ドラマログテキストマイニング

テレビ番組(ドラマ)の字幕情報を対象に、テキストマイニングの研究をしておりますので、解析結果の公開をメインに関連グッズを交えた構成で記事にしてます。また、解析結果の信憑性が確認できるよう、解析用ソースも部分引用し掲載してあります。

ストレンジャー~上海の芥川龍之介~ 松田龍平、岡部たかし、中村ゆり… ドラマの原作・キャストなど…

スペシャルドラマ ストレンジャー~上海の芥川龍之介~』のテキストマイニング結果(キーワード出現数ベスト20&ワードクラウド

  1. 先生
  2. 中国語
  3. ルールー
  4. 歌声
  5. ブーヤオ
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  9. 日本
  10. 政治
  11. 村田君
  12. 中国
  13. 緑牡丹
  14. タバコ
  15. ニーハオ
  16. バラ
  17. 芥川
  18. 湖南
  19. 人間
  20. 堕落

f:id:dramalog:20191230223934p:plain

スペシャルドラマ ストレンジャー~上海の芥川龍之介~』のEPG情報(出典)&解析用ソース(見逃した方はネタバレ注意)

 

解析用ソースを読めば、番組内容の簡易チェックくらいはできるかもしれませんが…、やはり番組の面白さは映像や音声がなければ味わえません。ためしに、人気のVOD(ビデオオンデマンド)サービスで、見逃し番組を探してみてはいかがでしょうか?

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スペシャルドラマ ストレンジャー~上海の芥川龍之介~[解][字]

1921年、芥川龍之介松田龍平)は新聞社特派員として上海に渡り、清崩壊後の中国社会の混乱を目の当たりにする。ある日、妓楼で耳の聞こえない青年と知り合うが……。

詳細情報
番組内容
1921(大正10)年、芥川龍之介松田龍平)は新聞社特派員として上海に渡る。幼少期から古典文学を読んで憧れていた中国だったが、革命により清の皇帝政治が倒されて十年、近代化の波と外国による支配が社会を混乱させていた。困惑しながらも、政治家や革命家にインタビューをして回る芥川。ある日、裏路地に生きる妓楼の人々と知り合い、耳の聞こえない青年と交流するが、旅は思わぬ事態を迎えていく……。
出演者
【出演】松田龍平岡部たかし中村ゆり奈緒
原作・脚本
【作】渡辺あや

 

 


(時計の時報)

♬~

(村田)<明治と昭和という
険しい時代のはざまにあった

つかの間の小春日和。

例えて言うなら
大正とは そんな季節であった。

しかし 世の中には そういう時季に限って
腹を壊すやつもいる。

生ぬるい風に潜む嵐のにおいを

いち早く嗅ぎ取るかのように>

(中国語)

見えたか!
まだだ。

あっ あれじゃないか?
あっ あれだ!

<芥川龍之介は 大正10年

我が大阪毎日新聞社の特派員として
中国に4か月ほど滞在した。

そして その6年後

彼は 日本で
自ら命を絶つことになるのだが…。

当然 そんなことなど
この時の私は知るよしもなく

当代随一の人気作家の素顔が

やけに なまっちろいのを
ただ愉快に思った>

村田です。
上海支局の村田孜郎です。

(芥川)ああ どうも。
初めまして 芥川です。

長い船旅 お疲れでしょう。
いや~ はい。

ずっと腹を壊してましてね。

♬~

先生 こっちです。

<埠頭を出るなり
何十人という車夫が 我々を包囲した>

いらない いらない いらない。

<ようやく
馬車の上の客になるやいなや…>

ハッ ハア~! ハア!
(馬のいななき)

おお。
<馬が塀に衝突した>

<どうやら ここでは 馬車に乗るのも
死を覚悟せねばならないらしい>

<建物は どちらを眺めても
レンガ造りの3階か4階である。

アスファルトの大道には

西洋人や支那人
気ぜわしそうに歩いている。

その世界的な群衆。

巡査は インド人である>

<上海は 大きな都市である>

♬~

<その夜は
西洋料理屋に飯を食いに行った。

ここは 壁でも何でも
一とおり愉快に出来上がっている>

まあまあ 先生
飲んで食って下さい どんどん。

いや~ 僕は もう。

たくさん召し上がって下さいよ。
これから 先生には

すばらしい旅行記
書いて頂かなきゃいけないんですから。

ええ もちろん。

もちろん いいものにするつもりです。

しかし まさか 先生が
特派員記者を お引き受けになるとは

我々も びっくりしましたよ。
なあ。

お小さい頃
漢文学に親しんでおられたんですって?

そうですね。 「西遊記」「水滸伝」「三国志」。

いずれも
何度繰り返し読んだか分かりません。

しかも かの老大国は今
とてつもない激動と混乱の中にある。

これほど物書き冥利に尽きる仕事は
ありませんよ。

ごもっとも。
いや~ 楽しみですな~。

いや~ まったくだ。

それと…
実は もう一つ 事情がありましてね。

ほう。 何です?
さては

女ですな?

(笑い声)

ええ そうです。
え?

逃げたかったんです。

月並みな話で申し訳ない。

(しげ子)
では また来週 参りますわ。

(赤ちゃんの泣き声)

是非 先生に
一目 見てやって頂きたいんですの。

この辺り 先生そっくり。

赤ん坊を?
…僕のじゃない。

しかし すっかり思い込んでいてね

何度追い返したって 来るんです。

あの女の 動物的エネルギーたるや。

はあ~。

もはや 僕は羨ましいくらいだ。

♬~

<楽団の音と一緒に 電灯の光が
青くなったり赤くなったりする具合は

浅草によく似ている。

ただ その演奏のうまさとなると
浅草は問題にならない>

♬~

<バラを売るばあさんが
ぼんやり舞踏を眺めている。

私は 何だか 新聞の挿絵でも見るような
心持ちになった。

絵の題は もちろん 「上海」である>

(英語)

先生。

大丈夫ですか?
皆さん

そろそろ私は帰ろうかと思います。

えっ もう? どうも腹の調子がよくない。

疲れかな?
じゃあ 我々も出ますよ。

♬~

ばあさん。

村田さん。
はい。

人生とは
バラをまき散らした道である。

…さあ。
ハハハ…。

いや この街も 夜はいいですね。

今日は静かな方です。

♬~

(中国語)
ブーヤオ ブーヤオ。

ブーヤオ ブーヤオ。

ブーヤオとは
いらないという意味ですか?

そうです。 不要と書いて ブーヤオ。

ブーヤオ。

なるほど。

お嬢さん?

おい。

あの2階に住んでるのは 何者かね。

あれは きっと
香港でさらわれたお嬢さんに違いない。

人さらいめ!

♬~

(少女の泣き声)

(少女の泣き声)

(中国語)

何だって?
「バラは もう売り物にならない。

全部やるから2角ほどくれろ」と。
いやいやいや。

いらない いらない。

いらない いらない。

な… 何…。
ブーヤオ。 ブーヤオ。

<僕は こんな強欲なばあさんに売られる
バラが気の毒になった。

そうして 上海1日目の夜は
車屋とバラ売りのばあさんの声が

代わる代わる夢の中でこだました>

<2日目も 先生は不調を訴え
3日目には とうとう入院してしまった。

病名は ろく膜炎ということであった>

<もともと 胃腸と神経の弱いところに
長い船旅が災いしたのだろう。

退院には 実に3週間を要した>

先生
ここ 水たまり 気を付けて下さい。

♬~

ああ 割れてるな。

先生 行きましょう。

<軍隊経験のある村田君の態度は
常に戦闘的である。

あるいは こちらでは
これが普通なのかもしれない>

(鳴り物の音)

(歓声)

(鳴り物の音と子どもの泣き声)

<こちらの芝居においても まず驚くのは

鳴り物の騒々しさである。

しかし 村田君などは

この騒々しさがないと
もの足りないらしい。

どこかおかしいんじゃないだろうかと
僕などは思う>

(鳴り物の音と子どもの泣き声)

<ただ 日本と違って
客がどれだけ大声で話そうが

子どもが泣こうが構わないのは
至極便利である>

(鳴り物の音)

(歓声)

(鳴り物の音)

♬~

♬~(歌声)

先生 あれです。 あれが 緑牡丹です。

♬~(歌声)

<村田君は 緑牡丹が子役時代からの
ひいきであるという>

♬~(歌声)

(拍手)

<華やかな舞台と裏腹に そこは 薄暗く

ニンニク臭く
さんたんたる場所であった。

役者たちが
電灯の下にうろついているさまは

ほとんど百鬼夜行の図である>

これを。

ありがと。

<遠目には 至極かれんな緑牡丹も

こうして見ると
立派に発育した青年である>

(雨の音)

(中国語)

<章炳麟氏は 元革命家である。

孫文らと共に
清朝を倒した傑物であり

また
考証学者でもある先生の書斎の壁には

どういうわけか 鰐がひっついていた>

遺憾ながら 今の我が国は
政治的には堕落しています。

学問芸術となれば
なおさらひどいものです。

しかし この国の民は
極端にはしることを よしとしません。

この特性がある限り
革命は不可能でしょう。

では 章先生は…。

(せきこみ)

ああ 失礼。
寒いんですか? いや。

君 今のを もう一度
支那語で聞いてくれないか。

え? 寒いんですかって?

ああ~ いや いい。
やっぱりいい。

ちょっと あのストーブを
たいてもらえませんかって

言いましょうか。
やめてくれ バカだと思われる。

思いやしませんよ そんなこと。

あの章炳麟に会いに来るのに
こんなペラペラの背広で来るなんてさ。

革命家で学者だぞ?

書斎に ぽかぽかストーブたくような贅沢
するわけないじゃないか。

では 章先生は 復興には
どういう手段がよいとお考えですか?

(村田の通訳)

(中国語)

<私は 耳を傾けながら
時々 鰐を眺めた。

あの鰐も きっと

あたたかな太陽と睡蓮の匂いを
知っているに違いない。

お前と違って
生きたまま ここにいる私を

どうか哀れんでおくれ>

<上海で僕を慰めたのは 鰐だけでもない>

♬~(歌声)

(余)この林黛玉という女将

ただのばあさんじゃありません。
すごい女。

ここ20年の政局の秘密
全部知ってます。

是非 お会いになるべき。

会ってみたいです。

<愛春。

これは いかにも利口そうな
品のいい妓女である。

髪を おさげのようにくくり
どこか日本の女学生めいて見える>

(拍手)

<この時鴻は どこか
田園の匂いを帯びた顔をしている。

なりも古風なものであるらしい。

美人は まるで料理のように次々現れる。

秦楼。
まだ12~13かと思われる少女である。

金の腕輪や真珠の首飾りも

この妓女がしていると
おもちゃにしか見えない>

おいしい。
お!

<玉蘭。 これは かつて
湖南の大悪党の愛人だったが

男が処刑されたために
上海に逃れてきたという

甚だ薄幸な美人だった>

(中国語)

(笑い声)

芥川先生 こっちの女は どうですか?

いや~ いいですね。 美しいです。

(余の通訳)

(笑い声)

(中国語)

あの~ ええ~ どこがいいですか?

そうですねえ~。

特に耳が美しい。
(余)え… 耳?

ええ。 日本の女の耳は
常に 油を塗った髪で隠れています。

<故に堕落している。

平たくて 肉が厚くて
まるで顔から生えたキノコだ>

しかし こちらの女性の耳は
いつも春風に吹かれ

こうした宝石をはめた耳輪などしている。

美しくなるわけですよ。
(余)オ~ホホ。

(余の通訳)

♬~

(余)ハハハハハ。

先生 ありがとうございます。

(中国語)

芥川先生 林黛玉が 今夜は来られないと。

ばあさん もったいつけてやがんなあ。

そうです 多分。

何せ
一筋縄じゃいかないばあさんですから。

じゃあ 代わりに ルールーに
あれを見せてもらうのはどうです?

そうです! それがいい。

(中国語)

先生 こっち。

さあ 先生 どうぞどうぞ。

何ですか?
まあまあ すごいですから。

(余)先生 どうぞ どうぞ。

ルールー 耳と口 きけません。
でも 占いをします。

占い?
何でも 質問 どうぞ。

神様の代わり ルールー答えます。
本当です。

ええ~っと… そうだなあ。

じゃあ…。

女… 僕を悩ませている あの女は

いつか身を引いてくれるかと。

(余の通訳)

♬~

(中国語)

いや。

(余)いやです。

(中国語)

別れない。

(余)あなたと別れない。

(ルールーの中国語)
(余)なぜなら…。

愛してる あなた。

(ルールーの中国語)
(余)死ぬまで…。

(中国語)
(余)別れない。

(中国語)

決して。

♬~

アハハハ アハハハハ。

アハハハハ! アハハハハ!

(笑い声)

何だ。 ひどいなあ。

ごめんなさい 先生。

あ~ でも 先生。 林黛玉は

実際 これで
随分稼いでるっていうんですから。

なあ? ルールー。
ルールーに 口パクパクさせて

自分が扇の陰から インチキなご神託を
垂れるんだそうですよ。

それでも 大方の客が
喜んで帰っていくってんだから

さすが 海千山千のばばあだ。
(笑い声)

いや
彼女も なかなか大したものだった。

それに 彼も…。

ハハッ 何だ?

いいよ。

君のせいじゃない。
ただの悪ふざけだ みんなの。

ああ。 空です。
あっ。

(余)ルールー。

(中国語)

ルールー 先生におわび。
タバコ 買ってこい。

じゃあ お願いしようかな。

足りないかい?

(笑い声)

♬~

ニーハオ。

ニーハオ。

ニーハオ。

(ノック)

はい。

あの~ 部屋を間違えてやしないか?

僕が呼んだのは…。

ぼ… 僕が頼んだのは…。

アッフフフフ。

(ノック)

♬~

(呪文)

アメリカと日本の戦争は
いつ始まりますか?

♬~

(鳥のさえずり)

≪♬~(村田の歌声)

♬~(村田の歌声)

おはよう。
ああ おはようございます。

朝から… 君
ちょいと騒がしすぎやしないかね。

おや? 先生 昨晩は そんな遅くまで?

そんなんじゃないよ。
寝つけなかったんだ。

薬を倍ほどのんで
明け方 ようやくウトウトした。

何か気になることでもあったんです?

うん?
いや~ 何でもない。

あっ おお。 そういや ルールーは
あれから タバコを買ってきましたか?

いや 来なかったね。

ハッ しょうがねえやつだ。

何かあったんだろうか
ケガをしたとかさ。

途中で暴漢にでも襲われ…。
何言ってんですか。

金をくすねたんですよ。

そうかなあ。

純粋そうな若者に見えたがな。

もう バカだなあ 先生。

ルールーは 男娼。

シャンゴン?
体を売る男のことですよ。

あんな連中に そうやすやすと
気を許すもんじゃねえや。

(中国語)

先生。

♬~

ダージャーハオ。
ダージャーハオ。

ああ…。

♬~

「近くの店にタバコがなかった」。

「遠くの店に買いに行った。

戻ってきたら
あなたたちはいなかった」。

そうか。

そうか。 そりゃ すまなかったね。

いや~ 悪かった 本当に。

あ… ちょっと待っておくれ。

これで
何か うまいものでも食べておくれ。

いいんだ。 せめてもの その…
僕の気持ちだ。

♬~

♬~

シェシェ。

へえ~ ルールーと。
だから言ったじゃないか。

あれは 極めて誠実な青年だってさ。

さすが 僕の この作家の目だね。
間違いはなかったね。

そもそも 字を書いたってのに驚きますよ。

この国じゃ 読み書きできる人間なんて
まだまだ僅かなもんですからね。

育ちはいいのさ きっと。

金持ちのお坊ちゃんだったのが

家が没落して
身を落としたってところですかな。

まあ 世間知らずで
口も耳もきけないとなりゃ

体でも売るしかねえんですよ。

かわいそうに。

うわ 先生!

この国で そんなことに
いちいち気を病んでちゃ

身がもちませんよ。

そこらの田舎に行ってごらんなさい。

道端で 赤ん坊が売られてんですから。

小さい方が3元 大きい方が5元。

そんなのをボケッと見てたら
売ってる百姓が言いましたよ。

「もっと大きいのがいいなら
あっちの家の15歳の娘が 50元だよ」。

ちょいと見てみようかと思いましたがね

そんなの買って帰ったところで
しょうがないんで…。 ねえ。

やめましたよ。 ハハハ。

♬~

(ため息)

(水音)

この饅頭 食べていいよ。

いらないんですか?
うん。

<一体 物乞いというのは
ロマンティックなものである>

<この国の小説に 神や仙人が
物乞いに化けている話が多いのも

彼らから自然に発達した
ロマンティシズムなのだろう。

鉄拐仙人か何かが化けていそうな
彼の後ろには

悲惨な その一生が
きれいに白墨で書き立ててある。

字も どうやら私よりうまい。

私は こんな代書は
誰がするのだろうと思った>

先生。

先生!

行きますよ。
はい。

先生。

<孝胥氏は
清朝時代の元政治家である。

かつて 清朝を改革しようとして

西太后に追放された。

今は俗世を離れ
貧乏暮らしを楽しんでおられるという>

<私は 今度こそ
万全な厚着をして臨んだ>

何だ 豪邸じゃないか。

所詮 政治家の言う貧乏ですよ。

こんな貧乏なら
僕だって いつ甘んじてもいい。

きっと書斎にもストーブがたかれてるぞ。

(中国語)

今の中国は絶望的です。

(中国語)

当面の難局を切り抜けるには
英雄の出現を待つしかない。

(中国語)

つまり
奇跡の出現を待つようなものなのです。

いや~。

これはこれは 恐縮です。

どうかしましたか?

あ… いや。 政治家が
客のタバコに火をつけてくれるなど

日本では聞いたことがないもので。

お客様ですから 当たり前のことです。

(足音)

<拝啓 上海は
支那第一の悪の都会だとかいうことです>

(けん騒)

<何しろ 各国の人間が
寄り集まっているところですから

自然 そうもなりやすいのでしょう>

キャ~!
(大声)

<例えば 人力車夫が
追い剥ぎに早変わりすることなぞは

始終 新聞に載っています>

<もちろん 売淫も盛んです。

青蓮閣などという茶館へ行けば

日暮れにもなると 無数の女たちが…。

どういうわけか
大抵が眼鏡をかけています。

ことによると
女が眼鏡をかけるというのが

今の上海の流行なのかもしれません>

あなた サイゴ サイゴ。
え?

<この「サイゴ」とは 日露戦争
日本の軍人が 支那の女をつかまえては

「さあ行こう」と その辺の畑へ誘った
名残なのだということです。

落語のようですが
何にせよ 我々日本男児には

あまり名誉のある話ではなさそうです>

<阿片も なかば公然と

どこででも吸っているようです>

(阿片を吸う息の音)

先生 行きましょう。
これ以上いると毒です。 行きましょう。

はい。

♬~(歌声)

<林黛玉が やっと座に加わったのは

もう 食卓の鱶鰭湯が
荒らされてしまったあとだった>

<当年58だという彼女は
さすがにもう美しいとは言えない。

しかし
その話しぶりにうかがえる才気と

歌声は やはり見事だった>

♬~(歌声)

♬~(歌声)

トントントントントン…。

♬~(歌声)

おお ハハハ。

(村田たちの騒ぐ声)

♬~

ルールー。

そうか。

本 持ってくるから。

フフフフ。

よせ! やめろ!

(戸に体当たりする音)

おい しっかりしろ。

さあ 早く逃げたまえ。

もう大丈夫。 君は自由だ。

<結局
どんな名所や名峰を訪れるよりも

僕には 人間を見ている方が
ずっと面白いのだ>

<広東に生まれた孫文らを除けば

黄興 蔡鍔
宋教仁

めぼしい革命家は
いずれも湖南に生まれている>

<湖南の民は
さぞかし情熱的であるのだろうね>

<2人の語らいに
常に村田君の通訳が必要なのは

甚だ残念なことである。

ともあれ 湖南生まれの玉蘭は
次のような話を聞かせてくれた>

(中国語)

<長年の愛人であった大悪党
黄六一の斬首刑は

桟橋前の空き地で行われた>

<そこに 彼の血のたまっているのを
見つけた彼女は…>

<持っていたビスケットを それに浸した>

♬~

<ばかりでなく

近しい者たちにも それを分け与えた>

<かくして 愛する黄六一の血は
今も 彼女たちのどこかに流れている。

僕は少々羨ましい気がした>

先生
明日は 12時発の船で湖南に向かいます。

向こうでは 女子師範学校を見学し…。

生徒たちは
なぜ 鉛筆を使わないんですか?

村田君 聞いてくれよ。

鉛筆は日本製だからですよ。
ああ…。

(中国語)

校舎の案内は以上だと。

ああ… じゃあ
寄宿舎の方も見せてくれないかな。

(村田の通訳)

お断りします。

♬~(生徒たちの歌声)

(雷鳴)

(中国語)

私が最も憎む日本人は
桃太郎です。

(中国語)

隣の島に住む生き物たちは
本当に鬼だったのでしょうか。

桃の旗を振り 3匹の動物を従えて
桃太郎が鬼が島でしたことは つまり

侵略ではなかったかと 私は思うのです。

(ぶつかる音)
おお。

何ですか?
ああ 労働運動潰しです。

資本家に雇われたゴロツキが
労働者集会を潰してるんです。

危ないな。
ゴー。 ゴー アウェイ。 イエスエス

(騒ぎ声)

降りましょう。
降りる…?

先生 こっちです。

(子どもの泣き声)

急ぎましょう。

先生。

大丈夫ですか?

眠れないんだ。

悪いが また どこかで
カルモチンを手に入れてくれないか。

ああ カルモチン。 カルモチンっと。

そういや 今から会いに行く若者は

先生の愛読者だそうですよ。

へえ。 何だろう。 「羅生門」かな。

杜子春」かな。

東京帝大に留学をしていて
日本語も流ちょうですから

今日は わしの通訳も ブーヤオです。

恐ろしく頭のいい男で。

<共産主義思想のもと
民族解放運動に携わっている。

ひょっとすると 新しい時代を代表する
人間の一人となるやもしれません>

(ドアが開く音)

こんにちは。

初めまして 李人傑と申します。
芥川です。

芥川先生 中国の旅はいかがですか?

そうですねえ…。

いささか困っています。

いや~ 私は ふだん
政治のことなど 論じやしないんです。

作家が下手に首を突っ込んだって
ろくなことがありませんから。

政治なんて 芸術より
数段下等なものだということにして

何を吹っかけられようが
まず乗ることはありません。

しかし こちらに来てから
どういうわけか

私は 政治のことばかり考えている
柄にもなく。

それは 我が国の政治が
混乱しているせいでしょう。

ええ。 実に混乱している。

いや~…。

全く正直に言わせてもらえば
ひどいものです。

政治だけじゃない。
学問 経済 芸術 ことごとく堕落している。

国民は 学ぶことも考えることも放棄し

僅かな賢人たちでさえ
絶望してるか 奇跡を待ってるかです。

一体 この巨大な混迷を…

手に負えない悪の横行と
その犠牲となる弱き者たちを

あなた どうするおつもりなんです?

社会革命が必要です。

そして そのためには プロパガンダ
頼るほかはないと考えています。

確かに 民衆の多くは堕落しています。

しかし いくらかの若者たちは
新しい意識に目覚め始めています。

彼らはむしろ 学ぶことを切望しています。

けれど そのための本や雑誌などが
全く足りていないのです。

それなら あなたが書けばいい。

そうです。 それはすぐにでもやるべきだ。

はい。 おっしゃるとおりです。

この国には 民意というものがないんです。

民意なくして
革命なんて起こるわけがない。

いわんや成功をやです。

種は もう この手にあります。

ただ ご覧になったでしょう。
中国という大地は 大変広いです。

そして荒れ果てています。

困難は覚悟してます。

しかし
その困難に 私の力が及ぶかどうか

私の体が耐えるかどうか…。

それは分かりません。

ああ お おい 止めてくれ。

先に帰ってて下さい。
え? 先生!

ニーハオ。

ううん。

あっ。

(中国語)

ルールーは?

ルールーはいないのか?

彼に本を渡すために来たんだがね。

(村田の通訳)

ルールー。

(中国語)

ルールーは死んだ。
え?

♬~

<政治 学問 経済 芸術。

あまたの崩壊のふちで

支那は今 血にあふれている。

それを アスファルトやビスケットと
分け合って。

しかし いつかまた この大きな国は

必ず起き上がるのだろう>

♬~(歌声)

(鳴り物の音)

<前は
あれほど騒々しいと思われた鳴り物が

やけに心地よく思えるようになっていた>

(鳴り物の音)

(中国語のせりふ)

(鳴り物の音)

(中国語のせりふ)

(拍手と歓声)

これと…

全部くれ。 全部 ウォーヤオ。

いや 本当にすばらしかった。
シェシェ。

(村田の通訳)

ありがと。

<その夜の緑牡丹は ことさらに美しく

その美しさが 深く私を慰めた。

故に 本来 こんなことを書きたくはない>

<しかし 書かねばなるまい。

私は 大阪毎日新聞社特派員である。

やがて 緑牡丹は
深紅の美しい袖を翻して…>

(はなをかむ音)

<見事な手ばなをかんだ>

(中国語)

すまんね。

ちょいと休めば
楽になると思うんだがね。

そういや 今度…

李人傑が 全国の共産党から
代表者を集めて 会議をするそうですよ。

ほう 何人くらい来るだろうか。

まあ わしの予想では 20…
いや せいぜい15人。

うん。 遠いな 道は。

<結局集まったのは 13人であった>

<後に歴史に刻まれることとなる
その第一回全国共産党大会は

李人傑の家で行われ

この時 湖南代表として参加したのが
毛沢東であった>

<李人傑は やがて共産党を離れ

6年後 軍閥の銃弾によって惨殺される>

<そして
それに先んじること5か月。

昭和2年7月24日。

芥川龍之介
大量の睡眠薬で自ら命を絶った>

<やがて訪れる
戦争という嵐の季節を目前に>

<芥川が死の床で着ていたのは

中国の布で仕立てた浴衣だったという>

<随分気に入っていたらしい>

♬~