ドラマログテキストマイニング

テレビ番組(ドラマ)の字幕情報を対象に、テキストマイニングの研究をしておりますので、解析結果の公開をメインに関連グッズを交えた構成で記事にしてます。また、解析結果の信憑性が確認できるよう、解析用ソースも部分引用し掲載してあります。

おしん 一挙再放送 第41週・再起編 乙羽信子、田中好子… ドラマの原作・キャスト・音楽など…

おしん 一挙再放送▽第41週・再起編』のテキストマイニング結果(キーワード出現数ベスト20&ワードクラウド

  1. 百合
  2. 商売
  3. 希望
  4. 初子
  5. 田倉
  6. 道子
  7. 結婚
  8. 気持
  9. 東京
  10. 親父
  11. 一緒
  12. 仕入
  13. 今日
  14. 時代
  15. 自分
  16. お前
  17. 今夜
  18. 次郎
  19. お店
  20. 征男

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おしん 一挙再放送▽第41週・再起編』のEPG情報(出典)&解析用ソース(見逃した方はネタバレ注意)

 

解析用ソースを読めば、番組内容の簡易チェックくらいはできるかもしれませんが…、やはり番組の面白さは映像や音声がなければ味わえません。ためしに、人気のVOD(ビデオオンデマンド)サービスで、見逃し番組を探してみてはいかがでしょうか?

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おしん 一挙再放送▽第41週・再起編[字]

主人公おしんの明治から昭和に至る激動の生涯を描き、国内のみならず世界各地で大きな感動を呼んだ1983年度連続テレビ小説。全297回を1年にわたりアンコール放送。

詳細情報
番組内容
昭和26年、戦死したおしんの長男・雄(ゆう)の戦友であった川村が不慮の死をとげた。川村が雄の代わりにと、おしん乙羽信子)に譲った土地は、川村の形見としておしんに遺(のこ)され、それがおしんと仁(山下真司)にとって、新しい商売の足がかりになったのである。そして、4年の歳月が流れた。おしんと初子(田中好子)と希望(のぞみ)の3人は、雄の命日の墓参りに来ていたが、そこに仁の姿はなかった。
出演者
【出演】乙羽信子田中好子山下真司,塩屋俊,丘山未央,家中宏,菊地浩二,【語り】奈良岡朋子
原作・脚本
【作】橋田壽賀子
音楽
【音楽】坂田晃一

 

 


♬~
(テーマ音楽)

♬~

昭和26年 おしんの長男 雄の
戦友であった川村が

不慮の死を遂げた。

川村が雄の代わりにと
おしんに譲った土地は

おしんや仁にとって 新しい商売の
足掛かりになったのである。

そして 4年の歳月が流れた。

♬~

(希望)雄兄さんが
フィリピンで戦死してから

ちょうど 10年になるんだね。

(おしん)もうすぐ
父さんも雄も 十三回忌だね。

つい 昨日の事のように
思えるのに…。

年を取る訳だ。

今頃は 雄と川村さんが

2人で 思い出話してるだろうね
きっと。

川村さんのご遺族は
とうとう 見つからなかったの?

うん。 母さんと初ちゃんで
お骨をもらいに行って

ここへ お墓も建てたんだけど

まあ 親戚の人が
大勢 現れてね

川村さんの遺産を
相続したんだけど

お墓の事を聞いてくる人は
誰ひとり いなかった。

勝手なもんだよ。

(希望)はい。
うん。

仁 とうとう 来なかったね。

雄の命日だというのに
大事な用があるからって!

どんな用があるか知らないけど
そういう子なんだよ!

仁は 商売熱心だから。
いくら 忙しくたって

今 駅前で あれだけの商売が
できるってのは

誰のおかげなのよ。
それ考えたら

何を差し置いたって お墓参りに
来るのは 当たり前じゃないか。

(初子)母さん…。
いや そりゃね あの土地は

川村さんが母さんにって
残してくれた土地だよ。

でも 川村さんは せめて
雄の代わりに 何か償いたい…

雄の気持ちになって
贈って下すったんだよ。

母さんは
雄の形見だと思ってるんだよ。

仁には そんな事 てんで
分かっちゃいないんだから。

(希望)仁だって 分かってるよ。

田倉商店が
あそこまでになったのだって

仁が頑張ったから…。

あんたたちがね
そんなふうに おだてるから

あの子が
いい気になっちゃって…。

相変わらず 厳しいんだな
母さんは。

そうなのよ。
私たちは 仁ちゃんが

いい跡取りになったと
喜んでいるのに…。

それより あんたの方は
どうなの? うまくやってけそう?

まだまだ 海のものとも
山のものとも 分からないけど

先生から やめろって
引導 渡されないうちは

続けるつもりだよ。
そう。 弟子入りして

5年にもなるのに
まだ クビにならないんだから

見込みがあるんだろうね。

母さんの還暦のお祝いには
僕の焼いた ぐい飲みで

みんなに 祝杯を
挙げてもらえるようになるから。

それを楽しみにして…。

あっ 今日は 外泊のお許し
もらってきたの?

久しぶりだからね。
そう。

じゃあ ゆっくり
積もる話をして…。

(次郎)
ホウレンソウは 何たって 今日のは
生きがいいんだ これがまた!

奥さん 大根 いかがですか?
大根!

(仁)はい お待ち遠!
はい どうも!

はい いらっしゃい!
はい はい はい!

♬~

いらっしゃいまし!
(次郎)あっ お帰んなさいまし!

ただいま。 いらっしゃいませ。

おっ! お前 わざわざ
墓参り 行ってくれたのか?

父さんと雄兄さんの
命日くらいはね。

お参りったってさ 希望と
初ちゃんと 私だけなんだからね。

どうしても抜けられない会合が
あったんだよ。

あっ いらっしゃいまし!
何にしましょう?

俺 大学 出てないだろ。 だから
人に バカにされないように

必死になって 勉強しないとな。
大学なんか出てなくても

やろうと思えば 何だってできる。
そういうとこ 見せてやらなきゃ。

これだけの店 やってるんだ。
立派なもんだよ。

(征男)ただいま 帰りました!
あ~ お帰り!

(希望)お帰り!
(征男)あっ いらっしゃい!

仁さん これ 今日の注文です。
これ 明日の注文なんですけど

結婚式の披露宴の材料だそうです。
2組もあるんですよ 明日。

あっ そう。 御祝儀物は ちゃんと
紙に書いといてちょうだいよ。

仕入れの時の心積もりがあるから。
ああ。

母さん まだ 自分で
仕入れに行ってるの?

競りは 何てったって
年季が入ってなきゃね。

浜のお内儀さんが亡くなって
寂しくなっちゃったけど

まだまだ 昔からのおなじみさんが
大勢いるから。

それに 野菜だってね
直接 農家から仕入れた方が

安くて新鮮だから 仕入れは
母さんが回って歩いてるんだよ。

いい年して まだ 自分で
トラック 運転していくんだからな。

いい加減に やめてほしいんだけど
言っても聞きゃしないよ。

おい 次郎!
(次郎)はい!

商売は 何てったって
仕入れが第一なんだから!

まだまだ 若い者には
任せられないよ!

あっ 奥 行って お茶でも飲もう。
うん。

よいしょ。

(百合)お帰りなさいませ!
ただいま。

百合ちゃん 元気でやってるかい?
いらっしゃいませ。

百合ちゃん 今夜 私 やるからね
そのかわり あんた

お店 手伝ってちょうだい。
はい。 今 お湯 沸かしますから。

いい いい。 そんな事 私やるから。

今のうちに 着替えとかなきゃ。
百合ちゃん。 はい!

朝 言ったとおりの献立で
いいから。

お店が暇になったら 私も手伝う。

今日はね 希望が来てるから
私がやるよ。

あんた お店 お願いね。
はい!

百合ちゃん 少しも変わらないね。
来た時は 17って言ってたけど

もう 3年になるんでしょ?
いい娘だよ。

去年ね 禎が 名古屋の女子大
入ったんで うち 出たでしょ。

百合が
自分の娘みたいな気がしてね。

お母さんが亡くなって
お父さんが再婚したんで

邪魔にされて うちへ
奉公へ来たらしいんだけど

暗いところは 全然ないし
ホントに いい娘に来てもらって

ありがたいと思ってるのよ。
それにね 初ちゃんが

かわいがってるから
懐いちゃって。

あ~ そういえば
初ちゃん 言ってたな。

初ちゃんが 田倉に
奉公に来た時の事 思い出して

ふびんで しかたがないって。
母さんもね 百合が来た時に

昔 奉公してた時の
自分みたいな気がしちゃってね。

いずれ いい人を見つけて
お嫁入りさすまで

大事に うちで
面倒 見てやるつもりだけど…。

希望 あんた 百合みたいな娘
好きなんじゃない?

冗談じゃないよ!

僕なんか いつになったら一人前に
なれるかも分からないのに

そんな のんきな事…。
仁も希望も もう 26よ。

そろそろ 考えたって
いい年頃なのに

まあ 仁も仁で 「商売 商売」って。

仁は あれで
すごく 母さん思いだから

母さんに 嫁さんの苦労を
させないようにと

仁は 仁なりに
考えてるんじゃないの?

そんな殊勝な子ですか 仁が!
フフフフ! あ~ 嫌だ 嫌だ。

母さん もう さんざん
姑さんで苦労したっていうのに

いつの間にか
母さん 姑の立場になってんだね。

あ~ 年は取りたくないね。
ハハハハハハ!

煮てよし 焼いてよし
天ぷらによし!

奥さん どうだい?
半分の予算で 倍にも3倍にも

食卓をにぎわす トビウオとイナダ!
ハマチも安いよ!

百合ちゃん!
百合ちゃん このカレイ

あちらのお客様ね! はい!
いらっしゃいませ!

お返しになります!
ありがとうございました!

お待たせしました どうも!
あんた! これ 釣り 足らへんわ!

旦那さん! 何ですか?
釣り 足らへん!

すいませんね。 いくらですか?
15円 足りない。

15円。 はい。
どうも ありがとうございました。

しっかりしてよ。 はい 奥さん!

いらっしゃいませ!
何が よろしいですか?

いらっしゃいませ!
何に致しましょうか?

母さんの料理なんて
久しぶりだな。

まだまだ ありますよ。
へえ。 タイの煮つけか~。

あっ 母さんも どう?
うん 頂くよ。

はい。
はい ありがとう。

相変わらず 夕方は戦争だね
まるで。

母さん。 今日は 早めに
刺身になる物 出てしまったね。

これからは 生で食べられる物
もっと

増やしていいんじゃないかな。
あっ それからね

勤め帰りの男客が
結構 いい物 買っていくんだよ。

やっぱり 景気が
上向いてるんだよ。 あっ そう。

じゃあ そのつもりで
明日から 仕入れの方も

ちょっと変えてみるかね。
うちの先生の作品も

最近は 高い物が
どんどん出るようになったもんな。

金 持ってるやつが
増えてきたんだろうね。

世の中 豊かになってきたんだよ。

うちも いつまでも こんな
割に合わない商売してたら

魚屋と八百屋で終わってしまう。
ほら また始まった。

魚屋と八百屋で
あれだけの商売ができて

何の不足があるんだよ。

母さん うちは
100坪からの地所があるんだよ。

それも 駅前の一等地だよ。

やり方によっちゃ
もっと有効な使い方があるんだよ。

もったいないんだよな
こんな商売してたら。

もう 夢みたいな話は おやめよ。

このまま 地道に商売を続けてたら
つまずく事はないんだから。

これだからな。
あんただってね

結婚して 新しいうちを建てても
地所は あるし

費用だって 母さん
ちゃんと取ってあるんだから。

妙な欲 出したら
ろくな事はないよ。

母さんにはな 時代が
どんなスピードで変貌してるのか

分からないんだよ。
すぐ これなんだから…。

二言目には
母さんの事 「古い 古い」って…。

何 考えてるんだか
危なっかしくて もう。

母さん 俺 明日 東京 行ってくる。

4~5日 家 空けるから
店の方 頼むよ。 仁…。

(仁)遊びに行くんじゃないよ。
勉強しに行くんだよ。

仁 お前…。

いや 俺もな そろそろ
自分の足で歩いてみたいんだよ。

26だもんな。

ほら 飲めよ!
うん…。

すいません お世話かけちまって。
いいんだよ。

今 お水 持ってくるからね。
母さん 仁のやつ…。

いいんだよ 仁の事は。
あの子ね いまだに

大学 出てない事 気にして
焦ってるのよ。

まあね
仁が 何かやりたいんだったら

やらせてやってもいいと
思ってるの。

あの子の気が済むんなら…。
あんたが心配する事じゃないよ。

初ちゃん? どうかしたの?

いいえ。
お手洗い 行こうと思って…。

♬~

昭和30年。 戦後も 10年たって

世の中は
急速に変貌しつつあった。

田倉商店も 時代の波と共に
変わろうとしていたが

その家族も また 新しい問題を
抱え始めていたのである。

♬~
(テーマ音楽)

♬~

(初子)お帰りなさい!
(おしん)はい ただいま。

お疲れさまでした。
はい。 よいしょ。

よいしょ。

仁は?
出かけるって 支度してます。

どこへ?
東京ですよ!

母さん
賛成なさったじゃありませんか!

夜行で たつって
言ってたじゃないの。

途中だから 名古屋で
用足し していくんですって。

母さん?

(希望)お疲れさま。
(百合)お帰りなさいませ。

仁! あんた 母さんが 何時頃
仕入れから 帰ってくるぐらい

分かってんだろ? せめて
魚をトラックから降ろしてから

出かけようぐらいの気持ちが
あったっていいんじゃないのかい。

(仁)もう 洋服 着ちゃったんだよ。
それに 次郎も征男も

もうすぐ出てくるよ。 あいつらに
やらせればいいんだよ。

それまで 太陽にさらしとけって
言うの?

次郎や征男が出てきた頃には
もう 魚 腐っちゃってるよ。

(希望)僕が手伝うよ。
いいんだよ。 いざって時に

私と初ちゃんで やるんだから。

私はね 仁の気持ちの事を
言ってんだよ。

東京だ 名古屋だって
何しに行くんだか知らないけど

肝心の商売 そっちのけで!
母さん。

東京に行きたいのは
仁なりの理由があると思うから

何の詮索もしないで
出してやろうと思ってんだけど

それならそれで
できるだけの仕事をして

迷惑をかけないように
しようっていうのが…。

もう いい加減にしてくれよ!
出かける間際まで

つまらない事 くどくどと!
どうせ出してくれるんだったら

もっと機嫌よく
出してくれたっていいだろ!

ゆっくりしてってくれ。

母さん
笑って 見送ってやりなさいよ。

せっかく出かけるのに 仁だって
気分悪いじゃないですか。

悪いな 初ちゃん 手伝わなくて。
店と母さんの事 頼むよ。

ねえ 何の用があるの? 東京に。
うん? うん…。

たまには
東京の空気も吸わないとね。

こんな田舎町で ウロウロしてたら
時代に取り残されるんだよ。

帰ってくるんでしょうね?
変な事 言うなよ。

4~5日 行ってくるだけだよ。
仁ちゃんは 東京へ行って

行方不明になっちゃった前科が
あるからね。

母さんに
お土産 買ってらっしゃいよ。

いいよ。 どうせ ぜいたくだって
叱られるのが オチだよ。

いいの。 口では そう言ったって
うれしいもんなんだから。

うん…。

気を付けてね。
東京っていったって

髪結いのお師匠さんも 健さん
亡くなって

お土産 言づける人が
いなくなったんだから

寂しくなったよね…。

母さん 忙しい時に
勝手な事して 申し訳ない。

また 帰ってきたら 頑張るから。

ああ…。
(仁)じゃあ 行ってきます。

行ってらっしゃい。 じゃあな。
(希望)行ってらっしゃい。

(百合)行ってらっしゃいませ。
(初子)行ってらっしゃい。

さあ 片づけてしまおう!
(希望)やろう やろう!

いいよ 希望!
(希望)いいから! やるよ!

そうかい? 悪いね!

初ちゃん 何してんの? ほら!
あっ ごめん。 ここ 置いて!

(希望)はい。 何だ あんたも
朝御飯 まだだったの?

母さんと一緒に食べようと思って。

相変わらず すごいね 母さんは。
朝早く起きて 出かけて

あれだけの魚
一人で仕入れてくるんだもんな。

でも 何て言ったって 今は楽だよ
トラックが運んでくれて。

昔 母さんが行商してた頃は
浜と町の間を

歩いて往復したんだからね。
まあ それ思ったら

今の若い者ときたら…。
母さん!

それを言っちゃいけないの!
もう 時代が違うんだから。

何か言うと
二言目には それなんだから!

(希望)そのかわり 今は今で
別の苦労があるんだから。

物さえあれば売れるって時代は
終わってしまったんだ。

物が有り余ってくると
頭を使って 商売しないと

たちまち 蹴落とされてしまう。

仁だって
そういう競争の激しい時代に

どうしたら生き残れるか
それを考えてるんだよ。

なにもね 仁が働かないって
言ってんじゃないんだよ。

人一倍 商売も熱心だし
いろいろ 勉強もしてるようだし。

でもね どこか違うんだよね
私たちと…。

何て言ったらいいかね

簡単に 利潤を上げる事を考えて
何でも そろばんが先なんだから。

商売人なら 当然だよ。 立派な
母さんの後継者じゃないか。

文句 言うなんて ぜいたくだよ。

そういえばね 母さんも
終戦後 食べる物がない時に

なんとか お金をもうけなきゃって
遮二無二 担ぎ屋をやった。

仁にはね それが身にしみて…。
仁の事 言えた義理はないよね。

母親の私が悪いのかもしれない。
母さん…。

でもね 小さい時から
雄は 気持ちの優しい子だった。

でも 仁はね…。
(希望)母さん。

雄兄さんと仁を 比べちゃ
いけないって言ったでしょ。

仁にだって いいところは
たくさん あるんだから。

泣いても笑っても 仁しか 田倉を
継ぐ人は いないんですよ。

仁を信頼してやらなきゃ。
ねっ 母さん。

ごめん ごめん。 久しぶりに
帰ってきたっていうのに

つまんない事 耳に入れて…。
でもね こんな愚痴 言えるの

あんたしか いないんだから。
僕は 母さんを裏切って

勝手な事をしている
不肖の息子です。

何にも 母さんの力には
なれないけど

母さんの愚痴を聞くくらいなら
いつでも!

ありがとう。

おっ!

(道子)どういう事? 今夜の汽車で
落ち合う約束なのに

「急に出てこい」なんて
電話なんだもん。 慌てちゃった。

うん…。 少しでも早く
会いたくなったんだよ。

いや 考えてみたらさ 東京じゃ
君の親父さんと ずっと一緒だろ。

二人っきりになる時間
ないんだもん。 大丈夫よ。

うちは 父さんも母さんも
仁の事は認めてくれてるんだもん。

ホテルだって ちゃんと
同じとこ とってあるし。

いらっしゃいませ。 レモンティー
はい。

でも よく出てこられたわね。
お店 忙しいんでしょ?

うん。 うちはね
おふくろさえ いりゃいいんだよ。

おふくろが 牛耳ってる店だから。

セミナーの事は ちゃんと話したの?
お母さんに。

ううん。 根掘り葉掘り 聞かれると
うるさいからさ

ただ 「東京へ行く」って。
へえ 大したもんじゃないの!

その調子で
私たちの事も話してほしいわね。

分かってるよ。 ただ こういう事は
タイミングってものがあるからな。

うちじゃね 父さんったら
田倉商店の事

何もかも調べ上げたらしいわよ。
地の利もいいし

何たって 100坪っていう広さは
十分に 将来性があるって。

それで 急に 私たちの結婚にも
ゴーサインが出たんだから。

俺が 中学 ろくに出てない事は?
もちろん 調査済み。

うちの父もね
小学校しか 卒業してないの。

大阪の衣料問屋に奉公して
そのあと 独立して

1代で 今の衣料品会社
作った人だから。

見習わなくちゃな。

「これからは
本人の勉強次第だから」って。

あのセミナーも 父が 是非 仁にもって
申し込んでくれたんだから

せいぜい 真面目に
勉強して下さいよ。

うん…。 いや 講習会には
興味あるんだけど

君の親父さんと
ずっと一緒ってのがな。

ぼろ 出さないようにしないとな。
大丈夫! 自信 持って!

うまくいったら 親父が
スポンサーになってくれるわよ。

うん…。
私のためにも頑張って!

うん…。

汽車の時間まで どうする?

♬~

これ 縫い直した着物。 それから
下着も買って 入れてあるから。

いつも すいません!

これは 「欲しい物があったら
買いなさい」って 母さんが。

いいよ。 このごろは 先生から

小遣いぐらい
もらえるようになったんだ。

母さんの気持ちよ。 それが
母さんの楽しみなんだから。

じゃあ…。

初ちゃん こんな事 言ったら
気を悪くするだろうけど

仁が 嫁さん もらったら 初ちゃん
いづらくなるんじゃないかな。

もし いい人がいたら
結婚する事も考えた方が…。

私は 一生 母さんのそばにいる。
それでいいの。

今は そのつもりでも 仁だって
独りでいる訳にはいかないんだよ。

分かってる。 でも
もし いい人が来てくれたら

仲良く やっていけるかも
しれないし…。

どんな人が来るか
分かりゃしないじゃないか。

その時 慌てたって…。
大丈夫。

仁ちゃんだって ちゃんと 田倉の
うちにふさわしい人 選んでるわ。

仁 いるの? そんな娘が。
シッ! 大きな声 出さないの。

知ってるのか? 初ちゃん。

まだ ないしょ。
母さんも ご存じないんだから。

そうか…。
初ちゃんが安心してる娘なら

きっと 母さんだって 気に入るさ。

いずれ 仁ちゃんから
話があったら 知らせるわ。

うん。
じゃあ 母さんにも よろしく。

あっ もうすぐ 母さん 野菜の
仕入れから帰ってくるのに…。

百合ちゃん いろいろ ありがとう。

料理が うまくなったんで
びっくりしたよ。

初子さん
いろいろ 教えて頂いてます。

やっと 田倉の味 覚えてくれたの。
もう 立派な田倉の人間よ。

じゃあ。
うん。

ありがとう。 もう いいわよ。
ここんとこ 随分 凝ってます。

運転なさるのが こたえて
おいでなんじゃないんでしょうか。

そうだね。
自分じゃ 気が付かないけど

やっぱり 神経 遣うんだね
運転ってのは。

誰かと
運転 お代わりになった方が…。

みんな 忙しいから。
でも お体 壊されたら…。

百合ちゃんだけよ
そんな事 言ってくれるの。

百合ちゃん お先に。

百合ちゃんも 冷めないうちに
入ってしまいなさい。

あ~ 楽になった! ありがとう。

あんたも 早く お風呂 入って
お休み。

はい。 じゃあ 頂戴致します。

ああ…。

あの娘が 嫌な顔一つしないで
もんでくれるから

おかげで 私は よく眠れる。

母さん。 百合ちゃんの事
どう お思いですか?

私は 素直だし 控えめだし
優しいし

近頃じゃ 珍しい娘だと。
ホント!

仁ちゃんのお嫁さんには
申し分ないかもしれませんよ。

初ちゃん…。
いくら あんたが 百合ちゃん

かわいがってるからって
まさか そんな…。

お嫁さんにするのは 仁なのよ。

仁が 「うん」って
言うはずないじゃないの。

仁ちゃんが結婚したいって
言ったら? 母さん。

突然 私が こんな事 言うのは

仁ちゃんと百合ちゃんが
普通の仲じゃないから…。

一応 母さんの気持ちも
聞いときたいと思って…。

私 だいぶ前から
おかしいと思ってたんです。

やっぱり 本当でした。

何か 証拠でもあるの?
なかったら こんな事 言いません。

いきなり
仁ちゃんから聞かされるより

前もって 母さんのお耳に
入れといた方がいいと思って…。

私は 百合ちゃんなら いいと…。

おしんには
思ってもいない話であった。

ただ 商売の事だけ考えてきた
おしんには

初子の話は
大きなショックだったのである。

♬~
(テーマ音楽)

♬~

(おしん)仁が 百合ちゃんの部屋
入っていくの 見たの?

(初子)気が付いたのは
1か月ほど前なんですけど

たまたま 夜 目が覚めて
お手洗いに起きたら

百合ちゃんの部屋から
男の声がするんです。

ホントに びっくりしました。

だって 百合ちゃんが
そんな大それた事するなんて…。

とにかく どんな男か確かめたくて
男が出てくるの 待ってたんです。

そしたら 仁ちゃんが。
とても信じられなくて…。

よっぽど 百合ちゃんに 直接
聞いてみようと思ったんです。

でも もう少し 様子を見て

はっきりした証拠を
つかんでからと…。

そしたら それから 何度も

仁ちゃんが 百合ちゃんの部屋に
入っていくのを…。

なぜ 今まで 私に黙ってたのよ。
そんな ふしだらな…。

私だって
そう思った事ありました。

でも 仁ちゃんだって もう26です。

同じ屋根の下に
年頃の娘がいたら

そういう事になったって
無理は ないし

百合ちゃんだって
仁ちゃんの事が好きだったら

女として ごく自然な
成り行きだし…。 分かったわ。

今夜 百合と ゆっくり
話し合ってみるわ。
母さん!

百合ちゃんに聞くより
仁ちゃんに聞く方が…。

百合ちゃんを
問い詰めるような事したら

かわいそうですよ 百合ちゃん。

仁ったら
のんきに 東京なんか行って!

どう 責任 取るつもりなんだろ?

帰ってきたら
ただじゃ置かないから。
母さん!

(百合)お風呂
ありがとうございました。

火を落として 休ませて頂きますが
何か…。

いいのよ! いいの いいの!
今日も一日 御苦労さま。

ゆっくり おやすみなさい。
はい。 おやすみなさいませ。

百合!
母さん!

あの~ それからね ほら あれ…
戸締まり もう一度 見回ってみて。

今夜は 女ばっかりで
不用心だから。

はい!

母さん 百合ちゃんは
何の罪もないんですよ。

仁ちゃんから
ちゃんとした話があるまでは

知らん顔してて下さい!

(ため息)

自分の息子だっていうのに 仁が
何を考えてるんだか さっぱり…。

東京へ行った理由も
分からないし…。

お店をやってたら たまには
東京の様子も見てこなくちゃ。

何を見てくるって言うのよ。

この町には町の
商売のやり方があるのよ。

新しくて いい物を
少しでも安く売る。

それよりほかに
何があるって言うの?

女の事だって そうよ。

なにも 泥棒猫みたいな事
しなくっていいのに。

お互いに 好きだったら
一緒にさせてあげれば

いい事じゃないですか。
初ちゃん…。

仁ちゃんだって そのつもりで。

でも 母さんの気持ちも
分かるから

なかなか 切り出せないで
いるんですよ きっと。

母さんが反対なさると思って。

当たり前よ。
よりによって 百合なんかと…。

いくらでも
いいお話があるっていうのに。

母さん。

母さん 変わった。

母さんは
そんな人じゃなかったのに…。

雄さんと私の事
父さんに反対された時

母さん かばってくれた。
あんな うれしい事はなかった。

でも お店が大きくなったり
財産が出来たりすると

母さんみたいな人でも
そんなふうになっちゃうのかしら。

私 百合ちゃんって
とっても いい娘だと思ってます。

ここへ奉公に来て3年間 随分
いろんな事 言ってきたけど

膨れっ面なんか
一度も見せた事なかったし

何よりも 素直だし…。

人間って 勝手なもんだね。

母さんだって
父さんと一緒になる時に

佐賀のお母さんに
さんざん 反対されて…。

あんな悔しい思いした事
なかったわ。

反対されたから 思い切って
結婚できたのかもしれない。

それを忘れた訳じゃないのに

いつの間にか 佐賀のお母さんと
同じ事 言ってんだから。

確かに 百合は いい娘よ。
私も 気に入ってるわ。

でも いざ 仁の嫁となると
今までに いくつも

いいお話があったもんだから
つい 欲が出て…。

仁だって
大した男じゃないのにね。

母さん。

仁の嫁は 田倉のうちの事情を
よく知った人が

一番いいに決まってるし

百合ちゃんだったら 誰よりも
初ちゃんに懐いてるし…。

仁が 百合ちゃんを見込んだのは
間違ってやしない。

仁は 上出来かもしれないよ。

じゃあ 母さん
賛成して下さるんですか?

とにかくね
しばらく そっとしとこう。

そのうち
仁から 切り出すだろうから。

よかった~。

ホント 言うと 私も どうしたら
いいのか 随分 迷って…。

母さんに知られたら
潔癖な母さんの事だから

ただじゃ済まないだろうし…。

たとえ 仁ちゃんから
話があったところで

突然じゃ どんな事になるか。
それが心配で…。 そうだね。

さっきも
母さん カ~ッとなっちゃって

仁がいたら
大騒ぎになるとこだったよ。

初ちゃんが話してくれたから
いくらか 冷静に聞けたけど。

母さん。

もし 百合の前で
反対でもしてたら

百合の一生を
傷つける事になってたね。

そうですよ。 どうせ 一緒にして
あげなきゃならないんだったら

気持ちよく 許してあげた方が…。

百合は おとなしい娘だから

商売には 向かないかも
しれないけど

しっかり
家庭は 守ってくれそうだし…。

お店の事は 仁ちゃんが
やっていくでしょうし

まだまだ 母さんだって
元気なんですもん。

私は 百合ちゃんみたいな人が
一番 田倉には

ふさわしいような気がするんです。

あ~ 仁の結婚なんて まだまだ
先の事だと思ってたのに

あっという間だね。 ハハハハハ。

(初子)母さん
車 きれいになりましたよ。

ありがとう。

あっ おはようございます!
おはよう。

きれいだね 百合ちゃん。
母さん… 早く。

母さん 気を付けて下さいよ。
母さんが 変な事 言うから

百合ちゃん びっくりしてたじゃ
ありませんか。

よく見ると 百合
きれいになったね。
母さん!

仁の嫁になる娘かと思うと
余計に かわいくってね。

不思議だね。

母さん 気を付けて!
うん。 行ってきます!

(初子)行ってらっしゃい!
(百合)行ってらっしゃいませ!

(エンジンが かかる音)

(走行音)

(仙造)お~! おいおい!

(仁)おはようございます!
お母さんもご一緒だったんですか。

(波江)ええ。
田倉さんが見えるって言うから。

(道子)東京で買い物するのが
お目当てなのよ!

私たちは
昨日のうちに出てきたけども

田倉君は
夜行だから 疲れたでしょ?

いえ。 シャワー浴びて 少し
横になる時間がありましたから。

あ~ そう。
あっ 君 それじゃ 頼むよ。

はい。 かしこまりました。

この度は
いろいろと ご配慮頂きまして

ありがとうございました。
いやいやいや。 いやね

今度のセミナーにはね 君にも是非とも
参加してもらいたくてね 田倉君。

戦後ね もう10年たつんだよ。
この10年の

日本の変貌ぶりってのは
すばらしいものがあるんだ。

商店の経営方法なんか
どんどん変わっとるよ。

今までのようなやり方ではね
これからの経済成長には

絶対 ついていけない! 大いに
勉強してもらわなきゃいかんよ!

はい 頑張ります。

硬いお話は
男同士で 後で ゆっくり。

それより 道子との事を よく…。

そのために 私
名古屋から出てきたんですから。

大丈夫よ。 私たち ちゃんと
うまくやってるんだから。

(波江)そうは いきませんよ。

田倉さんが 道子をもらって下さる
おつもりがおありなら

そろそろ
正式に しかるべき人を立てて

お話を進めて下さらないと。

いつまでも
曖昧な おつきあいじゃ…。

ねっ あなた。
うんうん。

いや まあね うちは 男の子が
3人もおるんだけども

娘は この道子1人なんでね
本来ならば 婿でも取って

そばに置いておきたい
ところなんだけれども

こればっかりは どうも
親の思いどおりにいかない。

何てったって
民主主義の世の中なんだから。

何だって 自由だって
言うんだからね。

まあ 戦前は 少しは 親の権威も
あったんだけどね。

また お父さんの愚痴が始まった。
ハハハ いやいや。

とにかくね 掛けがえのない娘を
やるんだから…。

それもね やっぱり
君を見込んだからなんだよ。

そのかわりね
私たちでできる事があったらね

できるだけ 君のバックアップは
させてもらうからね。
はい。

まあ そういう事も含めて

少しでも早く 君のお母さんとも
お会いしてだね

我々の気持ちも お伝えしたいと
思ってるんだよ。
はい。

道子との おつきあいが
ここまで来て

田倉さんが まだ お母様に
お話しになれないなんて

おかしいんじゃございませんか?
道子は どこへ出しても

恥ずかしくない娘に
育てたつもりです。

田倉さんも 道子の事 分かって

結婚するつもりに
なって下さったんでしょ?

母さん。 こういう事には
タイミングというものがあって…。

私はね なにも 頭 下げてまで

道子を もらってもらうつもりは
ありませんよ。

もし 田倉さんのお母さんに 気に
入って頂けないようでしたら

この話は 初めから なかった事に。
母さん!

(仙造)ハハハハハハハ。 女親っていうのは
どうも 苦労性だからね。

まっ 道子の事も大事だけども
今度は 君 セミナーの方 しっかりね。

これはね 田倉君の人生を

変えるような事になるかも
しれないからね。

ハハハハハハハハ! ハハハハハハハハ!

ねっ 盛りつける時には ちょっと
庭にある木の葉でも添えると

彩りがよくなるでしょ。
同じ お料理でも

ちょっとした心遣いで
おいしそうに見えるのよ。

見た時に楽しくなきゃね。
はい。

お疲れさまでございました!
お疲れさま。

今日も一日 無事に終わりました。

すぐ お夕飯 出来ますから。
はい ありがとう。

これが 初ちゃん
これが 百合ちゃん。

母さん…。
野菜の仕入れの帰りにね

バーゲンセールやってるお店があったから
ブラウス 買ってきたの。

気に入るかどうか 分かんないから
ちょっと 開けてみてよ。

せっかく 頂いたんだから…。

かわいい! これ ホントに 私に?

毎晩 肩 もんでもらうし
あんた よく働いてくれるから。

ありがとうございます!

(初子)ねえ ちょっと 当ててみて。

あっ かわいいね。

(初子)うわ~!
ねえ 母さん 私も。 見て。

初ちゃんの どう? あっ いいね。

おしんは 仁の嫁として

改めて
百合の人柄を見直していた。

しかし おしんが 百合を
仁の嫁にと 心を決めている時

仁は 別の娘との話を進めていた。

♬~
(テーマ音楽)

♬~

母のおしんにも 理由を言わず

突然 上京していた仁が
5日ほどして 帰宅した。

(犬の遠ぼえ)

(酔っ払い)
♬「粋な黒塀 見越しの松に」

♬「仇な姿の」 あれ?

♬「死んだ筈だよ お富さん」

(おしん)百合ちゃん
あんた もう お休み。

明日の朝 また 早いんだから。

(百合)はい。 じゃあ
部屋で 針仕事しております。

ご用がございましたら
おっしゃって下さい。

(戸をたたく音)
≪(仁)ただいま! 俺だよ!

はい!

お帰りなさいませ!
ただいま。

お帰り。
(初子)お帰りなさい。

はあ~ 疲れちゃったよ。

(初子)今日は
お風呂 立てなかったのよ。

帰るんなら 電話くらい
してくれたらいいのに…。

いつ帰るか 分からないんだもの。
うん…。

(百合)今から 沸かしましょうか?
いや いいよ。 後で 体 拭くから。

お夕飯は?
いや 名古屋でね
乗り換える時に食った。

それより ビール一本 抜いてくれよ。
はい!

はい。 何?
お土産だよ。 草履!

あ~ 珍しい! 後が怖いね。
素直じゃないんだよ 母さんは。

はい! これは 初ちゃん。
これは 百合。

2人とも ハンドバッグだよ。
まあ 大変!

地震でもあるんじゃないかしら。
久しぶりの東京なんだ。

みんなにも
東京のセンスを プレゼントしなきゃね。

まあ 何 こんな派手なの!
男が買うと これだからね!

お土産なんか いいよ!
もったいない!

ちゃんとした女性が
選んでくれたんだよ

初ちゃんのも 百合のも。
(初子)そんな人と一緒だったの?

買い物 手伝ってくれるくらいの
女友達いるさ。

随分 趣味の悪い人だね。
母さん
それ 今年の流行なんだって!

仁。 あんた
何しに 東京 行ったの?

まさか お土産 買うために
行った訳じゃないでしょ?

当たり前だろ。 今度の上京はね

俺の人生を変えるような
すばらしい収穫があったんだよ。

おう!

はい。

おっ。

百合ちゃん これ 仁ちゃんが…。
えっ?

母さん 大事な話があるんだ。

じゃあ 私と百合ちゃん
外しましょうか?
いいよ。

聞かれて困るような話じゃ
ないんだよ。

これからの店の経営方針について
話しておきたいんだよ。

実はね 今度の上京は

ある講習会に
参加するためだったんだよ 俺。

最初は ある人に誘われて

何が何だか
分からなかったんだけど

いろいろ 新しい事も吸収しないと
時代に遅れると思ってね。

ところが 講義を聴いて
びっくりしたよ。

まさに 流通革命
言うべきものなんだよ!

セルフサービス方式っていってね…。
いいよ。

うちは 今のままで
うまくいってるんだから。

売り上げだって
少しずつ 伸びてるし…。

そんな事で満足してたら 今すぐに
頭打ちの状態が来るんだって!

競争は 激しくなる一方だし
守ってばかりいたら

どんどん遅れるんだよ。 今はね
もっと積極的に攻める事を

考えるべきなんだって!
母さんだってね

セルフサービスって言葉ぐらい
聞いた事あるよ。

でもね 商売っていうのは

一人一人の お客様に
真心を売る事なの。

お客様と じかに話し合いをして

お客様が納得して下すった品物を
手から手に お渡しする。

それが
商売のいいとこなんじゃないの。

(ため息)

母さん うちは
100坪からの地所があるんだよ。

それを有効に使って
セルフサービス方式の店にすれば

生鮮食料品だけじゃない もっと
いろんな物が扱えるんだよ。

金銭登録機を入れればね
人件費の節約にもなるんだよ。

品数だって 何種類にも 何倍にも
なる訳だから

もうけだって 桁が違ってくるよ。

あっ それにね 御用聞きなんて
バカげた習慣も やめるべきだね。

仁!
いや 御用聞きなんてね

あんな手間のかかる事
しなければね

その分
商品 安くできるじゃないか。

もう 頭を下げて
御用聞きなんか行かなくても

よそよりも安くて
いい品物があると分かれば

お客は 必ず来てくれるんだって!

母さん うちも そろそろ
考える時に来てるんだよ!

母さんにはね
母さんの商売のやり方があるの。

今まで それで
立派に やってきたんだから!

何だい ちょっと 話
聞いたぐらいで かぶれちゃって。

誰が何と言おうと
変えるつもりはないんだからね!

二度と そんな つまんない話
耳に入れないでほしいね!

母さん これは 俺の夢なんだよ!
俺が 今まで 商売に抱いてた

夢なんじゃないか!
いい加減に おし!

海のものとも 山のものとも
分からない事して

この店を潰すつもりなのかい!
母さん!

母さんはね 若い時から
いくつも 店を出してきた。

でも 震災とか戦争とか
いろんな事情で

潰すはめになってしまった。

今 やっと
この店が 母さんの思うとおり

なんとか伸びてきたんだよ!

何十年の 母さんの商売の執念が

実り始めたんじゃないか!

たとえ 血のつながった
息子であろうと

絶対に 勝手なまねは
させないからね!

先に寝るよ。

仁ちゃん。

仁ちゃんが 今の店に飽き足りない
気持ちは よく分かる。

魚屋や八百屋なんて

忙しいばっかりで
もうけの薄い商売だもん

バカバカしいと思うのは
無理はないし

若いんだもん いろんな夢を
見るのは 当然の事よ。

でもね 母さんにとっては
命を削るような努力で

やっと ここまで
こぎ着けた店なの。

もう 55よ。
今更 冒険しろったって 無理よ。

結局 ここは
母さんの店なんだよな!

俺には 何の力もないんだよ!
(初子)そうじゃない!

母さんが ここまで頑張ったのは
仁ちゃんのためじゃないの!

少しでも立派にして
仁ちゃんに譲りたいから。

母さんの気持ちも
察してあげなさい。

♬~

(戸が開く音)

何だ まだ 起きてたんですか?

仁ちゃん 寝ました。

百合ちゃんの事どころじゃ
なかったですね。

今は 仁ちゃんも セルフサービスの事で
頭が いっぱいみたい…。

百合ちゃんとは
口も きかないで…。

何だか 百合ちゃん
かわいそうだった。

男っていうのは やっぱり
仕事の方が大事なのかしら。

私も 一度 その講習会とかに
出てみようかね。

母さん?
仁が あんなに 夢中になるには

それなりのものが
あるんじゃないかと思ってね。

母さんね
自分のやり方 変えようなんて

毛頭 思ってないわ。
だけど 何にも知らないんじゃ

仁と話し合う事もできないし
仁だって 納得しないだろうし。

そりゃ そうですね。
誰に誘われたのか知らないけど

仁ちゃんも とんだものに
かぶれちゃって…。

若さだよ。 それが 若さの
いいとこかもしれないけど…。

あっ ほら いつかさ
私宛てに来てたでしょ。

やっぱり 金銭登録機のメーカーが開く
講習会の案内状…。

あっ 捨てちゃいました…。
あっ そう。

じゃあ 問い合わせてみようか。
どこかで やってるだろ。

仁には ないしょだよ。
はい。

じゃあ 当分 百合ちゃんとの話も
お預けですね。

仁の気持ちが落ち着くまでね。

結婚なんて
まだまだ 先の話だから。

ああ…。 さあ 寝ようか。
はい。

じゃあ 片づけましょ。

(征男)じゃあ 行ってきます!
(仁)お~!

(次郎)行ってらっしゃい!
はいよ! こんにちは!

毎度!

はい 田倉です! おっ!

東京じゃ
いろいろ 世話になったな。

うん? 楽しかったよ。

やっぱりな おふくろは
セルフサービスに反対なんだよ。

そう。 時代ってものが
分かってないんだよ。

いや 諦めてなんかないよ。
ただな まだ 俺たちの事

話せるような状態じゃないんだよ。
うん。

この問題が 解決つかないとな。

大丈夫! 必ず おふくろには
「うん」って言わせるから!

そう。
それまで 待っててほしいんだよ。

はい! どうも
ありがとうございました!

それじゃ いずれ また。
はい どうも 失礼します。

母さん 遅いわね。 もう お昼よ。
事故でも遭ったんじゃないかしら。

また どこかで
お茶でも 御馳走になってんだろ。

いい加減 トラック 運転するの
やめてほしいわ。

毎日 顔 見るまでは
気が気じゃないもの。

1円でも安くて
いい物を仕入れるのが

母さんの生きがいなんだ。 それを
取り上げたら ガタッときちゃう。

(トラックが止まる音)
母さんだ!

御苦労さま! ああ。 今日はね
キャベツが安かったよ。

今年は どこも
キャベツの出来がいいんだって。

明日 京都 行ってくるよ。
えっ?

ほら 例の講習会が
京都であるんだって。

それもね セルフサービスに踏み切った
お店も見せてもらえるんだってよ。

仁にはね 誰かの病気見舞いにでも
行ったって言っといて。

はい。

翌日 おしんは 京都へたった。

それが おしんの人生にとって
何度目かの転機になったのである。

♬~

はい 刺身 出来たよ! はい
いらっしゃい いらっしゃい!

イワシが安いよ! 酢みそで あえたら
生臭さも消えるしね!

奥さん つみれも おいしいよ!
イワシ1皿。

はい イワシ1皿 こちらのお客さん!
どうも ありがとうございます!

イカ3杯。 煮つけにするから。
輪切りで よろしいですね!

イカ3杯
輪切りで お願いします!

はいよ~!

お待たせしました!
ありがとうございます!

(初子)ありがとうございました!
ありがとうございました!

(客)アサリ1皿 頂戴!
アサリ1皿 頂戴!

(仁)百合ちゃん アサリ1皿!
(百合)はい お待たせしました!

(初子)母さん?

気分でも悪いんですか?
どうしたんですか?

母さん?
どこも悪くなんかないよ。

びっくりさせるなよ!
ものも言わずに

ス~ッと入ってっちゃって…。
何でもないんだったら

手伝ってくれよ!
今 店 忙しいんだから!

悪かったね。
京都で 何かあったのか?

ああ忙しくっちゃ
どうしようもないね。
うん?

やっぱり セルフサービスの時代が
来るのかもしれないね。

(次郎)征男! 雨 上がったし
今日 一杯 行こうか?

(征男)いいね!
もういいよ 帰って。

お疲れさん!
御苦労さん!

何だ そんな事で
京都 行ってたのか。 母さん。

いくらね セルフサービスがいいったって
いざ やるとなると

大変なお金が かかるんだよ。
とっても おいそれとは…。

母さん。 母さんが もし ホントに

その気になってくれたんだったら
金を出してくれる人 いるんだよ。

俺の嫁さんになる人の
親父さんがね

スポンサーになってくれるって。

実は 俺 結婚の約束をしてる娘が
いてさ。

まあ 今夜 ゆっくり 話 するよ。

♬~
(テーマ音楽)

♬~

(おしん)何が 結婚だい?

お前 自分のしてる事が
分かってんのかい?

(仁)俺だって もう 26だよ。

嫁さん もらったって
おかしくない年だろ?

はい。

彼女とはね
今年の正月 次郎と征男 連れて

スキー 行っただろ?
その時 ホテルで知り合ったんだよ。

明るくて いい娘だよ。

短大 出ててね
今 花嫁修業中なんだよ。

それで すっかり
意気投合しちゃってね。

両親とも親しくしてもらってね。

彼女の親父さんね 名古屋で
既製服メーカー やってるんだよ。

相当な顔らしいよ。
その親父さんにも

かわいがってもらっちゃってね。
でもね 親父さんは

うちの商売には
ちょっと批判的なんだよな。

せっかく 駅前の一等地なのに
魚屋とか八百屋なんて

一番 効率の悪い商売やってるのは
愚の骨頂だって言ってね。

大きな お世話だよ。

うちは 今のやり方で 十分 今まで
食べてこられたんだからね。

うん。 まあ そりゃ
そうなんだろうけれども

やり方によっちゃ もっと有効な
使い方があるんじゃないかって。

大した もうけにもならないのに
そんな高い従業員 使って

ただ 忙しいだけの商売してるのは
もったいないんじゃないかって

そう言ってるんだよ。
母さんだって

今度の京都の講習会で
やっと分かったんだろ? それが。

道子の親父さんがさ…

あっ 親父さん
川部っていうんだけれども

設備資金は 出してくれるって
言ってるんだよ。

それにね 生鮮食料品以外の
商品の仕入れのルートも

親父さんの顔で
世話してくれるって。

母さんは ごめんだね。
母さん…。

相手は 道子の親父さんなんだよ。

金貸しから
金 借りる訳じゃないじゃないか。

娘が嫁に行く家が
立派になってほしい。

そう思うのは 親心だろ。

親父さんにとってみればね
娘の持参金のつもりなんだよ。

お前は その援助が目的で
その娘さんと

結婚するつもりなのかい?
母さん!

お前は そんな
さもしい人間だったのかい?

母さんは 俺を そんな男だと
思ってるのか?

俺は 道子を愛してるんだよ!

親父さんの援助が目当てで
結婚するなんて言われちゃ

俺は 心外だよ!

俺は ただ
道子の事 母さんに話すの

てれくさいと思ったし
それに セルフサービス方式の話だって

親父さんの話 しなきゃいけないと
思ったから それで…。

じゃあ
百合の事は どうするんだい?

(初子)母さん…。
百合の事は
どう 責任 取るつもりなんだい?

道子とか何とかって
そんな女と結婚できるかどうか

自分の事
よ~く考えてみるんだね!

母さん いい加減な事は
許さないからね!

♬~

仁ちゃん。 母さんはね

百合ちゃんが 仁ちゃんの奥さんに
なってくれるのを

楽しみにしてらしたのよ。
百合ちゃんだったら

あったかい家庭を作る いい嫁に
なってくれるだろうって。

仁ちゃんだって 百合ちゃんが
好きなんでしょ?

好きだから あんな事にも…。

お店だって
今のままでいいじゃない。

なにも お金持ちの娘と
結婚しなくたって

百合ちゃんと
平凡な幸せを育てていけば

それが 一番!

♬~

百合ちゃん。
(百合)はい。

今夜 ちょっと
話したい事があるから

お夕飯の後片づけが済んだら
そのつもりでね。

はい。

坊ちゃま…。

奥様と
何か おありになったんですか?

奥様から
今夜 話したい事があるって…。

もしや 私たちの事が…。

≪(仁)母さんも初ちゃんも
俺たちの事 知ってるよ。

母さんはね 百合と俺を
一緒にさせたいんだそうだよ。

≪(仁)ただ 俺は
ほかに結婚したい女がいる。

それは 百合にも話したよな?

でも どうしても百合が駄目だって
言うんだったら 諦めるよ。

一時の間違いだなんて
そんな卑怯な言い逃れはしないよ。

だから
百合は 百合の正直な気持ちを

母さんに 話せばいいんだよ。

百合を傷つけた責任は
ちゃんと 取るつもりだから。

まあ 俺が 一生 魚屋と八百屋で
終わる事になったとしても

それも 「身から出た錆」だ。

どうせ 俺の人生なんか
たかが知れてんだよな。

あ~!

仁と 何でもないって…。

仁が あんたの部屋へ入っていくの
初ちゃんが 何度も見てるのよ。

仁を かばう事は ないのよ。

百合ちゃんと
そうなってしまった事

仁が 責任 取るのは 当然なんだし
私だって 仁の母親として

百合ちゃんを不幸にする訳には
いかないの。

(初子)百合ちゃん…。

こちらへ
3年も ご奉公させて頂いて

奥様や初子さん
かわいがって頂きましたのに

奥様を裏切るような事を
してしまって

申し訳ございません。

私たちはね 百合ちゃんを
責めてる訳じゃないのよ。

これから どうすればいいか…

百合ちゃんの気持ちも
よく聞いときたいと思ってね。

私は 坊ちゃんの奥さんに
して頂こうなんて

そんな大それた事
考えた事もありません。

坊ちゃまには
坊ちゃまに ふさわしい方が…。

あんた 本気で そんな事?

私は とっくに
坊ちゃまの事は 諦めています。

私だって 坊ちゃまを お幸せに
できる自信なんてありません。

坊ちゃまのお気持ちは とっくに
私から離れてしまって…。

今は ほかの方の事を…。

その方と ご一緒になられたら
坊ちゃまが 田倉のお店に

懸けておいでになる夢も
かなえられるって

そう 坊ちゃまは
おっしゃっておいででした。

だから 諦められたんです。

だから もう 坊ちゃまとは
何でもないんです。

今日限り お暇を頂きます。

百合ちゃん
あんたが悪い訳じゃないの。

大きな顔して
このうちにいればいいのよ。

あんたを傷つけてしまった
償いを

これから どうするか
よく考えて

あんたの気の済むように
するからね。

何もして頂こうとは
思っていません。

誰も恨んではいません。

皆さんに
ご迷惑をおかけしてしまって…。

どうか お許し下さい。

百合ちゃん!

百合ちゃん! 百合ちゃん!
百合ちゃん! 百合ちゃん!

≪(百合)一人にしといて下さい。

(泣き声)

仁は いつの間に あんな情けない
男になってしまったのかね。

そんなふうに育てた覚えは
ないのに…。

話は 済んだの?

参ったよな。 百合と俺との事は

俺たちの間で うまく
話 つけようと思ったのに!

母さんや初ちゃんが
入ってきたら

まとまる話も
まとまらなくなるじゃないか!

恥を知りなさい 恥を!

こういう問題は 俺一人の責任じゃ
ないと思うけどな。

俺は 別に 百合を 嫁さんに
するって約束した訳じゃ…。

お黙り!
お互いに好きだって事で!

お前は 百合の将来を
踏みにじってしまったんだよ!

どんな言い訳をしたって
許される事じゃないんだよ!

じゃあ どうすればいいんだよ!
結婚しろって言うんだったら

結婚するよ!
責任 取りゃいいんだろ!

百合は もう とっくに
そんな気持ちはないよ。

お前に 愛想尽かしをしてるよ!
あっ そう。

それじゃ しかたないな!

百合は 心の優しい いい娘だよ。
幸せになってほしい。

俺も… 俺にできる事があったら
精いっぱいしてやるつもりだよ。

一生
力になってやるつもりだから。

母さん…。

子どもっていうのは

親の思うとおりには
育たないもんなんだね。

どこで どう間違ったのか…。

そういう時代なんですよ。
何でも 「自由 自由」って…。

♬~

百合には かわいそうな事
してしまったよ…。

どんな事をしたって
償いきれるもんじゃないけど…

せめて 将来 身を立つようには
考えてやらなきゃね。

♬~

おしんには 百合に対する
仁の仕打ちが許せなかった。

たとえ 仁と親子の縁を切っても
手元へ置いて 面倒を見るのが

百合への償いだと
おしんは 心を決めていた。

…が 翌朝 田倉家に
百合の姿はなかった。

♬~

おはよう。
母さん。

うん?
これ 百合ちゃんの置き手紙。

私宛てのも あって…。

「やっぱり この家には
いられないから」って…。

♬~

♬~
(テーマ音楽)

♬~

(初子)仁ちゃん 起きて!

仁ちゃん 百合ちゃんがいないの!
家 出てっちゃったの!

ねえ 仁ちゃん
どこか 心当たりない?

(仁)この家に いられないって…。
なにも こんなに

急に出ていかなくてもいいのに…。
おまけに 行き先も書かないで。

(おしん)お前の顔を
一日でも見るのが

嫌になったんじゃないかい?
きっと。

いや 俺は俺なりにね
もう一度 よく話し合って

この家 出るなら出るで

住む所も勤め先も
ちゃんと 世話してやって

それで 気持ちよく別れようと
思ってたんだよ。

ホントに お前は どこまで
ずぶとく できてるんだろうね!

あんな
踏みにじられるような事して

百合ちゃんが お前と話し合える
気持ちになれるはずがないだろ。

でも まさか 百合ちゃん
こんなに思い詰めてたなんて…。

昨夜 俺たちが寝てる時に
出ていったのかな…。

全然 気が付かなかったな…。

よく そんな冷たい顔が
してられるね!

一体 誰のせいで 百合が
このうちを出てったと思ってんの。

お前が追い出したんだよ!
母さん…。

ねえ
百合ちゃんから聞いてないの?

友達とか知り合いとか。
うん…。

あいつ あんまり 自分の事を
しゃべりたがらなかったから…。

仁。 お前が 何て言ったって
道子っていう娘さんとの結婚は

母さん 承知しないからね!
母さん…。

百合ちゃんを あんな ひどい目に
遭わせといて

ほかの女と一緒になれる
道理がないだろ!

どんな金持ちの娘だか
知らないけど

女房の里に お金を出させて
店を改造するなんて

母さん 真っ平ごめんだからね!
(仁)母さん!

母さん 終戦
俺たちが どんな思いしたか

忘れた訳じゃないだろ?
闇の買い出しに行って

お巡りに捕まる度に いつか
ちゃんとした店を持って

大威張りで商売してやるって
母さん…。

俺は 忘れないよ。

忘れられないんだよ
あの時の惨めさが!

どんな事をしても でっかい商売が
できるようになってやるぞって

心に決めたんだよ!

今が そのチャンスなんじゃないか!

新しい経済成長の時代が
来るんだよ!

今 このチャンスを逃したらね

ただの魚屋と八百屋で
終わってしまうんだよ 田倉は!

ああ! 魚屋だって八百屋だって
結構だよ!

担ぎ屋をしてた時の事を
考えたら

こんな立派な店で 商売が
できるなんて 夢のようだよ!

それを これ以上…。
田倉商店は 母さんの店だよ!

たとえ どんな事があったって

お前に 指一本
触れさせやしないからね!

もし それが 気に入らないなら
とっとと出ていったらいいだろ!

(初子)母さん!

何の罪もない娘を不幸にして
それで 店を大きくして

何になるんだよ!
人間のする事じゃないよ!

とにかくね
百合を捜すのが先決だよ!

お前の責任だからね!

母さん 運転 気を付けて下さいよ。
百合ちゃんだって

落ち着き先が決まったら
何か知らせてよこしますよ。

あまり 心配なさらないで。

見つかっても
うちへは 帰ってこないだろうね。

いい娘だったのに…。

居所が分かったら

できるだけの事は してやりたいと
思ってるけど

どんなに償ったって
仁のやった事は 消えやしない。

償いきれるもんじゃないけど…。

仁を あんな人間に
してしまったのは

母さんのせいかもしれないね。

お金を もうけなきゃって

「お金 お金」って
がむしゃらに稼いで…。

仁は それを見て
育ったんだからね…。

仁ばっかりを責められやしない。

悪いのは 母さんかもしれないよ。

♬~

(希望)百合ちゃん!

田倉で 何かあったの?

じゃあ 何か言づけでも?

(百合)田倉は お暇を頂きました。

ここじゃ なんだから…。

さあ 入って。 ほら。

そこに座って。

申し訳ありません。 ご迷惑
おかけする事 分かってて…。

でも ほかに相談できるような人が
いなくて…。

うちを辞めたって…
辞めさせられたの?

僕が とりなして済むものなら
僕が…。

いいえ。 二度と
田倉に戻るつもりはありません。

3年も 田倉で辛抱して
母さんや みんなにも

かわいがられてるとばっかり
思ってたけど 何があったんだ?

話したくないのなら聞かないが…。

この辺は 大きな窯元が
たくさんあるって聞いてました。

もし 希望さんに お願いしたら
どこか 下働きにでも

使ってくれるとこが
あるんじゃないかと思って…。

住み込みだったら
どんな事だって…。

希望さんのお世話なら
安心だから…。

母さんや初ちゃんには
相談しなかったの?

(希望)百合ちゃん…。

私 黙って出てきたんです。

分かったよ。 百合ちゃんが
そこまで思い詰めるなんて

よくよくの事なんだろうね。

なるべく早く 奉公先を探すから。

大丈夫だよ! なんとかなるさ!

けど よかった
僕の所へ来てくれて。

もし 何にも知らないで

百合ちゃんが
田倉を出た事 聞いたら

本当に心配するとこだったよ。

♬~

夕方になっても
百合は 帰ってこなかった。

平然としている仁に

おしんは 我が子ながら
情けない思いであった。

アサリ2皿と…。
ムツにしなよ ムツ!

脂 乗って おいしいよ!
じゃあ ムツにするかな。

1匹の身で 4切れ 取れる?
4切れね! はい!

初ちゃん 初ちゃん ムツ ムツ!
ムツ 取って! はい ムツ!

はいよ!
いらっしゃい いらっしゃい!

いらっしゃいませ どうぞ!
今日は 奥さん イカが安い!

はい お客さん イカだったね!
はい どうも! はいよ!

はい いらっしゃい!
いらっしゃい! ☎

はい 田倉です。 おう…。

おっ マージャンな! うん 7時。
うん 分かった。 じゃあね。

はい!
いらっしゃい いらっしゃい!

(道子)何だか 魚臭い。
うん?

いや 着替える時間なくてさ。

東京から帰って 何の連絡も
ないっていうのは どういう事?

う~ん いろいろ あってね…。

父がね

「田倉君は 本気で 道子と一緒に
なるつもりがあるのか」って。

「近いうちに お母さんに
お会いする」って言ってる。

ちょっと待ってくれよ。 うちにも
いろいろと 事情があるんだから。

なっ!
仁…。

俺さ 今夜 マージャンに行くって
出かけたんだよ。

遅くなっても 大丈夫なんだよ。
なっ いいだろ?

私 今夜は帰るの。
道子…。

今度の日曜で いいわね?
父が お宅へ伺うのは。

なにも 頭 下げて お願いしに
行くって訳じゃないのよ。

結婚できないんなら
できないでいいの。

この辺で はっきりさせて。

「もし 結婚の意志が
ないんだったら

しかるべき慰謝料を請求する」って
父が…。

しかたないでしょ。

いつまでも らちが明かないんじゃ
仁の気持ち 疑われたって…。

私も覚悟したんだから。

今夜は それだけ 言いに来たの。
じゃあ。

道子!

ただいま。
お帰りなさい。

早かったじゃないの。
ああ。 代わりのメンバー 来たからね。

お~ 来てたのか。
お帰り!

百合ちゃんがね 希望ちゃんの所に
相談に行って

希望ちゃんの先生の所で お世話に
なる事になったんですって。

百合 希望を頼っていったのか。
うん。 先生の奥さんが

気持ちよく引き受けて下さって。
とにかく 弟子が多いだろ。

食事の支度だけでも
大変らしいんだ。

1人 手伝いの人を増やそうと
思ってたらしくて。

よかった。 よかったね 母さん!

けど どうして 百合ちゃん
ここを出るような事になったの?

百合 何にも言わないのか?
うん。 無理に聞き出すのもね。

うちは おふくろが
口うるさいだろ。 だから

若いやつには 辛抱しきれないとこ
あるんじゃないか。

仁!
母さん!

心配してたんだよ。

でも ちゃんとしたとこへ
預かってもらって 安心したよ。

希望。 俺な
嫁さん もらう事にしたんだよ!

いや 百合ちゃん 辞めてな
奥やる人間 いなくなっただろ。

母さんも初ちゃんも
困ってたんだよ。

それで 俺が 嫁さん もらえば
母さんも初ちゃんも 楽できる。

そう思ってな。 潮時だよ 潮時!
仁!

母さんね 道子の親父さんが

今度の日曜日
母さんに話したいんだって。

ちょっと会って 話してみてよ。
ねっ 面白い人だから。 頼むよ。