ドラマログテキストマイニング

テレビ番組(ドラマ)の字幕情報を対象に、テキストマイニングの研究をしておりますので、解析結果の公開をメインに関連グッズを交えた構成で記事にしてます。また、解析結果の信憑性が確認できるよう、解析用ソースも部分引用し掲載してあります。

黒手組 満島ひかり、田中圭、つのだひろ、ミッツ・マングローブ… ドラマの原作・キャストなど…

『シリーズ江戸川乱歩短編集Ⅱ 妖しい愛の物語 第2回「黒手組」』のテキストマイニング結果(キーワード出現数ベスト20&ワードクラウド

  1. 牧田
  2. 伯父
  3. 富美子
  4. 黒手組
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  18. 場所
  19. 身代金
  20. 伯母

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『シリーズ江戸川乱歩短編集Ⅱ 妖しい愛の物語 第2回「黒手組」』のEPG情報(出典)&解析用ソース(見逃した方はネタバレ注意)

 

解析用ソースを読めば、番組内容の簡易チェックくらいはできるかもしれませんが…、やはり番組の面白さは映像や音声がなければ味わえません。ためしに、人気のVOD(ビデオオンデマンド)サービスで、見逃し番組を探してみてはいかがでしょうか?

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シリーズ江戸川乱歩短編集Ⅱ 妖しい愛の物語 第2回「黒手組」[字]

満島ひかりが名探偵・明智小五郎を演じて話題となったシリーズ第2弾。黒手組と呼ばれる犯罪集団に令嬢が誘拐され身代金が奪われる。明智は令嬢に宛てたハガキに注目する。

詳細情報
番組内容
江戸川乱歩の短編小説を気鋭のクリエーターたちが映像化する。演出は関和亮。私(田中圭)は、伯父(つのだ☆ひろ)一家に起こった事件を新聞で知る。娘(仁村紗和)が「黒手組」と呼ばれる犯罪集団に誘拐され、身代金を奪われたのだ。しかし娘は戻ってこない。私は友人の明智小五郎満島ひかり)に捜査を依頼した。伯父たちから話を聞いた明智は、事件前日に娘に届いたハガキを手に姿を消す。明智の意外な推理とは?
出演者
【出演】満島ひかり田中圭,つのだひろ,ミッツ・マングローブ仁村紗和矢部太郎

 

 


<今日とても 「神出鬼没の
怪賊云々」というような

三段抜きの大見出しで
相もかわらず書き立てています。

しかし 私は そうした記事には
もう なれっこになっていて

別に興味を
ひかれませんでしたが

その記事の下の方に
小さい見出しで

「××××氏襲わる」という

十二 三行の記事を発見して
非常に驚きました。

と云いますのは
その××××氏は

かくいう
私の伯父だったからです。

記事が簡単で
よく分りませんけれど

なんでも 娘の富美子が
賊に誘拐され

その身代金として
一万円を奪われた

ということらしいのです。

そこで 私は早速
荷物をまとめて帰京しました。

ようすを聞きますと
驚いたことには

事件は
まだ解決していないのでした。

身代金は 賊の要求どおり
渡したにもかかわらず

肝心の娘が いまだに
帰って来ないというのです。

ここで ちょっと 当時の
「黒手組」のやり口を

説明しておく必要が
あるようです。

彼らは きまったように
まず 犠牲者の子女を誘拐し

それを人質にして
巨額の身代金を要求するのです。

脅迫状には いつ 何日の何時に
どこそこへ

金 何万円を持参せよと
くわしい指定があって

その場所には 「黒手組」の首領が
ちゃんと待ち構えています。

又 被害者が
あらかじめ警察に届け出て

身代金を手渡す場所に 刑事などを
張り込ませておきますと

どうして察知するのか

彼らは 決して
そこへ やって来ません。

思うに こんどの黒手組事件は

よくある不良青年の
気まぐれなどではなくて

非常に頭の鋭い

しかも きわめて豪胆な連中の
仕業に相違ありません。

賊のやり方は うわさにたがわず
実に 巧妙をきわめていて

なんとなく 妖怪じみた
すごいところさえあるのです>

<彼なれば この事件にも

なんとか 眼鼻を
つけてくれるかも知れません。

間もなく 明智と私とは

伯父の邸の
数寄を凝らした応接間で

伯父と対座していました。

伯母や書生の牧田なども
出て来て 話に加わりました。

この牧田というのは
身代金手交の当日

伯父の護衛役として
現場へ同行した男なので

参考のために
伯父に呼ばれたのでした>

事の起こりは さよう
今日から6日前

つまり 13日でした。

その日の ちょうど昼頃
娘の富美が

ちょっと友達の所までと言って

着替えをして 家を出たまま
晩になっても帰らない。

我々はじめ 黒手組のうわさに
脅かされている際でしたから

まず この家内が
心配を始めましてね。

分かっているだけの
友達の所へは

すっかり
電話をかけさせてみたが

どこへも寄っていない。

それから 書生や出入りの者などを
駆り集めて

八方 捜索に尽くしました。

その晩は とうとう
我々はじめ 一睡もせずでしたよ。

(明智)ちょっと お話し中ですが

その時 お嬢さんが
お出ましになるところを

実際に見られた方が
ありましたでしょうか?

それはもう
女どもや書生などが

確かに見たのだそうで
ございます。

それからあとは
一切不明なのですね。

ここは ご存じのとおり
さみしい屋敷町で

近所の人といっても
そう出歩かないようだし

それは 随分
訪ね回ってみたのですが

誰ひとり
娘を見かけた者がないのです。

その翌日の昼過ぎでした。

心配していた黒手組の脅迫状が
舞い込んだのです。

脅迫状は 警察へ持っていって
今 ありませんが

文句は…

「もし 警察へ訴えたりすれば
人質の命はないものと思え」。

ざっとまあ こんなものでした。

その脅迫状を警察で調べた結果

何か 手がかりでも
見つかりませんでしたか?

それがね まるで
手がかりがないというのです。

警視庁には
そういう事を調べる設備は

よく ととのっていますから
まず間違いはありますまい。

で 消印は どこの局に
なっていましたでしょう?

いや 消印はありません。

というのは
郵便で送ったのではなく

誰かが 表の郵便受け箱へ
投げ込んでいったらしいのです。

それを箱から お出しになったのは
どなたでしょう?

私です。 郵便物は全て
私が取りまとめて

奥様の所へ 差し出しますんで

13日の午後の 第1回の配達の分を
取り出した中に

その脅迫状が交じっておりました。

で それから どうなさいました?

わしは よほど 警察沙汰に
してやろうかと思いましたが

娘の命を取ると言われては
そうもなりかねる。

かわいい娘には代えられぬと
観念して

残念だが
1万円出す事にしました。

わしは 少し早めに用意をして

百円札で 1万円
白紙に包んだのを懐中し

脅迫状には 「必ず一人で
来るように」とありましたが

もしもの場合の護衛役として
この牧田を連れて

あの寂しい場所へ
出かけました。

ご承知のとおり 一本松の周りは
一帯の灌木林で

かなり気味が悪い。

が わしは じっと辛抱して
そこに立っていました。

さあ 30分も待ったでしょうかな。

牧田 お前は
あの間 どうしていたっけなあ?

はあ ご主人の所から10間ぐらいも
ありましたかと思いますが

じ~っと ご主人の懐中電灯の光を
見つめておりました。

で 賊は
どの方角から参りました?

賊は
原っぱの方から来たようです。

どんな風をしていました?

いや~ よくは 分からなかったが
頭から足の先まで 真っ黒で

非常に背の高い男だった事だけは
間違いない。

わしは これで
5尺5寸あるのですが

その男は わしよりも
2~3寸も高かったようです。

何か言いましたか?
だんまりですよ。

わしの前まで来ると 一方の手に
ピストルを差し向けながら

もう一方の手を
ぐっと突き出したもんです。

で わしも無言で
金の包みを手渡ししました。

そして 娘の事を言おうとして
口をききかけると

賊のやつ やにわに
人さし指を口の前に立てて

「シ~ッ」と言うのです。

わしは 黙ってろという
合図だと思って

何も言いませんでした。

賊は ピストルを
わしの方に向けたまま

後じさりに
だんだん遠ざかっていって

林の中に
見えなくなってしまったのです。

わしは しばらく
身動きもできないで

立ちすくんでいましたが
そうしていても際限がないので

後ろの方を振り向いて
小声で 牧田を呼びました。

すると 牧田は茂みから
ごそごそ出てきて…。

もう行きましたか?

(伯父)…と
びくびくもので聞くのです。

牧田さんの隠れていた所からも
賊の姿は見えましたか?

はあ 姿は見えませんでしたが
何か こう

賊の足音のようなものを
聞いたと思いますので。

それから どうしました?

で わしは もう帰ろうと言うと

牧田が 賊の足跡を
調べてみようと言うのです。

つまり 後になって
警察に教えてやれば

非常な手がかりになるだろう
という意見でね。

そうだったね 牧田。
はあ。

足跡は見つかりましたか?

それがね 賊の足跡というものが
ないのです。

昨日も
刑事が調べに行ったそうですが

さみしい場所で その後
人も通らなかったと見え

わしたち 両人の足跡は
ちゃんと残っているのに

そのほかの足跡は
一つもないという事でした。

<私は最初 伯父から 話を
聞いた時にも思ったことですが…>

<それは
実に一種 不気味な事実でした>

ところで 近頃 お嬢さんの所へ

何か 疑わしい
手紙のようなものでも

参っていないでしょうか?

私どもでは
娘の所へ参りました手紙類は

必ず一度 私が目を
通すようにしておりますので

怪しいものがあれば じきに
分かるはずでございますが

さようでございますね
近頃は 別段 これといって…。

いや ごくつまらないような事でも
結構です。

どうかお気付きの点を ご遠慮なく
お話し願いたいのですが。

でも…。
ともかく
お話しなすってみて下さい。

そういうところに 往々
思わぬ手がかりがあるものです。

どうか。
では 申し上げますが

一月ばかり前から 娘の所へ

私どもの一向 聞き覚えのない
お名前の方から

ちょくちょく
葉書が参るのでございますよ。

いつでしたか 一度 私は娘に

これは 学校時代のお友達ですか?

って 聞いてみた事が
ございましたが 娘は…。

ええ。

と答えは致しましたものの
どうやら

何か隠している
様子なのでございます。

もうそんな ささいな事は

すっかり
忘れておりましたのですが

お言葉で
ふと思い出した事がございます。

と申しますのは
娘が かどわかされます

ちょうど前日に その変な葉書が
参っているのでございますよ。

では それを一度
拝見願えませんでしょうか。

(伯母)よろしゅうございます。

<そうして 伯母は
問題の葉書というのを

探し出して来ました。

見ると 日附は
伯母のいった通り 十二日で

差出人は匿名なのでしょう

ただ 「やよい」となっています。

私も その葉書を手に取って
充分 吟味してみましたが

なんの変てつもない
如何にも少女らしい

要でもない文句を
並べたものに過ぎません。

ところが 明智は何を思ったのか

さも一大事という調子で
その葉書を

しばらく拝借して行きたい
というではありませんか。

もちろん 拒むべき事でもなく
伯父は 即座に承諾しましたが

私には 明智の考えが
ちっとも わからないのです>

<その翌日 ちょっと 煙草屋の
お内儀さんに 声をかけて

いきなり 明智の部屋への階段を
上がろうとしますと…>

あら
今日は いらっしゃいませんよ。

珍しく 朝早くから どっかへ
お出かけになりましたの。

<さてはもう 活動を始めたかしら。
それにしても 朝寝坊の彼が

こんな早くから
外出するというのは

余り
例のないことだと思いながら

少し間をおいて 二度も三度も
明智を訪問したことです。

ところが 何度行って見ても
彼は帰っていないのです。

私は
少々 心配になって来ました。

私は一応 伯父の耳に
入れておく方がいいと

思いましたので
事情を話しますと…>

それは大変だ。

<明智までも 賊の虜になって
しまったのではあるまいか。

もしや そんなことがあったら

明智の親許に対しても
何とも申しわけがないとあって

伯父を始め
騒ぎ出すという始末です。

私は 明智に限って

万々 へまな真似はしまいと
信じていましたが

こう周囲で騒がれては
心配しないわけにはいきません。

ところが その日の午後になって
一通の電報が配達されました>

ハッハッハッハッ。
やった やったな。

<そうして待ちかねた私たちの前に
明智の ニコニコ顔が現れたのは

もう日暮れ時分でした>

非常に残念ですが
何も お話しできないのです。

いくら私が無謀でも

単身で あの凶賊を
逮捕する事などできません。

私は いろいろ考えた結果
ごく穏やかに

お嬢さんを取り戻す
工夫をしたのです。

つまり 賊の方から のしをつけて
返上させるといった方法ですね。

すなわち 黒手組の方では

お嬢さんも 身代金の1万円も
返す事。

そして将来とも お宅に対しては
絶対に手出しをしない事。

私の方では 黒手組に関しては
一切 口外しない事。

そして将来とも 黒手組逮捕の
助力など絶対にせぬ事。

こういうのです。

私としては
お宅の損害を回復しさえすれば

それで役目が済むのですから

下手にやって 「虻蜂取らず」に
終わるよりはと思って

賊の申し出を承知して
帰ったような次第です。

そういう訳ですから
どうか お嬢さんにも

黒手組については
一切 お尋ね下さいませんように。

で これが 例の1万円です。
確かに お渡しします。

いや~ もう あんたは全く
娘の命の親です。

わしは ここで誓っときます。

将来とも あんたのお頼みなら
どんな無理な事でも

きっと承知するという事をね。

どうです? さしあたり 何か

お望み下さる事でも
ありませんかな?

それは ありがたいですね。
例えば どうでしょう?

私の友人の ある男が

お嬢さんに 大変
焦がれているのですが

その男に お嬢さんを頂戴する

というような望みでも
構いませんでしょうか?

ハッハッハッハッ
あんたも なかなか隅に置けない。

いや~ あんたが
先の人物さえ保証して下さりゃ

娘を差し上げまいものでも
ありませんよ。

その友人は…

クリスチャンなんですが
この点は どうでしょう?

よろしい。 わしは
一体 耶蘇教は大嫌いですが

ほかならん
あんたのお頼みとあれば

ひとつ 考えてみましょう。

いや~ ありがとう。

きっと いつか
お願いにあがりますよ。

どうか 今のお言葉を
お忘れないように願います。

<このひとくさりの会話は
ちょっと妙な感じのものでした。

座興と見れば
そうとも考えられますが

真剣な話と思えば
又 そうらしくもあるのです。

伯父は
明智を玄関まで送り出して

お礼の寸志だと云いながら
彼が辞退するのも聞かないで

無理に 二千円の金包みを
明智の懐へ押し込みました>

今度の事件の出発点はね

あの 足跡のなかった
という事実だよ。

あれには少なくとも
6つの可能な場合がある。

第一は 伯父さんや刑事が

賊の足跡を見落としたという解釈。

第二は 賊が何かに ぶら下がるか
それとも綱渡りでもするか

とにかく 足跡のつかぬ方法で

現場へ やってきたという解釈。

第三は 伯父さんか牧田かが

賊の足跡を
ふみ消してしまった
という解釈。

第四は
偶然 賊の履物と

伯父さん または
牧田の履物と

同じだったという解釈。

それから
第五は 賊が現場へこなかった。

つまり伯父さんが何かの必要から
一人芝居を演じたのだという解釈。

第六は 牧田と賊とが

同一人物だったという
解釈。 この6つだ。

僕は ともかく現場を
調べてみる必要を感じたので

あの翌朝 早速 T原へ行ってみた。

警察の連中は 大変な見落としを
やっていたのだよ。

というのは 地面に たくさん
何だか こう

とがったもので
突いたような跡があるんだ。

もっとも それは 伯父さんたちの
足跡の下に隠れていて

ちょっと見たんでは
分からないのだがね。

僕は それを見て いろいろ
想像を巡らしているうちに

ふと ある事を思い出した。

天来の妙音とでもいうか
実に すばらしい考えなんだよ。

それはね 書生の牧田が
小さな体に似合わない

太い黒メリンスの へこ帯を

大きな結び目を こしらえて
締めているだろう。

後ろから見ると
ちょっと滑稽な感じを与えるね。

僕は 偶然 あれを覚えていたんだ。
これでもう 僕には

何もかも分かってしまったような
気がしたよ。

で 結局 どうなんだい?

つまりね
さっき言った6つの解釈のうち

第三と第六とが
当たっているんだ。

言いかえると
書生の牧田と賊とが

同一人物だったのさ。

牧田だって? それは不合理だよ。

あんな愚かな
それに正直者で通っている男が。

第一 伯父は
賊が大男の彼よりも

2~3寸も
背が高かったと言っている。

そうすると
5尺7~8寸はあったはずだ。

ところが 牧田は反対に
あんな ちっぽけな男じゃないか。

反対も こう極端になると
ちょっと疑ってみる必要があるよ。

一方は
日本人としては珍しい大男で

一方は 奇形に近い小男だね。

これは いかにも鮮やかな対照だ。
惜しい事に 少し鮮やかすぎたよ。

もし牧田が
もう少し短い竹馬を使ったら

かえって 僕は
迷わされたかもしれない。

ハハハハ 分かるだろう?

彼はね
竹馬を短くしたようなものを

あらかじめ 現場に隠しておいて
それを手で持つ代わりに

両足に縛りつけて
用を弁じたんだよ。

そして 賊の役目を務めたあとで

今度は 竹馬の跡を消すために

賊の足跡を
調べ回ったりなんかしたのさ。

そんな 子供だましみたいな事を

どうして 伯父が
看破できなかったのだろう?

それが 例のメリンスの へこ帯なんだ。
実に うまい考えだろう?

あの大幅の黒いメリンスを グルグルと
頭から足の先まで巻きつけりゃ

牧田の小さな体ぐらい
訳なく隠れてしまうからね。

それじゃ あの牧田が

黒手組の手先を務めていたとでも
言うのかい?

どうも おかしいね。 黒手…。

おや? まだ
そんな事を考えているのか。

君にも似合わない。 ちと今日は
頭が鈍っているようだね。

伯父さんにしろ 警察にしろ
果ては 君までも

すっかり 黒手組恐怖症に
取っつかれているんだからね。

まあ 時節柄
無理もない話だけれど

もし君が いつものように
冷静でいたら

なにも僕を待つまでもなく

君の手で 十分 今度の事件は
解決できただろうよ。

これには 黒手組なんて
まるで関係ないんだ。

じゃあ さっき君は
黒手組と約束したなんて

なぜ あんな
でたらめを言ったのだい?

第一 分からないのは
もし 牧田の仕業とすれば

彼を 黙って放っておくのも
変じゃないか。

それから牧田は あんな男で
富美子を誘拐したり

それを数日の間も
隠しておいたりする力が

ありそうにも思われぬし。

現に 富美子が家を出た日には
彼は終日 伯父の邸にいて

一歩も 外へ出なかった
というではないか。

一体 牧田みたいな男に

こんな大仕事が
できるものだろうか。

それから…。
疑問百出の態だね。

だがね もし君が この葉書の
暗号文を解いていたら

少なくとも これが暗号文だ
という事を 看破していたら

そんなに
不思議がらないで済んだろうよ。

この暗号文がなかったら

僕は とても牧田を疑う気には
なれなかったに相違ない。

しかも これが暗号文だと

最初から
ハッキリ 分かっていたのではない。

ただ疑ってみたんだ。

疑った訳はね この葉書が
富美子さんの いなくなる

ちょうど前日に来ていた事。

手跡が うまく まねてはあるが
どうやら男らしい事。

富美子さんが
これについて聞かれた時

妙なそぶりを
示した事などもあったが

それよりもね これを見たまえ。

まるで
原稿用紙へでも書いたように

各行18字詰めに
実に きれいに書いてある。

が ここへ 横に
ず~っと線を引いてみるんだ。

この線に沿って
ずっと横に目を通してみたまえ。

どの列も半分ぐらい
仮名が交じっているだろう?

ところが
たった一つの例外がある。

それは
この一番初めの線に沿った

各行の第1字目だ。
漢字ばかりじゃないか。

これは どうも
偶然にしては変だ。

僕は ふと2字だけ
抹消した文字のあるのに気付いた。

こんなに きれいに書いた
文章の中に

汚い消しがあるのは
ちょっと変だからね。

しかも それが
2つとも第2字目なんだ。

僕は 自分の経験で知っているが

日本語で暗号文を作る時
最も困るのは

濁音 半濁音の始末だよ。

でね 抹消文字は
その上に位する漢字の

濁音を示すための
細工じゃないかと考えたんだ。

果たして そうだとすると
この漢字は

おのおの1字ずつの仮名を
代表するものでなければならない。

つまり これは
漢字の字画がキーなんだよ。

それも
偏と旁を別々に勘定するんだ。

例えば 「好」は
偏が3画で
旁が3画だから

3 3という
組み合わせになる。

で それを表にしてみると こうだ。

この数字を見ると

偏の方は11まで
旁の方は4までしかない。

これが
何かの数に符合しやしないか。

偏の画の数は 子音の順序を示し

旁の画の数は母音の順序を
示すものと仮定するのだ。

すると
「一」は1画で旁がないから

ア行の第1字目
すなわち「ア」となり

「好」は 偏が3画だから サ行で

旁が3画だから
第3字目の「ス」だ。

こうして
当てはめていくと…

さて 年頃の
女の所へ

暗号文で
時間と場所を知らせてくる。

しかも それが
どうやら男の手跡らしい。

この場合
ほかに考え方があるだろうか。

あいびきの打ち合わせと
見るほかにはね。

そうなると 事件は 黒手組らしく
なくなってくるじゃないか。

少なくとも
黒手組を捜索する前に

一応 この葉書の差出人を
取り調べてみる必要があるだろう。

ところが 葉書の主は

富美子さんのほかに
知っている者がない。

ちょっと難関だね。
しかし ひとたび これを

牧田の行為と
結び付けて考えてみると

疑問は釈然として氷解するのだよ。

というのは もし 富美子さんが
自分で家出をしたものとすれば

両親の所へ 詫状(あるいは
書き置きと書いて遺書)の

一本ぐらい よこしても
よさそうなものじゃないか。

この点と 牧田が
郵便物を取りまとめる役目だ

という事と結び付けると
ちょっと面白い筋書きができるよ。

つまり こうだ。
牧田が どうかして

富美子さんの恋を
感づいていたとする。

で 彼は富美子さんからの手紙を
握り潰して

そのかわりに
手製の黒手組の脅迫状を

伯母さんの所へ
差し出したという順序だ。

(ため息)
驚いた。 だが…。

まあ 待ちたまえ。

僕は 現場を調べると

その足で
伯父さんの邸の門前へ行って

牧田の出てくるのを
待ち伏せしていた。

そして 彼が使いにでも
行くらしいふうで出てきたのを

うまく ごまかして
このカフェーへ連れ込んだ。

僕は 彼が正直者だった事は

初めから
君と同様に認めていたので

今度の事件の裏には

何か深い事情が潜んでいるに
相違ないと にらんでいた。

でね 絶対に 他言しないし
品によっては

相談相手になってやるからと
安心させて

とうとう白状させてしまったのだ。

君は多分 服部時雄という男を
知っているだろう?

キリスト教信者だという理由で
富美子さんに対する

結婚の申し込みを
拒絶されたばかりでなく

伯父さんの所へのお出入りまで
止められてしまった

あの気の毒な
服部君をね。

親というものは
バカなもので

さすがの伯父さんも
富美子さんと服部君とが

とうから 恋仲だった事に
気付かなかったのだよ。

また 富美子さんも富美子さんだ。

なにも家出までしないでも
かわいい娘の事だ。

いかに
宗教上の偏見があったって

できてしまったものを 今更無理に
引き離す伯父さんでもあるまいに。

そこは
娘心の浅はかというやつだ。

それとも 案外
家出をして脅かしたら

頑固な伯父さんも
折れるだろうという

横着な考えだったかも
しれないが

いずれにしても
2人は 手に手を取って

服部君の田舎の友人の所へ
駆け落ちと しゃれたのさ。

無論 そこから
度々 手紙を出したんだそうだ。

それを 牧田のやつ 一つ漏らさず
握り潰していたんだね。

僕は 千葉へ出張して

家では 黒手組騒動が持ち上がって
いるのも知らないで

ひたすら
甘い恋に酔っている2人を

一晩かかって口説いたものだよ。

あんまり
感心した役目じゃなかったがね。

で 結局 きっと
2人が一緒になれるように

取り計らうという約束で
やっと引き離して連れてきたのさ。

だが その約束も
どうやら果たせそうだよ。

今日の伯父さんの口ぶりではね。

ところで 今度は
牧田の方の問題だが

これも やっぱり女出入りなのだ。

かわいそうに 先生 涙を
ぽろぽろ こぼしていたっけ。

あんな男にも恋はあるんだね。

相手が何者かは知らないが
恐らく 商売人か何かに

うまく持ちかけられたとでも
いうのだろう。

ともかく
その女を手に入れるために

まとまった金が入り用だったのだ。

そして聞けば 富美子さんが
帰ってこないうちに

出奔するつもりでいたんだそうだ。

僕は つくづく恋の威力を感じた。

あの愚かしい男に こんな巧妙な
トリックを考え出させたのも

全く 恋なればこそだよ。

すっかり コーヒーが冷えてしまった。

じゃあ もう帰ろうか。

これをね ついでの時に
牧田君にやってくれたまえ。

婚資にと言ってね。

君 あれは かわいそうな男だよ。

分かった。

人生は面白いね。

この俺が 今日は 二組の恋人の
月下氷人を務めた訳だからね。