姑の心配する事ないし

一生 母さんのそばにいられるの。

お婿さんにするには
最高の条件じゃない。 禎…。

辰則さん 優しいから

きっと 母さん
大事にしてくれると思うよ。

(ため息)

「親の心 子知らず」とは ホントだね。

せめて 禎だけは 大学を
出してやりたかったのに…。

商売の苦労は
私と仁で もう たくさん。

仁には 手を焼いたけど

禎だけは 親の言う事を聞く
いい娘だと思ってたのに…。

一体 何を考えてんだかね…。

(辰則)
♬「朝だ朝だよ 朝陽がのぼる」

(レジを開ける音)

禎さん…。
おはようございます。

あっ おはようございます!
お兄ちゃんは まだ 寝てるの?

店長は 帳簿の整理などで
夜 遅くていらっしゃいますから。

のんきね
何もかも 辰則さんに任せて。

これが 私の仕事です。

高いお手当を
頂戴してるんですからね。

禎さんは なにも
こんなに 朝早くから…。

こんな時でもないと 辰則さんと
ゆっくり お話もできないから。

忙しいんだったら 働きながら
聞いてくれればいいの。

あ… はい!

辰則さん 私を お嫁に
もらってくれる気持ちは ある?

結婚して 夫婦で
お兄ちゃんたちと一緒に

田倉をやってくの。

冗談にも
そういうお話は 不謹慎です!

私は 真面目よ。
だから 今朝も早起きをして

辰則さんの気持ちを
確かめてるんじゃない!

これはね
お兄ちゃんの希望でもあるの。

お兄ちゃんは 辰則さんに 一生
田倉を助けてもらいたいから…。

ハハハ! だったら なにも そんな事。
私は たとえ 独りだろうと

誰と 所帯 持とうと
出ていけって言われない限り

こちらで
お世話になるつもりなんです。

禎さんが つまらない心配
なさらなくても

できる事なら
私は 一生 こちらでと…。

私は お兄ちゃんのためでも
田倉のためでもない。

自分のために 辰則さんと…。

禎さん。
どうして 私みたいな男と…。

からかわないで下さい!
辰則さん!

私は 本気よ! 大真面目よ!

だから 学校もやめて
帰ってきたんじゃない!

お断りします!

私は 禎さんと結婚できるような
男じゃありません。

そんな事をしたら お世話になった
奥さんを裏切る事になります。

辰則さんは 私が嫌い?

禎さんは
大学へ お帰りになるんです。

奥様のお気持ちが お分かりなら

大学へ戻って
立派に 卒業なさる事です!

辰則さん…。

♬~

♬~
(テーマ音楽)

♬~

(初子)卵 今日は
特別 お安くなっております!

(おしん)お待たせ致しました!
ありがとうございました!

また どうぞ!

(仁)これ 終わったら
台所用品 頼むな。 (2人)はい。

(次郎)あっ
せっけん 切れてました。

その朝 禎は 思い切って 辰則に

自分と結婚の意思があるかどうか
聞いてみた。

…が 辰則は 取り合ってくれず
急に 禎に冷たくなった。

当然 辰則は 喜んで
受け入れてくれると信じていた

禎には 意外な結果であった。

辰則さん 母さんと仁ちゃんに
話があるって 何なのかしらね?

あっ そういえば 今日 何となく
変だったわね 辰則さん…。

いつも あんなに明るい人が
黙りこくって…。

お客様にも 愛想が悪かった。
気が付かなかった? 禎ちゃん。

(禎)別に…。

(仁)禎!
お前 辰則と何かあったのか?

辰則 急に 「店 辞める」って
言いだしたぞ。

どうして!?
いや 理由を聞いてもね

ただ ここで 世話になってる訳に
いかないって言うだけで

要領を得ないんだよ。

辰則さん 辞めるって本当?
私が あんな事 言ったから?

だからなの?
禎 お前 何を?

「私を お嫁にもらってほしい」って
言ったの。

嫌なら いいのよ。
なにも 辞める事ないじゃない。

禎 お前 辰則に
そんな事 言ったのか。

一体 どういうつもりなんだよ?
(辰則)いいんです もう!

私には 禎さんのお気持ちが
よく分かってるんです。

それだけで…。
何が分かってるって言うのよ!

(仁)禎!

母さん…。
私 名古屋に 好きな人がいたの。

もし 辰則さんと会わなかったら
きっと その人の事

一生 忘れられなかったかも
しれない…。

でも 春休みに
お店のオープン 手伝って

辰則さんと一緒に働いて

夢中で 何かに打ち込めるのも
すばらしいと思ったの。

一生懸命 働いてる男の人って
いいなって 感動した。

でも 結婚の相手になんて
考えてもみなかったの。

私には 名古屋の彼の事しか
なかったの。

それで
名古屋へ帰って 彼に会ったら

何だか 急に 彼の何もかもが
色あせて見えちゃって…。

彼と つきあってる自分が
ひどく情けなくなっちゃった…。

私 気付いたのよ。

こんな事してたら 私の一生は
台なしになっちゃうって…。

私は どういう生き方をすれば
一番 私らしいか

どういう生き方をしたいのか。
そんな事 真剣に考えた。

辰則さんを すてきだなと
思ったのも その時だったの。

辰則さんみたいな人と

力を合わせて
精いっぱい 働けたら

きっと 後悔しない生き方が
できるんじゃないかって…。

でも それは 私の勝手で

辰則さんだって
選ぶ権利があるもんね。

振られたって しかたがない。 私
別に 何とも思ってやしないわよ。

禎さん…。

結婚できなくたって 一番
大事な事 教わったんだもん。

それだけでいいの。

私は 禎さんが嫌いで
お断りしたんじゃありません!

禎さんには 禎さんに
ふさわしい生き方が

おありになると思ったし

何よりも 奥さんが 禎さんに
懸けていらっしゃる夢を

壊すような事になったら…
そんな事をしたら

私が こちらに お世話に
なってる事が 仇にもなります。

私さえ 辞めさせて頂いたら…。
(仁)辰則!

私は 今の禎さんのお気持ちを
伺って… それだけで十分です!

辰則さん。

禎との結婚 もう一度
考えてみてはくれませんか?

禎が いい加減な気持ちじゃ
ないっていう事は

よく分かりました。

そこまで考えて
大学をやめたいって言うんなら

無理に 名古屋へ帰しても
無駄でしょ。 母さん…。

田倉で働きたいって言うんなら
大学なんか行かなくていいし

あなたと一緒に苦労したいって
言うんなら

田倉にとっては
何よりの事ですからね。

辰則。

俺みたいな男を…。
俺みたいな男を…。

辰則!

♬~

(仙造)しかし こんな時間に
これだけ お客が入ってれば

いい方でしょ?
川部さんの商品のおかげで

うちも 本当に助かっております。
いやいや うちの方こそ

こちらに 品物を置かせて頂いて
息をついております! ハハハ!

いや~ しかし お嬢さん
よく やってらっしゃいますね。

大学 おやめになったって?
ええ。

今度 辰則君と一緒になる事に
なりました。

ありゃ!? (仁)式は 道子の出産が
終わってからって事に。

恐らく 来年になるでしょうが…。
それは おめでとうございます!

ありがとうございます。

あの子も 少しは 役に立つと
思いますので

もう 道子さんが
帰ってきて下すっても

大丈夫でございます。
いつまでも 川部さんの方に

お世話になっておりましては…。
いやいやいや!

うちの方は 構わんですよ。
女房も大喜びでございましてね。

ええ まあ しかし…
いつまでも引き止めておいても

お母さんや仁君には
申し訳ございませんからね。

はい! では そろそろ
こちらへ帰るように申しましょう。

(波江)道子は 普通の体じゃ
ないんですからね!

嫁だからって こき使われちゃ
たまりませんよ!

(道子)どうしたって 炊事とか
奥の掃除とか 洗濯とかは

私の仕事になるんだから。
しかも あの大所帯でしょ。

三度の食事だけだって
死ぬ思いよ!

それに 禎さんまで 大学やめて
帰ってきてるんですからね!

それも 大学 出て
すぐ お嫁に行けば

小姑の苦労をしないで
済むだろうから

それまでに
縁談を世話しようと思ったら

従業員と結婚するだなんて…。
それじゃ いつまで たったって

あのうち 出ていきっこないじゃ
ありませんか。 話が違いますよ!

いずれ 出ていくんだよ
禎さん夫婦だって!

(道子)いつの事になるんだか…。

初子さんという人の事だって
私たち知らなかったんですからね。

お手伝いさんだと思ったら
娘同然だって言うんだもん。

あの年じゃ
もう 結婚は無理だろうし

一生 居座ってんじゃ
ないんですか!

とんだ小姑ですよ!
そうよ。 あれで 初子さんなんて

相当なもんなんだから!
あのうち ちゃんと牛耳って!

いつも 顔色 見てなきゃ
なんないのよ 私なんか…。

道子を 田倉へ帰すんなら
誰か 道子に代わって

家事をやってくれる人を
つけてやらなきゃ

道子が かわいそうですよ!
そうしてよ!

お手伝いさんがいてくれたら
私も 安心して帰れるわ。

バカも 休み休み言いなさい!

道子は もう
田倉の人間なんだからな!

うちで そんな勝手な事ができる
道理がないじゃないか!

甘ったれるんじゃない!

それから数日して
道子は 3か月ぶりに

田倉家へ戻る事になった。

長い間 わがままを
させて頂きました。

今日から また
よろしく お願い致します。

私も これで ほっとしたわ。

まあ 店の方は みんなで
なんとか やれますからね

うちの中の事は
よろしく お願いしますね。

今までとは 違うんですから
私も手伝いますよ。

体 大事にしてちょうだいね。
ありがとうございます。

何しろ わがまま者で
ございますから

あの~ いろいろ
ご迷惑をかけると思いますが

何分ともに よろしく。

お前 疲れただろ? 部屋で休めよ。
なっ 行こう。 お父さん!

ああ…。 失礼します。

道子を手伝うなとは
言わないけど

少しは 道子も働かせなきゃ
お産に よくないのよ。

動けば動くほど
お産は 軽くなるんだからね。

それにね もうそろそろ 道子も

田倉の嫁としての自覚を
持ってもらわないとね。

駄目!
足も腰も だるくて 立てない…。

お夕飯なんて とっても…。

初子さんに頼んで。
またかよ!

もう駄目…。 死にそう!

道子は 田倉家へ帰ってはきたが
体の具合が悪いと言っては

自分の部屋から
出てこない事が多かった。

そんな道子を 黙って
かばっているのは 初子であった。

また 道子 具合が悪いの?
身二つになるまでは

しかたないんですよ。
私で できる事なら…。

すいません。
はい! いらっしゃいませ!

道子さん!

あなた 初子を お手伝いさんと
間違えてんじゃないの?

そりゃね
おなかに 赤ちゃんがいれば

体が思うようにならない事は
私も よく分かりますよ。

でもね 一家の主婦なら
みんな それを我慢して

女は 働いてきたの。

少しは 体を動かさなきゃ
お産に よくないのよ。

あんたみたいに
毎日 ゴロゴロしてたんじゃ

おなかの赤ちゃんが育ち過ぎて
ろくな事になりゃしないわ。

初子に 何もかも やってもらって
頼ってたんじゃ…。

母さん なにも 道子は…。
初子を当てにしては 駄目!

初子だってね
一日中 お店で働いて

疲れてるんだから。
せめて うちの中の事ぐらい

あなたが頑張って
やってくれなきゃ

同居した意味がないでしょ。
(仁)そんな事 言ってもね!

初子を 顎で こき使うようなまね
私が許しませんからね。

このうちは みんなが
それぞれの役目を果たさないと

やっていけやしないの。
禎だって 店の事をやって

夜は夜で お総菜を手伝って
精いっぱい 働いてんのよ。

あんただって
田倉の人間になったんなら

少しは 考えてくれなきゃ!

母さん。 私なら 平気ですよ
食事の支度くらい いくらでも。

あんたがね 余計な事するから
道子が甘えるの。

奥の事はね 道子の役目と
決めてあるでしょ。

道子さん
初子は あなたのお姉さんなのよ。

お手伝いさんじゃないの。

その けじめだけは
はっきりしてちょうだい!

私はね なにも あなたが憎くて
言ってんじゃないのよ。

一日でも早く 田倉を預かる人間に
なってほしいからなの。

♬~

私 こんな所にいたら
殺されてしまう!

とにかく 赤ちゃんが
生まれるまでは

川部に帰ってますからね!
いいわね それで!

(道子)早く 車 呼んでよ!

♬~
(テーマ音楽)

♬~

(禎)それで お兄ちゃん
黙って帰したの? 道子さんを。

(仁)うん。 ここにいてもな
道子も つらいだろうし…。

妊娠5か月を過ぎて

やっと 実家から田倉へ帰ってきた
仁の嫁 道子が

ひとつきも たたないうちに
また 実家へ戻ってしまった。

おしんには 腹が立つよりも ただ
あきれるだけの出来事であった。

ねっ 母さん。

道子は しばらく 川部のうちに
預かってもらうからね。

ここにいて 母さんに
文句言われながら暮らしてたら

精神衛生上 よくないよ。 おなかの
赤ちゃんにも影響するから。

いいね? それで。

母さん
道子さんに 何 言ったの?

道子さんも 道子さんだけど

母さんも 結構 厳しい事
言うんだから…。
(辰則)禎さん。

(おしん)母さんなんか 昔

お姑さんに
随分 厳しく仕込まれた。

その つらさが忘れられないから

道子さんには
言いたい事も言わずに

じ~っと辛抱してんのに

それでも 「嫁いびりしてる」なんて
言われたら

黙ってるより
しょうがないじゃないか。

昔の事は もう通用しないご時世に
なっちゃったんだから。

いつも言ってるでしょ。
(初子)禎ちゃん!

他人が入ると こんなに
難しいもんとは思わなかったよ。

ホントに 赤ちゃんを産む体を
心配して言ってるのに

素直に
とってもらえないんだからね。

まあ しかたないね。
人の事 言えないよ。

母さんも 産み月になって
稲刈りに出されて

「働かなきゃ お産が重くなるよ」と
お姑さんに叱られて…。

鬼みたいな人だって
恨んだもんだよ。

母さん…。

でもね その母さんが姑になって
同じような事 言ってんだから

年は取りたくないね。

お気の毒ですね
お母さんの世代は…。

さんざん お姑さんに仕えてきて

終戦後は 自由だ 平等だ
個人主義だって…。

今度は お嫁さんの方が
強くなってしまって…。

こう言っちゃなんですが
道子さんは 殊に

わがままな
お嬢さん育ちですからね。

そうね。 実家が金持ちなのを
鼻にかけて…。

お兄ちゃんが いけないのよ。

道子さんの実家の援助を
当てにして 結婚したから

頭が上がらないのよ 道子さんに。

禎は 余計な事 言うんじゃないの。
母さん もう 諦めてんだからね。

母さん… 私が
いけなかったのかもしれない。

道子さん つらいだろうと思って

つい 道子さんの仕事に
手を出してしまって…。

私が 余計な事しなかったら
道子さんだって しかたなく

無理しても
奥の事したと思うんです。

母さんに 手伝うなって
言われてたのに…。

初ちゃんの責任じゃないよ。
本人の性根の問題だよ。

あ~ 道子の事を もう
クヨクヨするの やめよう!

あの人がいなくったってね
田倉は ちゃんと

やっていけるんですからね。
よいしょ!

(道子)ただいま。

(波江)心配したわよ。
仁さんから

「タクシーに乗せて 帰しましたから」
という電話でしょ。

おまけに
いくら 理由 聞いたって

ただ 「よろしくお願いします」って
言うだけで

仁さん
何にも話してくれないし…。

私 お産が済むまで
ここにいる事にしたから。

仁も そうしろって。
(仙造)田倉のお母さんは?

(道子)仁から
話しといてくれるって。

道子!

田倉のお母さんが
怒ったら怒ったでいいじゃない。

私は仁と結婚したんで お母さんと
結婚した訳じゃないもん!

何があったの?

田倉のお母さんって
てんで ここが古いのよ。

ついていけない とっても…。
おまけに あのうち 複雑でしょ。

初子さんなんて
訳の分かんない人がいてさ

私が頼みもしないのに さっさと
うちの事 やっちゃうのよ。

私だって 体がつらいし

好意だと思うから
つい 甘えちゃうじゃない。

そしたら お母さんったら

「初子は お手伝いじゃないんだ。
こき使う事は 許さない」って。

まあ!

私が バカだったのよ。
よく考えてみたら

初子って人は
私に うちの事させたくないのよ。

いつまでも 田倉を
牛耳っていたいだけなの。

もう 嫌になっちゃった!

私 ただの わがままで

帰ってきたんじゃ
ありませんからね。

(初子)次郎ちゃん。 ちょっと
お願いね ここ。 (次郎)はい。

(征男)さあ 卵 いかがですか?

いや~ もう少し早く
お詫びに伺わなくちゃと

思ってたんですが
どうも 敷居が高くて…。

とんでもございません。

私どもの方こそ
道子さんを お預けしたまま

ご挨拶にも伺いませんで…。

何しろ 店が
手が離せないもんですから…。

開店以来 一日も
お休みしてませんでしょ。

よく頑張ってらっしゃいますね。

いや それでこそ 売り上げも
伸びるんでしょうがね。

そういう大事な時に うちの娘は
全く 役にも立たなくって!

いえ それは もう。
お手紙にも書きましたとおり

道子さんが それで 無事に お産を
済ませて下さるんでしたら

川部さんに お世話 願うのが
一番でございますから

何分 どうぞ
よろしく お願い致します。

いや どうも…。

奥さんの そのお言葉を聞きまして
肩の荷が下りた思いでございます。

それじゃ そのお言葉に甘えまして
出産まで 手前どもで…。

あの~ 失礼ではございますが
これも けじめでございますので

道子さんの食費と その他の費用
どうぞ お納め下さいまし。

いや 冗談じゃありません。

道子は わがままで
帰ってきておりますんでね

こんなもの頂いたら
罰が当たりますから

これは 頂けません。
いいえ。
それじゃ 私どもが困ります。

いや とんでもないです。
これは…。

何にもございませんが
どうぞ ごゆっくり。

どうも。 頂きます。
私は お店がありますので…。

あっ 初子さん。 あのね 今日は

ちょっと いい話を
持ってきたんですがね

ちょっと ご覧下さい。

この男は 55歳でしてね 今年
定年になったんですけれどもね

5年前に
女房に 死に別れましてね…。

今は もちろん 中小企業の重役に
再就職しましてね

お金には 困っとらんのですよ。
娘が2人 いたんですがね

去年 2人ともね
嫁に行っちまいましてね

かわいそうに この男
今 独り暮らしなんですよ。

初子の縁談ですか?
はい。

初子さん
一生 独身という訳にはね。

いや この男は 私の友人ですから
人物は 絶対に保証しますよ。

初子は まだ 30なんですよ。
いくらなんでも 55の方とは…。

55ってのは まだ若いですよ。

きっと かわいがってくれますよ。
そういう結婚も いいもんです。

せっかくでございますけど…。

しかし
一度 お会いになるだけでも…。

私は 初子を まだ手放す気持ちは
ございませんから。

(仙造)奥さんが 初子さん
大事に思われる気持ち

私にも よく分かります。
でも このままじゃ 初子さん

お気の毒じゃないですか。
ここのうちで働くだけ働いて

それで 年を取ってしまわれるって
いうんじゃね。

初子さんの後々の事まで
考えておあげにならなくっちゃ。

とにかく このお写真は
お返し致します。

母さん。 私 考えさせて頂きます。

お返事
お待ち頂けますでしょうか?

はい。 それは どうぞ ごゆっくり。

初子…。

♬~

今夜から 夏掛けにしました。
もう すっかり 夏ですね。

暑くなっちゃって…。
私は 反対だからね!

55歳の男だなんて
非常識すぎるよ!

それじゃ まるで 老後の世話に
行くようなもんじゃないか。

人をバカにするにも 程があるよ!

女も 30になって
そんなお話があるだけでも

ありがたいと思わなくちゃ。
私のような女には

もったいないような方です。
初子…。

あんた まだ
昔の事に こだわってるの?

肩 もみましょうか?
いいから ここへ座んなさい!

お話のあった時に行かないと

いつまで たっても
ここを出てはいけません。

もし このまんま
年を取ってしまったら

結局 こちらへ ご迷惑を
おかけする事になります。
初子!

道子さんのためにも
私が いてはいけないんです。

バカな事 言うんじゃないよ!

あんたのために
道子が どれほど助かってるか!

母さん。 川部さんが 縁談を
持ってきて下さったのは…。

それぐらい
私にだって分かります。
初子…。

私には願ってもない お話です。
喜んで 私…。

あんたは 一体
何年 私と一緒に暮らしてるの!

まだ… まだ
私の気持ちが分からないの?

情けないよ…。

私はね… 今まで 一度だって

あんたを他人だなんて
思った事ない。

仁よりも 禎よりも 誰よりも
一番 大事に思ってきた。

雄が愛した
たった一人の人だもの。

なんとか 幸せにしてやりたい…。

なかなか
思うようにいかないけど

今でも
母さんの気持ちは 変わらない。

だのに 自分から
自分で 不幸にするような事を!

母さん…。

道子が 何だよ!
私はね 道子なんかより

あんたの方が
ずっと ずっと かわいい!

道子が あんたがいるのが
嫌だって言うんなら

道子には
帰ってきてほしくないよ。

はっきり
私 川部さんに言ってやる!

それで 仁が このうちを
出ていくって言うんだったら

仁と親子の縁を
切ったっていいんだよ。

母さん…。

初子! もっと
自分ってものを大事にしなさい!

私がついてて 初子に
そんな つらい思いをさせたら

雄に対して 私は
なんて お詫びしていいんだか…。

母さん…。

初子!
私 どこへも行きたくない!

このまま ずっと
母さんのそばにいたい!

初子は 仁や禎の面倒を
よく見てくれた…。

田倉が ここまで
やってこれたんだって

あんたが骨身惜しまず
働いてくれた おかげなんだよ。

誰に 遠慮があるのよ!

もっと大きな顔して
このうちに いなさい!

初子… あんたは まだまだ若いの。
ねっ。

いつか… 慌てなくていい
きっと いい人に巡り会える。

雄が安心して
初子を預けられるような

そんな人に きっと いつか
巡り会えるから…。

♬~

♬~
(テーマ音楽)

♬~

妊娠5か月の体では

とても大家族の面倒を見る
主婦の務めは できないと

実家へ帰ってしまった嫁の道子も
いつか 産み月を迎え

昭和31年の秋も
深まろうとしていた。

(おしん)よいしょ!
(辰則)あっ お母さん!

ありがとう。

お母さん
重い物は もう無理ですよ。

落として やけどでもなさったら
どうするんですか!

まだ 大丈夫よ このくらいは。

(禎)母さん そういう自信過剰が
事故のもとなの。

もう 年なんだから。
また 年寄り扱いする!

気ばかり強くったって
もうすぐ 孫が生まれるのよ。

おばあちゃんになるの!

お母さん そろそろ 総菜作りも
人を入れたら どうでしょうね?

お母さんにも 楽をして頂きたいし
家族だけじゃ

作るのも たかが知れてます。
でもね 人を雇ってまで…。

そしたら 母さん
監督するだけでいいのよ。

孫を抱く時間ぐらい
欲しいでしょ?

ごめんだよ 子守なんて。
母さん 5人も

子ども 育ててきたんだからね
たくさんだよ!

(仁)母さん 生まれたよ! えっ?
今 電話で知らせがあったから

俺 ちょっと行ってくるからね!
ちょっと! 男の子? 女の子?

男の子だよ!
じゃあね 名前は

お父さんの竜三の「竜」 もらって!
分かってるね?
分かった!

あっ それからね
レジのお金 持っていきなさい。

きっと 病院の費用
たくさん かかってるからね。

明日の開店までに帰ってくるから。
店 頼むよ。 (辰則)気を付けて!

皆さんに よく お礼 言うのよ!
(仁)おう!

はあ…。
お母さん!

あ~ ほっとした…。

あ~ 随分 心配させられた…。
予定日より遅れてたからね。

よかった! 男の子か…。

きっと 雄に似た いい子だよ!

あ~ ホントに よかった!

(初子)母さん。
うん?

母さんも
明日 行ってらっしゃいよ。 ねえ。

だって 店 ほっといてまで
そんな…。
でも!

あっ 辰則さん
さっきの話じゃないけど

お総菜に 力 入れるっての
悪くないね。 (辰則)はあ?

田倉の立派な跡取りができたんだ。

少しでも 店を大きくして
残しといてやらなきゃ!

相当な おばあちゃんバカだ!
うん!

(初子)おばあちゃん!
(一同の笑い声)

あ~ 仕事 仕事!
よしっと!

よいしょ。

(仁)ただいま!
お帰り!

道子さんも坊やも 元気?
うん。

ねえ お乳 出るの?
うん。 やっぱり

でっかい赤ちゃんでね ちょっと
大変だったらしいんだけど

立派な病院で
いい先生がついてたから

母子ともに健康だよ。
もう 川部のうちじゃ大変だよ!

初孫だろ。
祝い客が ひっきりなしで!

そうだろうね! じゃあ 母さんも
お七夜には お伺いしなきゃね。

そうですよ。 お店の事は
何とでもなりますから。

それから 名前だけどね 川部の
親父さんが付けてくれたんだよ。

剛っていうんだよ。
「剛」って字 書いてさ

鋼のように 強く育つようにって。

だって 「竜」って字
付けなさいって言ったでしょ!

お父さんの 竜三の「竜」!
でも 川部の親父さんがね

生まれる前から いろいろ研究して
付けてくれたんだよ。

「剛」っていいじゃないか
男らしくて!

そんなバカな!
川部の子じゃないんだよ!

田倉の長男なんだよ! 川部の人が
付けるって法はないじゃないか!

川部のお父さんだって
おじいちゃんなんだよ!

他人じゃないんだから!
俺も 今日から頑張るぞ!

ホントに もう!
非常識にも 程があるよ!

女房の父親が!
大体 失礼じゃないか!

それをまた喜んでる 仁も仁だよ!
女房の里の言いなりになって!

私ね お七夜には
絶対 行かないからね!

ホントに もう 人をバカにして!

そういう事が 何でもない時代に
なっちゃったんですよ。

名前なんて 誰が付けたって
いいじゃないですか。

川部さんが何をしようと 田倉の
長男には変わりないんですから!

おしんは 初孫のお七夜
とうとう 出席しなかった。

初子や禎は その事で 川部家と
気まずくなるのを心配した。

…が おしんの意地であった。

やがて 出産から35日が過ぎ

道子と剛が
田倉家へ帰る日が来た。

(波江)まだまだ 道子も
元どおりの体じゃないし

もうしばらく うちで

面倒 見てやりたいんですけどね。
(仙造)何 言っとるんだ!

さんざん 勝手な事をしたんだ!
これ以上の わがままをしたら

田倉のお母さんに
義理が立たんじゃないか!

何が 義理ですか!
田倉のお母さんだって

大事なお七夜
来てくれなかったんですよ!

申し訳ありません。
母と私と2人とも

店を空ける訳には
いきませんでしたから。

(波江)お母さんは 初孫より
お店の方が大事な方だからね。

(道子)お乳 あげたら
よく寝ちゃった。

また 道子が苦労すると
思いますけど

仁さん よろしくお願いしますね。

道子は 仁さんしか
頼れる人がいないんですからね!

大丈夫よ
今度は 剛がいるんだもの。

それに 仁だって 味方に
なってくれるって言うし。

もう 田倉のお母さんや
初子さんなんか

負けちゃいないから!

(初子)母さん やっぱり 父さんに
似てるんじゃないかしら?

(禎)雄兄ちゃんにも似てる。

(初子)いい子じゃありませんか。
優しい目をして…。

ほら はいはいはい。
雄の小さい時に そっくりだよ!

(初子)ほら!
かわいいね!

剛を かわいがってくれるのは
うれしいんだけど

無責任な かわいがり方は
よくないんだよ。

そうやって いろんな人に
抱かれるのも よくないんだよね。

(剛の泣き声)

(仁)ほら
今 抱いててもらったから

もう寝てるのが
嫌になったんだよ。

こういう事だと
母親が大変なんだよ。

最初だから
はっきり言っとくけど

剛の面倒は
一切 道子が見るから。

ほかの人には 手を
出してもらいたくないんだよ。

母さんもだよ。 あっ それから
道子は 子育てに専念するから

ほかの家族の事まで
手が回らないと思うんだ。

だから
当分 家の事もできないけども

それも分かってやってほしいんだ。
ほかの誰の子どもでもない

田倉の後継ぎを育てるためだよ。
いいね? 母さん それで。

それから
奥の事は 今までどおり

初ちゃんに やってもらうけれども
剛のためだから。

じゃあ 俺たちも 部屋 行って
休むか。 うん。

行こう!
(剛の泣き声)

(道子)あ~ よしよし!

はあ~…。

もう いいよ あんただって
疲れてんだから。 ありがとう。

母さん。
うん?

禎ちゃんにだって
すぐ 赤ちゃんが生まれますよ。

剛ちゃんだけが
孫じゃないんですから。

ハハハ! いいんだよ
あんな事 気にしてないから。

剛は 仁と道子の子どもだ。

孫だから 自分の好きなように
なると思うのが 大間違い。

あれで いいんだよ。

仁も 希望も 禎も

みんな一人前になって
もう 誰の心配をする事もない。

そう思ったら 何だか
急に 気が軽くなっちゃってね。

母さん…。

あとは 初ちゃんが
いい人に巡り会って

幸せになってくれる事。

私は 母さんのそばで…。
そうは いかないの!

来年ね 辰則さんと禎が
結婚式を挙げて

春には 無事に お店の
1周年記念を迎えられたら

父さんと雄の十三回忌の法要を
したいと思ってんの。

その時にね 川村さんのご供養も
一緒にするつもりなの。

雄にとっては 一番の戦友だし
田倉の店の大恩人ですものね。

それを済ませたら
初ちゃんだって 気が済むだろ?

雄の事も 川村さんの事も
みんな 忘れて…。

忘れていいんだよ。

忘れなきゃいけないんだ。 ねっ。

昭和32年2月 禎と辰則の結婚式が
つつがなく挙げられ

間もなく
田倉商店の1周年記念セールが

盛大に行われた。

続いて4月 竜三と雄の十三回忌
そして 雄の戦友 川村の

追善供養を兼ねた法要が
営まれる事になり

希望も列席して 久しぶりに
田倉家全員が 一堂に会した。

まんじゅう 食えよ。
頂きます。

希望。
(希望)ああ。

もう 十三回忌だなんて
信じられないね。

十年一昔っていうけど
あっという間だったね。

随分 いろんな事があったけど…。
母さん よく ここまで。

毎日毎日 夢中だったよ。
まあ 店も潰れないで どうやら…。

やっぱり 父さんと雄が
守ってくれたんだよね。

母さんの頑張りですよ!
ハハハハハハ!

百合ちゃんは?
ええ 元気です。

ただ 今日はね…。
分かってるよ。

希望と一緒になって 幸せだったら
もう 母さん それだけで…。

あんた 仕事の方 どうなの?
まだまだ 修業中です。

ただ 少しずつ 作品を
買って下さる方も 増えてきて…。

あ~ そりゃ よかったね!

早く 自分の窯を
持てるようにならなきゃ!

とんでもない! いつの事か…。
そのぐらいの根性がなきゃ!

ねっ 赤ちゃんは?
それも まだ…。

母さんも これから
どんどん 孫が増えますよ!

私はね
「おばあちゃん」なんて呼ばれて

孫のお守りをして
暮らすつもりはないからね。

長い間 貧乏して

やっと 自分の好きな商売が
できるようになったんだもの。

母さんは これからが
本当の勝負だと思ってるよ。

父さんや雄や川村さんが
したくて できなかった事を

代わりに
母さんがやるつもりだよ。

生き残ったのは
母さんだけだからね…。

それが 残った者の務めだと
思ってるよ。

(初子)母さん。 うん?
始まりますよ。 ああ。

じゃあ みんな 行こうか!
はい!

さあ。

(仁)剛ちゃん! 剛ちゃん!

(読経)

このころから
日本の技術革新と共に

経済の高度成長が
始まろうとしていた。

長い苦難の時代を抜けようと
している日本と一緒に

57歳になって
ようやく おしんにも

新しい時代が
始まろうとしていたのである。