ドラマログテキストマイニング

テレビ番組(ドラマ)の字幕情報を対象に、テキストマイニングの研究をしておりますので、解析結果の公開をメインに関連グッズを交えた構成で記事にしてます。また、解析結果の信憑性が確認できるよう、解析用ソースも部分引用し掲載してあります。

おしん 一挙再放送 第43週・再起編 乙羽信子、田中好子、山下真司… ドラマの原作・キャスト・音楽など…

おしん 一挙再放送▽第43週・再起編』のテキストマイニング結果(キーワード出現数ベスト20&ワードクラウド

  1. 道子
  2. 希望
  3. 百合
  4. 初子
  5. 一緒
  6. 自分
  7. 田倉
  8. 気持
  9. 商売
  10. 同居
  11. 名古屋
  12. 女房
  13. 明日
  14. 川部
  15. 結婚
  16. 結婚式
  17. 今日
  18. 大事
  19. 今夜
  20. 作品

f:id:dramalog:20200202081704p:plain

おしん 一挙再放送▽第43週・再起編』のEPG情報(出典)&解析用ソース(見逃した方はネタバレ注意)

 

解析用ソースを読めば、番組内容の簡易チェックくらいはできるかもしれませんが…、やはり番組の面白さは映像や音声がなければ味わえません。ためしに、人気のVOD(ビデオオンデマンド)サービスで、見逃し番組を探してみてはいかがでしょうか?

無料で民放各局の動画視聴ができるTVerティーバー)!まずはココから!
民放公式テレビポータル「TVer(ティーバー)」

他にも、無料お試し期間のあるVODサービスが増えてますので、以下バナーから各社のラインナップを調べてみるといいかもしれませんね。

(本ページの情報は投稿日時時点のものです。最新の配信状況は Paravi サイトにてご確認ください。)

(詳細はFODプレミアム公式ホームページにてご確認ください。)

 

おしん 一挙再放送▽第43週・再起編[字]

主人公おしんの明治から昭和に至る激動の生涯を描き、国内のみならず世界各地で大きな感動を呼んだ1983年度連続テレビ小説。全297回を1年にわたりアンコール放送。

詳細情報
番組内容
おしん乙羽信子)は、店を大きくして、セルフサービス方式に切りかえ、新しい出発をすることを決心し、自力でその計画を着々と進めていた。もちろん、セルフサービス方式の店が成功するかどうか、昭和30年当時の日本にはまだ前例が少なかっただけに、大きな賭けであったし、不安も大きかった。しかし、新しい店よりも、もっとやっかいなことがおしんを悩ませていた。それは、息子の仁(山下真司)の結婚であった。
出演者
【出演】乙羽信子田中好子山下真司田中美佐子長門裕之,【語り】奈良岡朋子
原作・脚本
【作】橋田壽賀子
音楽
【音楽】坂田晃一

 

 


♬~
(テーマ音楽)

♬~

今までの店を大きくして
セルフサービス方式を採用し

新しい出発をする覚悟を決めた
おしん

自力で
その計画を 着々と進めていた。

もちろん 成功するかどうか

昭和30年当時の日本には
まだ 前例が少ないだけに

大きな賭けであったし
不安も大きかった。

…が 新しい店よりも
もっと やっかいな事が

おしんを悩ませていた。
息子 仁の結婚である。

(初子)お帰りなさい!
(おしん)あ~ ただいま。

仁は?
気分でも悪いんじゃないですか。

まだ 寝てんのかい?
あっ 私一人で大丈夫ですから

母さん
朝御飯 召し上がって下さい。

支度してあります。
また 何か 気に入らなくて

ふて寝でもしてんだろ。 情けない。
母さん。

仁ちゃんたちは 別居のつもりで
準備 進めてたのに

突然 母さんから
あんな事 言われたら やっぱり。

私は 別に
横車なんか押すつもりないよ。

店やってるとこへ 嫁に来て
別居したいって方が

間違ってるんじゃないのかい?
商家の嫁になったら

店の事も奥の事も 気を遣わなきゃ
やっていけやしない。

そのぐらい 川部さんだって
知らないはずないのに

父親が 若夫婦の住むうちを
用意するなんて

常識外れも いいとこだよ!
しかたがないんですよ。

このごろは 家って考え方は
通用しなくなって

結婚したら
夫婦は 独立するんですって。

別居する方が 当たり前に
なっちゃったんですよ。

世の中が どう変わろうと
うちは うちのやり方でいくよ。

それに 新しい店になったら
人手なんて いくら あったって

足りやしないんだから。
嫁さんだって

ちゃんと働いてもらわなきゃ
やっていけやしないんだからね。

それが 気に入らないんだったら

嫁になるのをやめるより
しかたないね。

(仁)初ちゃん 俺のも頼むよ。

腹 減って 寝てられや
しねえんだよ。 そうでしょ。

昨夜も食べないで
寝ちゃったんだもの。

仕事もしないのに
一人前に おなかは すくんだね。

(初子)母さん…。

着替えといで。 寝巻きで
御飯は 食べさせやしないよ。

はい。

母さん。 俺 道子の事 諦めたよ。

母さんの強情には 負けたよ。

店や母さん 捨ててまで
道子と一緒になってもな…。

道子は それでいいだろうけど
俺 母さんに 縁 切られたら

川部の婿にでもならなきゃ
食っていけないもん。

それだけは
勘弁してほしいんだよ。

まあ 同居してくれる
働き者の女でも探すさ。

仁ちゃん?
男のくせに 情けないね!

ホントに 一緒になりたかったら

道子さんに 同居させるぐらいの
意地を持ちなさいよ!

俺 もう 面倒くさい事
たくさんなんだよ!

だって 最初から
母さんと川部とは

意見が食い違ってたじゃないか。
親同士が これじゃね

俺たちが結婚したって
うまくいく道理がないんだよ。

間に入って 疲れるの
俺たちだもん。

それだったら
いっそ 御破算にした方が…。

別に 川部の親父さんに
助けてもらわなくても

新しい店をやる
めども ついたんだし!

これで いいんだよ!
これで! ねっ!

(次郎)おはようございます!

あっ おはよう。 御苦労さん。
今日も一日 よろしくね。

はい! あの~ 川部さんが
お見えになってますが…。

大変! こちら お通ししますか?
だったら 片づけなくちゃ…。

ちょっと お店で待っててもらって
「すぐ行きますから」って。 はい。

何しに見えたんでしょうね。
どうせ 文句 言いに来たんだろ。

母さん
俺 出かけたって言っといてよ。

適当に頼むよ。 ねっ。

(仙造)あっ 今ね
普請場の方 拝見しました。

うん。 順調な運びのようですな。

おかげさまで。
どうも 朝早くから お伺いして…。

こういう事は 早い方がいいと
思ったもんですからね 少しでも。

道子。 道子 何してるんだ?

(道子)おはようございます。
道子さんまで わざわざ…。

昨日は 失礼致しました。

いいえ。
こちらこそ お呼び立てして…。

その事について お返事を 早速
差し上げようと思いましてね。

いや 昨夜はね
一騒動あったんですよ。

お父さん…。
ハハハハ! 仁君は?

はあ…。
今 ちょっと出かけておりまして。

いないんですか?

お母さんに
お話しすればいいじゃないか。

じゃあ とにかく 奥へ。
はい!

大事な お嬢様です。

そちらにも いろいろ
ご希望が おありと存じますが

私どもには 私どもの都合が
ございまして

昨日 道子さんに
同居の事を お願い致しました。

随分 勝手な言い分と
ご立腹と思いますが

何しろ これから 新しい店を
やっていかなければならない

大事な時でございますから

家族みんなが それぞれの立場で
助け合っていかなければ…。

全く同感ですね。 奥さんの
おっしゃるとおりだと思いますよ。

近頃の若い者っていうのはね

なんとかして
楽をしようとしたがりますね。

私も親バカですしね つい
娘の言う事に乗せられまして…。

というのは 実は 私も 女房に
姑の苦労をさせとるんですね。

私の おふくろっていうのは
実に しっかり者でしてね

嫁に来たばかりの女房は
毎日 泣き通しでした。

まあ そういう苦い体験が
あるもんですから

女房も
「別居 別居」って うるさいし

私も ほら
おふくろと女房の間に立って

嫌な思いをした事が
忘れられなくて ついね。

私たちの年代って みんな
同じような思いをしてるんですね。

いや 実は 私も

姑には 死ぬような つらい思いを
させられました。

ほう。 奥さんもですか?
ええ。 ですから 自分の娘には

姑と一緒に暮らさないような所へ
嫁にやりたいと思っております。

その私が 自分の息子の嫁には
一緒に暮らせって

言ってるんですから
随分 虫のいい話です。

でも 商売をやっておりますと
やっぱり…。

そりゃ よく分かります。

娘も 仁君と一緒になりたかったら
同居しなければ

その資格がないんだという事が
はっきり分かったようです。

もちろん 私も女房も
異存は ございません。

では…。
(仙造)はい!

わがまま いっぱいに育てた
娘なんです。

とても お気に入るとは
思えません。

毎日 顔を突き合わせていれば
きっと

お腹立ちになる事もあるでしょう。
しかし そこのところは

まあ ひとつ
大目に見て頂いて…。

ホントに同居して下さるんでしたら

私は もう 道子さんの
そのお気持ちだけで…。

親御さんが
丹精込めて お育てになった

大事な お嬢様を頂戴するのです。
粗末に扱っては 罰が当たります。

それに 私が
姑から受けた仕打ちだけは

誰にも してはならないと
肝に銘じておりますから。

奥さんが 姑の苦労をなすった
お方であったら

逆の つらい嫁の立場も よく
お分かりになってる事と思います。

私も安心して 道子を
こちらに差し上げる事ができます。

ふつつかな娘ですが
末永く よろしくお願い致します。

ありがとうございます。

思いがけない お返事を頂いて
私も 肩の荷が下りました。

はい。

仁ちゃん 川部のお父さんと
道子さんが見えて

同居の条件 のむって。

あっ 仁ちゃん あなた
いないって事になってるの。

あっ そうだった。
窓から 屋根へ出て

工事の骨組み 伝わって下りたら?
靴 持ってきてあげる。

ありがとう。

私も これで ほっとしました。

こうしましょう。
え~ それではですね

若夫婦の部屋は できるだけ早く
仕上げて頂いてですね

新しい店が オープンする前に
結婚式も披露宴も済ませて

ここで暮らせるというような形に。
はい。

仁が帰りましたら
早速 相談致しまして…。
はい。

(仁)ただいま!
お~ 帰ってきた。

あっ
お父さん いらしてたんですか。

朝早くから 何事ですか?

(仙造)うん。 いや 実は あの
同居の件なんだけどね

昨夜 家族みんなで相談してね
結局は まあ あの…。

洋風にするか 和風にするかは
君の自由だよ。

注文があったら
どんどん 出せばいいんだ。

ここは 君のお城なんだから。

とうとう ここで暮らす事に
なっちゃったのか…。

よく 決心してくれたね。
自分でも あきれてる。

やっぱり 仁の事
愛してたのかもしれないね。

大事にしてくれないと
罰 当たるからね。
ああ。

赤の他人ばっかりの中で 私が
頼りにできるのは 仁だけなのよ。

分かってる。
かばってくれなかったら

すぐ うちへ帰っちゃおうかな。
大丈夫だよ。

おふくろだって 初ちゃんだって
悪い女じゃないんだよ。

嫁いびりなんて柄じゃ
ないんだから 心配するなって。

いいの。 いじめられたら
私だって負けちゃいないから。

嫁さんが めそめそ
泣いてるなんて時代は

とっくに終わったのよ。

それじゃ 私は 野菜の仕入れが
まだ 残っておりますので…。

どうぞ ごゆっくり。
(仙造)あっ お母さん。

いや もう一つだけ。 私も
そう 度々 来られませんのでね

早く決めておかないと
会場の手配や何かがね…。

あの~ 結婚式や披露宴の事
考えていらっしゃいますか?

いいえ。
とっても まだ そこまでは。

何しろ 新しいお店の工事に

費用が かかるもんですから
ごく内輪に…。

それに お招きする方も
あんまり ありませんから。

いやいや だから 式や披露宴の
掛かりぐらいの方は

うちで持たせて頂きますよ。

とにかく 私のとこは 何やかやと
つきあいが多いもんですからね

簡単という訳には…。

まあ そちらさんは 事業も大きく
やってらっしゃいますから

お顔も
お広くいらっしゃいますけど

でも 道子さんは 私どもに
頂戴した お嬢様ですから

私どもで支度をさせて頂くのが
筋だと思いますが…。

よ~く分かっております。
その上で ひとつ

我々の体面の方も
立てて頂いてですね…。

(仁)母さん。 俺たちの部屋にね

小さい炊事場 作ってもらうように
設計士さんに頼んどいたよ。

ちょっと
何か こしらえたい時にさ

いちいち ここまで下りてくるの
大変だもん。 ねっ。

あのね 今 お母さんに
式の方の話をしといた。

(仁)あっ 道子から聞きました。
名古屋で挙げる事に決まったって。

(道子)私の友達も
みんな 名古屋なのよ。

こんなとこまで来てもらうの
大変だし

第一 この町じゃ

お招きするお客様が みんな入る
会場がないんだもんね。

うん。 うちは
名古屋でも構わないよね。

いや 別にね 出席してもらう
親戚がいる訳じゃないし

この町の人たちだって
まだ 親しい人

いないんですよ
結婚式に呼ぶほど。

お父さんと道子の都合のいい所で
構いません。

(仙造)あっ そう。
そりゃ どうも。 母さん?

いや あのね 何か 野菜の仕入れに
行かれるとかって。 ああ…。

お父さん おなか すいた~。
仁も 朝御飯 まだなんだって。

ねえ どっか おいしいとこ
連れてって!

母さん。 とうとう 朝御飯
食べそびれちゃいましたね。

おむすび。 途中で。
ありがとう。

他人同士が一緒になるって
大変なんですね やっぱり…。

♬~

♬~
(テーマ音楽)

♬~

昭和30年の12月
紆余曲折の末 ようやく

おしんの次男 仁の結婚式が
行われる事になった。

(希望)母さん。
(おしん)お帰り。

この度は おめでとうございます。
いよいよ 明日だね。

仁 もう 名古屋だって?

「明日の支度があるから
今日中に行ってる」って。

ついててやらなくていいの?
母さん。

道子さんの方で
面倒 見てくれるそうだからね。

父さんが生きてらしたら
さぞ 喜ばれたろうな。

父さんが お元気だったら

こんなバカな結婚式
挙げたりしないよ。

母さん…。

でも 名古屋で結婚式っていうの
意外だったね。

みんな 女房や女房の両親たちの
言いなりになって

だらしがないったら
ありゃしないよ。

いちいち 反対するのも
アホらしくなっちゃってね

本人が その気なら
それで いい事だから。

そうだよ。
肝心要のとこさえ 押さえとけば。

同居は 母さんの意見を
通したっていうじゃないの。

それでいいんだよ。 結婚式なんて
どうでもいいんだから。

まあ そうとでも思わなきゃね。

(禎)希望兄ちゃん
お風呂へ入って下さいって。

禎ちゃん
すっかり 大人になっちゃって!

大学生だもんな。 もう 冬休み?

明日 仁兄ちゃんのお式が
済んだら

名古屋の下宿へ帰って
すぐ スキーに行くの。

いいご身分だね。
今のうちに遊んどかないと

結婚して 母さんみたいな
お姑さんがいたら

絶対 スキーなんか行けないもんね~。
お前まで 母さん バカにして!

母さん。 道子さんに
嫌われないようにしなさいよ。

今 同居してくれる
お嫁さんなんて

どこ探したって
いないんですからね。

いびったりしたら
すぐ 出てっちゃうわよ。

やれやれ 姑っていうと
こんな子どもにまで

嫌われてしまって…。 世の中
一体 どうなってんだろうね。

母さんたちの若い頃は

姑さんっていうと もう絶対的で
口答えどころか

自分の考えてる事だって
言えやしなかったもん。

そういう家族制度の因習を
打破しなきゃ

女の自由平等は 勝ち取れないの。
これじゃ 母さんも苦労するね。

戦後の若い女は みんな
こういう教育を受けて

大きくなったんだから。
冗談じゃないわよ!

母さんたちは 黙って
お姑さんに仕えてきたんだもの。

今度 母さんたちが姑になったら

嫁の御機嫌 とらないと
一緒に暮らせないなんて

そんな引き合わない話って
あるもんかね!

そういう時代に
なっちゃったんだから。

母さんたちは
不運な世代って訳。

道子さんは 偉いわよ。
ありがたいと思いなさい 母さん。

私は 絶対 姑のいる所へには
お嫁には行かない!

どんな大金持ちだって ごめんだ!

初ちゃん ご祝儀用の のし袋
20枚もあったら 足りるかしら?

(初子)
思いがけない人に チップあげなきゃ
ならなかったりしますからね。

あっ 新しいお札
銀行で換えときました。

結婚式のご祝儀が汚いお札じゃね。

ありがとう。
そこまでは 気が付かなかったわ。

初ちゃんみたいに よく
気の付く人と一緒に暮らしたら

仁の嫁さんは かわいそうだね。
年中 初ちゃんと比べられて。

誰が来たって
初ちゃんみたいな人 いないわよ。

母さんだって
そのぐらい 心得てますよ。

今は もう 母さんの気に入る
女の人なんて いませんよ!

そのつもりで!
覚悟してます。

最初から諦めてれば
腹も立たないだろうしね。

せめて 百合ちゃんと
一緒になってくれてたら

田倉家も 平穏無事…。
母さん!

はいはい!
もう 何にも言いません!

同居してくれる お嫁さんに
ありがたいと思って

まあ 母さんも せいぜい
小さくなってましょ! はい!

♬~

禎ちゃん!
(禎)はい!

仁の嫁には
おしんなりの夢もあった。

道子は おしんにとって
不本意な嫁だったのである。

それでも 結婚式は 無事に済み

仁と道子は スキーを兼ねて

北海道へ
新婚旅行に たっていった。

(百合)お帰りなさい!
ただいま!

田倉の皆さん…。
変わりないよ。

よかったですね!
奥様も安心なさったでしょ。

盛大な結婚式だったけど
ほとんどが 嫁さんの招待客でね。

あれじゃ 母さんも
面白くなかったんじゃないのかな。

金持ちの娘 もらうのも
苦労だな あれじゃ…。

でも 仁坊ちゃまには
ふさわしい方が

いらしたんですから。
百合ちゃん…。

あっ 私 もう何でもありません。

仁坊ちゃまが 気に入った方と
結婚なさって ほっとしました。

あっ 先生が 希望さんのお帰り
お待ちでした。

(栄造)今度の窯に

君の作品も 少し入れてみたいと
思ってるんだよ。

今までは 私が注文した品ばかり
作ってもらってきたんだがな

今度は 君自身の作品として
君の物を こしらえるんだ。

無論 君の名前を入れる。

いい物が出来たら 春の展覧会へ
出品してもいいと思ってる。

まだ 少し早いかとも思うんだが
まっ 一応の修業は 積んだんだ。

あとは 個人の才能が ものを言う。

この辺で ひとつ挑戦してみるのも
いいんじゃないかな。

ありがとうございます!

ただし いい物が出来なかったら
窯に入れる訳には いかんぞ。

はい!

♬~

予定の新婚旅行を終えて
仁夫婦が田倉の家へ帰る日が来

田倉家には 新しい暮らしが
始まろうとしていた。

(初子)まあ きれい!

今日は 新婚旅行から
帰ってくるからね

せめて お花ぐらい
飾っといてやらないと。

今夜は 御馳走 こしらえて…。
あっ そうだね!

うちで過ごす最初の夜だからね。
道子さんも

明日から ここのうちの人間として
働いてもらわなきゃならないから。

新しい店を開くまでは

私も まだ 奥の事をする
暇ぐらいは ありますよ。

初ちゃん
道子は このうちの主婦なんだよ。

奥の仕事は 道子に任せて…。

それが
けじめってもんなんだから。

初ちゃんは 今まで
ホントに よくやってくれた。

これからは 少し
楽をしてもらわなきゃ。 ねっ。

はあ…。 仁たち 遅いね。

夕方には帰るって
言ってたんですけどね…。

仁ちゃんたち 疲れて
帰ってくるだろうと思って

すぐ お風呂 入れるように
沸かしてあるんですよ。

母さん 先に お入りになったら?

今夜は 特別だからね。 やっぱり
あの子たち 一番に入れてやろう。

夕御飯も 2人 帰ってくるまで
待ってようよ。

でも おなか
すいてらっしゃるでしょ?

せっかくの御馳走だもの
みんな一緒に食べたいよ。

あの子たちのために
こしらえてやったんだもの。

今日は いいタイもあったし
伊勢エビもアワビも生き作りにして

お祝いだから
張り込んだんですよ! ほら!

あ~ 見事だね!

初ちゃんの包丁は
玄人はだしだよ!

道子さんには
珍しくないでしょうけど

せめて 私たちの気持ちだけでも
分かってもらえたらと思って…。

道子さんとは
これから 一生のおつきあいに

なるんですものね。
初ちゃん…。

道子さんと仲良くして
追い出されないようにしなくちゃ。

バカな事 言うんじゃないよ!
初ちゃんは 田倉の娘なんだよ!

道子の顔色なんか うかがって
暮らす事ないんだから!

母さん。

あっ ちょうど 今 着く電車が
あるんですよ。

それかもしれませんね。

☎ 私 出ます。
そう。

はい もしもし 田倉でございます。

何だ 仁ちゃん? お帰りなさい!

今 駅? 荷物があるんなら
迎えに行きましょうか?

何だ まだ 名古屋なの?

ええ。 ええ。 あっ ちょっと待って
母さんに代わるから。 はい。

仁ちゃん。

もしもし 仁? もしもし…。

何だ 切れてるわ。 何だって?

「今夜は 道子さんとこ 泊まって
明日 帰るから」って。

そんなバカな! ちょっと あの

川部さんの電話番号
調べてちょうだい! 母さん…。

今からでも すぐ帰るように
言ってやるから!

新婚旅行の帰りに
女房の里へ 先に寄って

挨拶するって法は ないだろ!
いいじゃありませんか。

途中だから 寄ったんですよ。
明日 帰るって言ってるんだし

今夜は 無理ですよ もう。
最終だったら まだ 間に合うよ。

母さん!
そんな事で 腹 立てたって

どっちへ 先に行こうが
いいじゃありませんか!

よくありませんよ!
初ちゃんだって こんなに

気を遣ってやってくれてんのに
何もかも ふいになるじゃないの!

お刺身だって もう明日になったら
食べられやしないのよ!

さあ 御飯にしましょ 母さん!

一本 つけましょうか!
久しぶりに 生き作りで 一杯!

お客様には出しても
私たちの口に入る事なんか

めったに ありゃしないんだから
こんな時でもないと!

初ちゃん…。

母さん。 道子さんは 私たちと
年も育ち方も違うんですよ。

別に 悪いと思って
してる訳じゃないんですから…。

だって 仁が ついてんだよ!

それに あちらの父親だって
母親だって いるんだから!

みんな 非常識すぎますよ!
母さん。

どっちに 先に行こうが

そんな事 もう どうでもいい事に
なっちゃったんですよ。

怒る方が
間違ってるのかもしれないし…。

これからだって
考え方の違いによって

腹の立つ事だって
あると思うんです。

でも その度に カッカしてたんじゃ

とっても 一緒になんか
暮らせませんよ!

それは 母さんが
一番よく知ってるはずでしょ!

さあ 機嫌 直して!

(初子)あっ お帰りなさい!
(仁)ただいま!

母さん ただいま!
(道子)ただいま 帰りました。

部屋へ 荷物 置いて 着替えてから
ゆっくり ご挨拶しましょ。

ああ。

道子さん。 その前に ちょっと
話しておきたい事があるの。

何だよ。 そんな急がなくても 後で
ゆっくり 話せばいいじゃないか。

今 あなた このうちの敷居を
またいだ時から

田倉の人間になったのよ。
私の言う事を聞いてもらいます。

母さん…。
奥で待っててちょうだい。

何だよ? 話って。

おしんと道子の仲は

同居が始まろうとしている
その日から

険悪なものが生まれ始めていた。

♬~
(テーマ音楽)

♬~

(初子)母さん 道子さんが来る早々
波風 立てるような事だけは…。

ねっ 母さん。 母さん。

(おしん)道子さん あなた もう
お客様じゃないんですからね。

お茶でも いれて
飲んでればいいのに…。

仁だって 飲みたいだろうに。
(仁)俺は いいよ。

新婚旅行は どうだった?
ああ 楽しかった。

お土産 買ってあるよ。
初ちゃんにも。

トランクに入れてあるから
後で ゆっくり。

疲れたでしょ?

ああ…。
道子が疲れたって言うからね

名古屋で 一晩 ゆっくり
休んだ方がいいと思ってさ。

ここじゃ
ゆっくり 休めないもんな。

昨夜 初ちゃんが 御馳走 作って
待っててくれたのよ。

そりゃ 悪かったね 初ちゃん。
いいのよ。

私が 勝手に 昨夜 帰るって
思い込んでたんだから。

道子さん 本当はね

この お茶 もう あなたが
いれなきゃいけないのよ。

今日から 奥の事は
あなたの仕事なんですからね。

今までは このうちの家事は

ほとんど 初ちゃんが
やっててくれたの。

でも 道子さんが来て下すったら

これから
道子さんがやって下さるのが

筋ってもんでしょ?
初ちゃんに よく聞いて

一日も早く このうちの事を
引き継いで下さいね。

(道子)じゃあ 初子さん
何をなさるんですか?

初ちゃんには
お店を やってもらいます。

新しい店になったら
金銭登録機を扱う人も必要だし

そっちの方の勉強をやって
もらわなきゃならないからね。

私が 店に出て

初子さんには 今までどおり
家事の方 やって頂いた方が…。

初子さん 慣れておいでだし…。
そうだよ 母さん。

いや 川部のお母さんもね
道子には 家事を

一切させてこなかったからって
心配しておられたんだよ。

だから うちには 初ちゃんがいて
何もかも やってくれるから

大丈夫ですって言っといた。
ねえ 初ちゃん それでいいよね?

初ちゃんは お手伝いさんじゃ
ないんだよ。
母さん 私の事は…。

道子さん あなたは
このうちの主婦ですからね。

炊事 洗濯 掃除 一切 任せます。

もちろん 決められた生活費も
お渡しします。

それで うまく やりくりするのも
主婦の務めですからね。

最初から うまくやれるとは
思ってませんよ。

毎日やってるうちに
うまくもなるし 手早くもなる。

自分でやろうと思わなきゃ
いつまで たっても

一人前には なれませんからね。
けどね 母さん…。

あんたは 黙ってらっしゃい!
男が口出しする事じゃないの!

そうね。 まず 初ちゃんが

一日の家事を
どう 切り回してるか

初ちゃんから
詳しく話してあげてちょうだい。

それから
どこに 何が置いてあるか

大体 今まで 一日の食費で
どのくらいの暮らしをしてたか。

でもね なにも そのとおり
やれって言ってるんじゃないのよ。

それを 一応 参考にして

道子さんのやり方で
考えてほしいの。

じゃあ 今日から 早速ね!

ほら あんたも 早く着替えて
店へ出てほしいのよ。

今日はね 30人前のお刺身と

焼き魚の仕出しを受けてんだから
そろそろ 始めないと。

じゃあ よろしく お願いしますね。

母さん なにも 今日 あんな事
おっしゃらなくったって…。

だって いつか
言わなきゃならないんだったら

初めに
きちんと言った方がいいのよ。

その方が 道子さんだって
心構えができるだろうし。

でも…。
そりゃね

私だって
優しい顔は していたいわよ。

でも 言う事は 言っとかなきゃ。
道子さんだって このうちで

何を どうしていいか
分かりゃしないじゃないの。

お~!
結構 住みよくなったじゃないか。

きれいに掃除してあるし
花まで生けてあるよ!

おふくろや初ちゃんだって
結構 気ぃ遣ってるんだよ。

帰りたいな うちへ…。

何 言ってんだよ。
ここが 道子のうちじゃないか。

こんなはずじゃなかったもん。
道子…。

結婚って 旦那様を
お勤めに送り出したら

あったかい暖炉で
のんびり レース編みでもして

旦那様の帰りを待ってる。

そういうイメージだったのにさ…。
お母さんの言うとおりしてたら

私 このうち お手伝いに来たのと
同じじゃないの。

今になって そんな事 言ってもな。

私 とっても この田倉の嫁なんて
務まりそうにないな…。

やってみなきゃ 分からないだろ。

初ちゃんだって
今まで やってきたんだよ。

初ちゃんにできて お前に
できないはずないじゃないか。

なあ 気楽にやればいいんだよ
気楽に。 なっ。

うん…。

アジの干物3枚でございますね!

毎度 ありがとうございました!
また どうぞ!

さて やるかな!
あ~ 道子さん。

ちょうど
お昼になったんだけどね

初ちゃん 仕出しで
手が離せないし

店の人と大工さんに
お茶をいれてあげてちょうだい。

母さん その話なんだけどね

道子 やっぱり 家事に
自信がないって言うんだよ。

奥の方は
初ちゃんに やってもらってさ

店の方を手伝いたいって
言うんだよ。 いいだろ?

何もやらないって言ってる訳じゃ
ないんだよ。 どっちか手伝えば。

道子さん あなた 魚 おろせる?
うちはね きれいな洋服を着て

ただ 物を売るって商売じゃ
ないのよ。

この寒い中で 水を使ったり
魚の うろこだらけになったり

おまけに 魚を作る腕がなきゃ
やっていけやしない。

それでも 店の事をやりたいって
言うんだったら

まあ ちょっと やってごらんよ。
(初子)母さん。

楽なように見えるでしょうけど
お水は 冷たいし

魚だって そう簡単に
おろせるもんじゃないのよ。

それも
1匹や2匹じゃないんだから。

道子さんには
こんな事させられないわ。

それより 奥の事の方が どれだけ
楽だか分かんないんだから。

店の事を手伝ってもらうなんて
こんな ありがたい事ないよね。

あっ いらっしゃいまし!
(初子 次郎)いらっしゃいませ!

はあ~
やれやれ やっと終わったわ。

お昼が遅くなっちゃって…。

道子さんも
おなか すいたでしょ?

あっ お昼 何していいのか
分かんなくて

まだ 支度してないんですけど…。

いいのよ。 仕出しの焼き魚
もらってきたから

御飯 冷たいけど お茶漬けで…。

しばらくは
奥の事も 私がやりますから

道子さんは それを見て
覚えてくれたらいいのよ。

なにも 慌てる事ないんだから。

朝はね 母さんが 6時に
浜へ 魚の仕入れに行くの。

朝御飯は
母さんが帰ってきてからだけど

お茶くらいは いれて
送り出してあげたいでしょ。

だから 少し前に起きて
お湯を沸かして…。

6時前に起きるんですか?
そうよ。

母さんが出かけて帰ってくる前に
掃除をして 洗濯をして

それから 朝御飯の支度もして…。
11時半になったら

お昼の支度をして
それから お夕飯は

お店があがってからだから
8時ぐらいになるわね。

それまでに
こしらえてくれたらいいのよ。

そんなに大変じゃないでしょ?

余った時間は 道子さんが
自由に使ってくれていいの。

慣れれば 結構 自分の時間だって
つくれるようになるわよ。

お母さんも 初子さん
そんなに働いてるんですか?

そうよ。
お店 やってたら これくらい!

魚屋と八百屋っていうのは
一番 大変な商売なの。

母さんなんて 仁ちゃんや
禎ちゃんが小さい頃は

赤ん坊 おぶって
お店 やってたんですもの。

今なんて
極楽みたいなもんだって。

道子さん?
はい?

心配する事ないの。 すぐ慣れるし
慣れたら 何でもなくなるのよ。

母さんだって
ホントは あったかい人なの。

理由もなく
怒ったりする人じゃないから。

はあ! 道子さん 待たせたわね。
新しい店になるからって

御用聞きは やめちゃったんだけど
注文が 結構あってね。

忙しい時は お昼が
3時 4時になってしまうのよ。

因果な商売だわね。

(仁)母さん
新しい店やるようになったら

もう 配達なんか
してられないからね。

注文も断る事になるよ。 もう
俺 仕出しなんて うんざりだよ。

今夜は 久しぶりに
お鍋でもしようか?
いいね。

道子さん 後でね
魚と野菜 持ってきとくから

下ごしらえだけ
しといてちょうだいね。

はい!

さあ 御飯にしましょ。 ねっ はい。

(次郎)どうも いらっしゃいませ!
ありがとうございました!

みんな お鍋の材料ですよ!
コチに タイに ハギ!

より取り見取り! 今日は
お安くなっておりますよ!

コチ もらっとこうか。
はい ありがとう存じます!

お客さん 鍋ですか? 野菜 豆腐
コンニャク こちらです。 どうぞ!

相変わらず
しっかり 商売してはるわ~。

はい ありがとうございました!
はい!

裏の方のも 今のうちに
入れといた方がいいよ。

そうですね 忘れないうちに。
お客さん 何切れに致しましょう?

道子さん? 道子さん!

よいしょ!

初ちゃん 部屋にも いないんだよ。
一体 どこ行ったんだろ?

仁ちゃん…。
道子さん ずっと様子が変だった。

まさか
家 出たんじゃないでしょうね。

えっ!?

♬~

電話なんか かける事ないよ。
里へ帰ってるんだったら

向こうから 連絡があるだろうし
もし 帰ってなかったら

川部さんに 余計な心配
かける事になるじゃないか。

もう少し 様子を見て…。

全く 何を考えてんだか。 俺にも
黙って 家 出ていくなんて…。

はい 田倉です。 あっ お父さん。

そうですか。 いや~ お騒がせして
申し訳ありませんでした。

いや 今夜は もう遅いですから
明日にでも。 ええ。 はい。

よろしく お願いします。 わざわざ
どうも すいませんでした。

どうも 失礼します。

(初子)仁ちゃん?
(仁)川部の親父さんからだよ。

道子 やっぱり うちに帰ってたよ。
(初子)どうして?

いや 親父さんもね まだ
訳を聞いてないらしいんだけど

とにかく うちで心配してると
いけないからというんで 電話を。

気に入らない事でも
あったのかしら。

私 随分 気を付けてたつもり
なんですけど…。

あきれたね。
新婚旅行から帰ってきて

半日も たたないのに
里へ帰っちまうんだからね。

きっと
他人の中へ 一人で入ってきて

俺 忙しくて ろくに 話し相手に
なってやらなかっただろ?

寂しかったんだよ きっと。

明日 迎えに行って
道子の気持ち よく聞いてみるよ。

バカも 休み休み言いなさい!
自分で勝手に出てった女を

男が頭を下げて 迎えに行くって
言うのかい?

そうとでもしなきゃ
帰ってこやしないよ。

帰ってきたくないって
言うんだったら

帰ってこなくたっていいよ!
母さん!

これから のるかそるかの商売を
しなきゃならない時に

自分の事しか考えられないような
嫁じゃ

とっても 田倉を
しょってなんかいけやしないよ!

もう たくさんだよ!
母さん!

♬~

あ~あ!

♬~

今まで 縁もゆかりもなかった
一人の娘を

家族として迎える事が
こんなにも大変なのかと

おしんは 情けなかった。

そんな小娘に振り回されて
オロオロしている仁が

おしんには
悔しく 腹立たしくもあった。

♬~
(テーマ音楽)

♬~

同居という おしんの条件をのんで
仁と結婚した道子が

新婚旅行から帰ってきて
半日も たたないうちに

仁にも黙って
実家へ帰ってしまった。

昭和30年も
間もなく暮れようとしている

忙しい師走の出来事であった。

♬~

(初子)何だか かわいそう…。

大騒ぎして やっと 道子さんと
一緒になれたっていうのに…。

明日 名古屋へ 道子さん
迎えに行かせてあげて下さい。

理由も分からないんじゃ

仁ちゃんだって
やりきれないでしょ。 母さん!

(おしん)道子は
自分から出ていったんだよ。

ここへ 戻る 戻らないは
別にして

理由は 向こうから言ってくるのが
本当だろ?

そりゃ
そうかもしれないですけど…。

でも
仁ちゃんの気持ちも察して…。

「身から出た錆」だよ。
自分が 田倉を

しょっていかなきゃならない
人間だって分かってたら

もう少し ましな娘を
見つけてくりゃいいのに…。

いくら 娘の父親が
商売の上で頼りになるからって

肝心の本人が あれじゃ
どうしようもないじゃないか。

でも 今更 別れるって訳には
いかないんですから…。

帰ってきたくないって
言うんだったら

別れるって事にもね。
母さん!

母さん。 うん?
今朝は 冷えますから

道が凍ってるかもしれませんよ。
気を付けて下さいね。

山形の冬に比べたら
伊勢なんて 極楽だわよ!

海の風が冷たいったって

日本海とは
比べ物になりゃしないからね。

(仁)
母さん。 俺 名古屋 行ってくるよ。
道子は 俺の女房だよ。

あいつが 勝手に飛び出すには
それなりの理由があるはずだし

それを聞いてやるのは
俺の責任だよ。

母さんに とやかく
指図される事じゃないからね。

じゃあ
なるべく早く帰ってくるから。

男のくせに情けない。
女房の尻 追っかけて…。

母さんが若い頃だったら 黙って
うちを出ていった女なんて

たちまち 離縁だわよ!

(戸が開く音)

(道子)おはようございます。
道子さん…。

昨日は ご心配かけて
すいませんでした。

お帰りなさい! 仁ちゃんも一緒?
いいえ。

あら 今朝 名古屋へ行ったのよ。

仁がですか?
そう。 多分 一番の電車よ。

じゃあ 行き違いに
なっちゃったのかしら…。

信じられないな
仁が迎えに来てくれるなんて…。

大事な大事な奥さんなんですもの
当然でしょ!

≪(トラックが止まる音)

川部さん…。
(仙造)あっ どうも どうも。

またまた 道子が お騒がせして
申し訳ございません!

父親として
ひと言 お詫びを申し上げに…。

やっぱり 親の教育が
なっとらんかったんですかね。

突然 帰ってまいりましてね

「私は 田倉の嫁は失格だから
結婚を解消したい」と

こう 言うんですよ。
まあ 道子が そう決めたんなら

しかたがないとは思うんですがね
よく聞いてみると

黙って こちらを出てきたって
言うもんですから…。

そんならば 向こう様へ行って

はっきり 自分の口から
説明すべきだと。

とにかく 今朝一番で
こちらの方へ。 どうも…。

申し訳ありません。
私は 仁さんが

田倉商店の後継ぎだという事を
承知で 結婚しました。

商人の女房になるのも
覚悟の上の事です。

だから 同居も
しかたのない事だと諦めました。

でも 新婚旅行から帰って すぐ

初子さんに 田倉の嫁としての
役割を伺いました。

私には とっても
務まりそうにありません。

お母さんや初子さん

私には 信じられないくらい
よく働いておいでになります。

そんな お母さんや初子さん
そばにいたら

私が どんなに努力しても

気に入って頂ける道理が
ありません。

一緒に暮らして

お互いに イライラしたり
腹を立てたりするより

駄目だと分かったら
いくら 仁さんの事が好きでも

思い切って 別れた方が
いいんじゃないかと…。

今になって 勝手な事をと
ご立腹でしょうけど

今にならなきゃ
分からない事でしたし

今 心を決めなきゃ
こちらの家庭も壊す事になり

私も 恐らく 傷つく事になると
思いましたので…。

田倉家には
田倉家の嫁に ふさわしい方が

いらっしゃるでしょうから…。

道子さんの おっしゃりたい事は
それだけ?

(仙造)今の若い者はね

何でも 自分中心のものの考え方を
するんですよね。

道子だって そうなんだ。 最初から
自分の都合ばっかり 言い立てて。

いや 私もね 最初は わがままだと
どなったんですがね。

しかし よく考えてみると

こんな かい性のない娘を
もらって頂いてもね

こちら様に 迷惑が
かかる事ばっかりであろうかと。

よく分かりました。 ただ
道子さんは 仁の事は どう…

仁の事は どう思って…?

好きです。 でも たとえ
どんなに愛し合っていても

私が お母さんの
お気に召さなかったら

きっと ケンカもするでしょうし

恨んだり 憎み合ったり
するような事だって…。

そしたら 何のために結婚したのか
分からないし…

それは
一番 つらい事ですから…。

仁の事を 大事に
思って下さるんでしたら それで。

それが 何より
肝心な事ですからね。

私は もう 何にも言いません。

これからは 道子さんのできる
範囲で やって下さればいいの。

道子さんは
田倉家の主婦なんですよ。

道子さんの田倉家を
こしらえていけばいいんですから。

今までどおりにする事はないのよ。

お掃除だって
1日置きにしたっていいし

おかずだって ぜいたくにしたって
質素にしたって

何時に寝ようが 何時に起きようが
あなたの自由なんですよ。

私たちが 今まで
ああしろ こうしろって

命令なんかしてたのは
間違ってたのかもしれないわね。

道子さんに 田倉家の切り盛りを
任せたんですから

私たちは
もう 一切 口出ししません!

それで いいのね?
お母さん…。

よかった
はっきり言ってもらって!

話してもらえなかったら

とんでもない間違いを
するとこでした。

いや 奥さん…
田倉さん それは 本気ですか?

お父さん 私たちの考えは
もう 通らない時代なんですよ。

よく分かりました それが!
はあ…。

じゃあ 私 着替えてきます。

あっ お父さん
もう 帰っていいわよ。

(おしんと初子の笑い声)

これですから…。 家内のしつけが
悪かったんですな きっと!

うちの娘だって 同じですよ!

うちの中で
いくら やかましく言っても

外へ出たら 激しく
世の中が変わってますからね。

いやね 「嫁に行ったら 先様の
家風に合わせるんだぞ」なんて

お説教しても
聞くもんじゃないですよ ありゃ。

私たちが 若い頃には

姑の言う事は もう絶対的で
逆らうなんて とんでもない。

ちょっと 意見を言うと
口答えしたって 叱られて…。

でも それが 当たり前だと
思ってたんですからね。

白いものを黒いって言われても
ただ 黙って従って…。

おかげで
随分 辛抱もしてきました。

でも 辛抱する事が立派な事だと
思い込んでたんですから。

そうですか。 奥さんも やっぱり
できない苦労 なさった口ですか。

それだけは もう
懲りてたはずですのに

嫁には 自分のしてきた事を
押しつけてるんですからね。

今の若い人たち

嫌な事を嫌だって はっきり
言えるようになったのは

いい時代に
なったのかもしれませんね。

言いたい事も言えずに
ただ 辛抱して

陰で めそめそ泣いたりするのは
私たちで もう たくさん!

あんな思いは誰にもさせたくない。
させちゃいけないんですよ。

道子さんには 道子さんらしく
伸び伸びとした家風を

こしらえて下されば
それでいいと思っています。

奥さん…。

嫁の事を とやかく言う前に

私は 店の事を考える方が
先でした!

♬~

(ドアが開く音)
(道子)お帰りなさい!

お前 よく そんな
のんきな顔してられるな!

人の気も知らないで!

仁 ありがとう!

私の事
迎えに来てくれたんだってね!

感激した!

その気持ちだけで
私 ここで やっていける。

道子…。

私ね いいお嫁さんになろうなんて
思わない事にしたの。

いくら お母さんに叱られても

できない事は できないって
はっきり言う事にした。

背伸びしたら
とっても続かないもんね。

まあ できるだけの事やって…。

それで 追い出されたら
しかたがないじゃない。

マイペースで カタツムリみたいに
やっていく。

おなか すいたでしょ?

御飯 冷たいから
チャーハンにしてあげようか?
ああ。

そのくらいだったら できるんだ!

やがて 猫の手も借りたい年末の
忙しさも なんとか終わって

晦日の店を閉めると 仁と道子は
さっさと スキーに出かけてしまい

田倉家は おしんと初子だけの
元旦を迎えた。

嫁をもらって 仁も落ち着いて
今年は 家族そろって

にぎやかなお正月が
迎えられると思ったのに…。

しかたありませんよ。
若い人たち

お正月休みのスキーが楽しみで
働いてるんですから。

ろくに働きもしないくせに
遊ぶのだけは一人前なんだからね。

母さん…。

禎も スキーに行って
帰ってこられないって言うし

そろそろ 希望が帰ってきても
よさそうなんだけどね。

そうですね。
何かあったのかね?

電話してみましょうか?

おしんと初子が ひっそりと
元旦を迎えた 昭和31年は

おしんにとって のるかそるかの
勝負を賭ける年であった。

そして 希望にも 人生を分ける
大事な年になろうとしていた。

♬~
(テーマ音楽)

♬~

(初子)あっ もしもし
あの~ 田倉と申しますが…。

何だ 百合ちゃん? 初子です。

明けまして
おめでとうございます。

元気? ええ。 ええ。 あっ そう。
ちょっと待って。

母さん 百合ちゃんですよ。 先生は
ご夫婦で 温泉に出かけて

百合ちゃん
お留守番なんですって。

(おしん)もしもし 百合ちゃん?
私。

相変わらず バタバタしてんのよ。
はい 明けまして おめでとう。

百合ちゃんも
変わりなくて何よりね。

ねえ 希望は?

(希望)ありがとう。

(百合)もう
とっくに お昼 過ぎました。

声をかけちゃいけないと思って
黙ってましたけど

お食事 どうなさいますか?

こちらに
持ってまいりましょうか?

いいよ。
少しでも召し上がった方が…。

百合ちゃん 僕の事は いいから
どこか遊びにでも行っておいでよ。

せっかくの正月じゃないか。
ちゃんと留守番してるよ 僕が。

すみません。

あんまり 根詰めておいでだから
心配して。 もう お邪魔しません。

そうじゃないんだ。
正月だっていうのに

僕が こんな事してるから
出かけたくても

出かけられないんじゃないかと
思って。 私は 別に

行きたいとこなんか…。
ここが 一番 好きなんです。

若い娘が こんな山の中で…。

たまには 田舎へも
帰ってくればいいじゃないか。

私を待ってくれてる人なんか
もう いないんです。

じゃあ 何かあったら
呼んで下さい。

あっ 田倉の奥様から
お電話がありました。

お仕事中だったんで
お取り次ぎしませんでしたけど

希望さんが お帰りになるのを

楽しみに
していらっしゃるようでした。

正月には
挨拶に行くつもりだったから

何にも連絡しなかったんだが

どうしても
満足いく物が出来なくて

とうとう
帰れなくなってしまった。

悪い事してしまったな…。

今度の作品は プロとして

一人前になれる腕が
あるかどうか

それを試される
大事な仕事だから

何としても 自分で納得できる物を
作らなきゃならないんだ。

もし 失敗しても

自分を精いっぱい
出し切れた物だったら

諦めもつく。

いい物を作りたいのは
当然だけど

それより
師匠に どんな事 言われても

後悔しないで済むように。

今年は とうとう

初ちゃんと二人っきりで お元日
迎える事になっちゃったね。

さあ どうぞ。
初ちゃん 飲みなさい。

お正月でしょ。
いいえ こんな時でもないと…。

今年だけかもしれませんよ
こんなに静かなのは。

来年は
もう 赤ちゃんが生まれて

おちおち 座っても
いられないんじゃないですか。

あ~ そうなると 結構だけどね。

新しい店が
うまくいかなかったら

お正月どころか ここで
お正月が迎えられるかどうか。

母さん お元日早々 縁起でもない。
こればっかりは

蓋を開けてみなきゃ
分からないからね。

大丈夫。
きっと いい年になりますよ。

もう ここまで来たら
後へ引き返す事はできないけど

やっぱり 地道に 魚屋と八百屋
やってた方がよかったかな…。

そんな弱気な!
母さんらしくない!

セルフサービスの店なんて
まだ 早すぎるんだよ 日本じゃ。

失敗したら また 一から
やり直せばいい事でしょ。

母さん
何度も そういう目に遭って

その度に強くなったって いつも
おっしゃってるじゃありませんか。

そりゃ そうだけどね。
だったら 怖いものはないでしょ。

私だって
どん底を生きてきたんです。

アメリカ軍の基地で暮らしてた時の事
思ったら

どんな事があったって
驚きゃしません。

母さんと また一緒に 行商から
始めましょ。 ねっ 母さん。

はい。

だけどね 今度は 失敗できない。

何としてでも成功しなきゃね。
母さんだって もう 年だからね。

今度 つまずいたら
起き上がれやしない。

今まで 何軒も 新しい店
やってきたけど これが最後。

最後の勝負だからね。

あ~! 母さんね
希望にも 責任があるんだよ…。

あの子が 焼き物で
もし 一人前になれなかったら

将来の事 考えてやらなきゃ。

希望の お母さんと
約束したんだよ。

どんな事があっても

私が 希望を
立派に 一人前にしてみせるって。

もし 焼き物が駄目なら
希望には 商売をさせよう。

希望は 商売するのが
一番 いいんだから!

そのためにも…

そのためにも
新しい店は 失敗できない。

成功させる。

成功させます。 大丈夫よ。

母さん?

♬~

母さん…。

母さんは いつになっても

苦労が絶えないのね。

かわいそうに…。

初子と二人きりの正月休みが
終わると

仁と道子も帰ってき
再び 田倉の店は忙しくなった。

新しい店の増築も
ほとんど完成し

おしんは 希望の事も忘れるほど
その日その日を追われていた。

(次郎)いらっしゃいませ!
(仁)いらっしゃいませ!

母さん。 うん?
百合ちゃんから 電話です。

あ~ そう。 じゃあ ちょっと。

相変わらず バタバタしてんのよ。

うん。 お店はね
3月に開店する予定なんだけど

もう 何しろ
分からない事ばっかりで

勉強する事が いろいろ あって
もう 大変なの!

果たして
うまく 開店できるかどうか。

希望 とうとう
お正月に来なかったわね。

今日から 窯に 火を入れるんです。

希望さんの作品も
10点ほど一緒に。

私 もう うれしくって どうしても
奥様に お知らせしたくて!

そう。 よく知らせてくれたわ。

「無事に いい物が焼けるように
祈ってる」って

希望に そう伝えてちょうだい。
うん。

えっ? 三日三晩 寝ずに
火をたくの? そりゃ 大変だ。

「体を壊さないように」ってね。

異状ありません。

よし…。

(百合)あっ 奥様。

(ふみ)どうするの?
おむすびなんか こしらえて。

希望さんが
窯のそばを離れられないって。

しかたがないから おむすびにして
持っていってあげようと思って。

手の焼ける人だね。
食事の間ぐらい 誰かに

代わってもらえばいいじゃないか。
(栄造)いや~

自分の作品が
窯の中に入ってると思うと

そういう気持ちにも
なるもんなんだよ。

まっ そこまで打ち込まないと

とても いい作品なんか
出来っこないよ。

先生が 精のつくものをって。
そしたら 奥様が

鯉をもらったから
食べさせてあげなさいって

鯉こくにしました。

こんなに遅くまで
起きていてくれたのか?

そろそろ どなたかと
交代しておもらいになった方が。

奥様も心配しておいででした。

まだ 二昼夜も たき続けなければ
ならないんでしょ?

初めから
徹夜なさったりしたら…。

三晩くらい 寝なくたって
大丈夫さ。

窯は 火の加減が命なんだ。

いっときだって
目が離せないんだから。

汗。

ありがとう…。

百合ちゃん 寝なさい もう。
ここにいると ご迷惑ですか?

炎の色って きれいですね。

あんなに軟らかかった土が
この炎に焼かれて

硬い硬い陶器になるなんて
不思議ですね。

百合ちゃんは 焼き物が好きかい?

こちらに伺うまでは こんな世界が
あるなんて 知りませんでした。

こちらに お世話になって
土をこねたり ろくろを回して

指先から いろんな形が
生まれてくるのを見てたり

焼き上がった作品の中に
暮らしてると

陶器の事なんて
何にも分からないのに

だんだん すばらしいって
思うようになりました。

若い娘のくせに変わってるな
百合ちゃんは…。

私には とってもできないけど

もし 自分でも
ろくろを回す事ができたら

私だって 希望さんと同じように

この仕事の虜になってたと
思います。

やろうって気持ちさえあれば
百合ちゃんにだって できるよ。

いいえ。 私は せめて
このお仕事をなさってる

希望さんや皆さんのお世話が
できたら それでいいんです。

今… 私 幸せです。

生まれて初めて 幸せって
こういうもんなんだって…。

♬~

♬~
(テーマ音楽)

♬~

(仁)商売は食うか食われるかだろ。
そんな

義理だとか人情とか言ってたら
どうにも できやしないんだよ!

この自由競争の世の中でね

より多くのお客を取る!
それが 商人の腕じゃないか!

(おしん)
お前みたいな事 言ってたらね
今に この商店街の

つまはじきになるよ!
どんなに
恨まれようと憎まれようと

そんな事 気にしてたらね
この店なんか

やっていけやしないんだよ!
1円でも2円でも安い物を売る!

そうすれば
お客は 喜んでくれるんだよ!

それが 気に入らなかったら
うちより安くすれば

いいじゃないか! それが
自由競争の商売ってもんだろ!

セルフサービスの店ってのはね
何でも安いぞって印象を

お客に植え付けたら
それだけで 大成功なんだよ!

もう こんな魚とか野菜とか
手間のかかって

もうけの少ない商売しなくても
ただ 安い品物 置くだけで

飛ぶように売れる店に
してみせるさ!

分かった?
仁!

(道子)お母さん。 今夜 仁と一緒に
名古屋へ行かせて頂きますから。

初子さん すいませんけど
夕飯 よろしく お願いしますね。

あきれたもんだね。 普通だったら
「行っていいですか?」って

聞くのが本当なのに
さっさと 自分で決めちゃって!

(初子)まだ いいじゃありませんか
挨拶するだけ。

黙って出かけたって 当たり前って
時代なんですから。

あ~ そうとでも思わなきゃね。
言ったって直るもんじゃないしね。

あっ 配達の物 みんな 出来た?

ええ。 あと ブリの切り身の注文で
終わりです。

じゃあ 包んでいいね これ。
ええ。 お願いします。

新しい店になったら
仕出しも配達も

やめるそうですけど
電話で注文したら

ちゃんと 配達してくれるのが
ありがたいって

ごひいきにして下さる
お客様も多いんです。

それで うちが損してる訳じゃ
ないんだし

できたら 今までどおり…。

そういう古い習慣をやめるために
セルフサービスの店にするんだって。

でも そのお客様が

わざわざ うちまで
買いに来て下さるかどうか…。

私と仁じゃね 新しい店に対する
考え方が もう 全然 違うんだよ。

仁の言うとおりやったら 商売は
大きくできるかもしれないけど

果たして うまくいくかどうかね。

希望みたいな子が
仁のそばにいて

手綱を引いてくれると安心だし
うまくもいくと思うんだけど…。

希望が
うちへ帰ってくるんだったら

今が一番いい機会だと思うんだよ。
新しい店を始める時だしね。

田倉を 仁と希望でやってくれて
もし うまくいったら

希望を いつか 独立させてやる。
希望が 店を持てたら

お加代さんとの約束も
果たす事ができるからね。

母さん…。
あっ ねえ

一度 希望のとこ 行ってみようか。
自分の作品を

窯に入れてもらったって
言ってきたっきり

後 何にも言ってこないんだもん。

(次郎)あっ いらっしゃいませ!
いらっしゃいまし! どうも 毎度。

御苦労さん。 あと 私 やるから
いいよ。
(次郎 征男)はい。

今日は 悪かったね。 仁が
いないんで 忙しい思いさせて。

(2人)いいえ。
じゃあ お先に!

お疲れさまでした!
気を付けて。

希望…。
(希望)ただいま。

お帰り。

母さん! 母さんの気持ちが
通じたのかしらね!

母さんね 明日 希望ちゃんの所に
行くって言ってらしたのよ。

えっ? 何かあったの?

いや~ね 希望ちゃんから
何の連絡もないから!

(2人)ねえ!
申し訳ない!

いろいろ 考える事があって…。

気持ちのふんぎりがついたら
帰るつもりで…。

希望ちゃんも 何かあったの?
いや…。

仁は? あっちのうち?
名古屋 行ったの。

道子が一緒だから 今夜 きっと
道子の里の方へ泊まってるんだろ。

何だ。 仁にも 一応 話を
聞いてもらおうと思ったのに…。

母さんもね 希望に 話があるの。
仁がいなくて ちょうどよかった。

(初子)とにかく
お夕飯にして 話は ゆっくり…。

よかった! 今夜 初ちゃんが
お台所やってくれて。

道子だと ろくなもの
食べさせてもらえないんだから!

母さん!
言いたくもなるだろ。

御飯の水加減も できないくせに
ちょっと 初ちゃんが教えると

すぐ 膨れっ面して!
道子さんだって 道子さんなりに

一生懸命やろうとしてるんですよ。
それを認めてあげなきゃ。

相変わらず 優しいんだね
初ちゃんは。 うん!

私は 母さんの気持ちも
道子さんの気持ちも分かるから。

あっ それより 希望ちゃん。

ああ…。

僕も なんとか この道で
飯を食っていけそうだよ。

(希望)今度 初めて焼いた作品で
先生に 「まあ いいだろう」って。

(初子)希望ちゃん!

これからも
僕の名前の入った物を

少しずつ
焼いてもらえる事になりました!

やっと
一生 この仕事を続けていく

自信と覚悟とが できました!

すぐ知らせようと
思ったんだけど…

もう一つ 大事な事が なかなか…。

でも
それも やっと決まったんで…。

僕も 女房をもらう事にしました!

(希望)まだまだ 所帯 持てる
身分じゃないけど

先生ご夫妻に相談したら
賛成して下さって…。

一応 近所に 小さい家を借りて
そこから 僕は 先生の仕事場へ

百合は 今までどおり 通いで
お手伝いにあがるという事に…。

希望。 百合って まさか
うちで働いてた百合じゃ…。

はい! あの百合です。

希望ちゃん!
冗談じゃないわよ! だって…。

(希望)何もかも
承知の上なんだよ!

百合も 仁との事を気にして
僕の申し込みを断り続けた。

それで 知らせるのが
遅れてしまったんだけど…。

僕には そんな事なんて
どうでもいいんだ 母さん!

大切なのは 今の百合なんだ!

(希望)百合は 僕に
献身的に尽くしてくれる。

この正月だって 僕が一人で
ろくろを回している間

どこへも行かずに
黙って 面倒 見てくれた。

それが 僕の仕事の邪魔に
ならないようにと

まるで 影みたいに…。

そんな心遣い 見てると
胸が痛いほど ありがたくて…。

窯をたいてる時も

三日三晩 寝ずに 火を見つめてる
僕を心配してくれて…。

後で聞いたら 百合も 三日三晩
ほとんど 寝てはいなかったんだ。

母さん。 百合は
ああいう世界が好きなんだよ。

普通の娘なら とても耐えられない
山の中の暮らしが

百合には
どこよりも 安らげるって…。

今では
陶器の事も よく分かってて

それを焼く 僕の気持ちも
分かってくれている。

百合に申し込む前に
母さんの許しをもらうのが

本当だって事は
よく分かってた。

でも たとえ反対されても
僕の気持ちが変わらない以上

百合の気持ちを聞く方が
先だと思って…。

希望が 百合ちゃんをね…。

百合は 心の温かい娘です。

人の痛みの分かる娘です。

そんな事
あんたに言われなくったって

母さん よく分かってますよ。

だったら 賛成してくれますか?

希望と百合が お互いに
いいところを認め合って

一緒になれるんだったら
こんないい事ないじゃないか。

よかった…。

母さんね 百合ちゃんには
何にもしてあげられなかった。

百合ちゃんの傷は 一生 母さんの
傷として残ると思ってたのに…。

それで幸せになれるんだったら…。

希望が 幸せに
してやってくれるんだったら…。

ありがとう 母さん…。

(初子)希望ちゃん…。

希望ちゃんには 百合ちゃんの
いいとこが分かったのね。

やっぱり 希望ちゃんは
優しいのよ。

あったかい心を持った人じゃ
ないと

あったかい心を持った人が
見えないの。

母さん 希望ちゃんと百合ちゃん
きっと いい夫婦になりますよ!

ああ!

母さんね もう
どんな事でもしてあげたい!

何でも言ってちょうだい!

だったら
百合に会ってやってくれますか?

今 すぐそばの宿屋にいるんです。

(戸が開く音)

(百合)奥さん! 初子さん

百合ちゃん 聞いたよ。
おめでとう。

じゃあ… 許して頂けたんですか?

ああ!

百合ちゃん…。

ありがとうございました!

ありがとうございました…。

随分 つらい思いをさせたね。

今更 謝っても
どうなるもんでもないけど…。

これからは 希望と2人で

幸せになってちょうだい。

どんな力にでもなるからね!

(初子)母さん。 百合ちゃんは
娘になるんですよ

希望ちゃんの奥さんになったら。
そうだね。 うちの嫁になるんだね。

やっぱり うちとは 縁のある娘だ
百合は!

あ~ いい嫁が来てくれた!
これで 私も安心だ。

そうだ! 明日 加代さんのお墓へ
お参りに行こう。

ああ。 そのつもりで
百合を連れてきたんだから。

そう…。 じゃあ
母さんも一緒に行って

大威張りで
お加代さんに報告しよう!

♬~

新しい店の経営に
希望を参加させたいという

おしんの期待は 裏切られた。

希望に 加賀屋の暖簾を上げさせる
夢も消えてしまった。

…が おしんは 着実に 自分の
人生を開いていく希望を見て

それでいいと思っていた。

新しい店の前途への不安の中で

希望と百合が おしんの心の救いに
なっていたのである。