ドラマログテキストマイニング

テレビ番組(ドラマ)の字幕情報を対象に、テキストマイニングの研究をしておりますので、解析結果の公開をメインに関連グッズを交えた構成で記事にしてます。また、解析結果の信憑性が確認できるよう、解析用ソースも部分引用し掲載してあります。

おしん 一挙再放送 第44週・再起編 乙羽信子、田中好子、山下真司… ドラマの原作・キャスト・音楽など…

おしん 一挙再放送▽第44週・再起編』のテキストマイニング結果(キーワード出現数ベスト20&ワードクラウド

  1. 道子
  2. 辰則
  3. 田倉
  4. 商売
  5. セルフサービス
  6. 手伝
  7. 希望
  8. 商品
  9. 野菜
  10. オープン
  11. 今日
  12. 百合
  13. 明日
  14. ホント
  15. レジ
  16. 初子
  17. 川部
  18. 大変
  19. お店
  20. カゴ

f:id:dramalog:20200209073616p:plain

おしん 一挙再放送▽第44週・再起編』のEPG情報(出典)&解析用ソース(見逃した方はネタバレ注意)

 

解析用ソースを読めば、番組内容の簡易チェックくらいはできるかもしれませんが…、やはり番組の面白さは映像や音声がなければ味わえません。ためしに、人気のVOD(ビデオオンデマンド)サービスで、見逃し番組を探してみてはいかがでしょうか?

無料で民放各局の動画視聴ができるTVerティーバー)!まずはココから!
民放公式テレビポータル「TVer(ティーバー)」

他にも、無料お試し期間のあるVODサービスが増えてますので、以下バナーから各社のラインナップを調べてみるといいかもしれませんね。

(本ページの情報は投稿日時時点のものです。最新の配信状況は Paravi サイトにてご確認ください。)

(詳細はFODプレミアム公式ホームページにてご確認ください。)

 

おしん 一挙再放送▽第44週・再起編[字]

主人公おしんの明治から昭和に至る激動の生涯を描き、国内のみならず世界各地で大きな感動を呼んだ1983年度連続テレビ小説。全297回を1年にわたりアンコール放送。

詳細情報
番組内容
時あたかも、高度経済成長の時代が始まろうとする頃であった。おしん乙羽信子)が店をセルフサービス方式に切りかえたのも、時代の空気を肌で感じていたからである。しかし、手探りの中での新しい店のオープンは、息子の仁(山下真司)との意見の相違もあり、なかなか容易なことではなかった。そんな昭和31年の春、陶工の修業をしている息子の希望(のぞみ)と百合の結婚式が行われることになった。
出演者
【出演】乙羽信子田中好子山下真司,塩屋俊,風見章子,丘山未央,家中宏,菊地浩二,福田信昭田中美佐子,大友柳太朗,【語り】奈良岡朋子
原作・脚本
【作】橋田壽賀子
音楽
【音楽】坂田晃一

 

 


♬~
(テーマ音楽)

♬~

昭和30年の後半から 日本は
神武景気といわれた好況が訪れ

「もはや戦後ではない」という
言葉の流行と共に

高度経済成長への時代が
始まっていた。

そんな昭和31年の春

陶工の修業をしている希望と
百合の

結婚式が行われる事になった。

(道子)わざわざ お店まで休んで

お母さんや初子さん
お式にいらっしゃるのよ。

どうして
あなたは 出席しないの?

(仁)俺はな
いろいろと 仕事が忙しいんだよ。

希望の結婚式どころじゃ
ないんだよ。

だって 兄弟同様に
育ってきたんでしょ?

母さんと初ちゃんが行くんだよ。
それで いいんだよ。 でも…。

俺はな 今日 商品の搬入日を
決めなきゃいけないんだよ。

それに
明日 金銭登録機も入るし…。

ねえ それが済んだら 今夜 一緒に
外で食事しましょうよ。

そんな ぜいたくは
してられないだろ?

心配ないって。 私のおごり。
何 言ってんだ? お前。

ろくに
生活費も もらってないくせに。

ちゃんと 親父さんが
面倒 見てくれてるもん。

お母さんから渡される分じゃ
間に合うはずないでしょ!

(おしん)まあ きれいな花だこと!

(初子)ねえ 母さん
仁ちゃんが出席しないって

道子さん
変に思わないでしょうかね。

しょうがないよ 仁と百合は
あんな事があったんだから。

これからだって
希望と百合は 2人一緒に

このうちの敷居をまたぐ事は
ないだろうね。

将来 仁夫婦と希望夫婦が 仲良く
助け合っていってくれたらって

母さん 楽しみにしてたんだけど
こんな事になってしまって…。

(戸が開く音)

じゃあ 道子さん お留守番
お願いしますね。 はい。

(仁)式場は どこなの?
先生のお宅ですって。

あっ そう。 それじゃ
大して お客さん 呼べないね。

うん。 百合はね 道子さんと違って
父親はいないし 希望だって

母さんが親代わりなんだから
大した事してやれないしね。

ちょうど 新しい店の開店で
金のない時にやるんだもん

どうしようもないじゃないか。

たとえ 母さんが
費用 出してやると言ったって

希望ちゃんは 断ったわよ。
自分たちの結婚式は

自分たちの力で やりたいって
言ってたんですもの。

親が 金を出して
盛大な結婚式 やったって

うまくいかない夫婦は
うまくいかないし

結婚式なんか挙げなくったって

お互いの心と心が通い合ってれば
いいんだからね。

じゃあ 今日
遅くなるかもしれないからね。

行ってきます。
行ってらっしゃいませ。

気を付けてね。

お母さんたち 私たちの結婚の事
まだ 根に持って!

何かっつうと 皮肉なんだから!

(希望)母さん!

よく来て下さいました。

(百合)ホントに
お忙しい中 わざわざ…。

あんたたち
まだ そんな格好して…。

もう そろそろ
お式が始まる時間でしょ?

僕たち このままで…。

(栄造)いや~ 私も なんとかして
式らしい式も挙げて

披露宴も どっかでと
思ったんですがね。

申し訳ありません。

先生のご好意は
本当に ありがたいんだけど

今まで 5年間
僕を育ててくれた先生や

お世話になった仲間たちに

この仕事場で
祝福してもらえたら

その方が 何よりの記念にも
思い出にもなると思って…。

それに 先生と奥さんに
仲人をして頂けるんですから

それだけで…。

(ふみ)希望さんも百合ちゃんも
うちに 縁があって

主人も私も
かわいがってた人たちです。

せめて それくらい。
本当に ありがとうございます。

私が 希望の親代わりですのに
何にもしてやれなくって…。

みんな そちら様のお世話に
なってしまいまして…。

いやいや 私だって 何も…。
ただ ほら 仲人でしょ?

せめて 紋付きぐらいはと
思いましてな。

それに お祝いの会も 弟子たちが
会費を出し合いましてな。

それだけは みんなの気持ちだから
ありがたく…。

(栄造)おう。

まあ 百合ちゃん あなた いいのよ
今日は そんな事は。

それに そろそろ
もう 時間じゃないの?

まあまあ 結婚式の日まで
働いてるなんてね。

あ~ そこが また 百合ちゃんの
いいとこなんだよ。 なっ。 うん。

♬~

希望君 百合ちゃん おめでとう。
(一同)おめでとう。

ありがとうございます。

♬~

(拍手)

式といっても
簡素な披露宴だけであった。

…が 静かに寄り添っている
希望と百合の姿に

平凡だけれど
着実に生きていこうとしている

2人の思いが滲み出ていて
おしんは 深く 心打たれていた。

♬~

(希望)さあ 入って下さい。
(百合)どうぞ。

まあ 静かだね。

母屋には 老夫婦がいるんだけど
息子さんも娘さんも

みんな 町に働きに行ってしまって
離れが空いてたもんだから。

じゃ 母さん ご挨拶してこなきゃ。
野良に出てるよ。 さあ 上がって。

(百合)どうぞ。

まあ きれいに片づいてる!

荷物らしい物もないから
さっぱりしてるんです。

さあ 2人とも座って。

まあ 何もかも
2人で準備しちゃって。

準備っていっても 部屋 探して
炊事道具 買うだけの事ですから。

世が世なら
米問屋 加賀屋の一人息子で

何 不自由なく
暮らせたっていうのに。

母さん。

お加代様から
希望を お預かりして

母さん とうとう お加代様の
代わりが果たせなかった。

(初子)
でも 希望ちゃんと百合ちゃんとで
ちゃんと ここまで…。

ホントに偉いよね。 親を頼りにして
当たり前だと思ってる人間が

多いっていうのに…。

でもね 母さん あんたたち2人が
お互いに助け合って

希望が いい作品を作ってくれたら
それで もう…。

加賀屋の暖簾は
上げられなかったけど

希望が好きな仕事で
一人前になってくれたら

お加代様も
きっと許して下さるだろう。

これからは いろいろ
つらい事もあるだろうけど

お互いの心が通い合ってれば

どんな苦しい事だって
切り抜けられる。

最後は やっぱり 夫婦だからね。

よいしょ。 うん。
あっ はいはい。

(戸が開く音)
ただいま。 帰ってたの?

あっ お帰りなさい。
(仁)随分 早かったじゃないか。

(道子)結婚式だから
ごゆっくりだとばっかり。

お夕飯
召し上がらなかったんですか?

お式はね
お昼過ぎに終わったからね。

折詰ぐらい もらってくるだろうと
思ったからさ

晩飯の支度 いいだろうって
言ってたんだよな。

そんな ぜいたくな
結婚式じゃないよ。

だけど 相当 包んだんだろ?
それで 引き出物も出ないの?

希望の作品だよ。 記念にって。
ふ~ん。

これ どこがいいの?
みそか塩でも入れんの? これ。

あったかいじゃないの 形が。

あったかい…。 まあ こういう物は
好き好きだけどさ

それにしても 随分 高いつぼだね。
これじゃ

赤飯の一折でも もらった方が
よかったんじゃないか。

(仁と道子の笑い声)

あっ じゃあ 私たち…。

あとは 明日 片づけますから
そのまま 置いといて下さい。

おやすみなさい。
道子さん。

はい。
あんたたち お夕飯は?

今夜は たまのお休みだったので
仁さんと 外で。

あなたね
今 うちが どういう状態か

知らないはずはないでしょ?

新しいお店に
どのくらいの費用が かかるか…。

田倉のお金なんて
1円だって使ってません!

父から もらったもので
食事してきたんです!

私だって 今 うちが
どんなに大変かって事ぐらい

分かってます!
だから 生活費だって

お母さんから頂いた分じゃ
足りなくても

お母さんに黙って
父から もらったもので

補って やってきたんです!

たまに
外で食事してきたからって

お母さんに 文句 言われる
筋合いなんか ありません!

はっきり 言っときます!

あなたは 田倉の人間なのよ。
道子さんの実家に

びた一文 援助を受ける理由が
ないんですからね。

私が お渡ししてるもので
ちゃんと 賄って頂きます。

道子!

母さん…。

道子は ろくに 生活の
やりくりなんかした事ないんだよ。

だから 足りないと 自分の
責任のような気がするんだよ。

川部の親父さんだって 娘に
苦労させるのが かわいそうで

そっと
援助してるだけの事じゃないか。

母さんが ガミガミ 言うような事じゃ
ないだろ!

情けないね! 嫁の実家に
金を出してもらって

お前 悔しいと思わないのかい!?

だから 川部の親父さんは
娘が かわいいだけの事なんだよ!

そんなの
甘えてりゃいいじゃないか!

そんな つまらない事で
道子と まずくなる事ないだろ!

いい加減にしてくれよ もう ホント!

(戸の開閉音)

はあ…。 希望と仁は 同じように
育ててきたつもりなのに

どこで どう間違って

あんな違った人間に
なってしまったんだろうね。

仁ちゃんは 今は 何が何でも
新しい店を成功させたいって

一生懸命なだけなんですよ。

けど… 情けないよね。

人間 お金がないと

嫁にまで バカにされて…。

母さん…。

初ちゃん どんな事があっても
新しい店は 失敗できないよ。

♬~

生活費が足りない分
私が出して どこが悪いのよ!

礼 言われたって
怒られる事ないと思うわ!

あんまり うるさく
言われるんだったら

私 名古屋へ帰してもらう!
お金もないくせに

プライドだけは 人一倍 強いんだから。
とても一緒になんて暮らせ…。

道子…。

へえ~
随分 大きな物なんですね!

この金銭登録機が出来たからこそ
セルフサービスの店が成り立つんだよ。

新しい店の心臓だからね。

こんな物 私に使えるのかしら?

今日から 早速 教えてもらって
うんと練習しなきゃね。

初ちゃん 頼んだよ!
はい!

金銭登録機が入った事で

田倉商店は いよいよ
オープンへのスタートを切る事になった。

それはまた おしんの命運を懸けた
出発の第一歩でもあった。

♬~
(テーマ音楽)

♬~

昭和31年の2月の末 増築も完成し
新装なった田倉商店に

2台の金銭登録機が運び込まれた。

…と同時に
商品の搬入も始まっていた。

(高林)このカゴに入れて
ここまで持ってきます。

品物には それぞれ
値段が書いてありますから

それを 一つ一つ このキーで
打ち込んでいくんです。

145円なら 145と
こういうふうになりますね。

86円の場合は 86円と
こういうふうになります。

で 全部の商品の値段を
打ち込んだら これで締めます。

ここに出た数字が
合計になります。

お分かりになりましたか?
(おしん)簡単なようだけど

1つ 数字を押し間違えると
大変な事になりそうだね。

(初子)あとは 練習して
一日も早く慣れる事ですね。

仁!
(仁)うん?

道子さんは? あんた さっき
呼びに行ったんじゃないの?

道子は いいだろ
店 出る訳じゃないんだから。

だって どんな事があって
いつ 代わりを

やってもらわなきゃならないか
分からないじゃないの。

今のうちに 少しでも
覚えといてもらわないと。

今は 忙しいんだって。

道子さん
ちょっと お店 来てちょうだい。

(道子)何か ご用ですか?
お店を開店する前にね

お店の事 一とおり
覚えといてもらいたいの。

いざって時 間に合わないでしょ。

私は 奥の事さえしてたら
いいんじゃないんですか?

そうは いかない時だって
あるでしょ。

お店が忙しくなったら
店へも出なきゃならない。

商人の嫁は
そのぐらいの かい性がなきゃ

やっていけやしないのよ。
店が開いてからじゃ 遅いの。

今のうちだったら
ゆっくり 覚えられるから。

忙しいのならともかく
本 読む暇があるんだったら

ちょっと お店へ出てちょうだい。

商人の嫁っていうのは
本を読む暇も ないんですか?

そんな事
言ってんじゃないでしょ!

今だったらね
お店の事 一とおり覚えるのに

ちょうどいい時だから。

他人の店じゃないのよ。
あんたたちのお店なのよ。

少しは やる気に
なってちょうだい! いいわね?

でも 仁は
私に店へ出る事はないって。

人手が足りなかったら その分

従業員を増やせば
いい事だからって。

仁が そう言ってるのに
お母さんの命令だからって

私が 勝手な事…。

(戸が閉まる音)

仁! あんた 道子さんに

店へ出なくていいって
言ったそうだけど どういう訳?

母さん また 道子に
余計な事 言ったのか。

だって! あいつは 家の事さえ
ちゃんと やってりゃ

それでいいじゃないか。 それで
十分 同居の意味 あるんだよ。

あいつはね
一日中 母さんや初ちゃんに

気ぃ遣いながら
おさんどんに徹してるんだよ。

それでまた 店へ出ろなんて
言ったら 体 悪くしちゃうよ。

かわいそうだろ。
何が かわいそうなのよ!

初ちゃんなんてね
ずっと お店と台所

二役を 立派にやってきたんだよ!

母さんだって 若い時は
あんたたちを育てながら

魚屋と台所を
ちゃんと やったんだから!

母さん もう 時代が違うんだよ。
道子は 俺の女房だ。

俺が思うようにする。
もう 母さん 黙っててくれよ。

母さんが
道子に つまらん事 言うと

後で
みんな 俺に返ってくるんだよ。

やりきれないのは
俺の方なんだから。

何してんの? 初ちゃん。

お鍋を
ちょっと磨いとこうと思って。

道子さん 煮物 焦がしちゃった
らしいんですけどね

ちゃんと落ちてなかったから。
また?

もう 道子ったらね
ちょっと炒め物しても

ガスコンロに 油が とんだって
拭きもしてないんだから!

もう だらしがないったら
ありゃしないわよ!

私が神経質すぎるんですよ。
奥の事は 道子さんに

任せてあるんだから
ほっとけばいいんですけど

見ると つい 気持ちが悪くて…。

道子さんには
面白くないでしょうけど…。

注意して 直るもんだったら
言うけど

まあ すぐ 膨れっ面して…。
ひどい時には

口答えが返ってくるんだからね。
あきれて ものが言えやしないよ。

道子さんは お嬢さん育ちだから。

私が若い頃はね
お姑さんの言う事は もう絶対で

そのために
随分 泣かされもしてきたから

いい事ではないと思うけど…。
だけどね 道子みたいに

ああ ずうずうしく
やられたんじゃ

世の中 どうなっちゃったのかと
情けなくなっちゃうわよ!

しかたがないんですよ。

今は 別居するのが当たり前なのに
同居してるんですもの。

お姑さんと一緒にいる
という事だけで 頭の上に

大きな石でも載っかってるような
気がするんじゃないですか。

そう思ったら
道子さんだって大変なんですよ。

その辺の事も
分かってあげなくっちゃ。

言いたい事も言えずに

我慢しなきゃ
うまくいかないのかね。

道子さんは 仁ちゃんの奥さんで
田倉の家に 嫁に来たんでも

母さんと結婚した訳でも
ないんですよ。

今は そういう考え方が
普通なんだし…。

仁ちゃんが 道子さんの味方に
なってあげなかったら

道子さんの立場がないでしょ。
それが 夫婦ってもんだろうし…。

嫁を持って

初めて 佐賀のお姑さんの気持ちが
よく分かったよ。

出来の悪い嫁を持った姑って
因果なもんだね!

母さんも
出来の悪い嫁だったんですか?

ああ! 反対されて結婚して
家風に合わなくって!

まあ 姑にしたら
随分 腹の立つ嫁だったろうよ!

それが分かってるんだったら
母さん

たとえ どんなに 腹に
据えかねるような事があっても

道子さんには
優しくしてあげて下さい!

そしたら 道子さんだって…。

初ちゃんに お説教されるように
なったら おしまいだね。

まっ とにかく嫁を当てにしたのが
いけなかったんだよ。

今までは 何もかも
一人で やってきたんだ。

こんな店ぐらい 誰を頼らなくても
一人で やっていかなきゃ。

明日からね 嫁の事で
クヨクヨするのは もう やめました!

(2人の笑い声)

さあ!

♬~

まあ そうして いちいち

値段のシール 貼るっていうのも
大変だね。 うん。

でも これがないとね お客さん
自分一人で選べないからね。

品物を手に取って 値段を見て

それで買うかどうか
決める訳だから。

ねえ 魚と野菜 どうする? まさか
セルフサービスって訳にもいかないね。

うん。 野菜は 物によっては

セルフサービスの方へ
置くつもりなんだけど…。

この際 セルフサービスで扱えない物は
諦めたら どうかな?

いや~ 魚とか野菜なんてのはさ

今までどおりのやり方じゃないと
商売にならないだろ。

でも そんな事してたら
大した利益にもならない事に

人件費が かかる事に
なるじゃないか。

魚 売らない? うち 魚屋だよ!
魚 売らなくて 何 売るんだよ!

いや 魚なんか売らなくても
うちは 品数が豊富なんだもん。

セルフサービスにして
人件費を節約してる分

商品 安くなってるから
きっと売れるよ! ねっ!

それで 十分
商売 成り立つんだから。

この際 店のイメージのためにも
魚とか野菜は 諦めたらどうかな?

バカも 休み休み言いなさい!

魚と野菜は
田倉商店の看板なんだよ!

魚と野菜を買って下すった
お客様に ついでに

ほかの物も安く買って頂く。
そのために いろんな商品を

セルフサービスで
置いてるだけじゃないの。

魚と野菜 売らなくて
何 売るって言うんだよ!

母さん…。
魚はね 今までどおり

母さんが 浜 行ってきて 仕入れて
店の入り口で売るよ。

野菜だって同じだよ。 農家に
直接 仕入れに行って 安く売る。

それが
お客様へのサービスってもんだろ!

それじゃ セルフサービスの店に
ならなくなるじゃないか!

そんな杓子定規のような訳に
いかないよ 商売は!

魚にね 値段のシールが貼れないって
言うんだったら

売った包装紙の上に
値段を書いて

それを勘定場へ
持っていきゃいいだろ。

誰が 魚と野菜 売るんだよ?
私と初ちゃんで やるよ。

母さんと初ちゃんは
勘定場 やるんだろ?

ほれ 見ろ! 対面売りは 人件費が
かかるから セルフサービスにして

人件費を節約した分 商品
安く売ろうって言ってるのに

母さんや初ちゃんが 魚 売ったら
何にも変わりゃしないじゃないか。

道子を当てにしようっても
駄目だよ。

じゃあ 人を雇えばいいだろ!

その分 商品を売って
もうけりゃいいんだからね!

母さん!

はい。
また サバのみそ煮かよ お前!

ここんとこ
うちのお店 お休みでしょ。

よそで 魚 買うと
やっぱり サバが一番安いのよね。

1匹で ちょうど4切れ 取れるし。

お前な
いくら倹約しろって言っても

俺たち 働いてんだぞ!
少しは お前…。

お母さんから渡されるものじゃ
これが 精いっぱいなの。

私だって もう 魚は うんざりよ。

道子さん 魚が嫌だったら ほかに
もっと いろいろ あるでしょ。

お豆腐とか油揚げとか
栄養のあるものが。

お魚だってね 安いイワシなんかも
手の加え方によっては

ホントに おいしくなるもんよ。
そうだよね!

初ちゃん よく つみれだとかさ
サツマ揚げ 作ってくれたもん。

あの ほら イワシのすり身にさ
ゴボウとかニンジンの刻んだの入ったの

あれ おいしかったね!

どうせ 私は 何にもできない
駄目な女ですよ!

けどね 私だって
お金さえあったら

いくらでも 文句の言われない
料理ぐらい作ってみせるわよ!

ろくに 生活費もくれないで

私に かい性がないように
思われちゃ 引き合わないわよ!

かい性のないのは
あんたの方でしょ!

女房に
こんな情けない思いさせて…。

道子さん もう よしましょ。 ねっ。

さあ 頂きましょう。
頂きます。

サバだってね 食べられるだけ
ありがたいと思わなきゃ。

母さんの子どもの頃なんてね
サバは 御馳走だった。

お魚なんてね 1年に1度しか
食べられるか 食べられないか…。

もう 今どき そんな話
通用しやしないんだよ!

そりゃ
昔は ほとんどの人が貧乏で

食う物にも困ってただろ。

でも それが普通だから
文句も言わずに耐えられたんだよ。

でもね
今は もう 時代が違うんだよ!

物が豊かになって 何でも手に入る
時代じゃないか!

そんな時に辛抱しろと言ったって
昔の辛抱とは違うんだよ!

道子だって ろくに 生活費
渡されなきゃ やりきれないよ。

母さんもね 昔の貧乏話する前に
ちゃんとしたものが

食えるだけの金を 道子に渡す事を
考える方が 先じゃないの?

もう 俺 母さんの貧乏話なんて
二度と聞きたくないよ。

そんなもんで ごまかせる時代は
とっくに終わったんだから!

(仁)道子。

新しい店が
うまくいくようになったら

お前に もう やりくりの事で
苦労させないから。 なっ。

必ず 成功させるよ。

そうよ。 早く お手伝いさんぐらい
置けるようになってほしいわ。

私 おさんどんするために

お嫁さんに
来たんじゃないんですからね。

晩飯の おかずの事で
ケンカしてるなんて

情けねえもんな。

♬~

うっかり 昔の苦労話も
できなくなってしまった。

ホントに 世の中
変わってしまったんだよね。

辛抱なんて 少しも立派な事じゃ
なくなっちゃったんですね…。

それより お金もうける事の方が
先だなんて…。

そういえば そうだね。

お金があれば 辛抱する事もないし
うちの中 円満にいくんだから。

私だって ばんちゃんや母ちゃんの
暮らし 見てきて

もう二度と 貧乏は嫌だって
骨身にしみた。

だから 今まで
頑張ってこられたのかもしれない。

嫁にまで バカにされちゃ
ぼんやりしちゃいられない。

何が何でも 稼がなきゃ。

この夜の事は
長く おしんの心に残った。

幸せも 金でしか買えない時代が
来たという思いが

新しい店のオープンを前に

おしんに 新たな決意をさせる事に
なったのである。

♬~
(テーマ音楽)

♬~

(仁)この市価の3割引きというの
もっと強調した方がいいな。

(おしん)魚と野菜は 引けないよ
ふだんから安くしてんだから。

オープンして 3日間は
出血サービス 覚悟しなきゃ。

それで お客さんに
足を運んでもらって

セルフサービスの店ってのは
どういう店なのかっていう事を

印象づける事が肝心なんだから。

ねえ これ 赤で もっと太くしてよ
ここんとこ。

分かりました。 ここんとこね。
赤ですね。

へえ~!
こりゃ なかなかなもんだな!

お~ 辰! お前 来てくれたのか!

田倉飛行兵長! 崎田上等飛行兵
ただいま 到着致しました!

御苦労!

元気かよ! おい!
久しぶりですね 田倉さん!

相変わらずか? うん?
母さん 母さん!

こいつね 少年航空隊時代の
1期下のやつなんだよ。

でも こいつ 東京の空襲で
家族 全滅しちゃってさ。

それで 浮浪児みたいに
なってたところを

GIに拾われて
アメリカ 行ってたんだよ。

アメリカへ?
いつ お帰りになったんですか?

5年ほど あっちにいまして…。

(仁)そのアメリカ兵が結婚したんで
邪魔にされたんだよ。

やっぱり
日本が恋しかったんです。

帰る旅費 くれたもんですから。
俺が東京にいる時 偶然 会ってさ。

こいつ
食料品店の店員 やってたんだよ。

でも あの時 よく 飲み行ったな。
ええ!

しかし 田倉さんが こんな立派な
店のオーナーだなんて信じられないな。

何 言ってんだよ! だから
来てもらったんじゃないか!

是非とも
お前に協力してほしいんだよ!

母さん こいつね
アメリカで スーパーに勤めてたんだよ。

スーパーってのは
ほら セルフサービスの店の事だよ。

アメリカには 至る所に
そういう店があるんだって。

こいつは
スーパーには 年季 入ってるからね

いろいろと
役に立つんじゃないかと思って

来ないかって誘ってたんだよ。
夢じゃないかと思いましたよ。

東京には
そういう店も出来始めたけど

まさか 田倉さんが…。
しかし 来て 驚きました。

ホントに やるつもりなんですね。
手伝ってくれるか?

はい。 お前のキャリアを
頼りにしてんだぞ。

しかし 私は
ただの店員でしたからね

経営の事なんかは さっぱり…。
いいんだって!

商品の並べ方とか
お客の接し方とか

何だっていいんだよ! そういう
本場の雰囲気みたいなものをさ!

なっ。 とにかく 俺たちは
何もかも初めてなんだ。

いろいろと お前が
アドバイスしてくれると助かるんだよ。

仁。
うん? でも…。

母さんや初ちゃんが 今までどおり
魚 売るんだったら

勘定場へ入る人 いないだろ。
だから 辰に来てもらったんだよ。

こんな立派な方に来て頂いても

果たして それだけのお給料が
お払いできるかどうかね…。

とんでもない! そんなつもりで
来たんじゃありません!

私は 航空隊当時 田倉さんに
かわいがってもらいました。

田倉さんのためなら
どんな事だってします。

田倉さんと一緒に働けるなんて
こんなに うれしい事ありません。

どうか よろしくお願いします!

(仁)辰 オープンのために
有り金 はたいたんだ。

しばらく 満足のいく月給
払ってやれないと思うけど

軌道に乗るまで 辛抱してくれや。
なっ。

うまくいくようになったら
いくらでも 払うから。

そんな水くさい事
言わないで下さいよ。

女房 子がいる訳じゃなし

雨露しのげて
飢え死にさえしなけりゃ それで。

(仁)それから 住むとこなんだけど
アパートは いずれ見つけるから

しばらくは
うちの空いてる部屋で。 なっ。

(辰則)はい。
(仁)初ちゃん よろしく頼むね。

おっ 姉の初子だ。
お世話になります!

それから うちで ずっと働いてる
次郎と征男。 よろしくな。

これから 仕事させてもらう!
お互いに頑張ろう!

ねっ! よろしく!
(仁)オープンは 3月の15日。

あと2日しかない。
最後の追い込みだぞ。

う~ん。 これなら もう
いつだって オープンできますね。

おっ これが レジですか?
ああ。

あ~ これなら 俺 使えます。
ホント? 助かるな。

え~っと 入り口は… 入り口の
スペースは 一番いい場所ですが

何 置くんですか?
魚と野菜だ。

魚って… 生の魚も売るんですか?

(仁)うちはな もともと
魚屋なんだよ。
へえ~。

いや しかし それなら もっと
ほかに売り場を考えた方が…。

第一 魚をセルフサービスって訳には
いかないでしょ。

その問題は
もう 解決がついてんだよ。

それより お前 少し休めよ。
疲れてんだろ。

いや 15日から オープンなら
今日から エンジン全開で働かんと。

ちょっと これ
着替えさせてもらって。 そうか。

じゃあ 俺 案内する。 こっちだ。
あっ 田倉さん。 うん?

台所用品は 一番奥で
いいんじゃないですか?

毎日毎日 使う物じゃないでしょ。
需要の多い物を

なるべく 目について
取りやすい所に置いた方が…。

そうだな。
ええ。 セルフサービスっていうのは

商品の配列で 売り上げが
かなり違ってきますからね。

あっ 後で
私が もう一度 チェックしましょう。

(仁)あっ こっち。
(辰則)すいません。

変な男 連れてきて…。
大丈夫かね。

(初子)どうせ手が足りなくて 人を
入れなきゃならないんだったら

仁ちゃんの
気に入ってる人の方が…。

嫌だって言ったって
もう 遅いでしょ。

来ちゃったんですから。
私に ひと言の相談もなく!

(仁)道子。

あいつ 腹 減ってるらしいんだよ。
何か作ってやってくれよ。

(道子)今 お昼御飯
終わったとこなんだもん

何にもないわよ。
じゃあ うなぎでも取ってやれよ。

そんな事したら また お母さんに
何 言われるか分かんないでしょ。

朝から晩まで 「節約 節約」って
うるさいのに…。

黙って 電話すりゃいいんだよ。

そんな事する必要 どこにあるの?

あなた あの人
ホントに ここ 置くつもりなの?

あいつはな 役に立つ男だ。

俺のためだったら
何だって やってくれるんだよ。

俺には
そういう人間が必要なんだよ。

(辰則)さ~て やりますか!

お前 先に 腹ごしらえしろよ。
いや 1食や2食 食べなくたって。

どうぞ。
すいません。

少年航空隊の時だって
お互いに 腹 すかせて

頑張ったじゃないですか。
腹が減ったって

あのころは よかったな。
生きる目的があった。

いつか 飛行機乗りになって
敵艦に突っ込む夢 見て…。

その日のためなら
どんな事でも耐えられた。

けど その夢も消えて

この10年 俺は 生きるためだけに
あくせくしてきた。

けど 田倉さん
俺 また 新しい目的が出来た!

田倉さんの新しい店が
成功するように

ほんの少しでもいい
田倉さんの役に立てたら…。

田倉さんが この店を
成功させてくれたら…。

こんなに働きがいのある
仕事って ないもんな。

辰…。
田倉さん 俺 うれしいです。

俺みたいな男を呼んでくれて…。

金なんかじゃないんだ。
生きるためだけに働くんじゃない。

この仕事をするために生きたいと
思えるような…。

俺 やっと 巡り合えたんだ
そんな仕事に…。

田倉さん 俺 精いっぱいやる。
やらせて下さい!

仁。 辰則さん
お昼 まだなんじゃないの?

うん。
働いてもらうんだったら

うんと おなかに 力が入るように
食べといてもらわなきゃね。

うなぎでも何でも 好きなもの
取ってあげたら?
うん。

いいえ。 私は そんな…。

戦闘機だって
ガソリンがなきゃ 飛びませんからね。

よいしょっと。

えっとね 次郎君 それは そこね。
(次郎)はい。

あの~ 征男君はね そこそこ。
(征男)そこで。

禎ちゃん!

お帰りなさい。
どうしたの? 春休み?

(禎)まだ。
あと1週間ほど あるの。

じゃあ 学校 休んで?
そう。 仁兄ちゃんが

お店のオープンだから帰ってこいって。
あきれた!

おい 禎! お前
学期末の試験 済んだんだろ?

試験だけが
学生生活じゃないのよ。

春休みになったら なったで
いろんな計画があって 忙しいし。

試験が済んだら
それでいいじゃないか。

新しい店のオープンの時ぐらい
手伝うの 当たり前だろ?

うちは 猫の手も借りたいぐらい
忙しいんだから。

だけどね なにも
禎の学校 休ませてまで…。

(仁)禎は 田倉の娘だよ。
ちょっとぐらい 学校 休んで

店 手伝うの 当たり前じゃないか。
こういう時は

家族総動員で頑張らなきゃ。
人 雇ったら 金が かかるんだよ。

けどね…。
(仁)もう明日一日しかないんだよ。

明日は いろいろと
打ち合わせして…。

なあ お前 春休みいっぱい
店 出てくれよな。

お前が のんきな顔して
大学 行ってられるのは

この店のおかげなんだぞ。

新しい店が
うまくいかなくなったら

お前が下宿して 大学行ってる金は
出ないんだから。 なっ。 おい 辰。

(辰則)はい。
妹の禎だよ。

名古屋の大学 行ってるんだよ。
崎田辰則君だ。

辰則です。 今日から
こちらに お世話になります。

よろしく お願いします。

いい妹さんが
いらっしゃるんですね。

羨ましいな。

(戸の開閉音)

禎さん お帰りなさい!
ただいま。

へえ~。 道子さんは 優雅ね。

みんな お店で カリカリして
働いてるっていうのに!

私なんか まだ 学校があるのに
兄さんに呼び戻されたのよ!

道子さんがいるんだから なにも
私を当てにする事ないじゃない。

家族が協力するって言ったって
私なんか お嫁に行ったら

田倉の人間じゃなくなるのよ。
お店を手伝うって言うのなら

道子さんに出てもらうのが
本当だと思うけどね!

私は 奥の事さえしてたら
いいって言われてんの!

今 やっと
お昼の後片づけが済んで

お夕飯の支度までに
ちょっと 暇が出来たから

座っただけなのよ。

なにも 一日中
本 読んでる訳じゃないわ。

へえ~。 今のお嫁さんって
いいご身分なのね。

うちの母さんや初ちゃんは
奥の事しながらも お店へ出て

座ってるのなんか
見た事もなかったけど!

禎 あんた
道子さんに 何か言ったの?

別に。 母さんも苦労するわね
あんな お嫁さんじゃ。

あんまり 波風 立てないでよ。

やっと
うちに 少し慣れてきたんだから。

へえ~。 母さんらしくもない。
何 遠慮してるのよ?

母さんが そんなふうだから
道子さんが増長するの。

言って分からない人には
何 言ったって 無駄なんだから。

だからって 私まで とばっちり
受ける事ないでしょ!

禎!

(ため息)

仁兄ちゃん。
うん?

私は 手伝えって言われたら
手伝うわよ!

そのかわり 道子さんにも
お店へ出てもらってよ!

この店は 誰のものでもない
仁兄ちゃんと

道子さんのものになるんだから!
禎…。

私は 結婚したら
田倉の人間じゃなくなるのよ!

道子さんが お店へ
出ないんだったら 私も出ない!

さっさと 学校へ帰っちゃうから!
いいわね それで!

ハハハハハ!
なかなか 面白いお嬢さんですね。

はっきりして 胸がすくような
啖呵だな! ハハハハハ!

母さん! 禎は 一体
何様のつもりでいるんだよ!?

母さんが猫かわいがりして
大学へなんか やるから

あんな わがままな娘に
なってしまうんだよ!

ちょっと厳しく言って
性根 たたき直してやった方が

いいんじゃないのか!
禎が言うのも もっともだよ。

母さん…。

あれぐらい言って
ちょうどいいのよ。

お兄ちゃん
鼻の下が長すぎるんだから。

道子さんはね
私たちとは 違うのよ。

貧乏は知らないし 何でも
自分中心で育ってきたんだから。

今の嫁さん 教育しようと思ったら
大ごとだわ。

うちの中 円満にするためにはね

母さんが諦めなきゃ
しょうがないの。

あんただって
そう言ったじゃないの。

母さんが おとなしくしてると
私が こき使われるの。

たまんないわよ そんなの。

母さん! 道子が大変なんだよ!
すぐ 医者 呼んでくれよ!

どうしたの?
すごく気持ち悪そうで

吐いたりしてるんだよ!
初ちゃん 電話。 先生にね。

(仁)来て!
はいはい。

道子 大丈夫か?
すぐ 医者に来てもらうからな。

大丈夫か?
ウッ…。

(仁)大丈夫かよ お前…。
道子さん つわりなんじゃない?

医者に診せるに越した事ないけど
間違いないと思うよ。

道子。 お前 子ども できたのか?

さあ 道子さん
落ち着いたら 横になりなさい。

ねっ。 さあ いらっしゃい。
ほら 仁 ぼんやりしてないで。

新しい店のオープンを
2日後に控えて

道子の妊娠は とんだ番狂わせを
引き起こす事になった。

♬~
(テーマ音楽)

♬~

(辰則)え~っと もうちょっと上!
上! あ~ そんな上じゃない!

もっと下 もっと下 もっと下!
そうそう!

う~んと もうちょっと上!
う~ん もうちょっと!

はいはい OK! そこで OK!

え~っと…
あ~ ここにも モールが欲しいな。

いや これで
予算いっぱいなんですよ。

そんなケチケチしなさんな! これから
長いつきあいになるんですよ!

シーズン シーズンで 大売り出しがある!

その度に お宅に
もうけさせるから! ねっ!

オープンの時ぐらい
サービスするもんですよ! サービス!

旦那にかかっちゃ かなわねえな!
頼みますよ!

え~っと 初日の記念品は
3, 000個と見ていいだろうな。

それぐらい 客が来てくれたら
オープンとしちゃ まず成功だ。

何てったって
小さな町なんだから。

あっ 奥さんの具合 どうです?

(仁)いや~ それが
全然 食欲がないんだよな。

それは よくないですね。

オープンの前の日に
これじゃ 参っちゃうよ。

店の事なら なんとか 私が。

あ~ 助かるよ。 お前が来てくれて
ホントに よかったよ。

俺一人じゃ
どうしようもないところだ。

それじゃ また後で手伝うからな。
はい!

(初子)仁ちゃん
道子さんのお粥 出来てるわよ。

それが 全然 食欲ないって
言うんだよ。 相当 ひどそうね。

(おしん)大げさなんだよ。

つわりは
病気のうちに入らないよ。

個人差があるって
医者だって言ってたじゃないか。

寝込むほどじゃないの!
ちょっとぐらい 具合悪くても

記念品に のし 掛ける事ぐらい
できるだろ。

私も初ちゃんもね やらなきゃ
ならない事 山ほどあるんだから。

かわいそうだろ
青い顔して寝てるのに…。

そんな仕事だったら 俺が
徹夜してでも 間に合わせるよ。

(禎)お兄ちゃんが
そうやって かばうから

いい気になるのよ 道子さん。

無理して 流産でもしたら
どうするんだよ?

あっ 初ちゃん 今日 道子
食事の支度 無理らしいから

店屋物でも取って。 ねっ 頼むね。
食事の支度なら 心配ないから

道子さん
ゆっくり 休ませてあげなさい。

ああ。 あっ そうだ。 それから
初ちゃんや 母さんや 禎にも

今日中に お客の応対のしかた
飲み込んでもらわないとね。

今までの店とは
全然 違うんだからね!

(次郎)失礼します! 川部さんが
お見えになりました!
(仁)おっ!

えっ? 川部さん
開店の日に見えるって

言ってたんじゃないのかい?
何だろう?

(辰則)え~っと
これと これ 押して…。

これで 現金が…。
(仙造)お~!

まあ まあ おそろいで!
あっ いやいやいや どうも!

いよいよですね。 店の飾りつけも
すっかり それらしくなった。

わざわざ 恐れ入ります。

お父さん 少年航空隊時代の戦友で
崎田辰則君です。 道子のご両親だ。

今度 こちらに
お世話になる事になりました。

よろしく お願いします!
いや~ こちらこそ どうも。

今ね 崎田君と いろいろ
お話ししてたんだけどね

なかなか セルフサービスの店に
お詳しいらしいんだよ。

彼は アメリカにいたんですよ。
アメリカに!? なるほど!

アメリカは 今
スーパーマーケットが多いからね。

こりゃ いい人に来てもらったね!
頼りになります。

そうだろ。 崎田君 ちょっと…。
この衣料コーナーはね

これは うちの製品
入れてもらってるんだよ。

どんどん 売って下さいよ
どんどん! はい!

高級品は無理でしょうが
ふだん 着る物で

安くて センスがよければ
結構 伸びると思います。

とにかく 気楽な子ども服を
お願いします。

そうだね。 今ね 僕は 遊び着を…。

(波江)あなた あなた!
そういう事は またの機会に。

今日は お店の事で
伺ったんじゃないでしょ。

あ… うん。

いや~ 道子が またまた
迷惑をかけてるそうで…。

つわりが ひどいとかって。
あら ご存じだったんですか?

ええ。 昨夜
仁君から 電話 頂きましてね

取る物も とりあえず。
本当に おめでとうございます。

昨夜は
うれしくて眠れませんでした。

早速 道子を連れて帰りたいと
思います。

せめて つわりが落ち着くまででも
私どもで

道子を預からせて頂きます。
お母さん…。

明日のオープンから ひとつきぐらいは
戦争みたいに忙しいんでしょ?

役に立たないばかりか
寝込まれちゃ

皆さんの足手まといに
なるだけですから。

いいえ。
どうぞ そんな ご心配はなく。

(仙造)一番 肝心な時にね
お手伝いができないんですから

これは 嫁として失格ですからね。

まあ お宅も 当てに
しておられたでしょうから

ご迷惑をかけるような事に
なりますが

人手の事でしたらね うちの社から
すぐ 従業員 よこします。

これ もう
遠慮なく使って頂いて結構です。

いいえ 人手の事でございましたら
うちの方で雇いますから

川部さんに
そんなご心配 おかけ致しません。

いやいや 人を雇うといっても
今 高いですからね。

道子が
ご迷惑をおかけするんですから

当方で責任を負うのは
当然でございます。

母さん 川部さんのご好意なんだ。
ありがたく お受けしたら?

道子だって 初めてのつわりで
心細いんだよ。

実家で養生した方が いいよ。
でもね 道子さんは

うちへ頂いた嫁ですから
そうそう お世話になっては…。

こちらへ差し上げても 道子は
うちの娘に変わりありません。

妊娠の
3か月目から 5か月目までは

一番 大事な時です。

もしもの事がありましたら
こちらに 申し訳が立ちません。

責任を持って 道子の事は
面倒 見させて頂きますから。

川部さんにとっても
田倉にとっても

道子は 大切な体なんだよ。

この際 川部さんのご好意に
甘えたら? ねっ。

私は
うちで遊んでいるだけですから

道子には
十分の事をしてやれます。

その点は
どうぞ ご安心下さいますように。

(波江)何にも
持って帰る事ないのよ。

何だって
名古屋で買えるんだから…。

(道子)よかった! ここにいたら
どうなる事かと思った。

家事を一切して その上
店まで手伝えって言うんだもん。

泣きたかったわよ。 何てったって
お母さんが働き者でしょ。

女は 朝から晩まで
動き回ってるのが

当たり前だと思ってんだから
たまんないわよ!

だから 母さん 反対したの!

ここの お母さん
苦労してきた人だから

他人が楽してるのを見ると
腹が立つのよ。

父さん 男だから
何にも分かっちゃないのよ!

でも 道子 ついてるわ。 ちょうど
こんな時 つわりになるなんて。

ホントに助かった!
親孝行だ この子は!

ねえ 母さん!
うん?

帰ったら すき焼き食べたい!

肉なんて ここに来て
数えるほどしか 食べてないのよ。

大抵 商売物の魚で
間に合わせてたでしょ。

とにかく
お母さんが うるさいんだから!

そりゃね 元手もないのに

これだけの店をやろうって
言うんだから

所帯も大変なんだろ。

だから 母さん あんたに
お小遣い 渡してるじゃないの。

何かの足しになるようにって。

それが見つかっちゃって
うんと絞られたんだから…。

まあ! 自分の腹が
痛む訳じゃあるまいし!

うん…。

私 赤ちゃんが生まれるまで
名古屋にいるかな。

そうだね。

新しい店になれば 今より
もっと大変かもしれないもんね。

決めた!
赤ちゃんのためだって言えば

大義名分は立つんだから。

暇な時 仁さんに 名古屋に
来てもらえばいい事だしね。

あ~
やっと 地獄から抜け出せる!

♬~

うまく逃げたわね 道子さん。

しかたないだろ。
開店の日に 青い顔して

うちにいられるより
いない方が ましだよ。

道子さんだって
つらいでしょうしね。

せっかく帰ってきても
ろくに 御馳走も

食べさせてもらえないで
こき使われるんじゃ

下宿にいた方が ずっと ましだ。
当分 ゆっくり 御飯も

食べていられないんだからね
覚悟しなさい。

あ~ バカバカしい!
このうち もらう人は

さっさと 里へ帰っちゃって
何の関わり合いもない私が

こんな目に遭わなきゃ
ならないなんて!

つべこべ言ってないで
さっさと食べなさい!

まだ いっぱい
用が残ってんだから!

(次郎)ごちそうさまでした!
(初子)はい。

御苦労さま こんな時間までね。
いえ。

今夜もね 遅くなると思うけど
よろしく お願いしますね。 はい。

何やってんだよ!
ほら 始めるよ! 急いでよ!

禎!

え~ 明日は 混雑が予想されます。
入り口の担当は 次郎君。 はい!

(辰則)入ってきた客に
カゴを持って入るように

案内して下さい。 はい。
このカゴですね。

征男君。 (征男)はい!
征男君は 買い物 終えた客が

必ず 商品をレジへ運んで
計算と勘定を済ませるように

誘導して下さい。
私が レジを担当しますから

必ず レジを通るように
して下さいね。 はい!

一応 レジは 1台だけにします。
客が多くなったら

もう1台のレジに 店長が
入る事になってます。
うん。

禎さんには
売り場を担当して頂きます。

客は セルフサービスには
全く慣れていないんですから

商品と値段を見て
欲しい物があったら

カゴに入れ 一括して
レジで支払うという方法を

懇切丁寧に
説明してやって下さい。

なお
万引きのおそれもありますから

店長も レジに入っていない時は
店内に 目を配って

接客に当たって下さい。
うん。 奥さんと初子さん

今までどおり 魚と八百物の業務に
専念して頂いて 結構です。

ただ 手が おすきの時は 随時
客への説明を お願い致します。

はい。

正直なところ これだけの人数では
無理かと思いますが

衣料品コーナーには
川部さんの方から

従業員も
派遣して下さるそうですし

なんとか この人数で
乗り切ってみたいと思います。

では よろしく お願いします!
(一同)よろしく お願いします!

禎! 禎!

お前が 金銭登録機の扱い方
覚えてくれると助かるんだよな。

(辰則)なるほど!
禎さんほどのお人なら

今夜一晩でも 使えるように
なりますよ。 私が お教えします。

私が習ったって
しかたないでしょ。

春休みの間しか
手伝えないんだから。

いや それだけでも 助かるんだよ。

俺は 店全体
見なきゃならないだろ。

私かね 初ちゃんが
レジへ入れればいいんだけど

どうしても 魚の方に
手が かかるからね。

(仁)いや いざとなったら
道子にと思ってたんだけど

ああいう事になってしまっただろ。
お前しか いないんだよ。

私に任せて下さい。 禎さん
覚えておいて 損になりませんよ。

やりだすと
結構 面白いんですから。

(仁)よし! じゃあ
俺たちは 明日の段取りを

もう一度 確認し合って
今夜は お開きだ。

じゃあ 向こうで! なっ!
禎さん 始めますか。

禎…。
(辰則)ねっ。

(辰則)え~っとですね
まず ここに着いたら

え~っと まず これが
一 十 百 千 万の単位。

あ~!

うまい!

お先に お風呂 頂きました!
おかげさまで さっぱりしました。

お~ 前祝い いこう! 前祝い!
あっ すいません どうも。

お疲れさまでした。

あなたのおかげで やっと
店を出す自信が つきましたよ。

まあ 仁一人じゃ
なかなか らちが明かなくて。

店の飾りだって やっと
今日 間に合ったんですものね。

いや~ ああいう事は あれこれと
かかるもんなんですよ。

しかし さすがですね 禎さんは。

あの調子なら
なんとか レジへ入れます。

あとは 使っているうちに
慣れてくるでしょ。

春休みで かわいそうだと
思ったんだけど

禎も諦めたらしくて…。

(禎)当分 名古屋には
帰れそうにないの。 えっ?

こっちへ来てくれたって とっても
忙しくて 会う暇なんかないし。

学校が始まる頃には 帰るから。
うん 待ってて。

愛してる。

♬~

あ~ 禎。 遅くまで頑張ってたね。
うん。

あ~ いよいよ 明日だね。

長い準備の時が過ぎて
おしんの店は

やっと 新しい出発の日を
迎えようとしていた。

それは 田倉の家族の運命をも
巻き込んだ

背水の陣の出発であった。

♬~
(テーマ音楽)

♬~

(辰則)お疲れさまです!
(初子)あっ お帰りなさい!

開店まで 2時間です。
(おしん)うん。

朝からね
魚 買うお客もないだろうから

箱に入れたままに
しといてちょうだい!

一っ走りで
野菜 仕入れてくるから。

そうは いきません!

生鮮食料品を扱うからには
魚も野菜も 特売します。

それを目玉の一つとして
客を呼ばないと。

とにかく
開店の時は 売値を決めて

客の目につくように
並べて頂きます。

田倉商店は 魚屋ですよ。

次郎君 征男君 魚 降ろして!
(次郎 征男)はい! 急いで!

(征男)はい! お帰りなさい!
(次郎)お帰りなさい!

♬~

父さんと雄が ついててくれるから
きっと うまくいくよね。

(希望)母さん。

希望!

本日は おめでとうございます。
来てくれたんだね。

僕なんか来ても
何の役にも立てないけど

せめて ひと言
お祝いぐらい 言いたくて…。

ありがとう。

これ 百合が 赤飯こしらえたんだ。
気持ちだけだって。

すまないね。
≪(初子)母さん!

辰則さんが 時間ですって。
はい!

お天気で よかったね。

(仙造)本日は
おめでとうございます!

田倉商店の開店を祝し
将来の発展を祈って 乾杯!

(一同)乾杯!

皆様のお力添えのおかげで

めでたく
本日を迎える事ができました。

あとは 前を向いて進むだけです。

どうか よろしく お願い致します。
(一同)よろしく お願いします!

(拍手)

随分 お客様も お待ちです。
では 開店という事に。

(仁)うん。 母さん。

じゃあ みんなも いいね?
(一同)はい!

よし 行こう!

(一同)いらっしゃいませ!
お待たせしました!

いらっしゃいませ! 当店は
セルフサービス方式となっております。

お客様は 当店が用意した
おカゴを お取り下さいませ。

お買い物は
カゴの中に お入れ頂き

出口の勘定場で
まとめて お支払い下さいませ。

本日は 特別開店記念セールです!

♬~

昭和31年3月15日
長い準備期間の後

田倉商店は 当時 まだ数少ない
セルフサービスの店として

オープンに こぎ着けた。

成功するかどうか
予想もつかない賭けであった。

…が とうとう
ここまで来たという感慨が

おしんの胸を熱くしていた。

(禎)あっ こちらへ どうぞ!

(辰則)ちょっと すいません!
ちょっと 失礼します!

次郎君!
はい!

いらっしゃいませ! どうぞ
このカゴ お使い下さいませ!

いらっしゃいませ!
いらっしゃいませ!

子どもさんの入学ですね!
おめでとうございます!

(希望)初ちゃん イカ一丁あがり!
ありがとうございました!

奥さん 何に致しますか?
イワシ…。 ありがとうございます!

お代は
こちらでは 頂戴致しません。

あちらの勘定場の方で
よろしく お願い致します。

(辰則)ありがとうございました!
どうも! いらっしゃいませ!

恐れ入ります!
申し訳ございません お客様!

カゴは こちらへ お返し下さい。
このカゴ くれるんと違うの?

はい。 これは
店内で お使い頂く物ですから。

ありがとうございました!

(仁)特別開店記念セール!
市価の3割引き

市価の3割引きと
非常に お安くなっております!

これ お願いします!
はい! 母さん お願いしますよ!

いらっしゃいませ!
いらっしゃいませ!

田倉商店は セルフサービスで いい品物を
安く売る店でございます!

日用雑貨や食料品 衣類
何でも そろっております!

いらっしゃいませ!
いらっしゃいませ!

本日は 子ども服が
超特価 超特価と

非常に お安くなっております!

どうぞ お手に取って
ご覧下さいませ!

いらっしゃいませ!
いらっしゃいませ!

お客さん 申し訳ありません。

お買い上げになった品物は
当店が用意したカゴの方に…。

どこ入れようと
私の勝手やないか!

最後に ちゃんと 勘定場へ
差し出して 計算してもらえば

それでええのんと違うか?

どうも ありがとうございました。

お願いします!
はいよ!

川部さんたち帰っちゃったから
お夕飯 要らないって。

お疲れさま。
よく働いてくれたわね 禎ちゃん。

あんなに お客様が来て下さったら
ぼんやりしちゃいられないもん。

もう 夢中だった。

不思議ね。

ああいう雰囲気には いつの間にか
巻き込まれちゃうんだな。

なかなか 立派だったわよ。
「蛙の子は 蛙」。

禎ちゃんには やっぱり
母さんの血が流れてるのね。

しかたないよ。 開店記念セールの
3日間ぐらいは 手伝わなきゃ。

高い大学の学費
出してもらってるんだもん。

あっ みんな 何してるの?
お酒の支度 できてるのに。

売り上げ 調べてるんじゃないの?
お店が終わってからも

大変なんだって。
どんな商売も 楽じゃないね…。

砂糖 25個です。
(辰則)はい。

え~ これが店に出した商品
これが残っている商品です。

差し引いて
今日 売れた商品の数が これです。

売上金と売れた品物が
うまく合えば いいのね?

ええ。 でも なかなか
そうは いかないでしょう。

どんなに 気を付けたって
あれだけの混雑です。

万引きだって あるでしょうし…。

それにしても
ホントに よく売れたわね。

魚屋や八百屋 やってる時とは
まるで違うんだもの。

さあ みんな
そろそろ 夕御飯にしましょう。

(一同)はい!
はい 御苦労さまでした。

母さん 明日は もっと 魚の仕入
増やしてもいいかもしれないね。

だって 随分 早い時間に
売り切れたじゃないか。

客寄せの目玉だって言うからさ。

まあ もうけの全然ない
値段なんだよ。

いいじゃないか
それで お客さんが来てくれて。

セルフサービスの店っていうの
覚えてくれるんだったら。

ねえ それから 営業時間も
少し延ばしたら どうかな?

だって 閉店間際になってさ

勤め帰りらしい客
結構 来てくれただろ?

あと1時間も延ばしたら もっと
売り上げ 伸びたと思うよ。

「売れた 売れた」って 一体
どれだけ 利益があったかね。

なあ みんな 飯にしようぜ!
(一同)はい!

いくら 特別セールだって言ったって
あれだけの売り上げで

この もうけじゃ
何してんだか分かりゃしないよ。

これじゃ 銀行の借金の利息も
出やしないよ。

しかたないだろ。
最初の3日間は

利益 度外視してんだから。
でも そのあとはね

一部の目玉商品を残して ちゃんと
もうけのある商売にするから。

食べる物 食べなくったって
毎月 決まったお金を

銀行へ返さなきゃならないんだよ。
まあ 商売は 長い目で見て

「損して得取れ」って
言うじゃないか。

セルフサービスの店っていうのはね
「何でも安いぞ」って印象を

お客に植え付ける事が
肝心なんだから。 ねっ。

俺たちも寝ようか。
(辰則)はい。

じゃあ 明日も頑張りましょう。
どうも お疲れさまでした。

あっ 母さん
開店祝の花輪の中に

並木食料品店っての あったけど
並木さんって どういう人?

母さん?

昔ね 母さんが
随分 世話になった人なんだよ。

もし 今度の店が しくじったら
並木さんにも 迷惑かけるからね。

そんな事にでもなったら

母さん 死んだって
詫びをしきれやしない。

それだけは 覚えててちょうだい。

あっ 毎度!

おはようございます!

あっ おはようございます。
昨日は うちの開店で

ちょっと にぎわったもんですから
ご近所の皆さんにも さぞ

ご迷惑をおかけしたと思います。
いやいや それは お互いさまだ。

商店街が にぎわうのは
活気が出て 大変 結構なんで

それに文句をつける筋合いは
全くないんだが

ただ… お宅では 随分 値引きして
いらっしゃるようですな。

ああ。
あの~ セルフサービスというのは

市価よりも お安くして
お客様に ご奉仕するのが

建て前の方式でございますから。
それくらいね

私たちだって 承知してますよ。
しかしね この商店街は

共存共栄をモットーとして
これまで やってきたんですよ。

お宅だけが常識外れた
安売りをされたんじゃ

我々 まともに商売してきた者は
立つ瀬がないでしょ。

私たちは
田倉さんが セルフサービスの店に

転換されるっていうのを聞いて
非常に 期待もしとったし

新しい方式の店が
出来るってのは

この商店街のプラスにも
なるんじゃないかって

むしろ 歓迎しとったんですよ。

それを 昨日は 驚くって言うより
あきれてしまって…。

昨日は うちの台所用品も

鍋1個 茶わん1つ
売れませんでしたよ。

数十年 商売してるけど
こんな事 初めてですよ。

うちだってね 菓子の売り上げ
ガタッと落ちましたよ。

昨夜からね 随分
苦情が持ち込まれてんですよ。

で 我々 役員としても
ほっとけなくて。

自粛して頂きたいんですがな。

お互い
助け合ってやってかないと

自分で自分の首 絞める事に
なるんじゃないですか?

はあ。 お言葉を返すようですが
どんな物を いくらに売ろうが

お互いに
自由なんじゃないでしょうか。

母さん!

お客様のために
いい物を 少しでも安く売る。

これからの商売は
それを考えるのが

商人の務めだと思います。
私どもも

これからは その方針で
参るつもりでございますので

どうぞ 皆さんに その旨を
お伝え下さい。 田倉さん…。

どうも
御苦労さまでございました。

母さん! なにも
あの人たち 刺激するような事

言わなくてもいいだろ!
ここで 商売していく以上

商店街の人たちを
敵に回すような事になったら…。

きれい事なんか
言っちゃいられないよ!

商売は
食うか食われるかなんだよ!

この辺の商店街のお客を

みんな うちに取るぐらいの
心意気がなきゃ

この店を張った意味が
ないじゃないか!

そうですよ。
できるだけ 安く仕入れて

よそより 1円でも2円でも
安く売るのが

セルフサービス店の命なんです!

あんな事 言われてね
黙っちゃいられないよ!

安い品物を 数 売りゃ
立派な商売になるんだよ!

それで お客が喜んで下されば

この商売に切り替えた意味が
あるってもんだよ!

今日から
営業時間 午後7時までやるよ!

会社帰りの人に
買ってもらうために

お総菜やったら どうかね…。

キンピラゴボウとか ヒジキの煮たのとか
うの花とか 昆布巻きとか…。

そりゃ いいですね!
(仁)冗談じゃないよ お前!

今だって 人手 足りないのに
誰が作るんだよ? そんなの。

その気になったら 私と初ちゃんで
夜なべしてでも やるよ。

私だって 手伝いますよ!
(仁)辰!

このごろは 企業も人手不足で

主婦も
働きに出るようになったから

帰ってすぐ食べられる物は
きっと 重宝がられますよ。 ええ。

安売りへの商店街の反発は

むしろ
おしんの腹を決めさせていた。

「誰にも頼らず
田倉の商売をしよう」。

おしんの意地だったのである。

♬~
(テーマ音楽)

♬~

田倉商店の開店記念特別セールの
3日間は 無事 終わった。

(仁)みんな 疲れてるだろうが
今日は 残業になるぞ!

明日から 平常どおりの営業だ。

今日中に
値段をつけ直さないとな!

(おしん)値段 そのままでいいよ。
えっ?

もうしばらく
今のままで 辛抱しようよ。

うちの安売りを目当てに
電車やバスに乗っても

遠くから来て下さるお客様が
あるんだって。

この町だけなら 限度もあるしね。

そういう田舎から来るお客様を
お得意様に したいんだよ。

まあ しばらくね
損さえしなきゃいいと思って。

もうけの方は 魚と野菜と総菜で
なんとかするからさ。

総菜って
本気で そんなもの やるのかよ?

あ~ 売れる物は 何だってやるよ。

駄目だったら
やめればいいんだから!

そんな事まで しなくても…。

あ~ 何でも売れるのが
こういう店の よさなんだろ?

初ちゃんに もう
材料 買ってきてもらったんだ。

じゃあ 今夜から?
うん。 とりあえず 明日の分。

うんと 火を通して
長もちする総菜 作んなきゃね。

じゃあ 後 頼んだよ!

(辰則)すごい人だな 奥さんって!
何を考えてんだか…。

総菜ってのはな 手間がかかる割に
大して もうけにならないんだよ。

いや…
案外 伸びるかもしれませんよ。

このごろは
おかずも ろくに作れない

女房たちが増えてるそうだし
買うのは 共働きの女だけとは

限りませんからね。
出来上がったもんで

間に合わせてたら
女たち 家で 何やるんだよ?

さあ…。

おっ 補充するぞ!
(一同)はい!

初ちゃん お砂糖 お願い。
(初子)はいはい。

母さん 川部さんとこの子ども服
結構 出てるんだよ。

やっぱり
入学の時期 控えてるからかな?

川部さんとこの子ども服は
安いですよ。 確かに安い!

お客は よく知ってますよ。 けど
あれで もうけがあるんですかね。

いや もうけ頭だよ。
うちでは 一番 値の張る商品だろ。

ちゃんと もうけも
見込んであるんだよ。 なるほど。

そりゃ 細かい物 扱うより
ずっといいですね。

うん。 そういう時代に
総菜でもあるまいに…。

「塵も積もれば 山となる」。

このごろの若い奥さんはね
うの花とか ヒジキの煮方

知らないで お嫁に来てる人が
多いって言うからね

そういう お客様への
サービスのつもりだよ。

(禎)まだ そんな事やってるの?
母さんには あきれるよ。

あんな物 いくら こしらえて
何貫目 売ったところで

お前の1か月分の学費にも
ならないっていうのに。

これだって
少しは 赤字の足しになるさ。

セルフサービスだなんて
新しがってたって

所詮 普通の店と
変わりゃしないよ。

毎日 売れる物 置かなきゃ

商売 成り立ちゃ
しないんだからね。

おい 禎。
お前 明日 名古屋 帰るのか?

うん…。
いいな お前は のんきな身分でよ。

わざわざ 帰ってきて
一番 忙しい3日間

手伝ったんじゃない。
十分だよ それで!

ホントですよ。
禎さんが レジやって下さって

どんなに助かったか。
明日からは 私一人で

なんとか やってみますが
客が多くなったら

奥さんか初子さんにでも
入って頂かないと

1台だけでは どうも…。
(仁)いや 客が混んできたら

母さんや初ちゃんだって
売り場 忙しいだろ。

それじゃ やっぱり 次郎君か
征男君に 金銭登録機の使い方

覚えてもらわなきゃ
間に合いませんね。

(仁)いや 次郎と征男は
売り場 離れると困るんだよ。

だって お客は まだ
セルフサービスに慣れてないからな。

(辰則)そりゃ そうでしょうが…。

(仁)要するに
人手が足りないのか。

道子がいたらな
少しは 手伝えるんだけど

まだ 無理らしいんだよ。
いざとなったらね

初ちゃんに レジ 入ってもらうよ。
私 魚売り場 一人で十分だから。

いいよ。 私 もう少し レジ手伝う。
名古屋へは 帰らない。

禎…。
みんなが大変な時に

私一人 のんきに 学校へなんか
行ってられないじゃない。

あんたが そんな事
心配する事ないの。

いいって言われたって とっても
そんな気分になれないの!

私に 何かできる事あったら
やるわよ。

あんたは いいからね。
早く寝なさい。

手伝うと言ったら
何だって やっちゃうんだから。

私だって その気になったらね
母さんや初ちゃんには負けないの。

おいおい
どういう風の吹き回しだよ。

雪でも降るんじゃないのか!

こたえるのよね このヒジキの煮たの。

何貫目 売っても 私の ひとつきの
学費にも ならないなんてさ…。

高い月謝代や下宿
払ってもらってるのが

急に申し訳なくなっちゃった!

バカな事 言うんじゃないよ!
女だってね

いつか 立派に独り立ちしなきゃ
ならないんだから。

誰に 遠慮してんのよ!
さっさと 名古屋 帰んなさい!

(辰則)よいしょ。

(仁)お帰り!
(辰則)お帰りなさい!

はい ただいま!

母さん そろそろ
浜へ 魚を仕入れに行くの

やめたら どうかな?
市場の方が近いし ずっと楽だよ。

市場だったら
俺が行ってもいいし。

浜でね 魚の船から
直接 仕入れるから

よそより いくらか
安く売れるんじゃないか。

第一 生きがいいしさ!
でも 母さん もう年だよ。

これからはね ほかの商品に 力を
置くようにして 魚とか野菜は

少しずつ 減らしていった方が
いいんじゃないのか。

そりゃ ほかの物で
商売ができれば 言う事ないよ。

でもね まだまだ 魚と野菜で 少し
もうけがあるぐらいなんだから

もう一ふんばりも
二ふんばりも しなきゃね!

よし!
(辰則)お願いします! おっ!

はいよ!

50目のが1つ売れたら

いくらぐらい
もうけがあるのかな?

さあ…。 母さんが原価計算をして
値を お決めになったから。

どんなに高く売ったって
たかが知れてるわよね。

こんなに 手をかけてさ。

お金もうけって
本当に大変なんだな。

私ね 生まれて初めて
商売 手伝ったでしょ。

今まで
商売なんか 何にも知らないで

学校 行ってたんだから
分かるはずもなかったけど

いろいろ手伝って やっと
商売の難しさが 身にしみた。

母さんや 初ちゃんや
お兄ちゃんが

どんなに苦労してるかもね。

でもね つらいだけじゃないのよ。
苦労したら 苦労しただけ

お客様が喜んで買って下さる時は
うれしさも大きいし

それで
お金もうけができるんだったら

苦労なんて 忘れてしまうの。

そりゃ 苦労しても
うまくいかない時もあるし

いつも 不安と隣り合わせだけど

それが
商売の面白さじゃないかしらね。

(戸が開く音)
あっ お帰りなさい!

禎 何してんの?

どうしても手伝うって
聞かないんですよ。

うの花も ヒジキも おいしい!

まさしく 母さんの味だね。

きっと売れるよ。 売れるといいね。

(次郎)いらっしゃいませ!
どうぞ カゴ お使い下さい。

毎度 ありがとうございます!
いらっしゃいませ!

はい うの花のお客様
ありがとうございました!

ヒジキ100目 下さい。
ヒジキですね!
はい ありがとうございます!

こちらですね。
ちょっと 合わせてみましょうね。

あっ ちょうどいいかな。 ねえ。

(禎)あっ お客様
今日から お総菜 始めました。

うちの手作りです。
是非 お試し下さい!

はい いらっしゃいませ!

♬~

いらっしゃいませ どうぞ!
あっ こんにちは!

まあ! (仙造)ハハハハ!
どうも どうも!

いらっしゃいませ!
いや~ 3日間 大変でしたね!

しかし この盛況で
何よりでしたな!

おかげさまで 売り上げだけは。

いやいや。 もう それで結構。
1年間は 赤字を覚悟の上で…。

信用さえできりゃ
あとは 何とでもなりますからね。

いや~ いろいろと
お世話になりました。

なんとか 店をやっていく
めども立ちました。

うちの製品も健闘しとるそうじゃ
ないか。 うちも助かったんだよ。

実はね 正直 言いますとね
ここに入れてる製品はですね

東京と大阪の一流店で売れ残って
返品されてきた物なんですよ。

うちでも
持て余してた物なんですがね

ここに置いてもらって
助かりました。

そういう事だったんですか。

いえね
あんまり お値段が お安いんで

「こりゃ どうなってんだろ?」って
みんなで話してたんですよ。

あんまり 大きな声じゃ
言えませんがね。 もうそろそろ

うちの荷物のトラックが着く頃だね。
うちはね 原価さえ取れりゃ

御の字なんですから。 あとは
こちらで せいぜい サービスして

どんどん安く売ってくれたまえよ。
いろいろ ご配慮頂きまして…。

いやいや ありがたいのは
うちの方でございます。

ただね 道子が

開店の一番忙しい時に
あんなふうになってしまったんで。

いや しかたがありませんよ
今 一番大切な時期なんですから。

うちで もし預かってたら
何もしてやれませんでした。

私も 安心して働けました。
ありがとうございました。

でも もうそろそろ…。
はい。 それがですね

5か月に入るまでは
医者が危ないと申しましてね。

何か 3か月4か月が
一番 流産しやすい時だそうで…。

勝手ですが もうしばらく。
あ…。

よろしく お願いします!

「うちの事は 心配 要らないから
十分 養生するように」って。

今の若い娘は
甘やかされて 育ってるから

意気地がないったら
ありゃしないよ!

私たちの時にはね お産の時

ゆっくり
寝てなんていられなかったよ。

母さん
昔の事 言っちゃいけないの!

今は 時代が違うんだから。
そういう事 言うから

嫌われるんだよ。 お代わり。
はい。

今も昔もね 女の体なんて
何にも変わっちゃいないんだよ。

ぜいたくに慣れちまって
こらえ性が無くなってるんだよ。

いいじゃないの。
道子さんが いなくたって

なんとか
みんなで やっていけるんだもん。

気を遣わないでいいだけ
のんきだしさ。

道子さんの分 私が頑張るわよ!

今夜も
お総菜 こしらえるんでしょ?

今日の分 お昼前に
みんな 売れちゃったもんね。

ホント あっという間でしたね。

うの花をこしらえる人
いなくなっちゃったのよ きっと。

手が かかるんですものね。

ねえ 母さん もっと
いろんな物 作ってみたら?

キンピラゴボウだって
ニシンの昆布巻きだって

卵のだし巻きだって

母さんが こしらえるのは
おいしいもん!

ガンモドキだって
母さんの手作りなようなのは

どこにも売ってないよ。
へえ!

禎に褒められたの
生まれて初めてだね。

今まで 母さんのそばにいた時は
気付かなかったの。

名古屋へ下宿して
つくづく 思い知りました。

じゃあ うちを出たのも
無駄じゃなかったね。

だから 母さんの得意な物を
こしらえて 売るのよ。

絶対 喜ばれると思う!
ねえ 私も手伝っていい?

私ね 商売は面白いなって
思うようになったの!

母さんと初ちゃんが
一生懸命 作った物が売れる。

私も ちょっぴり手伝った。

それが お金になって
どこかの誰かが食べてくれる。

何だか
ワクワクするような事じゃない?

禎。 あんた…。

4月10日ぐらいまでは
学校 休めるのよ。

私 精いっぱい頑張る!
お店のレジもやるからね!

ありがとうございました!
いらっしゃいませ!

あっ いらっしゃいませ!

子ども服ですか。 どうぞ。 今ね
こちらが はやってるんですよ。

あら まだ起きてたの。 みんなは?
禎も辰則も 寝たよ。

ビールでも飲もうか?
ああ。

初ちゃん
もうすぐ上がってくるから

久しぶりに 3人で。

母さん。 禎 案外
商売 向いてるかもしれないね。

生き生きして働いてるじゃないか。
物珍しいんだろ。

母さん。 禎と辰則
一緒にしたら どうかな?

辰則は なかなか できた男だよ。
俺はね あいつと 一生

一緒に商売していきたいんだよ。
禎と辰則が結婚してくれたら

辰則だって 田倉商店を
もり立ててくれるに違いないよ。

禎だって
よそへ 嫁になんかやるよりも

その方がいいに決まってる。

ずっと 田倉の人間で
いられるんだからね。

おしんは 耳を疑った。
思ってもみなかった事だけに

自分本位の考え方しかできない
仁の冷たい心をのぞいたようで

おしんは ふと恐ろしかった。