ドラマログテキストマイニング

テレビ番組(ドラマ)の字幕情報を対象に、テキストマイニングの研究をしておりますので、解析結果の公開をメインに関連グッズを交えた構成で記事にしてます。また、解析結果の信憑性が確認できるよう、解析用ソースも部分引用し掲載してあります。

みをつくし料理帖 総集編 黒木華、森山未來、永山絢斗、成海璃子… ドラマの原作・キャスト・音楽など…

『「みをつくし料理帖」総集編、前後編を一挙放送!』のテキストマイニング結果(キーワード出現数ベスト20&ワードクラウド

  1. 料理
  2. 種市
  3. 登龍楼
  4. 野江
  5. 太夫
  6. 旦那
  7. 小松原様
  8. 又次
  9. 料理人
  10. 源斉先生
  11. 坂村堂
  12. 先生
  13. 清右衛門
  14. お澪坊
  15. 江戸
  16. 佐兵衛
  17. 大事
  18. 若旦
  19. 親父
  20. 蕎麦

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『「みをつくし料理帖」総集編、前後編を一挙放送!』のEPG情報(出典)&解析用ソース(見逃した方はネタバレ注意)

 

解析用ソースを読めば、番組内容の簡易チェックくらいはできるかもしれませんが…、やはり番組の面白さは映像や音声がなければ味わえません。ためしに、人気のVOD(ビデオオンデマンド)サービスで、見逃し番組を探してみてはいかがでしょうか?

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(本ページの情報は投稿日時時点のものです。最新の配信状況は Paravi サイトにてご確認ください。)

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みをつくし料理帖」総集編[解][字][再]

14日&21日(土)夜9時~『みをつくし料理帖』新エピソード放送!その前に、前作『みをつくし料理帖』総集編、前後編を一挙放送!さがりマユが笑顔を届けます!

詳細情報
番組内容
新作「みをつくし料理帖スペシャル」の放送(14日・21日)を目前に控え、2017年に放送された「みをつくし料理帖」第1シリーズの総集編をお届けする。原作・髙田郁、脚本・藤本有紀、出演・黒木華森山未來永山絢斗成海璃子小日向文世、安田成美ほか。大阪に生まれた天涯孤独な少女が料理の腕一本を頼りに江戸へ行き、艱難辛苦に巻き込まれながらもやがて江戸屈指の女料理人になるまでを描く、波乱万丈の物語。
出演者
【出演】黒木華森山未來永山絢斗成海璃子萩原聖人麻生祐未小日向文世,安田成美
原作・脚本
【原作】髙田郁,【脚本】藤本有紀
音楽
【音楽】清水靖晃

 

 


(清右衛門)まだ着かんのか。
こんな遠くまで来させおって…。

(坂村堂)来たかいがあったと
きっと思われます。

(清右衛門)本当だろうな?
まずければ金輪際

お前のところには書かんぞ。
無論ですとも。

そのかわり うまければ
次のお作

伝説の花魁 あさひ太夫の物語は

きっと 我が坂村堂に。
ふん。 随分と自信があるようだ。

そこの親父というのが
頭が禿げ上がっているのですがね。

その 禿げの打つ蕎麦のうまい事!
そんなにか。

何しろ 一本も生えておりません。

誰が 禿げ加減を聞いたのだ。
え? 蕎麦の話だ 蕎麦の!

ああ それは もう
召し上がれば分かります。

そうそう
この甘~い栗のからんだ蕎麦を

つるつる~っと… おい!

こ… こんなはずでは…。

禿げ親父の蕎麦は どうした
禿げ親父の蕎麦は!

(種市)誰でえ
禿げ禿げ言ってやがんのは。

よしてくんねえかい。
お前が店主か。

よくも ぬけぬけと
出てきおったな。

「ぬけぬけ」も
よしてくんねえかい!

ふん! そもそも 屋号が
つる家ではないか!

そいつは この頭とは
関わりのねえこった。

(坂村堂)つる家さん
これは 一体 どういう事です。

私どもは 蕎麦を食べに

はるばる 元飯田町から
来たのですよ。

そいつは面目ねえ。

実は 蕎麦屋
しまいにしたんでさぁ。

(坂村堂)え?
腰を痛めちまったもんで…。

今は 別の料理人に
板場を預けてまさぁ。

(坂村堂)別の料理人?

お澪坊。

(種市)お澪坊ってばよ!

(澪)お待ち遠さま。

これが うちの料理人でさぁ。
女ではないか!

澪と申します。
どうぞ よろしゅう。

それも 上方の女ではないか!

まあ 食ってみて下せえ。

しかし この魚は…。

あっ
こいつぁ 猫またぎじゃねえか!

蕎麦は出せねえ これを食えって

出してきたのが 猫またぎってのは
どういう了見だよ!

ふざけやがって!
おい 帰るぞ!

(坂村堂)言わんこっちゃない。

汗水たらして稼いだ大事な銭で

こんな野暮な料理など
御免という訳だ。

(坂村堂)清右衛門先生!

(坂村堂)清右衛門先生!

あの… 何が
いけなかったんでしょうか?

どうして これが 野暮なんです?

それに猫またぎて…。

江戸じゃ
鰹は 初鰹と決まってるんだ。

秋の戻り鰹は 猫もまたいで通る。
それで 猫またぎってんだ。

(種市)銭もらっとこう。

♬~

(芳)猫またぎやて?

道理で安う仕入れられた訳です。
誰も食べへんのですさかい。

こないな おいしいもんを…。

大坂では初鰹よりも戻り鰹の方が
脂が乗ってる言うて

好まれたもんやけどなあ。

江戸は初物しか食べへんそうです。
縁起担ぎか。

(ため息)

これで
安うて おいしいお料理が出せる。

つる家の旦那さんのご恩に
報いられる思たんですけど…。

澪。

堪忍やで。 おまはん一人に
背負わせてしもて。

そんな…。

すんません。

けど 澪にやったら
きっと でける。

嘉兵衛が…

あの人が生きてたら
きっと そない言うたと思うで。

さあさあ! 寄ってくんな!
食べてってくんな!

鰹の時雨煮 おまけに帆立汁だ!

どうだ どうだ! 寄ってくんな!
食べてってくんなよ! おい!

どうだ どうだ どうだ! にいさん
にいさん にいさん にいさん!

戻り鰹だって うめえんだぜ。
俺だって 食って

びっくりしたんだからよ!
寄ってってやるか?

よせよせ 猫またぎだぜ!

野暮な事しやがるなあ
上方の小娘は。

≪(種市)言わねえでよ! おい!

客寄せのために
言ってるんじゃねえぞ。

お前さんの作る料理は
本当に 本当に うめえ。

食ってさえもらえりゃあ
分かるんだ。

(戸が開く音)
(種市)こらぁ 小松原様!

おう 親父。 久しいな。

酒をくれ。
(種市)へい!

(種市)おい。
あ…。

小松原様
こいつは お澪坊ってんでさあ。

あっしぁ 情けねえ事に
腰を痛めちまいましてね。

代わりに
この店を任せてるんでさあ。

ほう。 雇われ店主という訳か。
店主やなんて そないな…。

よし 何か食わせてくれ。
え!?

何を驚いてる。
肴もなしに酒が飲めるか。

小松原様が味見して下さりゃあ
ありがてえ。

けど 旦那さん 今は あれしか…。

あれだからこそ
お出しするんだよ!

駄目です!
江戸のお客さんに あれは…。

何 あれの うまさを
小松原様なら分かって下さる!

けど あれは… あれだけは!
おい!

いいから…
いいから その「あれ」を食わせろ。

これが 「あれ」か。

はい… すいませんでした。

おいおいおい 何をする。
まだ 味見をしていないぞ。

♬~

どうです? 小松原様。
お澪坊の料理は。

こんなにも作り手の顔だちと
同じ味わいの料理を食うのは

初めてだ。

顔だちと同じ味わい?

フフフッ…。

面白い。

ヘッヘッヘッヘッヘッ… ハハハハハハッ!

小松原様 それは そいつぁ
あまりに あんまりな…。

ハハハハハハハッ!

見事な下がり眉だな!

ハッハッハッハッハッハッ!

ハッハッハッハッハッハッ!
もう ご寮さん。

いつまで笑てはるんですか。

そうかて 何べん聞いても
おかしゅうて…。

なあ 澪
もういっぺん 言うてんか。

嫌です。
もういっぺんだけ。 嫌です!

お願い! このとおりや。

見事な下がり眉。

ハッハッハッハッハッ!

もう…。

ああ…
こない笑たんは久しぶりやわ。

その上 そのお侍さん
旦那さんが休まはったあと…。

戻り鰹を出させるとはな…。

あの親父も度胸があるな。

その事 ずっと私も考えてました。

鰹の時雨煮出したい言うた時に

何で 旦那さんは
猫またぎの事を

教えてくれはらへん
かったんやろかて。

まっ 親父としちゃあ
お前さんに盛大に

恥をかかせて
やりたかったんだろうさ。

ほんまに 口の悪いお方なんです。

そのお人は よう分かってはる。
え?

嘉兵衛も こない言うてた。

「才のない者には 恥かかんよう
盛大に手ぇ貸したり。

けど 才のある者には手ぇ貸さんと
盛大に恥かかしたり」。

(芳)つる家の旦那さんは
それと おんなじ思いで

お前を育てようとしてくれてはる。

それを そのお侍さんは
言わはったんや。

そうですやろか。

(芳)ここが おまはんの通う
お稲荷さんか。 はい。

この お稲荷さんが 澪と つる家を
結んでくれはったんやなあ。

♬~

ええんですやろか?

このまま
旦那さんのご厚意に甘えてて。

何のお役にも立ててへんのに…。

人は みんな よそからは
見えへんもん背負て生きてる。

せやからこそ 人と人

寄り添うて 慰め合うて
生きていくのと違うやろか。

あっ…。

ご寮さん?
ああ… 大事あれへん。

ただの立ちくらみやさかい。

ご寮さん! ご寮さん!
どうかしましたか?

これは 血虚という症状です。

血虚

心配は無用です。
命に関わるものではありません。

澪 何や 小さい子どもみたいに。

そやかて…。

私は 神田旅籠町の医師で

永田源斉と申す者です。

また 立ちくらみが
するようでしたら

いつでも…。
(おなかが鳴る音)

あ…。 これは失敬。

なにも このような時に

ここまで 大きな音で鳴かずとも
よいものを…。

冷やご飯のお握りですけど
どうぞ 召し上がって下さい。

源斉先生 どうぞ。

では お言葉に甘えて。

変わった形の握り飯ですね。

上方風です。

では 頂きます。

うん!

♬~

うまかった。

いや 本当に うまかったです。

久々に
寿命が延びた心地がしました。

しかし もしや
私が 今 食べたのは…。

猫またぎです。

やはり そうですか。

いや 驚きました。
こんなにも うまいものとは。

ほんまに江戸の人は
戻り鰹を食べはらへんのですね。

全く もったいない事です。

しかし
食べてみようという機会が

なかなか ないものですから。

[ 回想 ]
けど 旦那さん 今は あれしか…。

あれだからこそ
お出しするんだよ!

けど あれは… あれだけは!
おい!

いいから その「あれ」を食わせろ。

♬~

さあさ
つる家の振る舞い飯ですよ!

はてなの飯は いかが?

はてなの飯?
どうぞ どうぞ!

はてなの飯だよ! 口に合ったら
中で注文してくんな!

どういうこったい?
味見で飯配るなんざ

聞いた事ねえぞ!
どうぞ。

(おりょう)はてなの飯!

ひとつ
味見をさせておくれでないかい。

お代は いくらだい。

いえ 頂きません。

それじゃあ 遠慮なく頂くよ。

あ~ おいしい!

おいしい!

けれど… はてな
これは 何の魚かねえ。

あっ なるほど!
それで はてなの飯か!

ああ こいつぁ 趣向だ!
(一同)ハハハハハッ!

よく見りゃ うまそうだな!
たまんねえや!

どうぞ どうぞ!

はてなの続きは
どうぞ 店の中で!

中で飯を食って
謎解きしてくんな!

どうぞ!
うめえぞ こりゃ!

にわかに すみません。

その後 お体の具合は
いかがかと思いまして。

先生から頂いた お薬のおかげで
少し楽になりました。

決して 無理は
なさいませんように。

まあ 娘さんが一緒ですから

大事ないとは思いますが。

私らは 親子ではあれへんのです。

え?

澪。
はい。

源斉先生 大坂の…
享和の大水を ご存じですか?

10年ほど前 長雨が続いて

とうとう 淀川の堤が切れ

大坂の町は 水に沈みました。

私は 8つで 二親を失うて…。

こら!

何をさらすんじゃ!

やめなはれ!

これで文句なしや。

もう この子に
手出しは無用だすで。

へえ すぐ包みますよって。
要りまへん!

料理は料理人の器量次第。

おまはんの器量のほどは
よう分かりました。

慌てて食べたらあかん。

(芳)ゆっくり ゆっくりやで。

どうや? 分かるか?

これが お米の味や。

ほかには何にも足してへんのやで。

どうや? ん?

それから 私は 天満一兆庵に
奉公人として置いて頂いたんです。

主人の嘉兵衛が 澪の才に気付き
料理人として仕込みました。

けど 隣からの もらい火で
店が焼けてしもて。

江戸には なぜ?

一人息子の佐兵衛を
頼って参りました。

若旦さんは 5年ほど前

こちらで
江戸店を開かはったんです。

そやのに 私らが来てみると…。

(嘉兵衛)佐兵衛! 佐兵衛~。

佐兵衛!
若旦さ~ん!

どないなっとんのや。

澪… 託せるのは おまはんだけや。

何としても 天満一兆庵の暖簾を

この江戸に…。

♬~

すみません。

しめっぽい話を
お聞かせしてしもて。

ああ いえ…。

けれど ひとつ 合点がいきました。

ご寮さんに食べさせてもらった
重湯が

澪さんの料理の

そして 心根の
原点なのでしょう。

だから 澪さんの握る お握りは
あんなに おいしいのですね。

食べ物は また
薬でもあるのですよ。

食べ物が 薬?
ええ。

例えば 卵が滋養になるのは
明々白々ですね。

また 百合根は 不安を静め
よく眠れるようにしてくれます。

銀杏も また
驚くほど 滋養があるのです。

口から とるものだけが
人の体を作るのです。

昔の人は こう言っています。

食は人の天なり。

食は人の天なり…。

おいしい料理を作れる人は
それだけで尊いのですよ。

小松原様!

おう 親父。

悪いが
一杯だけ飲ませてくれるか?

そりゃあ もう。

随分 ご無沙汰じゃあ
ございませんか?

ああ…。

見当たらんな。
え?

あの 下がり眉だ。

ああ お澪坊なら…。

♬~

合わせ出汁?
(種市)ええ。

うまみが 片や広がり 片や集まる。

昆布と鰹の
いいところ合わせたら

とんでもねえ出汁が
できるはずだって言いやしてね。

なんと まあ…。

あっしだって あきれてますよ。

けど お澪坊が
やりてえってんなら

気の済むまで やらせてやりてえ。

何だって そんなに肩入れする?

小松原様…。

何で うちの屋号が つる家だか
お分かりですか?

つる…。

違いますよ!
ああ ち… 違うのか。

あっしが お澪坊と出会ったのは
水無月の15日。

娘 つるの
祥月命日だったんでさぁ。

(種市)17で逝っちまった
大事な一人娘の おつる。

(種市)お澪坊を初めて見た時

あっ おつるだ。

おつるが
俺んとこへ帰ってきた。

あっしは そう思ったんでさぁ。

あっしに償いをさせるために

この娘に姿を変えて
戻ってきてくれたんだと。

そうか。
へい。

禿だからじゃなかったんだな。
そこですかい。

フフフフッ。

しかし 何とも 眉の下がった娘に
姿を変えたもんだな。 フフッ。

いや 小松原様…。

料理に入り込んでる時の
お澪坊は

ちっとも
下がり眉じゃないんですぜ。

まるで 愛染明王みてえで。

そら 恐ろしいくらいだ。

(種市)
あの小さな体に背負わせるのは

酷かもしれねえが…。

(種市)あっしは賭けてるんです。

お澪坊の清い心根と

料理の才に。

♬~

(芳)茶碗蒸しか。

久しぶりやなあ。

どうぞ。

頂きます。

♬~

澪 この出汁は…。

でけたんやな。 でけたんやな 澪!

この合わせ出汁で
最初に 何 作ろか思て。

卵に 百合根に…

銀杏。

澪…。

ご寮さん しっかり 滋養つけて

早う元気になって下さいね。

澪 あんたいう子は…。

おいしい。 ほんまに おいしいわ。

(芳 澪)フフフフッ。

いや~ うまいねえ!
ありがとうございます!

♬~

こんな うまいものが
この世にある訳がありません!

ねえ 先生!
ふん。

(坂村堂)これは まるで極楽の味!

口の中で とろとろと
溶けてしまいましたよ!

とろとろ茶碗蒸しっていうのかい
おい!

すんません。
悪いね! また明日な!

すんません。

♬~

(猫の鳴き声)

えっ? えっ!?

合わせ出汁が出来たのだな。

若い娘が 香をたきしめもせず
出汁で煮しめられるやつがあるか。

この下がり眉。

♬~

(伊佐三)ああ すまねえな!
すまねえ すまねえ!

すまないな!

あっ 伊佐三さん…。

あんた どうだったんだい!?
一番乗りで手に入れてきたぜ!

(種市)悪い 俺に見せてくれ!

そこじゃねえよ もっと上の方だ!

あっ… ああ…。

旦那さん!
あ~!

澪ちゃん!
あんた すごいよ やったんだよ!

え?

料理番付に載ったんだ!

初星を取っちまったんだよ
あんたが!

(種市)聞いてくれ!
みんな聞いてくれよ!

つる家の とろとろ茶碗蒸しが
番付に載ったんだ!

初登場で…
初登場で関脇なんだよ!

(菊乃)太夫

又次さんが御用のようでおざんす。

太夫。 巷で珍しいものが
噂になってるようです。

(又次)何でも 上方風の茶碗蒸しが
番付に載るほどの人気だそうで。

(種市)
番付に載ってからってもの

ご寮さんと おりょうさんが
いてくれても まだ手が足りねえ。

どうしたもんかと
考えてたとこへ

ちょうど 口入屋から
売り込みがあったんだ。

ふきといいます。
よろしくお願いします。

お澪坊に ご寮さんに
おりょうさんだ。

骨惜しみせずに よく働いて

この人たちに
かわいがってもらいなよ。

はい。

お水 くんできます。

おうおう
そんな早速 働かなくても…

ちょっと休んでからでいいんだぜ。

よさそうな子ですね。

二親を亡くしてるらしいんでさぁ。

(種市)前の奉公先が潰れて
路頭に迷う寸前だったんだとよ。

お待たせしました。

おや
かわいらしいのが来ましたよ。

どうぞ ごゆっくり
召し上がって下さい。

うむ。
よう しつけられておるようだな。

≪(種市)出た! 出た出た!
出ちまった!

(おりょう)季節外れの幽霊でも
出たのかい。

ふざけてる場合かよ。

とろとろ茶碗蒸しを出す店が
出ちまったんだよ。

また やられたのかよ!
どうなってんだよ!

道理で客足が落ちた訳や。

けど いずれ また戻りますやろ。

(清右衛門)そいつは どうだかな。

何しろ 今度は
そこらの店ではない。

登龍楼だ。

登龍楼…。

同じ敷地の一角に
離れが出来たのですよ。

町人客を当て込んで
つくられたらしく

値段は ぐっと安い。

店のしつらえも 器も

並の町人には
めったに お目にかかれない

豪華なものです。

この上 向こうは 海老ではなく

鮑を入れています。

それで 一人前が 40文です。

40文?

向こうの方が倍 高うおますなあ。

値ぇだけで言うたら つる家の方が
利用しやすいのやおまへんか。

(清右衛門)
これだから 上方の女どもは。

江戸っ子は 見栄っ張りが身上。

本心では安いのが
ありがたいと思うておっても

人目があれば 高い方を選ぶのだ。

しかし 登龍楼の連中も
ひでえ事しやがる。

料理人の風上にもおけねえ。

若い時分の俺なら
ぶん殴りに行ってるとこだ!

おっ おい! お澪坊!

うわっ!
おっ もう しまいか?

いえ… どうぞ。

(又次)間際にすまねえ。

巷で噂の茶碗蒸しとやらを

どうしても食べてみたい
という人があってな。

すまないが
ここに詰めてもらえまいか。

(種市)そいつは無理だ。

茶碗蒸しは茶碗で蒸して
茶碗のまま食うもんなんだぜ。

いや
茶碗ごと売ってもらえまいか。

申し訳ありません。

茶碗の数を
あまり そろえておりません。

それに 冷めれば
味わいが消えてしまいます。

(又次)参ったな…。

どうしても
食べさせてやりたいんだが…。

なら その人が
食いに来りゃいいじゃねえか。

俺は 吉原の翁屋の使いの者だ。

吉原?

外へ出るのもままならねえ
人のために買いに来たんだが…。

なるほど そいつぁ…。

あ~
なんとかしてやりてえけどよ…。

これを器にしてもええでしょうか。

天満一兆庵でも

夏には 青竹を器にして
蒸しものに使てたんです。

くずが引いてある。

なるほど こうしてあれば
時がたっても表面が乾かない。

温め直しても おいしいはずです。

ありがてえ。 太夫
うんとうまいの食べてもらえるぜ。

おい どうした?

あっ すいません。

色街の方と話してたら

何や急に
遠い昔の事を思い出しまして…。

ん?

(野江)えい!

えい!

(水音)

ど… どないしよ 野江ちゃん。
足洗いの井戸に…。

足洗いの井戸?

はい。 大坂の新町廓の門を
出たところにある井戸です。

身請けされたり
年季を終えたりして

廓を去る女の人たちは
必ず その井戸で足を洗うんです。

そんな 大事な井戸に

下駄 落としちまったのかい。
はい。

幼なじみと2人して
大目玉 食らいました。

ヘヘヘヘヘッ…。

いい土産話ができたぜ。

ありがとよ。

♬~

[ 回想 ] どないしよ 野江ちゃん。

怒られるし 罰当たってまう。

えい!
(水音)

怒られるも罰当たるも
2人一緒や!

♬~

こ…

こいつは いけねえ。 ヘヘヘヘヘッ。

いけねえよう!

あたし こんなに おいしいの
生まれて初めてです。

ほかにも 三つ葉のおひたしや
三つ葉の白あえ 三つ葉ご飯。

ふだんは 薬味としてしか使わない
三つ葉

たっぷり食べてもらえる

三つ葉尽くしのお膳を
出そうと思います。

なるほど 三つ葉尽くしか。

やってみな お澪坊。

≪親父 三つ葉尽くし 1つ頼む!
≪(種市)へい!

おい 親父! こっち こっち!
へい お待ち!

お~ 来た来た 来た来た来た!

三つ葉尽くし頼む。
へい! お待ち!

おっとっと…。
おい。 おいおいおい…。

先生!

どういうつもりだ!
清右衛門先生… 何か?

何かではない!
こんな まねをするとは…。

あの… 何の事でしょうか?
(清右衛門)とぼけるな!

わしは
これと そっくり同じものを

昨日 登龍楼で食ったのだ!

えっ?

また登龍楼が?

しかも 今度は 三つ葉尽くしって
名まで おんなじなんでさぁ。

料理屋は 旬を大事にするもの。

材料や料理が
重なる事はあるだろうが…。

姑息な事しやがって…。

何が 江戸一番の料理屋だ。
聞いてあきれらぁ。

三つ葉のおひたしか?

ええ。 せっかく お澪坊が
作ったってえのに

ごっそり残っちまったんでさぁ。

どうやら 采女宗馬を
本気にさせちまったようだな。

下がり眉。

ふきちゃんなあ こないだまで
登龍楼で働いてたそうや。

え!?

朝から ふきちゃんを
紹介してくれはった

口入屋はん 訪ねてきたんや。

口入屋はんが言うには
登龍楼に呼ばれて…。

(末松)
つる家なら料理人は女だし

住み込みで雇ってもらえると
ありがてえ。

(孝介)へい。
(末松)ああ…

登龍楼から頼まれたってのは
伏せておいてくれよ。

番付を競う料理屋からすりゃあ
うちは嫌われ者だからな。

ようも まあ ぬけぬけと…。

何で… 何で ふきちゃんは

そないなやつらの手先に
なってんのやろか。

ふきちゃんの お父はん

人に だまされて
借金こさえてしもたらしいてなぁ。

奉公先の主人に
肩代わりしてもろたそうや。

その主人いうのが
登龍楼の主 采女宗馬や。

お母はん お父はんが
立て続けに亡うなって

ふきちゃんも そのまま
登龍楼で奉公する事になった。

まだ 乳飲み子やった弟と一緒に。

弟?

ふきちゃんにしてみたら

その子を 人質に
取られてるようなもんと違うか。

どれだけ…

どれだけ 自分を
責めてたんやろか。

ふきちゃんを問い詰めたかて
何にもなれへん。

それよりも ふきちゃんに
何をしてあげられるかや。

先生。
あっ…。

わざわざ ありがとうございます。

澪さん 登龍楼が また同じ献立を
出したみたいですね。

次々に難題が起き
おつらい事でしょう。

いえ。

先生 私 雲外蒼天なんです。

雲外蒼天?

怒られるも罰当たるも
2人一緒や!

≪見てましたで。

あんたらかて いつ何時

私らみたいな身の上に
なるやもしれんのやで。

新町の女が 命の水みたいに思てる
花の井を汚すて

そんな まねは
二度としたらあかん!

私が悪いんだす!

あほやなあ 着物が汚れるやろ。

≪おまはん!

(東西)ちょっと 面を見せとおみ。

野江ちゃんに何する気や!

手ぇ離し!
(卯吉)お前は引っ込んでや。

こんな幼い子にも先生も酔狂やな。

まれに見る吉祥。

この道に入って久しいが

ここまで強運の相を見るのは
初めてや。

(卯吉)先生 そんなに?

(東西)これは まさに天下取り。

太閤はんにも勝る

旭日昇天の相や!

えらいこっちゃ! 天下取りやで!

ちょっと みんな聞いたか!?
天下取りの相が出たで!

旭日昇天の相や!

♬~

おお おまはんは

雲外蒼天の相やな。

うんがいそうてん?

(東西)おまはんの人生には

艱難辛苦が降り注ぐ。

その運命は避けられん。

けんど その苦労に耐えて

精進 重ねれば

必ず 真っ青な空を
望む事ができる。

ほかの誰も拝めんほどの
澄んだ きれいな空を。

そりゃまた大変な さだめを

背負っちまったもんだね
澪ちゃん。

いえ ほんまに大変やったのは
野江ちゃんの方です。

(野江)澪ちゃん。

私は 旭日昇天より

澪ちゃんが言われた
雲外蒼天の方がええ。

えっ? な… 何で?

亡うなった おばあはんが
よう言うてはった。

「吉凶は 糾える縄」やて。

天下取るような運やったら

それに見合うような不運も
連れてくるんや。

私は それが怖い。

その晩です。

大坂の町が水に沈んだのは。

あの 大水で
私は 二親を失いました。

けど ご寮さんに
助けてもらいました。

天満一兆庵が焼けて 江戸へ来て

旦さんを失いました。

けど 旦那さんに
助けてもらいました。

野江ちゃんが
出会わせてくれたんやと思てます。

源斉先生や おりょうさんや

ふきちゃんにも。

野江ちゃんが
見守ってくれてるんやと思たら

どんな苦労も乗り越えられます。

きっと どこかで生きていますよ。

旭日昇天なのでしょう?

はい!

ふきちゃん?

行ってやんな。

ふき坊の行き先なら
あそこしかねえだろう。

(末松)来たか。

…で?

次の料理は何だ?

もう 堪忍して下さい。

あ?

もう こんな役は嫌です。

ほかの事なら何でもしますから
ここに戻して下さい!

ふざけるな。
そんな事が言えた立場か。

ん?
堪忍して下さい。 堪忍して下さい。

その子を離しなはれ!

采女宗馬…
采女宗馬を呼びなはれ!

何?

おい!

どこや! 卑怯者!

顔 出しなはれ! 采女宗馬!

どこや! 采女宗馬!

(采女)これは一体 何の騒ぎです。

恥を知りなはれ 采女宗馬!

料理をまねするだけや済まんと

まだ 13の子ぉに 隠密みたいな
まねさせるやなんて。

どないな了見や!

一体 何の事です?

第一 お前さんは誰だね。

神田御台所町
つる家の料理人だす。

つる家?

末松。

これは一体 どういう事だ。

おっ ちょ…!
おい!

(ふき)澪姉さん…。

♬~

二度と登龍楼の敷居をまたぐ事は
許さん。

ふきを外に出してはどうかと
末松から言われ…。

なるほど ふきのためになるならと
許したが

よもや
料理を盗むためだったとは。

気付かなかったのは
私の不徳の致すところ。

このとおり お詫び致します。

主からの じきじきのお詫び

痛み入ります。

そやけど 謝んのやったら

ふきちゃんに謝って下さい。

そちらの板前の むごい仕打ちに

この子が どれだけ苦しんだか
分かってはんのですか。

もう二度と
おんなじ目に遭わさへんと

誓って下さい!

同じ目も何も…。

もはや ふきを登龍楼に置く訳には
いきません。

え?

末松からの指示だったとはいえ
そちらの料理を盗み

この店の暖簾に泥を塗った。

旦那様 お願いです!

健坊と離さないで下さい。

あたしを ここに置いて下さい!
話は これまでです。

旦那様!

(采女)茶碗蒸しに 三つ葉尽くし。

双方とも お前さんが
考え出したものではない。

もとよりある料理だ。

わざわざ
幼い奉公人に探らせなくても

登龍楼の料理人なら

いずれは行き着いたでしょう。

(采女)それを
自分だけが考えついたとは。

一度 番付に載ったぐらいで

思い上がりも甚だしい。

(健坊)姉ちゃん!

健坊!

健坊…。

ごめん… ごめんね。

連れていけなくて ごめん。

ごめんね… 健坊。

蕗いうのは
ほんまに偉い野菜やなあ。

偉い野菜…?

そう とっても偉いの。

ほら これは
蕗の葉と じゃこの炒め煮よ。

それに 下ごしらえの時に出た筋で
お鍋をこすると

汚れが きれいに落ちるの。

へえ~ 本当に無駄なところが
一つもないんだねえ。

じゃあ 頂くぜ。

どうぞ。
(一同)頂きます。

♬~

(おりょう)おいしいねえ!

(芳)蕗だけで こないに
おいしゅうなるのやなあ。

(種市)蕗は もともと
力のある野菜だからな。

力の… ある。

そうだ。
ふき坊みてえに強え野菜だ。

旦那さん…。

ごめんなさい。

ごめんなさい。

な~に 謝ってやがんだよ。

ほら いいから食いな 食いな!

はい。

♬~

あ…。

旦那さん! ふきちゃん!

(半鐘の音)
火事だ~!

水を回せ~!

大丈夫か!?

(ふき)旦那さん! 澪姉さん!

澪姉さん!
おい よせ!

旦那さん! 旦那さん!

旦那さん!

ここは任せて あんたは
じいさん連れて逃げるんだ!

じいさん つかまれ!

(種市)俺の家が…。

俺と おつるの店が燃えちまう!

♬~

(澪)もう やめます。
(源斉)え?

天満一兆庵の立て直しも お料理も
何もかも。

何を言うんです!

これからではありませんか。

この江戸に 天満一兆庵の暖簾をと
先代から託されたのでしょう?

見込み違いやったんです。
澪さん。

そないな器でもあれへんのに
大それた事 考えたから

こないして次々に
大事な人を苦しめてしまうんです。

そんな事ありません。

決してありませんよ 澪さん。

(戸をたたく音)

≪夜分にすまねえ。 又次だが。

はい すぐに。

(又次)この度は 大変だったな。
お見舞い申すぜ。

こんなところまで押しかけて
申し訳ねえが

また 弁当を頼まれてやっちゃあ
もらえまいか。

私は もう…。

分かりました。

ありがてえ。

又次さん これは…。

中に 文が入ってるだろ。

野江ちゃん…?

雲外蒼天の方が ずっとええ。

生きて…。

(又次)あさひ太夫

…てえのが その人の名だ。

あさひ太夫…。

(又次)
太夫は 俺に こう言ったんだ。

もし あんたに 料理を作る気力も
うせているなら

そのまま黙って帰ってこいと。

けれど もしも その弁当箱に

詰める料理を作ったのなら…。

[ 回想 ] (あさひ太夫)もし 料理を
作ったのなら

澪ちゃんは きっと立ち直る。

その時には

この10両を用立ててほしい。

澪ちゃんに そない伝えて。

野江ちゃん…。

♬~

≪うっ…!

イテテテテッ!
これ以上 つる家に構うな。

土圭の間の小野寺が
そう言っていたと

采女に伝えよ。

お待たせしました。 行きましょう。

どうぞ。

こ… こいつは…。

(伊佐三)おっ 旦那さん
勝手に やらせてもらってるぜ。

♬~

旦那さん。

(種市)雲外蒼天…。

あの… 旭日昇天の幼なじみが?
はい。

どうか このお金で

私に もう一度
つる家をやらせて下さい。

お澪坊 気持ちはありがてえが

そんな大事な銭を つる家のために
使わせる訳にはいかねえよ。

(芳)私からもお願いします。

私らは まだ江戸で 佐兵衛を
息子を捜さんなりません。

今 しばらく 旦那さんのご厚意に
すがらせてもらえまへんやろか?

(おりょう)旦那さん。 ほら!

あたしら みんなで縫ったんだよ!

ねっ?
(ふき)はい。

ありがとよ みんな…。

ありがとよ!

(種市)さあ 寄ってってくんな!

料理番付 関脇のつる家が
元飯田町に店開きだ!

さあさあ さあさあ!

へい お待ち!

こっち こっち!
はいはい。 お待たせしました。

お願いします。

(戸が開く音)

又次さん!

澪さん しばらくだったな。
はい。

よう来てくれはりました。

こっちに顔出すのが遅くなって
すまねえ。

立派な店じゃねえか。

はい。 野江ちゃんの…

あさひ太夫
お力添えのおかげです。

中に青梅が入ってる。
それで蜜煮を作っちゃくれまいか。

あさひ太夫
具合でも悪いんですか?

いや。 太夫は すこぶる元気だぜ。

何だって そんな妙な事。
いえ…。

頼まれてくれるかい?

もちろんです。
ただ あくを抜いたり

蜜に漬け込んだりせな
あきませんので

今夜という訳には…。

分かった。 明日 また取りに来る。

太夫
ゆうべ 澪さんに会ってきました。

(又次)きっと 青梅の蜜煮を
作ってくれるそうです。

(伝右衛門)又次 何をしている!
邪魔だ どきなさい。

太夫
先生が来て下さったぞ。

先生 どうぞ。

ご無礼を致します。

♬~

これ 出来ました。
ありがてえ。 恩に着るぜ。

野江ちゃんに
何かあったんですね?

何もねえと言ってるだろ。

子どもの頃 野江ちゃんは

青梅の蜜煮は
そんなに好きやなかったんです。

けど 体の具合が悪い時だけは
口に合う言うて

それも 私のお母はんの作る蜜煮が
好きで…。

そやから… そやから きっと

きっと 野江ちゃんは今…。

参ったな…。

あんたたち2人ときたら

離れていてもお見通しか。

斬られちまったんだ。

(又次)菊乃って遊女をかばって。

ああ~っ!

♬~

それで… それで 野江ちゃんは。

居続けの客の中に藪医者がいて
すぐに手当てを受けられた。

幸い筋までは
切れてなかったらしい。

野江ちゃんに…

野江ちゃんに会わせて下さい。

そいつぁ なんねえ。
私に看病させて下さい!

だから なんねえと言ってるだろ!

里の中で あんたに会いてえと

今の自分の姿を
あんたに見られてえと

太夫が願ってると思うのか?

(坂村堂)では あさひという遊女は
本当にいたのですね。

(清右衛門)翁屋は それを
必死に打ち消してはいるが

人の口に戸は立てられんものよ。

さすが 清右衛門先生
よくぞ そこまで。

それだけではない。

どうやら あさひ太夫
上方の出らしいのだ。

(坂村堂)上方の…。

新町廓を経て
吉原へ売られたのでしょうか。

(清右衛門)ふん。 その いきさつは
これから調べるところだ。

よう 先生。
こんにちは。

澪さん
お忙しいところ すみません。

少し お話できますか?

あ… はい。
どうぞ お掛けになってて下さい。

はい。

(清右衛門)それからな

あさひ太夫だけを診る医者が
いるらしい。

(坂村堂)一体 どうやって
そのような事を…。

翁屋で厠に立った時だ。

吉原の客とは思えぬ

涼やかで聡い顔だちの
医者を見かけた。

通りかかった男衆に銭をつかませ
聞き出したところ

わしの にらんだとおりだった。

しかも その医者は
御典医の倅だというのだ。

御典医の!?

その 御典医とは一体…。

(清右衛門)永田陶斉じゃ。
永田…?

(清右衛門)そして その町医者は
陶斉の次男 永田…。

源斉先生?
そう 源斉… ん?

なぜ お前が知っておるのだ。
失礼。 用を思い出しました。

あっ そうそう ちょうど こんな
涼やかで聡い顔… ああっ!

永田源斉!
(坂村堂)えっ!?

源斉先生!

あさひ太夫の怪我の具合を
教えて下さい。

どうか お願いします。

なぜ そんな事が知りたいのです。

野江ちゃんやったんです。

あさひ太夫
幼なじみの野江ちゃんなんです。

まさか そんな事が…。

患者の体に関して

知り得た事の一切を
ほかに漏らしてはならない。

医師となった時に 父から
戒めとして言われた言葉です。

♬~

澪さんは 鱧を料理できますか?

鱧? はい。

上方から舟で運んできたものの

さばける人がいないと
困っているお方がいるのですよ。

その方というのは…。

翁屋の楼主 伝右衛門殿です。

翁屋て…。

あさひ太夫のいる廓です。

源斉先生!

いや いくら
源斉先生のおっしゃる事でも

こればかりはいけません。

伝右衛門殿。
こちらは正真正銘

上方の名料理屋で
包丁を握っていた料理人です。

鱧について詳しく
安心して料理を任せられる…。

女が作った料理など
この翁屋で出せる道理がない。

どうして 女が作る料理は
駄目なのでしょうか。

(伝右衛門のため息)

女の料理は あくまで所帯の賄い。

板場に女が入る事など
とんでもない事ですよ。

月の障りのあるような手で
作られたものなど

銭を払ってまで食いたいとは
思わない。

おいしいお料理を作るのに

男も女も
関係ないのやありませんか?

料理を口にして
おいしい思た気持ちは

料理人が女と知っただけで
消えてしまうものなのでしょうか。

消えてしまうでしょうな。

(又次)その人を帰しちまったら
客に出す料理が作れませんぜ。

あっ 又次さん
怪我の具合は いかがですか?

ああ 先生…。
この役立たずが!

料理番のくせに

あんな魚一匹 まともにさばけず
手ぇ かまれるとは。

どこまで ふがいないのだ。

それは 鱧という魚を知らないから
言える事です。

気性が荒い上 血には毒。

にわかに
扱いきれるものではありません。

おい!
≪へい!

今すぐ 喜の字屋へ行って

一等 腕の立つ料理人に
来てもらえ。 へい。

(伝右衛門)
祝儀は いくらでも弾む。 へい。

えっ 澪ちゃんが?

はい。

澪ちゃんが すぐそこに…。

ハハッ どんな難しい魚かと思って
来てみりゃあ 何の事はない。

鰻や穴子と同じ見てくれかい。

あっ それは…。

いや うちの料理番が
手ぇ かまれちまった。

扱いには
十分 気を付けて下さいよ。

フッ…。

おい。
へい。

ああっ! あっ!
馬鹿野郎!

引っ張っては駄目です!
指を食いちぎられてしまいます!

ああっ!

落ち着いて下さい!

大事ありません!

♬~

先に首の付け根を切って
締めた方が…。

いい加減にしねえか。

すんません…。

♬~

鱧は背からはおろせません。

見せ物じゃねえんだ! あっ!

目に入ったんですか!?
早く目を洗って下さい!

手出し口出しは無用だ!
いいから 言うとおりになさい。

いいから
構うんじゃねえっつって…。

取り返しのつかない事に
なりますよ!

あっ イテッ…。
大丈夫ですか?

なんて魚だ…。

伝右衛門殿。

この際 こちらの料理人に

鱧の調理をお任せになっては
いかがでしょうか。

私は医師ですが

これまで扱った事のない症状に
出くわせば

平静さを失う事もあります。

そんな時は 先達の意見に耳を貸し
助けてもらう。

料理人も同じではないでしょうか。

♬~

なんと典雅な…。

見える?
何?

何やってるの?
は… 鱧?

♬~

これが あの おっかねえ魚の…。

お味を見て下さい。

♬~

鬼の目に涙とは この事…。

源斉先生…。

この伝右衛門
今日は 心底 参りました。

さすが 先生が目をかけた
料理人だけの事はあります。

さすが 澪ちゃんやわ。

(又次)太夫

本当にいいんですか。

このまま 澪さんを帰しちまって。

こないな姿 澪ちゃんに
見せられる訳あれへん。

♬~

澪さん。

又次さん どこへ行くんですか?

源斉先生が戻る前に戻らんと…。

店の裏手 青垣の途切れた所だ。

そこに 翁屋の名の書かれた
天水桶がある。

そこで立っていちゃくれめぇか。

太夫
ほんの少しだけ障子を開けて

外を見て下さい。

♬~

澪ちゃん…。

♬~

あっ…。

♬~

野江ちゃん?

♬~

(あさひ太夫)来ん 来ん。

♬~

(野江)澪ちゃん 涙は 来ん 来ん。

涙は 来ん来ん。

♬~

来ん来ん。

♬~

野江ちゃん…。

涙は 来ん来ん。

♬~

[ 心の声 ]
澪ちゃん いつか会おうね。

[ 心の声 ] うん。 野江ちゃん。

いつか会える。 きっと会える。

♬~

きっと かないますよ。
旭日昇天と雲外蒼天。

ともに見上げる天は
一つなのですから。

澪さん。

実は 前のつる家が

火付けに遭った
すぐあとの事なのですが…。

これ以上 つる家に構うな。

土圭の間の小野寺が
そう言っていたと

采女に伝えよ。

え…。

土圭の間の小野寺

つまり
御膳奉行の小野寺様でした。

小松原様が…

そんな立派な ご身分の…。

♬~

(坂梨)そなたら 御膳奉行の中に

公方様の御膳にまいらせる
特別なお召し上がりものを

市中の商人どもに
ひそかに横流し

不埒にも 大金を得ておる者が
いると聞く。

(坂梨)そなたら一同に
疑いがかけられておる。

当分の間 勝手な行いは控えよ。

(一同)はっ。

さあさあ この度の
龍と鶴との腕競べ!

戦い挑むは大坂の
白く かよわき女鶴!

買った買った 買った買った~!

(種市)今年は 登龍楼と うちとで
入れ札が分かれて

このままじゃ どっちが大関
決められねえんだってよぅ。

なるほど。 それで
こういう仕儀になったのですね。

「同じ材料を用いた料理を

師走24日から26日までの3日間
店に出す。

その間に 行司役たちが
ひそかに 2軒の店を巡り

両者を比べ 優劣を定め

それを年内に番付にする」と。

登龍楼の主 采女宗馬は

この趣向を
大層 面白がっているそうだ。

負けると思うておらんのであろう。

(おりょう)憎たらしいねえ!

だが その 登龍楼を負かしてみろ。

つる家は間違いなしに
江戸一番の料理屋となれるのだ。

はい。 精いっぱい やります。
けど…。

(芳)定められた材料
よりによって 鰆とはなぁ。

それも 寒鰆。

魚に春と書いて 鰆。

大坂では 文字どおり 春の魚や。

脂の乗った冬の鰆は
どうにも 勝手が違うやろ。

こないして 味噌漬けか

塩漬けにして
焼く事になってしまいます。

ほんまに引き受けてよかったんか。

考えたんです。

清右衛門先生も
言うてはったとおり

大関の位を取れば
江戸中の評判になります。

そしたら…。

そしたら 若旦さんの耳にも
入るかもしれません。

若旦さんが 食べに
来てくれはるかもしれません。

澪…。

♬~

う…。

澪さん。
あっ 源斉先生。

おはようございます。
おはようございます。

おっ 早速 腕競べの料理に
励んでいるのですね。

けど… 利休揚げは 鰆の脂が
どうしようもなく くどくて。

唐墨という食べ物があります。

唐墨?
ええ。

鰆の卵を干して作るそうです。

公方様も好んで召し上がる
珍味なのだそうですよ。

まあ 公方様が?
はい。

作り方 調べてみましょうか。

ありがとうございます。
けど 腕競べまで

10日もあれへんのです。

あっ そうか。 卵を干して

食べられるようになるまで
待っていては 間に合いませんね。

事情も考えず
うかつな事を申しました。

許して下さい。
そんな。 ありがたいです。 本当に。

その後 小松原様は…。

それが あれきり…。

もう むつきも
お見えになりません。

そうですか…。

何か?

あ… いえ。

(戸が開く音)
(おりょう)年の瀬に

いろいろ あるもんだねえ。
また 読売が出たよ。

おや 源斉先生。
どうされたんですか?

ほら いつか
清右衛門先生が言ってた

御膳奉行ってのかい?
その中の一人が

詰め腹を切らされたって
いうんだよ。

しかし まさか 御膳奉行が

公方様のお食事の上前を
はねるとはな。

何を心配そうにしてるんや。

小松原様は 不正を働くような方や
あれへん。 そうやろ?

はい…。

けど 物騒だねえ。
なにも 命まで取らなくったって。

(清右衛門)
侍は いつ何時も命懸けだ。

公方様の御膳に 短い髪が
ほんの一筋 交じっていただけで

首をはねられた
御膳奉行もいると聞く。

うっ!

澪!

澪 気ぃ付いたんか。

ご寮さん?

お澪坊。
澪姉さん。

私… 何で…?

痛っ!

(芳)源斉先生が
傷口を縫うてくれはった。

しばらくは 不自由するだろうが
辛抱しろってよ。

澪ちゃん…。

ごめんよ。
あたしが 野次馬根性で

根掘り葉掘り
聞いちまったばっかりに…。

清右衛門先生と坂村堂さんも
えらく悔やんでたぜ。

若い娘に首をはねるだ何だと
ひでえ話 聞かせちまったって。

そんな…
皆さんのせいやありません。

そうだす。 悪いのは 澪本人だす。

仮にも 刃物を扱うてるんや。

ほかに気ぃ取られて
自分の指を切る事くらい

料理人として
恥ずかしい事はおまへん。

♬~

なんて あほな事…。

私…。

私…。

♬~

よう 下がり眉。

ハハハッ 久しぶりに会うのが
こことはな。

随分と早いんだな。 どうした?

あ~ そうか。

悪い夢でも見て
眠れなくなったか。

いや 俺も たまに
そういう事があってな。

つい せんだっては 海の中で
鱚に追いかけられる夢を見た。

魚の顔が正面を向いて
追いかけてくるというのは

それは恐ろしいぞ。

おお そうだ。

腕競べの事 聞いておるぞ。

うん? どうだ?
登龍楼には勝てそうか?

それが…。
ん?

それが 久しぶりに会って
言う事ですか!

むつきですよ。

土用の膳を食べに来はってから
むつき。

おお もう そんなになるか。

いや あ~
あれこれと せわしなくてな。

土圭の間のお勤めがですか。

小野寺様なのでしょう。

小松原様は 小松原様ではなくて

土圭の間の小野寺様なのでしょう。

下がり眉 何故それを…。
ええんです。

小松原様でも 小野寺様でも

どのみち私には

どこから来て
どこへ行くかもしれへん

お侍様なんですから。

そやのに 読売の話を聞いて

勝手に 小松原様のお身を案じて。

そのあげく…

こないな事になって。

こんな あほな私が

登龍楼と腕競べやなんて

江戸一番の料理屋に
なろうやなんて

そないな大それた事
夢みたいな事…。

♬~

澪。

澪標の澪。 それがお前の名だろう。

それは
船路の道しるべとなるものだ。

それを頼りに人は
海を進んでゆく。

お前の澪標は何だ? 澪。

いいか。

道は 一つだ。

♬~

源斉先生。
あ…。

指の具合を診に来ました。
ああ。

うん。

澪さんが 怪我をしたのは

私のせいなんです。

えっ?

知っていたんです 私は。

御膳奉行の周りで
何かが起きているという事を。

そのために 小松原様が

つる家に
来られないのだという事は

察しがついていました。

その事を
澪さんに伝えていさえすれば

澪さんは
怪我をしなくて済んだのです。

私は 卑怯者です。

そんな… そんな事で
ご自分のせいやなんて。

それに…

何で それが
卑怯者になるんですか?

フフッ おかしな源斉先生。

♬~

明日からの腕競べ どうか
無理はなさらないで下さいね。

ありがとうございます。

♬~

どうしたんですか?

♬~

これは おいしそうだ。

(一同)おお~。
これは また手の込んだ…。

登龍楼の料理には
とにかく仰天だ。

皮目をあぶった焼き膾といい

卵を干したのを
薄く切ったものといい

あ~ ハハッ。

この店には悪いが勝負あったな。

お待たせ致しました!
お~ 来た来た!

待ってました!
はい お待ち!

はいよ! はいはい はいはい…。

おうおう これきりかよ。

ほかに忘れてんじゃねえのかよ。

まあいいから食ってみなよ。

♬~

(笑い声)

あれは何だ。

寒鰆の昆布締めです。

おぼろ昆布を巻く事で
程よく 水けが抜け

代わりに 昆布のうまみが
隅々まで しみ込みます。

初めてです。

料理を頂いて 涙が出るなんて。

滋味滋養。

♬~

(種市)知ってるか? お澪坊。

登龍楼の勝ちとは
腑に落ちねえって客が

早速 版元に
押しかけてるらしいぜ。

それだけ 寒鰆の昆布締めは
人の心をつかんだってこった。

♬~

(ふき)澪姉さん! 旦那さん!
(健坊)澪姉さん。

はい。 よいしょ。

鬼は外!
鬼は外!

(ふき 種市)鬼は外!
福は内!

あ~ 澪ちゃん!

鬼は外!
鬼は外!

(健坊)福は内!

(種市)福は内!
鬼は外!

(采女)今日は ようこそ
お越し頂きました。

(采女)料理は
お気に召しましたでしょうか。

(弥三郎)おお 実に うまかったぞ。

(早帆)珍しいものを頂いて
舌が喜んでおります。

痛み入ります。

唐墨は 公方様さえ虜にする
珍味中の珍味。

お前さんの事だ。 恐らく
この腕競べの話が来る前から

いろいろと試しておったんだろう。
え?

唐墨が どういうものかを
下手に知っておる分

行司役も勧進元
登龍楼を勝たせるほかはあるまい。

これは…。
まるで 本来であれば

つる家の勝ちであったかのような
物言いをなさる。

そうは言うておらん。

だが 昆布締め 一切れで
登龍楼に真っ向勝負を挑んだ

つる家の女料理人。

大した度胸だと思ってな。

♬~

おっ これは 節分の豆か。

はい。

年の数だけ食わねばな。

小松原様は 50くらいですか?

うん。 では お前は 38くらいか。

うん。 手を出せ。

38だ。

♬~

そんなに お好きなんですか?
煎り豆が。

ああ 好きだ。

この上なく 好きだ。

♬~

指を大事にしろよ。

♬~

(せみの声)

あっ!
ご寮さん?

あっ!
ご寮さん!

ご寮さん。
佐兵衛や…。

澪 佐兵衛なんや!

若旦さん!

若旦さん!

すんまへん! すんまへん!

若旦さん! 待っておくれやす!

若旦さん!

天満一兆庵の若旦さん!

危ねえ! 馬鹿なまねは やめろ!

離して! 飛び込むのと違う!

元飯田町のつる家。

元飯田町のつる家だす!

そこに ご寮さんも一緒に!

(佐兵衛)つる家…。

♬~

澪。

佐兵衛に間違いなかったんやな。

澪 佐兵衛やったんやな。

へえ 間違いおまへん。

ご寮さん。

ご寮さんが
つる家にいる事も伝えました。

きっと いつか
訪ねてきてくれます。

そしたら きっと…

きっと
天満一兆庵も立て直せます。

その日まで私

身を尽くして 精進します。

♬~