ドラマログテキストマイニング

テレビ番組(ドラマ)の字幕情報を対象に、テキストマイニングの研究をしておりますので、解析結果の公開をメインに関連グッズを交えた構成で記事にしてます。また、解析結果の信憑性が確認できるよう、解析用ソースも部分引用し掲載してあります。

おしん 一挙再放送 第34週・太平洋戦争編 田中裕子、並樹史朗… ドラマの原作・キャスト・音楽など…

おしん 一挙再放送▽第34週・太平洋戦争編』のテキストマイニング結果(キーワード出現数ベスト20&ワードクラウド

  1. 戦争
  2. 竜三
  3. オイ
  4. 仕事
  5. 軍人
  6. お前
  7. 魚屋
  8. 日本
  9. 商売
  10. 心配
  11. 今日
  12. 希望
  13. 浩太
  14. 今度
  15. 初子
  16. 兄貴
  17. 手伝
  18. 息子
  19. 大事
  20. 連隊

f:id:dramalog:20191124095327p:plain

おしん 一挙再放送▽第34週・太平洋戦争編』のEPG情報(出典)&解析用ソース(見逃した方はネタバレ注意)

 

解析用ソースを読めば、番組内容の簡易チェックくらいはできるかもしれませんが…、やはり番組の面白さは映像や音声がなければ味わえません。ためしに、人気のVOD(ビデオオンデマンド)サービスで、見逃し番組を探してみてはいかがでしょうか?

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おしん 一挙再放送▽第34週・太平洋戦争編[字]

主人公おしんの明治から昭和に至る激動の生涯を描き、国内のみならず世界各地で大きな感動を呼んだ1983年度連続テレビ小説。全297回を1年にわたりアンコール放送。

詳細情報
番組内容
昭和12年、おしん(田中裕子)にとって、まだ戦争の残酷さも、おそれも切実なものではなかった。5人の子どもの暮らしを守ることのほうが大事であった。年の暮れ、竜三(並木史朗)の次兄で陸軍少佐の亀次郎(成瀬正)が、田倉家を訪れた。いかめしい軍服姿の亀次郎がわざわざやって来た意図がわからず、おしんは、なぜかいやな予感がして不安であった。亀次郎は、竜三に軍に食料品を納める仕事を勧め、竜三は乗り気であった。
出演者
【出演】田中裕子,並樹史朗,成瀬正孝,【語り】奈良岡朋子
原作・脚本
【作】橋田壽賀子
音楽
【音楽】坂田晃一

 

 


♬~
(テーマ音楽)

♬~

昭和12年7月7日の蘆溝橋事件
きっかけに

日本は 泥沼のような戦争に
のめり込んでいった。

…が 遠い大陸での戦争は
おしんにとって

まだ 戦争の残酷さも恐れも
切実なものでは なかった。

それより 5人の子どもの暮らしを
守る事の方が大事な

おしんであった。

そんな昭和12年の暮れ
思いがけず

竜三の次兄で 陸軍少佐の亀次郎が
田倉家を訪れた。

いかめしい軍服姿の
亀次郎の来意が分からず

おしんは なぜか
嫌な予感がして 不安であった。

(亀次郎)佐賀の おふくろが
喜んどっばい。

おしんさんが
よう 気ば遣うてくるって言うて。

(おしん)時々 商売物の
みそ漬けだとか かす漬け

お送りするだけで…。

何せ こんな暮らしなもん
ろくな事も できませんで…。

お互いさまたい。 みんな 自分の
暮らしに 精いっぱいじゃっけん。

オイでん 小倉に おったっちゃ
めったに 顔も出せんとばってん

この間 佐賀さん行ったぎ
竜三の話ん出て

伊勢で 魚屋ば しとって
聞いたと。

(竜三)いや~ 兄さんには いつも
手紙ば出しそびれてしもうて…。

そいも お互いさまたい。
そん時 おふくろが

魚屋ていうても どぎゃん暮らしば
しよっとやろかて

心配しとったと。
一度 様子ば見に行きとうても

この年じゃ とても
伊勢まで行けんて言うて。

おしん
いつも 無事に商売ばしよって

手紙も出しとっとこれ。
そこが おふくろじゃっか。

いつまっでん
息子の事は 気になっとさい。

機会のあっぎ
訪ねてやってくれって。

ちょうど
方々の連隊に 連絡があって

津の連隊に来る用のあったけん
ついでに…。

そうですか。 私は また 何か
急に ご用でもおありになって…。

ああ。 大事か用も あっさい!
ハハハハハ!

(希望)お帰んなさい!
(雄)ただいま。

(初子)お帰んなさい。
今日は 遅かったんですね。

うん。 剣道の校内試合が
あったから。

父さんと母さんは?
お客様が見えてて。

(仁)陸軍少佐だぞ。
伯父さんだって。

(希望)僕たち うるさいから
表で遊んでろって。

小倉の伯父さんだ! 軍人だって
聞いてたけど 陸軍少佐なのか!

ただいま 帰りました!
おう。 雄です。

お~ 雄か!

初めて お目にかかります。
雄です。

いやいやいや
雄とは 初対面じゃなかと!

まだ ヨチヨチ歩きば しとった頃
ちゃ~んと会うとったい。

いくつに なったとか?
中学3年です。

よか男になって…。
竜三も おしんさんも

楽しみなこったい!
(竜三)いや~。

うちの次男坊主は
今年 陸軍士官学校さん

入ったとばってん
雄は どがんすっと?

まだ 決めていませんが…。

いや~ 魚屋になっとですよ。
中学 出れば 十分ですたい。

上の学校へあげる金も
なかですけんね。

もったいなか~。
県立の中学さい入っくらいない

頭も よかとじゃろう。
士官学校ば 狙うぎよか。

中学4年になっぎ 試験ば受ける
資格の でくったいね。

士官学校ない 官費じゃっけん
金も要らん。

雄 こいからは 軍人の時代ばい。

雄 早く着替えなさい。

はい。 失礼します。
(亀次郎)うん。

じゃあ 私も 店がありますんで
あんた お兄さんと ごゆっくり。

うんにゃ。 オイも
ゆっくりは しとられんと。

今夜は 津の連隊の将校たちと
飯ば食う約束の あっけん。

あら。 じゃあ お泊まりは?

あ~ ちゃんと
手配してくいとっけん

心配してもらわんでよか。
ただ 帰る前に 話のあっさい。

(希望)母さん お客さん!
はいはい。

じゃあ ちょっと 失礼致します。
(亀次郎)うん。

雄 ちょっと 手伝ってちょうだい。

父さん 伯父さんと
お話があるそうだから。

早く。
はい。

あっ いらっしゃいませ!
すいません!

何 差し上げましょうか?
煮魚は 何があるやろか?

今日はね サバがいいの
入ってますけどね。

そやな。 それ もらおうか。
はいはい。

ねえ 母さん 僕 伯父さんに
いろいろ 聞きたい事あるんだよ。

ほら 早く お出しして。
雄さん 私が手伝いますから。

初ちゃん。 初ちゃんは
夕飯の支度 お願いしますよ。

はい。
さあ!

いらっしゃいませ!
何 差し上げましょうか?

オイは 魚屋が いかんて
言いよっとじゃなか。

ばってん 来て びっくりしたばい。

1銭2銭 もうくっとに
注文 取って 配達ばして…。

店でん お客の一人一人に
愛想笑いばして

魚 おろして 包んで 渡して…。

そがん手間ひまかけて どんだけの
利益の 上がっていうとか。

少しばかり もうくっとに 一生
忙しか思いば すっつもりか?

商いっちゅうとは
そがんもんたい。

楽して 金は もうからんとよ。

こいでん 家族7人 なんとか
食べてはいかるっとやっけん。

竜三。 お前 そいでん 男か?

こがん町の魚屋で
あくせくしたっちゃ

5人の子どもの教育も
満足には でけんじゃなかか。

お前も 父親ない 少しは
子どもの事も考えてやらんば。

魚屋も よか。 ばってん
どうせ 商いば すっとない

もっと こう 太か事ば やれって
言いよっとたい。

毎度 ありがとうございました!

(サイドカーのエンジン音)

田倉少佐殿を
お迎えに参りました!

はい!

オイは まだ 2~3日 こっちに
おっけん 今晩 よう考えて…。

前途有望の少年に
魚屋の手伝いばさせるようじゃ

父親の責任は 果たせんばい!
ハハハ!

いや~ 突然 邪魔して
申し訳なかった。

何も お構いできませんで…。

心が決まっぎ
オイに連絡してくれ。

悪いようにはせん。

(サイドカーのエンジン音)

いや~ 大したもんだね 将校って。

ねえ どういう お話だったの?
ああ…。

あっ 毎度 どうも!
ご注文は 伺ってますか?

よいしょ!

さあ あんた 休んで下さい。
よいしょ!

おしん…。
うん?

今の魚屋じゃ オイたちが どがん
身ば粉にして働いたところで

たかが知れとったいね。

お兄さんに
何か言われたんですか?

私は 今の魚屋で結構。

あんたと2人で やっと
ここまでにしてきたんじゃないの。

お店の信用だって
やっと ついてきたし

今まで 一生懸命やってきたかいが
あると思ってるわ。

しかし 忙しいだけで…。

そりゃ あんたが 一番 大変なのは
よく分かっています。

朝 買い出しに行って
帰ってきたら

注文 取りに回って 配達もして…。

オイは 忙しいのが嫌で
言いよっとやなかよ。

同じ1円をもうけるんだったら

少しでも 楽をした方が
いいに決まってる。

そりゃ そうだけども…。
うちは 新しい魚を安く売って

それで 手間ひまも惜しまないから
お客様だって

ひいきに
して下さってんじゃないの。

それとも 楽して
もうける方法でも ありますか?

兄貴が 連隊に 魚を入れたら
どうかって言うんだよ。

オイに その気があったら
兄貴が 口をきいてやるって…。

連隊の御用商人になるって訳?

まあ いくら
兄貴の後ろ盾があったって

ほかにも 納入業者になりたい
連中は たくさん いる。

だから 最後は 入札で決まるんだ。
ただ 兄貴が頼んでくれて

連隊が うちの店の実績や信用を
調べた上で

うちの店ならと判断したら
入札する資格が得られるんだ。

大変なのね。
でも なにも そんな事までして

連隊の御用商人になる事
ないじゃないの。

うちは うちで なんとか
やっていけるんですから。

しかし 一軒一軒 注文 聞いたり

御用聞きに回ったりする必要は
なくなる。

一匹一匹 魚をおろしたりする
手間だって省けるし…。

相手は 軍隊だ。
もうけは 少ないだろうが

それでも 大量に扱うとなれば
今より 利益は少ないはずはなか。

そんな危ない事しなくたって…。
今の商売 もうけは薄くたって

損する事は ないんだもの。
なにも 軍に 頭 下げて

そんな商売させてもらう事
ないじゃないの!

おしん…。

これからはな 軍人の時代たい!
どがん時が来たって

軍の仕事をしとる限り
食うに困るような事は なかよ!

お兄さんが
そう おっしゃったんですか?

日本も 腹を決めて
事に当たる事になった。

オイたちは
まだまだ のんびりしとるが

日本は 国の力を総動員して
戦争する態勢になっとったいね。

だからって なにも 軍に
取り入るような事しなくたって…。

取り入るとやなかよ。
どうせ 商売するんだ。

お国のためにもなって
それで 軍の働きをすれば

それでいいじゃないか。
それだったら 戦争に

協力してるみたいなもんじゃ
ないの!

日本が戦争しよっとに
国民が協力すっとは

当たり前じゃなかか! あんた!
お前はな よく

「戦争は嫌だ」とか「ごめんだ」とか
軽々しく 口にするが

これからは そがん事
軽々しく 言うもんじゃなかよ。

お前が どがん気持ちでおろうと
日本が戦争しとる以上

泣いたって 笑ったって
この戦争に勝つ日まで

みんなで 力を合わせて
戦わにゃならんのだ。

また 軍に協力する事で
オイたちだって生きていけるんだ。

もし この戦争が
長引くような事があれば

統制は もっと厳しくなるっちゅう
話たい。

そがん時が来たって
軍の仕事をしとれば

食うに困るような事は ないんだ。

お兄さんが
それも おっしゃったんですか?

いや… 兄貴はな オイたちの事
心配してくれとるんだ。

そりゃ オイたち夫婦だけなら
野たれ死にしたってよかよ。

しかし 子どもたちにだけは
不自由な思いは させられん。

それが 親の責任だ!

お国の仕事して
それで 軍のお役にも立って

それで オイたちの暮らしが
安泰なら 一挙両得じゃなかか。

でも…。
もう よか!

今度の事は オイが決める!
女子の出る幕じゃなか!

その夜 おしんは眠れなかった。

長い年月 毎日の暮らしに
追われている間に

気が付いたら
戦争の渦中に巻き込まれている

おしんであった。
ふと おしんの脳裏に

幼い日 山形の山中で
ひと冬を共にした

脱走兵の俊作兄ちゃんの思い出が
鮮明に よみがえっていた。

戦争の残酷さと 二度と戦争を
してはならないと教えてくれた

俊作兄ちゃんの言葉は
今も おしんの胸に

焼き付いているのに
もう 自分の力では

どうにもならないところまで
来てしまっているのが

恐ろしくもあり
悔やまれてならなかった。

そして 女の力なんて
はかないものだと

しみじみ 情けなくもあった。

♬~
(テーマ音楽)

♬~

(おしん)ちょっと あんた!
時間です! あんた!

(竜三)う~ん… 分かっとう!
起きて下さい! ちょっと!

今日は 仕入れには行かん。
店は 休む。

兄貴に会って いろいろ
相談もしなきゃならんのだ。

店なんか やってる暇なかよ。
そんな 急に 店 休むなんて…。

兄貴だって 忙しいんだから!

今日しか会えないんだ!
ちょっと ちょっと ちょっと!

ねえ あんた やっぱり
昨夜 おっしゃってた事 本気で?

だって 納入業者になれるかどうか
分からないんでしょ?

お兄さんの お世話だって
いったって

軍に入れる保証は ないんでしょ?

そがん事は
お前が心配する事やなかよ!

なんとか食い込むために 兄貴の
知恵と力を借りるとやなかか!

オイの一世一代の大勝負たい!
店どころやなかよ! ちょっと!

もう! たまに 店 休む時ぐらい
ゆっくり 寝たらよかよ!

(初子)おはようございます!
おはよう!

ごめんね!
うっかり 寝過ごしちゃった~。

もう 御飯 出来てます!

あっ そうだ。 悪いけど
お握り2個 作ってくれる?

ここで食べていけないから
もう 持っていくわ。 ねっ。

お出かけですか?

今日はね
母さんが 仕入れに行くのよ。

父さん ほかに ご用あるからね。
母さんが? うん。

だってさ お店 休む訳にも
いかないでしょ。

無理ですよ! 荷車 引いて
あんな遠い所 往復するなんて…。

それがね 大丈夫なのよ! 母さん
足だけは鍛えてあるんだから!

じゃあ 私も行きます!
冗談じゃないわよ。

だって 初ちゃん 禎
見ててもらわなきゃなんないし

みんなの世話だって
あるじゃないの。

だけども 初ちゃん 学校
行くまでに 帰ってこれるかな。

今日から 冬休みです。
そうか! そうだった!

じゃ 安心して行ってこられるわ!
じゃ 後 頼むわね!

あっ おむすび!
あっ!

初ちゃん 本当
初ちゃん いてくれて 助かる!

もう 男の子なんて いたって
何の役にも立たないんだから!

じゃ 初ちゃん 頼むね!
はい!

はい お待たせしました!
あ~ ありがとう!

さあ! あ~ 今日も晴れるかな!

よいしょ!

それじゃ 行ってくるからね!
はい!

後 頼むよ!
はい!

行ってらっしゃい!
は~い 行ってきま~す!

(ひさ)おしんちゃんが
仕入れに来るやなんて

もう びっくりしてしもうた!

竜三さんに
何ぞあったのかと思うてな。

いえ 頭が痛いって
言うもんですから

ちょっと
大事とっただけなんです。

あんたもな
たまに会うたんやからな

ちょっとは
ゆっくりしていきない。

寒いしな ほら! こんな
熱い みそ汁かて あんのやで!

おいしそうだ! 何だか かえって
ご迷惑かけてしまって…。

いや~ でも 久しぶりに
浜に買い出しに来て

何だか 清々しました!
やっぱり 海って いい!

なあ おたいとこもな いつ あんた
漁をやめんならんか分からへんで。

若い衆が あんた 2人も
兵隊に とられてしもうてな。

えっ? やっぱり…。

見慣れた顔が見えないと思って
変だなって思ってたんです。

いや~ この分やったらな
おたいの息子たちにも

いつ 赤紙が来よるや分からへん。

こんな ひどい戦争に
なってるなんてね…。

いや~ なんぼ お国のためや
言うたやてや

息子や働き手を
戦争に とられてしまうなんて

あんまりやわ!
嫌な世の中になってしもうたな。

今から思うたらな
浩太さんみたいな人が

生きていかれんような世の中に
なってしもうたっていうのが

おかしな話や。
浩太さんは?

だいぶ 落ち着いたらしいけどな
いまだに黙りこくって…。

そら 無理ないわな。

今でも あんた
特高が見張ってんのやから。

なんぼ 転向した言うたやてな

いつ どんな目に遭うや
分からへん。

早いとこな ちゃんとした娘さんを
もろうたら

特高やて安心するやろうし…。

なあ 浩太さんのためにも 少しは
幸せになれるんやないかと

思うてんのや…。
まあな こんな事はな

あんたやさかい 言うてられるけど
これからは あんた

だんだん ホンマの事が
言えんようになるわ。 なあ。

忙しいのに
あんた 引き止めてしもうた。

ちょっと冷める。 早う食べて。
頂きます。

いや~ まだまだ
おたいは 船 出しまっせ!

若い者が おらんようになったらな
年寄りが気張ったらええのや!

なっ あんたも 精 出して
魚屋 やりや!

あんたの店を潰すような事は
せえへんよってにな!

♬~

雄!

(雄)バカだな。 起こしてくれたら
僕も一緒に行ってあげたのに。

冬休みだよ。 よいしょ!

男の子だって
役に立つ事 あるんだからね!

よいしょ! さて! よっ!
さあ みんな ありがとう!

じゃあ 母さんね 注文 取りに
回ってくるから 後 頼んだよ!

御用聞きにも行くんですか?
うん。 自転車 乗れないからね

父さんみたいには いかないけども
回れる所だけね。

待ってていて下さる お客様も
いるんだから!

よし!
じゃあ 僕が乗せてってやる。

僕は 自転車に乗れても 1人じゃ
御用聞き できないからね。

危ないわ そんな事!
大丈夫だよ。 母さんは

後ろに乗って 僕に しっかり
つかまってりゃいいんだ。

えっ?
心配ないよ 僕 うまいんだから!

信用しろよ!
それじゃ 頼むかな!

(初子)母さん! 大丈夫よ。
しっかり しがみついてるから。

「男の子は 役に立たない」なんて
二度と言わせないからね!

(雄)行ってきます!
あ~!

♬~

寒くない? 母さん。

大丈夫。
雄の背中 あったかいもん

♬~

ハハハ! ここまで
来られてよかったよ 雄!

あのね 名古屋からね 今夜
お客様があるうちがあってね

それで 休んだら
迷惑かけるとこだったわよ!

もう すぐ帰って 届けなきゃ!

よし!
じゃあ 配達は 僕一人でやるよ。

回った所は
もう ちゃんと覚えたからね。

雄! 父さん 忙しいんだったら
明日も 僕がやるよ。

仕入れにだって ついてってやる。

そろそろ お正月だから
注文も増えてくるんじゃないの?

あ~ 持つべきものは男の子だ!
誰よりも頼りになります! はい。

しかたないさ 魚屋の息子に
生まれちゃったんだから。

ねえ 雄。 雄の気持ちは
うれしいんだけども

雄は 魚屋 継がなくたって
いいんだよ。

一生懸命 勉強して 大学 行って
それで 雄の好きな仕事が

できるようになってほしいの!
いいよ。 大学 入るためには

高等学校 出とかなきゃ
ならないし

高等学校3年 大学3年
6年も行くんだよ。

下宿したり 寮に入ったり

お金だって 随分かかる。
無理だよ。

それぐらい
母さん 何とでもするわよ!

雄は しっかり勉強すればいいの!
理想と現実は 違うの!

うちみたいな魚屋じゃ
家族7人が暮らしていくのが

やっとだっていう事ぐらい
僕にだって分かってるんだから。

雄…。

母さん 僕だってね
いろいろと考えてるんだ。

母さんに 心配は かけないよ。

さあ 早くしないと
配達 間に合わないよ。

母さんはね…。
早く! ほら。

いい? はい。
よし! よいしょ!

(希望)ここに
座ってるんだよ。

一日中 こき使っちゃったわね。
何 言ってるんだ。

母さんは 僕くらいの頃
学校へも行かず 毎日 奉公して

朝から晩まで働いてたって
言ってたじゃないか。

これくらいの事 何でもないよ。

母さんが
そうやって苦労したから

雄や みんなには
させたくないんじゃないの。

(仁)ただいま! あっ お帰り!
何してたの? 今まで。

めんこ。 あ~ 腹 減った!
どうだろう!

全く 希望は 初ちゃんのお手伝い
してくれてるっていうのに

仁は 何にも
分かってないんだから!

いいじゃないか
いろんな子がいてさ!

仁だって そのうち 母さんの
苦労が分かるようになるさ。

どうだか!
私も 手伝いましょうか?

もう 夕飯の支度 済んだし。
ありがとう! 禎は?

希望ちゃんが
お守りしてくれてます。

さあ それじゃ
こっちも そろそろ

片づいたから 晩御飯にしようか。
はい!

お父さん 待ってたって いつ
帰ってくるか 分かんないもんね。

仁ちゃんが おなか すいたって
機嫌悪くて…。

どうして
ああ わがままなんだろうね?

1人で遊びほうけてたくせに!
もう!

雄さん 今日は
本当に 御苦労さまでした。

何 言ってるんだ。 初ちゃんなんて
毎日 御苦労さまじゃないか。

私は 奉公人だから
働くのが当たり前だけど

雄さんは 本当に親孝行なのね。
僕は 長男だからね。

長男の責任だよ。 母さんだけは
大事にしてやらないとさ。

(表の戸をたたく音)

はいはい。

あ~ お帰りなさい。
まあ 随分 御機嫌さんですね。

今夜は 飲んだぞ!
機嫌よう 飲んだたい!

あ~! いろんな人に会うたしな!

いや~ 兄貴の顔は
大したもんばい!

静かに! もう
みんな 寝てるんですから…。

おしん
お前 今日も 店 開けたとか?

ええ。 あのね
雄が手伝ってくれたんですよ。

御用聞きも 配達も。
助かりました!

そがん事ば 喜んで!
それでも 母親か!

本当の母親だったら 息子に
そがん心配させんもんたい!

こがん魚屋に
しがみついとるけん

まだ 中学3年の雄に
気を遣わせる事になっとよ!

かわいそうだとは 思わんとか!

いや そりゃね 私だって
年端も行かない雄に

魚屋の手伝いなんか
させたくありませんよ。

雄の優しい気持ちは
うれしいんだけど

大学行く学費まで
心配させてるかと思うと

何だか つらくてね…。
そうだろう?

なっ おしん。 オイはな
雄にも ほかの子たちにも

伸び伸びと育ってほしか。

どがん時が来たって
不自由だけは させとうはなか!

その一念で
今度の仕事に 懸けとったい!

オイは 今度の仕事は
必ず 取ってみせるけんない!

必ず 軍の納入業者に
なってみせるぞ! うん!

ああっ!
あら ちょっと あんた 大丈夫?

大丈夫? 大丈夫でしたか?
危ないですよ。 1段 ありますよ。

この人も 誰のためでもない
5人の子どもたちのために

大きな仕事に
夢を託しているのだと

おしんは しみじみと
竜三の顔を見つめていた。

自分と同じ思いの竜三が

ふと おしんには
たまらなく いとしかった。

何も言わずに
この人に ついていこう。

その時 おしんは 1つの人生を
はっきりと選んだのであった。

♬~
(テーマ音楽)

♬~

(竜三)何だ
また 仕入れに行ったのか?

(雄)だって 父さん
二日酔いで起きないんだもん。

だったら 店 休めばいいだろ。
(おしん)ええ ええ。

でも ほら お正月の支度の注文も
ありますから

暮れまでは
なんとか 店 続けたいのよ。

一番 大事なのは
店の信用なんだから。

まだ そがん事ば言いよっとか!

どうせ 閉める店じゃろうが
信用も ヘチマもなかよ!

おしん! お前 まだ
気に入らんとか? 今度の仕事が。

雄 もう ありがとう。 いいから。
ねっ。

うん。

お前は おかしなものに かぶれて
「戦争は反対だ」とか

「軍に協力するような仕事は
嫌だ」とか言いよるがな…。

おかしなものに かぶれてとは
どういう事ですか?

いや~ 若い頃に
警察に 2度も引っ張られて

アカだって言われた事が
あったじゃなかか。

あれは…。 間違いだという事は
よう分かっとう。

しかし いまだに
青臭い事ば言いよっけん。

もう そがん時代は 終わったとよ
おしん。 浩太さんだって

社会主義なんて思想は 捨てて
監獄から出てこられたとやなかか。

本当に 日本って国を愛しとったら
日本をたたき潰そうという

外敵から 日本を守ろうとするのが
日本人の務めちゅうもんたいね。

そのために みんな 戦うとっとよ。

せめて 商人として
軍のお役に立つのが

商人の責任っていうもんたい。
しかも…

これは 大きな声では言えんが

今度の戦は 長期戦に
なるかもしれんちゅうこったい。

もし そがん事になったら
一般の商売だって

物がないようになって
成り立たん時も来るじゃろう。

そがん時が来たって
軍のお役に立つ仕事をしとれば

困る事はなかよ。
お国のためにもなって

それで 家族が安泰ならば
一石二鳥じゃなかか。

何だ? それでも おしん
やっぱり 気が進まんと言うとか?

はあ~…。 そりゃね 私だって
こんな店 してるんじゃ

雄を大学にやる費用にだって
困る事 分かってるんです。

雄だって それが分かるもんだから
大学に行くのも遠慮して…。

私 雄に そんな心配
させてんのかと思うと

親に かい性ないのが つらくて…。
今度は こたえました。

雄は
優しかところのある子やっけん

小さい時から
お前の苦労すんのを見てきて

そがん気持ちにも
なったとやろうな。

私 もう 決心してるんです。
子どものためには 一か八か

今度の仕事 やってみるよりほか
ないんですよね。

そうか! 分かってくれたとか?

何が何でも 親の務めだけは
果たしてやらないと!

でも あんた
ホントに大丈夫なんですか?

ああ!
うちは 地道な商売してきた。

お客の信用だってある。
どがん調べられたって

納入業者の資格は
ちゃんと あったい!

それに 兄貴が
ちゃんと 根回しばしてくれとう。

昨夜だって だてに
酒 飲んできた訳じゃなかよ。

まあ オイにも ちゃんと
成算は あっとやっけん! ハハハ!

あ~ 年が明けたら 入札がある。

それまでは オイも
方々 走り回らにゃならん。

とても 店をやってる暇なかよ。
いやいや 店は 私がやりますから。

だって 決まるまでは
店も大事にしとかないと。

好きにしたらよか。
しかし この仕事が決まったら

トラック1台あればできる
商売やっけんない! トラック?

ああ。 魚ば仕入れて 連隊へ運べば
それで済む商売やっけん。

まあ いかに安く仕入れて
安く納めるか…

その辺が オイの腕たいね!
いや あんた だって

そんなトラックみたいな高い物
うち 買えませんよ…。

いや~ 軍に 品物 納めるとなれば
銀行だって どこだって

トラック 買う金ぐらいは
貸してくれるさ。

それが 軍に品物を納める商売を
取った者の強みちゅうもんたいね。

ハハハ!

しかし おしんには

しっかり わきまえてもらわにゃ
ならん事があるぞ。

軍の仕事をするようになったら
たとえ 冗談にも

軍や戦争の批判をするような
言動は 許されん。

それだけは
しっかり 肝に銘じておかんば。

もし そがん事が 人の耳に入って
軍に知れたら

それこそ
即日 出入り差し止めになって

家族は
路頭に迷う事になっとやけんね。

どうも!

あ~ うちへも寄ってや!
注文があるで! は~い!

そうか。 それで 父さん
店も ほっぽらかして

飛び回ってるのか。
うん…。

母さんもね 何だか
気が進まなかったんだけどね。

どうして? 僕は うまくいくと
いいと思うけどな。

僕たちだって
何か お役に立つ事しなきゃ。

兵隊さんたちに 安くて おいしい
魚を食べさせてあげられたら

父さんだって
役に立つ事になるじゃないか。

雄も 父さんと同じ事 言うんだね。

当たり前だろ! 日本は
今 戦争してるんだからね。

戦場で戦ってる兵隊さんたちの
おかげで

僕たちは
毎日 平和に暮らせるんだ。

それ 思ったら
何か お役に立つ事しなきゃ。

ねえ 学校では
そういうふうに教えてるのかい?

母さん…。 みんな そう思って
頑張ってるんじゃないか。

だけど 母さんは
雄や みんなのために

今度の父さんの仕事
賛成したんだから…。

僕たちの事なんか
どうだっていいんだよ。

大事なのは
今度の父さんの新しい仕事は

今の魚屋より ずっと
有意義だっていう事だよ。

それにさ 父さんだって 少しは
楽になるんじゃないのかな。

今度 母さんの仕事 手伝って

魚屋って商売が どんなに大変か
よく分かったよ。

父さん 今まで 何年もの間
よく頑張ってきたと思うよ。

軍の業者になれば 注文取りだって
配達だってしなくて済むんだろ。

店だって やらなくて済むし…。

父さんのためにだって
いい事じゃないか。

そうだね。
父さんも もう 年だもんな。

いつまでも きつい仕事させてちゃ
かわいそうだな。

母さんだって 店は大変だ。

母さんにだって
楽してほしいよ 僕。

フフフフ! 母さんは 働く事なんか
何でもないよ!

あ~ でも 雄に話してよかった。
雄の気持ちも分かったし…。

母さん もう 迷わない。 父さんの
好きなようにしてもらうわ。

うん。

母さん 帰り 運転してみる?
えっ?

少しは 練習しないと。 自転車?
うん。 ねっ 乗りな。

よし。 押さえてるから 後ろ。
うん。

♬~

昭和13年が明けて早々に

連隊へ食料品を納める業者の
入札が行われた。

(ひさ)おしんちゃん おるか?
お内儀さん。

正月には わざわざ
挨拶に来てもろうて…。

その時な 今日が入札やて
聞いたよってんな。

それは わざわざ すいません。
ほんで 決まったんかいな?

いや まだ 帰ってこないんですよ
田倉が…。

そうか。
うまい事いったらええのにな~。

決まるまではね 店も休むつもり
なかったんですけども

今度ばっかりは
どうしようもなくて。

さあ どうぞ上がって下さい。

あんたとこもな
子どもが ようけ おるよってに

竜三さんも
のんきに構えてられへんわな。

そら 大きい事もやりたいように
なるやろ。

たとえ 決まったとしても
相手が軍ですからね

そうそう
もうけさせては もらえません。

こっちが 安く入れるから
出入りさせてもらえるんですし。

それでも あんた
商売できるだけ ええがな。

これからはな 勝手に物を売ったり
買うたりできんようになるんやて。

石油なんかな
一番先に 槍玉に挙がってな

船 持っとる者は あんた
みんな 心配しとるがな。

おたいとこやってな 若い衆が
兵隊にとられてしもうて

漁師は おらんようになるし
もう おしまいや。

そんな まさか そこまでは…。

おしんちゃん あんた
何にも知らへんのや。

これからはな
軍に必要な物 扱うとったら

何も不自由せんで済む。

軍隊のあるうちは
食いはぐれがないのや。 なっ。

竜三さんの ホンマに
頭の切れるのには

つくづく シャッポ 脱ぎました。
いえいえ。

いや~ おたいとこもな
軍の息のかかる仕事やったら

よかったかもしれへん。 なっ。
そしたら 燃料の石油かて

船に乗る人間かてな 不自由せんで
済んだかもしれへん。

まあな いざとなったら
もう いつでも

漁をやめる覚悟は
できてるんやけどな。

お内儀さん…。

≪(戸が開く音)

≪(竜三)おしん
(ひさ)あっ 帰ってみえた。

≪(竜三)おしん
お帰りなさい。

あ~ いらっしゃい!
お邪魔してます。

入札の事 心配して下すって…
お内儀さん。

そりゃ どうも。
どうでした?

決まったよ!
(ひさ)うわ~ よかったな!

おめでとうございます!
なかなか 厳しい条件でね

うっかりすると
もうけもないような。

いや~ それでも 軍に
つながりが持てただけでも

商人としての箔が付きますがな。
どんな財産よりも強いわ あんた。

まあ どうなるか分かりませんが

とにかく 今までとは
扱う量が違いますからね

仕入れ先も それだけのものを
扱ってる所でないと。

まあ あっちこっち 買いに走る
という訳にもいかんし…。

まっ その方も 兄貴と 事前に
相談して 決めてありますんで。

まあ とにかく
やってみるよりほかには…。

じゃあ あんた…。

いやいや
もう そら おたいとこは

とてもやないけど
間に合わへんもんな。

お内儀さんには ホントに
長い間 お世話になりました。

何と申し上げていいか。
ホントに ありがとうございました。

ろくに 何もしてあげられんと…。

そやけど もう
浜に来れんようになるんやな。

何や 寂しゅうなるわ。

(竜三)父さん 頑張るぞ! ハハハ!

みんなには もう
不自由な思いは させんぞ!

なあ 禎
お前が お嫁に行く時には

長持ちを 10ぐらい
持たせてやるからな! ハハハ!

あっ 初子 お前にもだ!
肩身の狭い思いは させんからな。

気の長い話だな 父さん。

いや 初子が お嫁に行く日なんか
すぐ来ったい!

あっ それまでには
うちも建てておかんとな! ハハハ!

おい おしん! お前も こっち来て
飲まんか! 祝いの酒たい!

はい。

上機嫌の竜三を見ながら

おしんは なぜか
心が晴れなかった。

寂しそうな後ろ姿を見せて
帰っていった ひさを思いながら

戦争の時代に 明暗を分けた
2つの生き方が

おしんの胸に 痛みを残していた。

…が 竜三の選んだ道が
果たして よかったのかどうか

おしんには まだ不安であったし
とうとう 軍に頼って

暮らしを立てる事に
なってしまった 後ろめたさが

おしんの心に 影を落としていた。

♬~
(テーマ音楽)

♬~

(仁)ほら!
(おしん)希望 頑張れ!

≪(竜三)おしん
お帰んなさい!

おしん! トラックが来たぞ!
あっ 来ました?

ちょっと見に来んか 裏の空き地に
置かせてもらってあるから!

あ~ 大したもんばい!
ほら ちょっと!

いや 御苦労さまです!
ちょっと ちょっと

お茶 飲んで 一服してから!
ねっ いれますから 今!

いや~ これで 明日から
運送屋の手間も省ける!

自分のトラックで運ぶとなれば
運賃だって 安くつくしな!

軍の品物を扱うとなれば ガソリンに
不自由する事だってないだろうし。

これで 一安心だ。
明日の注文も あるんですか?

ああ。 何しろ 魚は 肉より
はるかに安くつくとやっけんね!

それに
栄養だって 肉には負けんし!

いや しかし 献立 立てる軍曹も
楽じゃなかね。

オイに いろいろ 相談すっとよ。
え~!

オイも 魚料理の研究ば
しとかんといかんね!

ねえ 私も
何か お手伝いする事ない?

うちのトラックだったら
横に乗せてもらったら…。

何ば言いよっとか!
ただの仕事ではなか!

軍隊に 女子は 御法度だ!
今度の仕事はな 男の仕事たい!

オイが 命を懸けて
やるつもりになったんだ。

まあ オイに任せておけばよかよ!
でも…。

おしんは これから
うちの事だけをしてればいいんだ。

なっ 楽をさせてやりたいんだよ。
今までの罪滅ぼしだ。

はい。 分かりました。
じゃあ あなたのお仕事は

お邪魔しない事にして…。
(竜三)うん。

どうか
この店を続けさせて下さい。

おしん…。
お前には まだ 分からんとか?

家族7人が食べていく事ぐらいは
オイ一人の稼ぎで十分たい!

お前は
それ以上の事する必要はなかよ!

いや お金のために
言ってるんじゃないの。

店 閉めてから
何だか 気が抜けたみたいで…。

うちの中でする事だって
山ほど あるじゃろうが…。

掃除に 洗濯に 5人の子どもの
食べる事から 着る物の世話まで

お前は それだけしとればよか!

だって 初ちゃんだって
いてくれるし…。

今まで ひいきにして下さった
お客様のためにだって…。

御用聞きや配達は無理でも
この お店だけ。

店で商売するだけでいいんです!

結局 お前が
商売したいからだろう?

どこまで 貧乏性にできてんだ!

人が せっかく 楽を
させてやろうと思ってんのに…。

ありがとうございます!
しかたんなか!

店で売る魚も
市場で仕入れてきてやったい!

助かる~! きっと
そう言ってくれると思ってたんだ。

この~!

竜三の新しい仕事は 次第に
軌道に乗り始めていたし

おしんも また 今までの魚屋に
精を出すようになっていた。

♬~

昭和13年の春 田倉家にとって
重大な問題が持ち上がった。

雄の進学を考える時が
来ていたのである。

(希望)ただいま!
あっ お帰り!

母さん 腹 減って 動けないよ!
何か食べる物!

どうして? 昼 学校で
弁当 食べてきたでしょ?

こんなもん 食べられるかよ!

梅干しが1個
入ってるだけじゃないか!

また そんな わがまま言って!
先生は 今日は

日の丸弁当 持ってらっしゃいって
おっしゃったんでしょ。

そりゃ そうだけどさ
弁当箱の底に ちゃんと

卵焼きを隠してるやつだって
いるんだから! あら!

そんな事するのは
非国民なんだぞ!

戦争に行ってる兵隊さんの苦労を
しのんで

日の丸弁当 食べるんじゃないか。
ねえ 母さん。

そうだよ。 ぜいたく言ったら
罰 当たるんだから!

今は 戦争で ちゃんと みんなで
節約しなくちゃいけないの!

希望 弁当は?
みんな 食べたよ。

ほら ご覧。 希望は ちゃんと
辛抱してんじゃないの!

嫌いなものは 嫌いなんだ!
じゃあ 食べないでいなさい!

うちは ほかに
何も食べる物ないんだから!

母さん 僕 禎のお守りしてるよ。
禎ちゃん おいで。

(竜三)ただいま!
お帰りなさい。

初子は? まだですけど 何か?
千人針 頼まれた。

魚市場のおやじさんの息子に
召集令状が来たそうだよ。 あら。

急ぐからって。 初子は 寅年だから
1人で全部 縫ってもいいんだろ?

ええ。 「虎は 千里 行って
千里 帰る」っていって

運の強い干支だそうですから。
初子には悪いが 帰ってきたら

縫っといてもらわんと。 明日の朝
届けたいんだよ。 やろうか?

いいですよ ちょっと休んで下さい
朝早かったんだから!
よかよ!

今日は もう 表に出る用事も
ないし。 店は 私の仕事よ。

体が空いてる時は
手伝ってやるよ。

しかし だんだん 売れんように
なるかもしれんな。

「節約 節約」って
呼びかけてるからな。

何だか
急に うるさくなりましたね。

まあ 軍に必要な物や軍需物資を
扱ってるうちは 安泰だ。

兄貴の言うとおり
軍の仕事しといてよかったたいね。

ねえ うちも だんだん
売る魚も無くなるの?

まあ 戦争が長引いたら
どうなるか…。

(雄)ただいま!
お帰り! 早かったね。

今日から試験だよ。 試験の間
早く帰してもらえるんだ。

父さん。 父さん 今日 もう
どこにも出かけなくていいの?

(竜三)ああ。
じゃあ ちょっと
話したい事あるんだ。

(初子)遅くなりました!
お帰り!

今日は 学校で
千人針 縫ってたもんだから…。

私たちの組 寅年が多いでしょ。
大変なんです。 そうか!

すぐ お店 手伝いますから!
悪いね!

初ちゃんも 忙しいんだな。

よし! それじゃ 客が来んうちに
お前の話を聞いとこう。

うん。

あ~ 初子 これも頼むよ。
急ぐんだ。
はい。

初ちゃん 僕が出征する時も頼むよ
千人針。

雄さんが 戦争に行くなんて…。

ハハハ! 雄は まだ 16だ。

いくらなんでも
雄が 兵隊検査 行くまでには

戦争は 終わってしもうとったい。
ハハハ! おっ!

希望。
父さんと 大事な話があるんだ。

向こうの部屋で遊んでてくれ。
はい。 禎ちゃん 行こう!

雄さん 父さんに 話があるって…。
母さん 行かなくていいんですか?

うん。 男同士の話でしょ。
母さん 行くと 邪魔にされるわ。

でも…。
私 お店の事しときますから。

何だか 雄さん 真剣な顔
なさってるから 心配で…。

夏休み前に 進学希望の学校を
決めるようにって

先生に言われた。
うん。

僕は 陸軍士官学校へ行く事に
決めてる。

どうしても行きたいんだ!
陸軍士官学校

お前 そんな難しい所へ
入れる自信は あるのか?

内申書は 大丈夫だと思う。

入学試験だって そのつもりで
これから 頑張れば…。

そりゃ 僕は 長男だ。

父さんの仕事の後を継がなきゃ
ならないのは よく分かってる。

でも もし 父さんが
許してくれるんなら…。

許してほしいんだ!

お前が
そがん事 考えていたなんて…。

父さん!

よか。 父さん 雄が
そがん気持ちで おっとない

何も言う事はなか!
これからは 軍人の時代たい。

陸軍士官学校へ 入学できるんなら
田倉の家にとって

こんな名誉な事はなか!
じゃあ いいんだね?

ああ。 父さん 雄を
魚屋に継がせるつもりはなか。

今の商売してんのは
お前たちのためだ。

お前たちが 立派に成人して

自分の好きな道を
歩いてくれれば それでよか。

魚屋は 父さん一代で たくさんだ。
よかった!

僕 絶対 反対されると思って
今まで 黙ってたんだ。

随分 悩んだんだよ これでも。

そのかわり 心に決めた事は
きっと やり遂げろ!

ああ! 必ず
初志を貫徹してみせるからね!

(竜三)ああ。

(雄)母さん…。
母さんは 反対だよ。

おしん…。

軍人になるなんて… 雄。

母さんは 雄を 軍人にするために
育ててきたんじゃない。

父さんは 賛成してくれたんだ。
母さんに反対される理由はないね。

生意気 言うんじゃないの!

お前は 父さん一人の子どもじゃ
ないだろ!

おしん! 女親に 男の子の
気持ちなんか分かるはずはなか!

雄の好きなようにさせてやるのが
親の愛情ってもんたい!

男には 母親の愛情なんて
分かりゃしません。

軍人の何が 気に入らんと?

今の日本の運命を担うとっとは
軍人だぞ!

オイたちが 今 こうやって
安泰に暮らせるのも

軍のおかげじゃなかか!

その息子が 軍人になって
ご奉公してくれたら

軍へのご恩返しにもなる。
オイたちの面目も

立つっちゅうもんじゃなかか。
そりゃ 私たちは 軍のおかげで

生きてるかもしれません。
でも だからって

雄が 軍人にならなきゃ
ならないって法は ないでしょ!

(雄)僕がなりたいから
なるんだよ!

軍人は 男子にとって
一番 立派な職業だと思うから!

何が立派なの!? 軍人なんて
戦争するのが商売じゃないか!

ああ!
日本は 今 戦争してるんだ!

僕たちが軍人になって
日本を守らなかったら

誰が 日本を守るんだ!
雄!

(雄)日本を守るって事は
父さんや母さんや兄弟たちを

守る事にもなるんだ。
僕が 軍人になるのは

天皇陛下
お国のためだけじゃない。

父さんや母さんや弟や妹たちを
守る事にもなるんだ。

反対される理由は ないね!

だったら なにも軍人になるだけが
能じゃないだろう?

会社 勤めたっていい!
お役人になったっていい!

商売したっていい! お国のために
それだってなるじゃないの!

母さんは
そんなに 軍人が嫌いなのか?

嫌いなんだよ 母さんは!
戦争だって 本当は反対なんだ!

母さん!

ただ 母さんが反対したって

母さんには
何の力もありゃしない。

おまけに 今は
軍のおかげで 商売もしてる。

そうしなきゃ生きていけないから
しょうがないと思って

諦めてるけど…
母さん 本当は つらいんだ!

(竜三)おしん
だから 雄にだけは

軍人に なってほしくないの!
母さんは ずるいよ!

軍を利用するのには
目をつぶって

自分の息子は
軍人に したくないなんて

そんな理屈 通るはずないだろ!
雄…。

戦争反対だなんて…。

日本だってね 好きで
戦争してるんじゃないんだぞ。

今 戦わなかったら 日本は
たちまち 滅びてしまうんだ!

賛成とか反対とか
言ってる場合じゃない!

とにかく この戦いには
勝たなくちゃならない!

それが 日本に生を受けた者の
務めなんだ!

母さん 僕だから いいけど

ほかの人に 戦争反対だなんて
言ってみろ

ただじゃ済まないんだからね!

でも 父さんに分かってもらえて
うれしかった。

陸軍士官学校志望って
届けておきます!

おしん…。

雄は オイが思うとったよりも
よっぽど しっかりした男だ。

今の時局も よう認識しとう。

よか息子を持ったと思って
雄を信じてやれ。

おしん

♬~

雄は もう…

私の手の届かないとこに
行ってしまった…。

♬~

♬~
(テーマ音楽)

♬~

(初子)母さん…。

私も 雄さんが軍人になりたいと
思ってるなんて 知らなかった…。

ひどいわよ 雄さん…。

(おしん)雄が悪いんじゃない。

あの子は 陸軍士官学校に行くのが
一番 正しい事だと

思ってるんだね。

いつの間にか そんな世の中に
なってしまって…。

怖い事だけど 母さん
もう どうする事もできないわ。

反対したら
母さん 悪者にされてしまう…。

母さん…。

お国のためだって言われたら

母親だって 何も言えない
世の中なんだよ 今は…。

雄のためにだって
いろいろ 苦労もしてきたのにな。

つまんないもんだ 母親なんて…。

(竜三)どうも 毎度!
ありがとうございました!

ありがとうございました!
何や このごろ

同じ魚ばっかりやな。
これも 戦争のためかいな。

ええ魚はな 皆

軍関係の人が出入りしてる
料理屋へ行ってしまうんやて。

いや~
そういう訳じゃないんですよ。

高級魚は 高くて
仕入れても うちなんかじゃ

とても お売りできる値段じゃ
ないんですよ。

(雄)初ちゃん 悪いけど
禎を見ててくれないか?

隣の部屋で さっきから
希望と仁が 禎を相手に

キャッキャ キャッキャ 大騒ぎなんだ。
明日も試験だっていうのに

これじゃ 勉強にもなりゃしない。
はい。

雄さん。 雄さんは
ホントに 陸軍士官学校

行くおつもりなんですか? ああ。
どうして?

「どうして?」って…。
日本男児に生まれたからには

軍人になって 国に殉ずるのが
男子の本懐だからね。

雄さんは 親不孝よ。
母さんを悲しませて

偉そうな事 言ったって
少しも 立派とは思わない。

母さんはね 今の日本が
いかに 危急存亡の時か

全然 分かっちゃいないんだよ。
僕が軍人になるのは

父さんや母さんを
守る事にもなるんだし…。

雄さんこそ 母さんの気持ちが

全然 分かってないんじゃ
ないですか?

母さんが 僕を
軍人にしたくないのは

僕を死なせたくないだけなんだ。
でも 死ぬのを怖がっていたら

何にも できやしない。
今は 命を捨てても

国を守らなきゃいけない時なのに。
それが 母さんには…。

母さんが
子どもを死なせたくないのは

当たり前の事じゃないの。
少しは 母さんの気持ちだって…。

そんな事 言ってたら
誰が 軍人になるんだ!

母親が泣いて止めたからって
軍人に なり手がいなくなったら

日本を守るやつは 一人も
いなくなっちまうんだぞ!

そんな女々しい母親の
言いなりになるなんて

僕は 真っ平ごめんだね。
雄さん…。

いいんだ。 母さんだって
いつか 分かってもらえるさ。

雄さん! 母さんが
どんな苦労をして 雄さんを

大きくなさったか知ってるの?
いいよ もう!

よくは ないわ! 私だって
みんな 聞いた訳じゃない。

母さんが 時々 思い出話を
してくれただけだけど

それでも とても つらかった。

母さんが 父さんと
別れ別れに暮らしてる時だって

雄さんと いつも一緒だったのよ。
どこへ行く時だって

雄さんを おぶったり
箱車に乗せたりして

一緒に連れて歩いたって…。

雄がいたから 歯を食いしばって
生きてきたんだって…。

そんな母さん
泣かせるような事…。

私 雄さんは そんな人じゃないと
思ってた。

母さん思いの優しい人だって
今まで ずっと…。

初ちゃん…。
ごめんなさい 生意気な事 言って。

でも 母さん かわいそうで…。

僕だって覚えてるさ。

母さんが 一人で働いてるのを
僕は ずっと見てきた。

いつだって 母さんと一緒だった。

起きると 母さんの笑顔が
いつも 僕を見ててくれた。

浜の おばさんのとこから
行商に行く時

よく 母さんと 歌を歌った。
楽しかった。

父さんが いなくなったって
母さんが いてくれたから

僕は 寂しくはなかった。

母さんが いてくれたから
寂しい思いをせずに済んだんだ。

母さんの笑顔を見て
僕は 大きくなったんだ。

さっきみたいな

母さんの つらそうな顔も

悲しそうな顔も
見た事は なかった。

母さん 泣いてたんだ。

泣き顔なんか 見せた事のない

母さんが泣いてたんだ。

雄さん…。

♬~

おしん。 男の子には
男の子の夢っちゅうもんがある。

今は 男の子なら
誰だって 軍人に憧れる。

オイでん 連隊へ出入りしとって

男なら 将校にならなきゃ
嘘だと思った。

陸士へ入れる力があるかどうかは
分からんが

もし行かれるもんなら
喜んで 行かせてやれ。

母さん…。

母さん
僕 陸士を受けるのは やめた。

(竜三)雄!

やっぱり 自信ないよ。

どこかの高等学校か
私立の大学の予科を狙う事にする。

そのかわり
迷惑かける事になるよ。

陸士だったら 官費だから
学費は要らないけど

ほかのとこだったら
月謝だって要るし

下宿代だって
バカには ならないからね。

陸士へ入れん者が ほか受けたって
ろくなとこへは行けんだろうが!

陸士は 競争が激しいから
無理だろうけど

ほかの所なら なんとか…。

それに 別に
大学へ行かなくたっていいんだ。

中学 出て
父さんの仕事 手伝うのも

立派な生き方だと思ってる。

何を言ってるんだ! 父さんは
お前を魚屋にするつもりはない!

お前に 大学行く力が
あるんだったら

どんなとこへだって やってやる!
学費の心配なんか するな!

とにかく これからは

大学ぐらい出とかんと
人の上には 立てんのだから!

学費ぐらい うちだって
なんとかしてやれるんだから!

お前 自信があるような事
言っとったのに

やっぱり 無理か? 陸士は。
なんとか 頑張ってみんか!

今年じゃなくたって 5年生に
なってからだっていいじゃないか。

はあ…。

本人が諦めてしもうたんなら
どうしようもなかたいね。

母さん。 僕 京都の第三高等学校
受けようかと思うんだ。

三高 出て
京都帝大にも行きたいし…。

三高だ!?

陸士へ入れん者が 三高へなんか
行ける訳ないだろうが!

文科なら 大丈夫だよ。

この戦争で 文科の志望者は
減ってるっていうから。

大学なら 僕 歴史を専攻したいし。

歴史って…。 そんなもん勉強して
何になるんだ?

学者になったって
お国の役に立つ事は できるさ。

それで いいね?

雄…。

父さん 不肖の息子で
ご期待に沿えず

申し訳ありません。

子どもっちゅうとは

親の思いどおりには
ならんもんたいね。

昭和14年の春
雄は 中学4年修了とともに

京都の第三高等学校を受験し
無事 合格した。

戦争は 終結するどころか
ますます 拡大し

国民生活を脅かしていた。

そんな中での
雄の高等学校入学であった。

敷布は 2枚 入れとかないと
洗った時の替えが要るものね。

寝巻きは 2枚 縫ったし…。

雄さん
洗濯も 自分でするんですか?

当たり前じゃないの。 ほかに
してくれる人 いないんだから。

何だか かわいそう…。

「かわいい子には
旅をさせろ」ってね。

若い時に
1人暮らしさせるのだって

勉強になるんだから。
じゃあ 洗濯せっけんも

洗濯ばさみも入れときましょうか。
うん。

せっけんも このごろ 手に
入りにくくなったらしいからね。

ただいま!
あら お帰んなさい!

大変だったでしょ 日帰りじゃ。
いいとこ 見つかりました?

ああ。 今年 卒業した学生のあとを
紹介してもらって…。

老夫婦で 長い事 学生の世話を
してたそうだからね。

ちゃんと 挨拶も済ませてきたよ。
そうですか。

じゃあ
明日 早速 荷物 送んないとね。

京都も だんだん
物が無くなっているそうだよ。

できるだけ うちから
持たせてやった方がいいな。

あら~。 じゃあ 今日中に
荷造りしてしまわないと…。

荷造りは 僕がする。
父さん 早く寝た方がいいよ。

明日も早いんだから。

とうとう 雄も出ていくのか…。

よいしょ!
さて これで 一安心だ!

荷物 着いたら もう いつだって
京都 行けるもんね。

母さん いろいろと
ありがとうございました。

何よ 急に!

雄。

あんた どうして
陸軍士官学校 行くの やめたの?

自信がないなんて
母さん だまされないわよ!

母さん うれしかったけどね。

そりゃ 母さんは 非国民で
親バカかもしれないけど…。

母さん!

僕は 自分を粗末にはしない。

母さんを悲しませる
ような事だけは しないから。

雄…。

時々 顔 見に 帰ってきてもいい?

うん? どうしようかな。
あっ。

雄の顔を見つめながら
おしんの脳裏を

雄と共に くぐり抜けてきた
つらい日々の思い出が

よみがえっては 消えていた。

この子だけは
戦争に巻き込みたくない。

戦争から守ってやりたい。

おしん
しみじみ そう思っていた。

そして その時 おしん
雄を守ってやれたと

信じていたのであった。

♬~
(テーマ音楽)

♬~

(希望)お代わり!
(おしん)はいはい。

昭和14年の春 おしんの長男 雄は
第三高等学校へ入学し

いよいよ
京都へたつ日が来ていた。

(竜三)いいか? 雄。
金の事は 心配すんなよ。

足りなかったら
いくらでも 言うてきたらよか。

とにかく 買える物は買って
補わんとな。

父さんが なにも そんな事まで
心配しなくたって…。

雄は 生真面目なところがあるけん
せんでもいい心配するんだよ。

1人暮らしするのもね
いい勉強になるんですよ。

お前は のんきすぎるんだよ!

(初子)雄さん。

これ お守り。

私が 山形 出てくる時
村の鎮守様で頂いてきたの。

(雄)こんな大事なもの…。
私 ほかに あげるものないし

一番 大事なものを
雄さんに持っててほしいの。

初ちゃん…。

≪雄 早くしなさい!
時間よ!

はい!

ありがとう。 大事にするよ。
それから…。

母さんの事 頼むね。

いつまでも うちにいるんだぞ。

よそへ 奉公なんか
行くんじゃないぞ!

(希望)来た来た!
お待たせ!

父さんたちがね
駅まで送っていくって。

母さん ここで…。

ああ。 じゃあ 行ってくるよ。

(仁)行ってきます。
(初子)行ってらっしゃい。

母さんも 駅まで
いらっしゃれば よかったのに…。

どこまで行ったって同じだ…。

さあ 禎が寝ている間に
お店 開ける支度しないと。

はい!

これまで手放した事のなかった
雄を送り出して

おしんは 体の一部を
削り取られたような気がしていた。

…が いつかは 1人で

突き放さなければならないと
覚悟していた おしんには

母親の務めを 1つ
果たしたような別れであった。

日に日に 国民生活の締めつけが
厳しくなる中で

ひさが漁をやめると聞いたのは
その年の秋も深い頃であった。

(ひさ)若い衆が
兵隊にとられたやて

なんとか やりくりしてな
船を出してきたんやけども

とうとう 燃料の石油もな
配給になってしもうて

ここらが
ええ見切り時やと思うてな。

石油でしたら うちの人が
何とでもするって…。

何か そっちの方に 顔の利く人も
知ってるそうなんです。

いやいやいや そこまでして
続ける気なんか あらへんて!

戦争も いつ終わるや
分からへんしな。 お内儀さん…。

いやな 若い衆が
おらんようになったらな

この広い家を
あんた 持て余してしもうてな…。

なあ おしんちゃん おたいな

今度 東京の息子の家に
世話になる事になったんや。

まあ この年になって
ここを出ていくやなんてな

思うてもみんかったわ。
やっぱり これも ご時世やな。

じゃあ 浩太さんは? まだ
こちらに おいでになるんでしょ?

あっ 浩太さんな
おたいが ここを出る前に

今度 縁があってな
祝言 挙げる事になったんや!

浩太さんが?
ああ! おしんちゃんにも

いずれは 知らさんならんやと
思うてたんやけどもな

名古屋に嫁に行ってる
おたいの娘の友達でな

近くの町の大きな造り酒屋の
一人娘でな

なかなか あんた
婿の来手がなかったんや!

32まで 独り身 通して!
その方と?

うん! 縁というものは
ホンマに 不思議なもんやな!

いや おたいの様子 見にな
時々 遊びに来てくれとったんや。

浩太さんの面倒も
よう見てくれてな。

ほんで いつの間にか
そういう話になってしもうたんや。

まあ これでな
おたいも 肩の荷 下ろして

東京に行けるっちゅう訳やがな!

≪(香子)失礼致します。
(ひさ)はい。

あ~ お客様でしたか。
うん? あっ 何ぞ?

ええ。 高倉さんに
お茶を差し上げましたので

もし よかったら お内儀さんにも
差し上げたいと存じまして…。

いやいやいや
そんな肩の凝るような事は

おたいは 苦手やさかいに
遠慮しまっさ。

あっ あのな
こちら おしんちゃん。

こちらは 並木香子さんな。

おしんちゃんな
浩太さんの古いお友達でな。

田倉しんでございます。

高倉さんとのご縁で

こちらに もう
長く お世話になっております。

並木香子です。

あっ ちょっと せっかくや

あんた おたいの代わりに
お茶 呼ばれてきない! いえ…。

もし ご迷惑でなかったら どうぞ。

(香子)お客様を お連れしました。

≪田倉でございます。

御無沙汰致しました。

伺おうと思っていながら
お邪魔になってはと思い

遠慮致しておりました。

お体の方は いかがですか?

(浩太)元どおりという訳には
いきませんが なんとか…。

雄君は
高等学校に入られたとか…。

はい。 おかげさまで この春に。
今 京都で 下宿しております。

それは よかった。

高倉さんも ご結婚なさるそうで
おめでとうございます。

ありがとう。

失礼致します。

いい方ですね。

軽蔑してるだろうね 私を…。

いや… いいんだ。 当然だ。

ただ 私は
私の運動に絶望したから…。

私一人 どう あがいたって

今の日本を
どうする事もできない。

その事を悟った時
私は 何もかも捨てた。

あなたと会った高倉浩太は
もう いない。

過去の思い出も
一緒に捨ててしまった。

もう 過去の思い出を引きずって
歩くのに 疲れてしまった。

ただ… 私が青春を懸けた事は

後悔してない。

浩太さん… お幸せに。

あの方となら きっと
幸せにおなりになられます。

あなたと こんな話ができるとは
思わなかった。

誰に話すつもりもなかった。

やっぱり くだらん弁解にすぎん。

それでも おしんさんだけには
分かってもらいたかった。

浩太さん…。

♬~

浩太さん?

何もかも 捨てたつもりでも
この足だけは 一生 付いて回る。

これが
私が 精いっぱい生きた証しです。

♬~

(浩太)この家とも お別れだね。
もう 会えなくなる。

それでいいんだ きっと…。

こんな世の中で会ったって

惨めな思いをするだけだからね。

お帰りなさい。
ただいま~!

あっ 料理屋の女将がな
土産にって よこした。

そうですか。
子どもたちに 食べさせてやれ。

何時だと
思ってらっしゃるんですよ。

もう とっくに寝てますよ!

何ですか? これは。

何ですよ!

おしん。 お前には
今まで 苦労のかけ通しだった。

すまんと思ってる!
今頃 そんな事 言って!

まあ いいから 座れ!

しかしな これからは
もう つらい思いは させんぞ!

田倉竜三にも いよいよ
ツキが回ってきたんだ!

今日 話が決まったんだよ!

これからは 魚だけではなか

練り製品も
連隊へ入れる事になったんだ!

カマボコとか ハンペンとか サツマ揚げとか!
ハハハハ!

明日から いよいよ 工場になる所
探して 準備に入るんだ!

あんた…。
いや~ 心配はなか!

オイにも ちゃんと
成算のあってのこったい!

いよいよ 腕の見せどころだぞ!

練り製品だけではなか。

軍隊に入れる品物は
ほかにも いくらだってある!

ただの魚屋では 終わらんぞ
おしん! ハハハハ!

興奮している竜三を
おしんは 冷めた思いで見ていた。

戦争に押し潰される人もいれば

戦争を足掛かりにして
のし上がろうとする人間もいる。

明暗を分ける2つの運命が
おしんには やりきれなかった。

これから どうなるのだろうか…。

竜三の妻である事が ふと不安で
恐ろしい おしんであった。