ドラマログテキストマイニング

テレビ番組(ドラマ)の字幕情報を対象に、テキストマイニングの研究をしておりますので、解析結果の公開をメインに関連グッズを交えた構成で記事にしてます。また、解析結果の信憑性が確認できるよう、解析用ソースも部分引用し掲載してあります。

贋作 男はつらいよ 第3話 桂雀々、常盤貴子、田畑智子、綾田俊樹… ドラマの原作・キャスト・主題歌など…

『ドラマ 贋作 男はつらいよ(3)「寅やん、京都へ行く」』のテキストマイニング結果(キーワード出現数ベスト20&ワードクラウド

  1. お兄ちゃん
  2. お前
  3. 先生
  4. 満男
  5. 青観先生
  6. 今日
  7. 仕事
  8. 絵描
  9. 京都
  10. 心配
  11. 青観
  12. アホ
  13. ケチ
  14. 一緒
  15. 古本屋
  16. 宿屋
  17. 大丈夫
  18. 池内青観
  19. 部屋
  20. 明日

 

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『ドラマ 贋作 男はつらいよ(3)「寅やん、京都へ行く」』のEPG情報(出典)&解析用ソース(見逃した方はネタバレ注意)

 

解析用ソースを読めば、番組内容の簡易チェックくらいはできるかもしれませんが…、やはり番組の面白さは映像や音声がなければ味わえません。ためしに、人気のVOD(ビデオオンデマンド)サービスで、見逃し番組を探してみてはいかがでしょうか?

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ドラマ 贋作 男はつらいよ(3)「寅やん、京都へ行く」[字]

新世界の串カツ屋で、寅次郎(桂雀々)が飲んでいると、みすぼらしい着物姿の老人(田中泯)が、財布を落として支払いができないと店の店員と揉めていた。

詳細情報
番組内容
新世界の串カツ屋で、寅次郎(桂雀々)が若い外国人の店員相手にくだらない話をしながら飲んでいると、みすぼらしい着物姿の老人(田中泯)が財布を落として支払いができないと店員と揉めていた。無銭飲食で警察に連絡されそうになるが、持ち前の人情で寅次郎が代わりに代金を支払ってあげることに。そのまま酔っぱらって、老人を「くるまや」に連れて帰るのだが…。
出演者
【出演】桂雀々常盤貴子田畑智子綾田俊樹,松寺千恵美,北山雅康,曾我廼家寛太郎,福丸怜乎,前田航基藤田功次郎,渋谷天外田中泯
原作・脚本
【原作】山田洋次,【脚本】山田洋次,朝原雄三

 

 


(つね)はい 博さん どうぞ。

(佳代)じゃあ お先です。
悪いな 佳代ちゃん。

しゃあないっすわ
今日は さっぱりお客さん来えへんし。

ほんなら。
(さくら)お疲れさまでした。 お疲れさん。

さくらちゃんも もう帰ってええで。

満男ちゃん 学校終わる時間やろ?

金曜日は塾で遅なるから まだ大丈夫。
そう… 塾。

(竜造)大変やな 小学生やのに。

小学生でも 塾ぐらい通うとかな
大きな会社には入られへんよってな。

あっ 堪忍やで
博さんの前で大きな会社やてな。

(博)気にせんといて下さい。

僕かて 満男には
できたら大きな会社入って

老後の面倒 見てもらいたい
思てんのですから。

(社長)はあ…。
お帰りなさい 社長さん。

年々 きつなるな 駅からの坂道が…
もう うちの経営と一緒で。

あっ さくらさん ひと休みさせてな。
どうぞ。

はあ… えらい。

お帰りなさい。
どないでした? 信用金庫の方は。

いや~ それがな
印刷機に設備投資するよりも

思い切って 新しい人 雇て

新分野の仕事を
開発した方がええ言うんや。

ひと事や 思いやがって。

この状態で
何で新しい社員が雇えるちゅうねや。

まあ実際 こないしてね 仕事のない社員が
ブラブラしてる状況ですしね。

いや 申し訳ない。

博さんのようなベテランの職人
遊ばしてまうのも

全ては社長のわしの責任や。

やめて下さいて。

まあ そう落ち込むな。

いや ほんま寅やんが羨ましいわ。

借金やローンの心配したり
毎月給料払う苦労がない生活が…。

あれ? そない言うたら寅やんは?
パチンコか?

それが仕事行ったんやわ。

仕事?

先週 石切さんのお焚き上げが済んで
お客さん めっきり減ったでしょ。

店の手伝いしてても暇やし
お兄ちゃん

せめて 自分の食べる分ぐらいは
自分で稼ぎたいって。

意外と律儀なとこあるねんな。
何の仕事してやんの?

天王寺のお祭りがあって そこで

昔の仕事仲間と一緒に
バッグなんか売るんやて。

へえ~ 儲かんのかいな?
さあ?

(寅次郎)ちょっと よう見といてや。
これからな 日本の伝統芸

落語 ジャパニーズ トラディショナル パントマイムいうの
見せたるわ ちょっとな。

ほれ いくで。
よしよし これがうどんの鉢な。

よし… お~ 熱いな これ。
まずは だしから。

ふう~ ふう~…。

(だしをすする音のまね)
アハハハハ!

おっ うまいわ~
ええだし使てるわ これ。 へえ~。

次 うどん。 ふう ふう ふう…。

(うどんをすする音のまね)
アハハハ…!

うんうん うんうん…。
アハハハ!

次 そば。 そば いくで…。

(そばをすする音のまね)
ハハハハ!

うんうん うんうん…。

うどんと そばの違い 分かる?

同じ。 うどんも そばも同じや。
同じか? 違うって これ。

次は ほな これ分かる? ラーメン。
よし… よっしゃ。

(ラーメンをすする音のまね)
ハハハハ…!

ちょっと待ちぃな。
笑うてばっかりやんか ちょっと。

せっかく日本の伝統芸能
教えてやろうと思うたのに これ。

しゃあないな もう ほんまに。 え~?

ちょっと ティエンちゃん
熱いの ちょうだい。

はい 熱燗 一丁!

はいよ!

おい おっさん
何やねん その横柄な口の利き方は!

こんだけ飲み食いしといて
今更 何言うてんねん!

俺は池内青観っていう者だ。

金は 明日にでも 使いをよこして払う。

池の内も 池の外もあるか!
年寄りやからって 甘えんなよ。

うちは誰が来たって現金払いや。 金払え。

財布がない。

財布がない? ちょちょ… おっさん
無銭飲食で 警察 突き出すで!

にいちゃん にいちゃん。
ちょっと ちょっと…。

いや 皆 楽しい飲んでんのやないかいな。
「警察 突き出すぞ」は穏やかやないで。

甘い顔してたら 切りないんですよ。

たまに おるんですわ
ああいうタチの悪い年寄りが。

にいちゃん 国はどこや?
大阪 ちゃうやろ。

はあ 長野県ですけど。

ええとこやないかい 長野。

信州そばに 野沢菜
リンゴに レタス なあ?

あんたも故郷へ戻ったら お父ちゃん

これくらいの年のおじいちゃん
いてんのちゃうの?

家を飛び出した息子 孫の心配して
畑仕事してるような。

年取った くたびれたおっさんが
一文なしで酒を飲むっちゅうのは

それなりの悲しい事情ちゅうもんが
あるもんや。

お互い 孤独な貧乏人同士やろ?

もうちょっと いたわり合ってもええんと
違うかなあ?

そのとおり。

けど うちかて商売ってもんが。

分かった 俺が払うたる。

金さえ払うたら文句ないやろ?
はい。

俺の合わして何ぼや?
あっ えっと…

こっちのじいさんのが 2, 800円で。

ティエン こちらの分は?
あっ はい。 え~ 2, 000円ちょうどです。

よっしゃ。 これでええな?
釣りは要らんで。

ごちそうさん はあ~。
はい どうも。

さあ おっちゃん 飲み直そうか。

遠慮はいらんで。
今日 わし ちょっと懐あったかいねん。

行こや。
そりゃ すまんな。 遠慮なく。

♬~

(満男)ごちそうさま。

そのままでええから
早う お風呂入ってしまいなさい。

先に塾の宿題するわ。 明日 テストやし。

偉いなあ!
最近 やる気出てきたやないか。

寅のおっちゃんに言われたんや。

お前 勉強せな 団子屋か
タコ社長の工場で働くしかないでって。

かなわんな
義兄さんに そない言われては。

ごめんな 博さん。

ええよ ええよ。 満男に
ええ大学に行ってほしいいうのは

もともと 僕の希望なんやから。

そやけど 満男にとって
ほんまにええことなんやろか?

何が?
明日は土曜日やのに 朝から塾やろ?

晩ごはんかって 塾通いのせいで
いつも こない遅い時間になってしもて。

あの子 幼稚園の頃から
絵 描くん好きやったでしょ?

「塾 行くか?」言うた時

ほんまは 絵画教室に行って 絵 習いたい
言うたんよ。

そら知ってるけど…

まさか 絵描きになって
暮らしていくわけにもいかんやろ。

そうやけど…
時々 かわいそうになってしもて。

好きなことを好きなように
やらしてやりたいなあ思て。

(ため息)

ごちそうさんでした。

(戸をたたく音)

≪おばちゃ~ん 開けて!
(ふすまが開く音と つねのあくび)

(スイッチを押す音)
≪おばちゃ~ん!

寅ちゃんかいな!
≪帰ってきた!

帰ってきたで。 開けて~!
(戸をたたく音)

静かにしい! 何時やと思てんの。

ああ ただいま~。 うう…。
こないな時間まで どこで飲んでたん?

ベロベロやんか。
よいしょ…。

電話ぐらい お前 せんかい。
待っとったんやぞ 遅うまで。

すまん すまん。 ちょっと じいさん
待っててくれてたみたい…。

ちょっと じいさん。

何や?
ちょちょ… 危ない 危ない…。

危ない 危ない! ちょっと…。

今晩 悪いけど
1晩泊めたってくれへんかな?

哀れな 無一文のじいさんやけど。

うう~ 酔うた 酔うた。 ああ…。

すいません。 えっ?
あの~ タクシー代の方

お願いできませんか?
あっ… そうやったな!

おばちゃん 頼むわ。
あっ 6, 500円になります。

おい…。

一体 誰や? このおっさん。

えっ? いや 知らんねん。
知らんって お前…。

通天閣の下の店で
たまたま一緒になったんや。

おばちゃん
悪いねんけど 2階のわしの部屋に

布団 もう一つ 敷いてくれんやろか?

わし 小便行ってくるわ。

なあ あんた
家で 誰か心配してはんのと違うの?

…んなやつおらん。

部屋はどこだ? えっ?

あっちか?

うわっ。

新世界のホームレスかいな?
どないしよう?

しゃあないがな。 1晩だけ泊めたらな。

大丈夫やろか?

ああっ そっちは庭。 はいはい
部屋は2階 2階 こっち こっち…。

はい 上がって… よいしょ はい。

ここ上がるの。

ああっ! そないなとこで おしっこしたら
あかんがな! 何してんねんな。

ああ… 派手な猿股 はいとるなあ。

どうも ありがとうございます。
ありがとうございます。

佳代ちゃん。

どう? まだ起きてけえへん?

ほんま 厚かましいじいさんやで。
見ず知らずの人の家に来て

よう こないな時間まで
寝てられるもんやわ。

お兄ちゃんは?
まだや。

ゆうべは
2人とも ベロベロやったさかいな。

大丈夫やろか?

何が? 栄養失調みたいな
おじいさんやったんでしょ?

ホームレスの。
うん。

お酒 飲み過ぎて 久しぶりに
あったかい布団 入って寝て

安心して そのまんま ポックリ…。

そんなアホな。 なあ?
ありえるよ~。

お前 ちょっと上行って 見てこい。

あたしが? 嫌やわ 気色の悪い。

あ~ 頭 痛いなあ…。
ゆんべ どんだけ飲んだんや 俺。

お兄ちゃん!
おっ さくら。 ちょっと 水くれ 水。

おじいさんは起きてへんの?
布団の中で死んでるんやないやろね?

大丈夫や。 寝返り打ってな

わしの顔面に バ~ンと
足 打ちつけよったんや。

それで わし 目ぇ覚めたんや。

お兄ちゃん
おっちゃんたちに謝りなさいよ。

謝る? 何を?

ゆうべのことやんか。

真夜中に帰ってきて
おっちゃんたち たたき起こして

タクシー代まで払わしたそうやないの。

あ~ そうか… えらい すんませんでした。

ちょっと小銭が入ったもんやから
つい 気が大きなってしもうて

つい はしご酒して 梅田のおでん屋で
気が付いたら スッカラカンや。

どこの誰かも分からん
おじいさんまで連れてきて。

いや あれは わしが悪いのと違うがな。

あのおじいさんが
勝手についてきたんや。

もう一軒行こう もう一軒行こう
言うて。

分かってんの?
おっちゃんや おばちゃんに

どんだけ迷惑かけてんのか。

1晩泊めたるぐらい ええやないか。
哀れな かよわい老人やねんから。

近頃は 年寄りでも危ないのが多いからな
暴走老人とか言うてな。

昨日 酔っぱろうて
あたしの顔を見た目つき

ギロッとしてな あれは普通と違てたで。

そうそう そうそう…
あれは 堅気やない。

ヤクザか犯罪者の目やった。

おっちゃん 言い過ぎやで それは。

(足音)

おい 朝飯は どうなってる?

おばちゃん 何でも かまへんねん。
みそ汁とか漬物とか…。

あっ ゆんべ ちょっと飲み過ぎよったんで
あの おかゆでも…。

おかゆは好かん。 普通の飯がいい。
あと 海苔と卵を頼む。

分かった 分かった 分かった… 分かった。
待て…。

朝飯の前に風呂にするか。

おい 風呂は沸いてるか?

あんた ええ加減にしとき!

おばちゃん ええから ええから。
わしが風呂を沸かすから。

それじゃ 風呂が沸くまで
もう一眠りしてくるか。

おねえさん
部屋に お茶持ってきてもらおうか。

梅干しも添えてな。

あのジジイ 何考えてんの!

おい 寅! あのジジイ
すぐ出てってもらえ!

どんな神経してたら
あんなこと言えんの?

まあ まあ まあ。
みんなの気持ちは よう分かる。

おっちゃん おばちゃん
ほんまに迷惑かけてすまなんだ。

そやけどな さくら
あのじいさんの状況も考えてやってみ。

恐らく 身寄りもないホームレスや。

ええとこ 1人暮らしの孤独な老人や。

狭い 汚いアパートの一室で
話し相手はなし

食うもんちゅうたら 安売りの スーパーの
残り物か コンビニの弁当が関の山や。

ああ わしは何のために
一生 あくせく働いてきたんやろ

こんなことやったら
早いとこ死んでしまいたい。

そうや
日頃は飲まれへん酒をしこたま飲んで

いっそのこと コロッと逝てしまおう。

そない考えて ゆんべは
新世界で 一銭も持たんと飲んでたんや。

そんな かわいそうな下流老人に
見ず知らずのわしが声をかけた。

うれしかったんやろなあ
久々に触れた 人の情け。

分かるやろ? おっちゃん おばちゃんも
ひと事やあらへんで。

なあ もうちょっとの間でええねん。

ほんのつかの間
あの老い先短い老人に情けをかけて

浮世の夢を
見さしてやろうやないの。 なっ?

小便行ってくるわ。

年寄りのくせに朝から えらい食欲やなあ。

あんまりがっついたら 喉 詰まらすで。

寅やん この漬物 なかなかうまい。

飯より 酒が合いそうだ。

2合ほどでいいから 熱燗で頼むわ。

あんたなあ 朝風呂 朝飯は まあええわ。

何やったら 食後のデザートに
団子くらい食わしたろ。

そやけど 朝から迎え酒ちゅうのは
なんぼなんでも厚かましいで。

駄目か?
常識っちゅうもん考えないかんわ。

宿屋 ちゃうねんから。

宿屋と違う?

何だ ここは宿屋じゃないのか。

えっ? あんた ここ 宿屋と思てたん?
ああ。

「ああ」て… びっくりするわ。
そんなわけないがな こんな汚いとこ。

ここは
わしの叔父貴と叔母はんがやってる

ケチな団子屋や。

どうりで 愛想もサービスも悪いわけだ。
こりゃ とんだ勘違いをした。

勘違いにも程があるで。

いや すまん。 悪いことをしてしまった。

そうと分かってれば
さっさと失礼したんだ。

弱ったな こりゃ。

お礼をしようにも 財布は
ゆうべ どこかに落としてしまったし…。

いや~
ええねん ええねん そんなもん。

ボロ家に1晩泊めたっただけやがな。

帰りしなに
「どうも お世話になりました」と

ひと言 言うてやったら
それで何とも思わん連中やから。

いや~ そうは言っても ゆうべは
君にも 随分 散財させたし

石切までのタクシー代だって
払わしたんだろ?

貧乏人は金の心配せんかてええて。

じゃあ こうしよう。

すまんが
紙と筆を持ってきてくれないか?

紙と筆? 何すんの? そんなもんで。

何でもいいから
とにかく持ってきてくれ。

色紙があれば なおいいが。

色紙なんぞ団子屋にあるかいな。

とにかく頼む。
もう めんどくさい じいさんやなあ。

紙と筆な。

そうか… 宿屋じゃなかったのか。

ひどい筆だな こりゃ。

いちいち
人の家のもん ケチつけなさんな。

何 書くの?

手紙かいな? 借用書か何かかいな?

ちょっと静かにしてろ。

♬~

何? これ。 サクランボかいな?

違う。 柑子 ヤブコウジという
縁起物の植物だ。

君 これを梅田にある大雅堂という
古本屋に持っていってくれないか?

梅田? 古本屋?

そんなとこ持っていって
どうすんねんな この落書きを。

そこに 目のギョロギョロした
ウシガエルみたいな おやじがいるから

これを渡して
いくらか融通してもらってくれ。

ケチな男だから
大した金にはならないだろうが。

嫌や そんなん タカリみたいな
ようせんわ わし。

それに古本屋って 妙に
カビ臭い粉が飛んでるやんか 店の中に。

それが もう体中 かゆうて かゆうて。
自分で行きぃな。

俺が行くと いろいろ面倒なんだ。 頼む。

無駄足は踏ませないから…。
このとおりだ。

おお 大雅堂か… ここか。

何ぞ お探しですか?

ちゃいますねん。
お探しやないんですわ。

ちょっと見てもらいたいもんがあって
来ましたんやわ。

ほう~ 何です?

ちょっとした知り合いで
おかしなじいさんが いてましてなあ。

これが今朝方 チョロチョロッと
絵 描きよりましたんや。

それをここへ持ってきて
目のギョロギョロッとした

ウシガエルみたいな
おやじがいてるから言うて…。

いやいや いやいや…
あの わしが言うてんやおまへんで

そのじいさんが言うてまんねんで。
その主人に見せたら

何ぼか 金に換えてくれるから
行ってきたらどないや言うて

ノコノコ来ましたんやけど。
そのお方の名前は?

名前?
うん。

いや~ それは… 聞いてないなあ。

絵も いろいろあるさかい…
軸でっか 色紙でっか?

そんな本式ではないんですわ。

そこらにある画用紙に
コチョコチョッと描いた

サクランボみたいなもん…
あっ… もう よろしいわ。

今回は勘違いしたっちゅうことで
帰りますわ。 すんまへん。

あ~ ちょっと待ちなさい。
あ~ 見せるだけ見せていきなさい。

この世界は
何があるか分からん世界やさかい。

さよか? うん。
見て 笑うたらあきませんで。

近頃は 食べていかれえで
偽物やバッタ物を専門にしてる

連中もおますさかいな。
はい。 はいはい。

ハハハ…。

むちゃくちゃ笑うてるがな。

青観のサインがしてあるで。

こともあろうに青観の名前かたるて
どういう神経しとんのや こいつ。

何やのんな? そのセイカンちゅうのは。

青観ちゅうのは池内青観
日本画壇の最高峰や。

まっ 色紙の類いは一切描かん 残さんで
有名な先生や。

偽物つかますにしても
青観とは 恐れ入ったな…。

あんた これ… 一体 どこで手に入れた?

いや さっき言うたがな。

知り合いのおじいさんが
わしの実家に泊まって… ええっ?

いや シャレにならんな それ…
わし おかしなことやってないで。

ちょっと… それ返して
やっぱり返して ちょっと! 返してて!

いや ちょっと待った。
おい 吉田! おい 天眼鏡や!

おっととととと…。

お帰りなさい。
じいさん! じいさんは どないしたんや!?

お兄ちゃん どないしたん?
仕事 行ったん違うの?

仕事なんか どうでもええねん。
じいさんは? 2階か?

帰ってったわ。
お兄ちゃんが出て しばらくして。

帰ってったって どこへ?
さあ?

京都までの電車賃
貸してくれって言うから

2, 000円だけ渡して。
え~?

泥棒に追い銭や。
ほんま どこまで厚かましい男やろ。

おばちゃん 泥棒て
何ちゅう失礼な言い方すんねんな。

長生きしてても 人を見る目っちゅうのが
ちょっとも あらへんねやから。

どういうこと?

聞いて驚くな。 あのじいさんはな

日本でも指折りの有名な絵描きで
ヤマノウチ… いや…

何や? ええと フクワウチ…
いや… 何とかいうねや あの ほれ…

イケノウチ…。

青観?
あっ そうそう その青観。

うそ~! あのおじいさんが?
有名な池内青観?

そんなアホな。

あの汚らしいホームレスみたいな
格好した人が

そない有名な画家やなんて。

あのな 人を 姿 格好
見た目のよしあしで判断すんのが

教養のない人間の悪い癖や。

第一 おばちゃんかて
人の格好どうこう言える柄か?

何で そのじいさんが
そない偉い先生やと分かったんや?

ほれ 見てみい。
おっ…。

どないしたん! そのお金。

今朝な あのじいさんが宿代代わりにと
チョロチョロ~ッと描いてくれた

サクランボの絵。 その落書き一枚を
梅田の古本屋へ持っていったんや。

まさかと思たら なんと これが
ほんまもんの青観先生の筆と分かって

ほれ このとおり 現金払いで20万や。

2… 20万!? ら… 落書き一枚で?

「情けは人のためならず」。

わしが ちょっとした親切心でしたことが
20万。

人間 正しい行いをしとったら
必ず報われるっちゅうわけやな。

池内青観の ちゃんとした絵やったら

最低でも
100万はくだらないみたいですね。

ひゃ… 100…。
あのじいさんの絵が 最低でも100万!?

あちゃ~…。

筆一本で 一枚描いて 100万か。

わしら 100万稼ぐために
どんだけ働かなあかんか…。

おばちゃん とりあえず
ゆうべのタクシー代と宿代 2万円。

ええの? こんなに。

おっちゃん わしが石切に戻って
今日までお世話になったお礼として

3万円。
えっ わしにか?

さくら お前には5万円や。

亭主に新しい背広の一つ… 息子に
自転車の一つでも買うてやれ。 なっ?

あとは わしが頂くけど
ケチなことは言わん。

今晩はひとつ わしのおごりで
寿司でも天ぷらでも取って

てっちり囲んで パ~ッとやろやないか。

社長 お前も一緒やで。
ありがとう 寅やん!

ちょっと待ってよ お兄ちゃん。

何や 5万円では足らんのかいな?

案外 がめつい女やな。

そうやないの。 20万なんて そんなお金
受け取るわけにいかへんでしょ?

何でや?

そうかて お兄ちゃんがしたのは

財布をなくしたお年寄りに
お酒をおごってあげただけやないの。

おばちゃんたちかって 酔うて
帰られへんようになった おじいさんを

家に泊めてあげただけやないの。

それは みんな
おじいさんをかわいそうに思て

親切でやってあげたことやないの。
そ… そら そうやろうけど。

あたし 今朝 お兄ちゃんから

老い先短い老人に
情けをかけてやろうやないか

浮世の夢を見せてやろうやないか
って言われた時

あのおじいさんに腹立ててた自分が
恥ずかしかった。

そんだけと違う。

人のことをこんなふうに思いやれる
お兄ちゃんが誇らしかった。

ああ あたしのお兄ちゃんは こんな
優しいお兄ちゃんやったんやって

うれしかったわ。

そやろ?

そのお金を受け取ってしまったら

お兄ちゃんや おばちゃんたちがしたこと
全部

しょうもない 当たり前のことに
なってしまうのと違うやろか。

うん? うんうん…。

あっ どうも。

わあ~ すっげえ…。

でかい屋敷やなあ…。

(足音)

よう 寅やん。
よく このうちが分かったな。

妹の旦那が
ネットっちゅうやつで調べてくれてな。

それにしても
すごいとこに住んでんねんな じいさん。

独り暮らしには無駄だがな。

儲かんねんなあ 絵描きっちゅうのは。

わざわざ
石切から京都まで来たのは何の用だ?

あっ そう そう そう…
これを返しに来たんや。

びっくりしたで~ あのサクランボの絵。

古本屋へ持っていったら
20万で引き取ってくれたで。

20万?
うん。

相変わらず ケチな男だ。

それで何だ? この封筒は。

その金の20万やがな。
うちの妹のさくらが

「こんな大金もらうわけにはいかん
返してこい」ちゅうて

…で 来たんやがな。
妹さんが? それで君は納得したのか?

そら わしも お金は欲しいけど…
けど 確かに 20万はもらい過ぎやわ。

それに あんた 泊めてあげたんは
金のためやないからな。

とにかく そっくりそのまま返すわ。

そういうわけにはいかん。

これは私の気持ちだ。
受け取ってくれ。

いや~ その気持ちっちゅうのが
やっかいやねんなあ。

気持ちっちゅうのは 簡単には
金に換えられへんもんや。

妹が そう言いよんねん。
そない言われたら そんな気もするしなあ。

これ 返すわ。

それでは俺の気が収まらん。

どうか これは持って帰ってくれ。

いやいや 分からんじいさんやな
もう受け取ってえな。

困ると言ってるだろう。
しつこいっちゅうのに。

困るんだ。
もう~ めんどくさいなあ。

もう返しに来てんから
もう受け取って!

こっちも
出したものを引っ込められるか!

いや ちょっと お願いやから
しつこいよ もう!

わざわざ京都まで返しに来たんや もう。

誰が返してくれって頼んだ?
かなんなあ! 分かってえな。

今更 この金 持って帰ったら
家の者に笑われるがな。

男が立たんがな。

よし… いいだろう。

君は この金を持って帰らない
俺も この金を受け取らない。

これから
町へ繰り出して パ~ッと使っちまおう。

よっしゃ! それやったら
恨みっこなしや。

なあ 一円残らず飲んでまおか!

♬~

酒も肴も上等やけど
落ち着かんなあ こういうお座敷は。

まあ そう言うな。

ミナミの串カツ屋で
あの金 飲み干すのは骨が折れるぞ。

ほんまやな。

すぐ にぎやかなのが来るから。

≪(ぼたん)お待っとおさんどす。
失礼します。

おおきに。 おいでやす。

先生 久しぶりやわあ。
お元気そうで何よりどす。

長いこと 顔 見せんと
どこで浮気してはったん?

そんな元気があるか。

昼間は仕事
夜は毎日 グ~グ~寝てるよ。

寅やん こいつは ぼたん。

祇園一元気な芸妓だ。

初めまして ぼたんどす。
よろしゅうお頼申します。

「立てば芍薬 座れば牡丹」
なかなか粋なおねえさんやなあ。

おおきに。
こちらの方も やっぱり先生? 日本画の。

ちゃう ちゃう ちゃう ちゃう。
わしは もう昔から

先生と お巡りが大嫌いやねん。

よかった! うちと おんなじや!

いや 堪忍! うち アホやから
すぐ ほんまのこと言うてしまうねん。

ハハハ… おもろいねえさんやわあ。

この陰気なじいさんの
なじみとは思われへんわ。

うち 先生の隠し子どすねん。

隠し子!?

こら いい加減にしろ。

そやけど 小さい頃から お母ちゃんに
そう言われて育ってきましたさかい。

どうぞ。
うちのお母ちゃんも祇園で芸妓してて

先生に かわいがってもらってましてん。
親子二代?

絵描きなんて
難しい顔して スケベなもんや。

スケベ スケベ。 むっつりスケベ。

ハハハ… 急に おもろなってきたがな。

ご返杯。
おおきに!

じゃあ… はい どうぞ。
へえ。

はい どうぞ。

頂きます。
はい。

おお~!

♬~

♬「とら と~ら と~ら とら
とら と~ら と~ら とら」

♬「とら と~ら と~ら とら」

あ~!
あ~ やった やった やった!

寅さん トラの勝ち!
負けた~!

ぼたんちゃん 弱いわ ちょっと。

「猪が走ってますやん。
ほらほら こないなって

ほら すごい… こんな状態で
ほれほれ…

牙むき出しで走ってますやないか
すごいな これ! ええ?

いや あれは何ですか?
あれ 親子ですか? えっ 親子ですか?」。

「ええ? あれかい… あれはな うん

大きい方がオスでな
小さい方がメスじゃ。

まあまあ あれは 何じゃ…
親子じゃありゃせんわい。

あれは まあ 夫婦てなもんじゃろかい」。

「あっ 夫婦ですか はあ そうですか!
あの猪が… へえ~。

ほいで どういうことでしょうね?
夫婦やったら あの

仲人入れての仲なんですか?
それとも 親の反対を押し切って?

籍は入ってますの?」。
「知らんがな そんなこと。

とりあえず… 今から撃つよってんな…

静かにしてなはれや。
黙っとくんなはれ」。

「ええ! 黙ってます 黙ってます
黙ってます。

そうそう そうそう… そう そう!
今 今 今 今… 今!

そう そう そう そう! ポ~ン!」。

「やかましいな ほんまに もう!
お前 撃つぞ!」。

「あっ すいません すいません。
申し訳ないです はい。

どうぞ好きなように撃って下さい…」。
ハハハハ!

(足音)

いらっしゃいませ。
お団子いかがですか?

おいしいですよ。

さくら もうええで。

ちょっと早いけど 店じまいしようか。
うん。

今日も
寅ちゃん 帰ってけえへんのやろか?

もう5日目やで?
あのお金 返しに行ってから。

何か あったんやろか?
警察に届けた方がええかしら?

案外 あの金 ネコババして
また家出したとか?

まさか。 お兄ちゃん
ネコババするような人と違うと思うけど。


私 出るわ。

はい 石切商店街のくるまやです。

☎おう さくらか!
お兄ちゃん!?

☎しばらくやな。 どうや?
そっちは変わりのう やってるか?

何してんの? お兄ちゃん。
どこにいてんの!? 今。

いや どこて
青観先生のうちで 京都で居残りや。

何で今まで連絡してけえへんかったん。
電話ぐらいできたやろ?

すまん すまん。
先生のおつきあいで忙しかったんや。

嵐山へ紅葉狩りに行ったり 祇園通いで
なじみの芸者まで出来てしもうてな。

祇園通いて…。 大丈夫なん?
お兄ちゃん そんなことしてて。

兄ちゃん
こっちで機嫌ようやってるから。

今日も これからな
スッポン鍋 食べに行くのや。

ああ そのうち 帰るから…
ああ 心配せんといて。

おっちゃんらにも
よろしゅう言うといてな。 ああ ほなな。

ちょっと お兄ちゃん!
☎(通話が切れる音)

切ってしもた!
ええっ?

青観先生とこに いてんのかいな。

機嫌よう やってるから
心配せんかてええって。

あの偉い先生に迷惑かけてんのと
ちゃうやろか?

いや 寅のやつ 調子ええ上に
結構 気ぃ付くとこあるさかいな。

あのじいさんも
ちょっと変わったとこあるさかい

案外 仲ようやっとんのと ちゃうか。

そやったらいいけど…。

満男
今日は早かったんやね 塾 終わんの。

どうしたん? 何かあったん?

そんなに気にせんかて平気や 満男君。

下から2番目いうことは まだ
下に1人おるいうことやろ? ハハハ…。

うん?

せやけど あまりにも ひどいんとちゃう?

試験の成績の順番を クラスみんなの
目の前で 先生が発表するやって。

塾としては 子どもたちの奮起を促そうと
してることなんでしょう。

満男 これが今のお前の実力や。

悔しかったら頑張って
次の試験で取り返したらええんや。

僕… 今度の試験も頑張ったんや。

こんな成績やったら
もう塾に来んかてええて言われたて。

そこまで言われて
無理に続ける必要ある?

簡単に辞めてしもたら
ええちゅうもんでもないやろ。

そうやけど…。

僕 ほんまは
私立の中学にも大学にも行きたない。

塾なんか辞めて
いつかのおっちゃんみたいな

画家になりたい。

いつかのおっちゃんって
青観先生のこと?

おっちゃん 僕の描いた絵見て

面白い絵や こういう面白い絵の描ける
子どもは なかなかおらん

言うてくれたんや。
えっ あの青観先生が!?

ほんまか 満男!

この絵 見て
おじいさんが そう言うたん?

うん。 こっちに お手本も描いてくれた。

(一同)おお~!

これ 青観先生の絵か? 何十万もする…。
へえ~!

こら お前 持っていくな。

ちょっとくらい かまへんがな
拝ましてくれても。

ほほう~。 へえ~!

絵のことなんか お前
これっぽっちも分からへんくせに

お前 見てどないするんや。 触るな。
返せ。

いやいや… ちょっと見して見して…。
何をするんや 見るな 触るな。

値が落ちるがな。
見たいっちゅうてんねや!

何をすんのや お前… 息をかけるな!
何やねんな もう…。

あっ!

お前 何ちゅうことをしてくれるんや
お前!

何十万もする絵やぞ お前
青観先生の お前…。

そっちが乱暴にひったくるよって。

満男が描いてもろた絵やぞ お前。
お前に何の権利があるんじゃ。

この責任
どないして取ってくれるんじゃ!

上等や。
弁償したらええねやろ 弁償したら。

よう言うた! えっ? 何十万
いやいや 何百万かも分かれへんねんぞ?

わしも経営者の端くれや
それくらいの金…。

用意できんのか?
お前の真っ赤っかの赤字会社で。

何…!
タコ壺 放り込んだろうか お前!

やめて! みっともない!

今は お金の話 してんのと
違うでしょう!?

満男の問題を話し合うてるんやないの!

ぐっすり よう寝てるわ。

どうする? 明日から 塾の方は。

さあ? あの子のことやから 案外
明日になったら ケロ~ッとしてるかも。

そやけど絵描きになりたいやなんて。

青観先生も
余計なこと言うてくれたもんや。

ほんまに才能あるんかも分かれへんよ。
池内青観に褒められたんやから。

やっぱり 君と義兄さんは兄妹やな。

そういう夢みたいな楽観的なとこ。

あら 夢 持ったらあかん?

あかんことないけど
それだけじゃ食べていけへんよ。

夢持ってやりましょうよ 満男には。
まだ小学生やねんから。

ありがとうございました。
また お待ちしてます。

女将さん… 寅さん 帰ってきました。
えっ!?

よう 久しぶり。

お兄ちゃん!
何してたん ひとつき近うも帰らんと。

まあ いろいろな。

おっちゃん おばちゃん!

お兄ちゃん 帰ってきた。

ねえちゃん 2階のわしの部屋に
トランク 一つ置いてあんねん。

それ持ってきてくれへんかな?
トランクですか?

そや 頼むわ。

おっちゃん 早う…。

お~ 寅 やっと帰ってきたか。

そないなとこに立ってんと
座敷に早う上がり。

ええんねん ここで。 ちょっと今日は
お別れの挨拶に寄っただけやから。

お別れて どういうこと?

わし… 旅に出るわ。

何言うてんの?
今 京都から帰ってきたばっかりやんか。

わし… 青観先生と
けんかしてしもたんや。

けんか? あの絵描きの先生とか?

どういうこと? ちゃんと聞かして。

つい昨日まで 仲ようやってたんや。

遊んでばかりと違うねんで わし。

金は持ってても さみしい独り暮らしの
先生の話し相手んなったり

飯作ったり 庭掃除したりなんかも
してたんや。

それが何で けんかになったんや?

祇園に ぼたんちゅう名前のな
きっぷのええ芸者がおってな

その母親も祇園の芸者で
昔 先生と ええ仲やったらしいんやわ。

それで わし つい… ほんまに ぼたんは
その芸者との間に出来た娘

隠し子と違うんかいて
言うてしもたんや。

そしたら真っ赤になってな

「失礼なことを言うな。
お前に ぼたんの母親の何が分かる!?」。

そう言うてな 怒りだしよってな。

それで?
売り言葉に買い言葉や。

「じいさん マジになんなよ
シャレの分からんやっちゃなあ。

それとも
そんなに怒んのは図星のせいか?」って

わしが そない言い返したらな
大げんかになってしもたんや。

底抜けのアホやなあ お前は もう。

ほんまや。 もし青観先生が

心から その芸妓さんのことを
愛してたとしたら

そんなこと言われて許せると思う?

お前の言うとおりやわ。

京都から ここまで帰ってくる間
電車の中で むちゃくちゃ反省したわ。

ひょっとしたら わしは
先生の一番大切な思い出を

傷つけてしもたん違うかなと思うてな。

そこまで分かってるんやったら
ちゃんと 先生に謝ったら?

あかん。
恥ずかしいて 合わせる顔あらへん。

冗談でも 言うてええことと
悪いことがあんねんもん。

ここら辺で 渡世ちゅう名の
人間修業の旅に戻ることにするわ。

寅ちゃん
そないなこと言わんと ここにおりぃな。

30年ぶりに戻ってきたんやないの。

もともと長居するつもりで
帰ってきたわけやあれへん。

誰も
お前のことを居候やなんて思てへんで。

お前は ここの跡取り息子なんやから。

おっちゃん おばちゃん
ほんまにありがとう。

いつか きっと
わしの成長した姿 見てもらうからな。

それまで 2人仲よう 達者で暮らしてや。

お兄ちゃん ほんまに行ってしまうの?

わしみたいな出来の悪い
アホな兄貴が近くにおっても

お前に迷惑かけるだけや。
そやけどな さくら

遠い旅の空の下でも
お前のことは 一日たりとも忘れへんで。

何も言わんと送り出してくれ
わしのためにな。

さいならや。 また会う時 楽しみにな。

お兄ちゃん お餞別。

かたじけない。 ありがたく頂くわ。

亭主 大事にしたりや。

甥の満男にも よろしくな。

あっ そうや…
青観先生 満男の絵 褒めてたわ。

なかなか見どころある言うて。
わしも うれしかったわ。

そしたらな。

♬~

お兄ちゃん ほんまに行ってしもた。

30年ぶりに帰ってきよったと思たら
また行ってしまいよった。

ああいうのを ほんまもんの風来坊
フーテンっちゅうのやな。

あいつは フーテンの寅や。

≪寅さ~ん! 寅さ~ん!

ぼ… ぼたん! ぼたんやないか!

寅さ~ん。

よかった 寅さんに会えて。

ここ来たら
きっと寅さんに会えると思うててん。

うん。 よう来たな ぼたん。

うち 寅さんに会いたかってんえ。

あれ どっか出かけはるとこ?

えっ? どこも行けへんで。
ちょっと散歩してたんや。

さあ わしのうち こっちや。
寄って寄って。

いや~ 久しぶりやな ぼたん。

祇園 いつ来てくれはんのやろと思て
待ってたのに この薄情者。

いやいやいや 悪い悪い…。
いや わしも忙しかったんやて。

ほんまに?
うん。

うちと一緒になる約束は どないすんの?
いやいや…。

困った時はお互いさまやがな。
何ぼ要るねん。

400万。

お兄ちゃん やめて!

ちょっとでも助けてやろうと思わんのか。

短い間やったけど
ほんまに世話になったな。

(ノック)

おはようございま~す。