ドラマログテキストマイニング

テレビ番組(ドラマ)の字幕情報を対象に、テキストマイニングの研究をしておりますので、解析結果の公開をメインに関連グッズを交えた構成で記事にしてます。また、解析結果の信憑性が確認できるよう、解析用ソースも部分引用し掲載してあります。

浮世の画家 カズオ・イシグロの出世作 渡辺謙、広末涼子、前田亜季、寺田心… ドラマの原作・キャストなど…

土曜ドラマ浮世の画家」』のテキストマイニング結果(キーワード出現数ベスト20&ワードクラウド

  1. 先生
  2. 紀子
  3. 自分
  4. 一郎
  5. 黒田
  6. 画家
  7. 過去
  8. 斎藤
  9. 作品
  10. 小野
  11. お父様
  12. 弟子
  13. お前
  14. 縁談
  15. 節子
  16. 黒田君
  17. 太郎
  18. 黒田先生
  19. 松田
  20. 態度

f:id:dramalog:20190330224535p:plain

土曜ドラマ浮世の画家」』のEPG情報(出典)&解析用ソース(見逃した方はネタバレ注意)

 

解析用ソースを読めば、番組内容の簡易チェックくらいはできるかもしれませんが…、やはり番組の面白さは映像や音声がなければ味わえません。ためしに、人気のVOD(ビデオオンデマンド)サービスで、見逃し番組を探してみてはいかがでしょうか?

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土曜ドラマ浮世の画家」[解][字]

焼け跡から徐々に復興の姿を見せていく街の中、一人の老画家の人生を通し、人の心の弱さから生まれる「悲劇」、そして思い違いから生まれる「喜劇」

詳細情報
番組内容
2017年度ノーベル文学賞を受賞したカズオ・イシグロ出世作浮世の画家」の映像化。舞台は終戦後の日本。焼け跡から徐々に復興の姿を見せていく街の中、一人の老画家の人生を通し、人の心の弱さから生まれる「悲劇」、そして思い違いから生まれる「喜劇」。繊細で緻密な独特の世界観をスーパーハイビジョン映像で丁寧に描きだす。
出演者
【出演】渡辺謙広末涼子前田亜季寺田心中村蒼大東駿介萩原聖人和田正人渡辺大知,武田航平石黒英雄佐藤隆太秋山菜津子長谷川初範佐野史郎余貴美子小日向文世奥田瑛二
原作・脚本
【原作】カズオ・イシグロ,【脚本】藤本有紀
音楽
【音楽】三宅純

 

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(小野益次)よっ。

<私は今でも 週に3日か4日
散歩に出かける>

<人々は 一体どういう大金持ちが
こんな屋敷に住んでいるのかと

首をかしげることだろう>

<だが 私は決して金持ちではないし

戦前 金持ちだったというわけでもない>

<散歩の折は 必ず この橋に来る>

(自転車のベル)

<人々が 「ためらい橋」と呼んでいる
この小さな橋に>

<好きなのだ。
夕日が沈む頃の この辺りの風情が>

<そして 暗示を得ることが>

(女性)まあ きれいね~。

ああ~ なんとも美しい たそがれだね。

(一郎)おじいちゃん!
紀子叔母ちゃん! 来たよ!

(村上節子)一郎 お行儀よくしなさい。

こら こら 待て。

よ~しよし! うわ~!
(笑い声)

ほら!

一郎 走り回るんじゃありません。

(紀子)お姉様
やっと来てくれて助かったわ。

お父様ったら 隠居なさってから
とっても世話が焼けるの。

一日中ふさぎ込んでいて
家の中を うろうろするばかりだもの。

まあ 紀子ったら そんな…。

以前は あんなに暴君ぶりを発揮していた
お父様が

今じゃ すっかり穏やかで
飼い慣らされたって感じよ。

ハッ。 またバカなこと言ってるよ。

もうすぐ 私が お嫁に行ったら
どうするのかしら。

(一郎)おじいちゃ~ん!
もう疲れた ハハハハ。

一郎 ごはんの片づけを
手伝ってくれない?

女の仕事じゃないか。

あら。 叔母ちゃまのお願い
聞いてくれないの?

素一君は どうしてる?
仕事は順調なんだろうね?

ええ。 おかげさまで。
そうか それは よかった。

お父様。

それほど お話が進んでるんですか?
紀子の縁談。

ちっとも進んでないさ。

どうして
急に 打ち切りになったんでしょう。

1年前の お話。

そんなこと 今更ほじくり返しても無駄だ。

ごめんなさい。

ただ 素一さんが
去年のことを しつこく聞くんです。

素一君が?
ええ。

三宅家が なぜ あれほど 急に
手を引いたのかって。

それは 私にも相変わらず謎だ。

<節子には ああ言ったが

実は 私には
思い当たる節がないわけではない。

要するに 家柄の相違だ>

<縁談が まだ進行中の1年余り前

私は 当の縁談相手である
三宅二郎に 偶然会った>

何をしとるんだ 君は。
(三宅)すみません!

すみません お願いします! 乗ります!

どうも すみません。 どうぞ。

<三宅二郎は
他人から こき使われていることに

慣れきった若者という感じであった>

<その1週間ほどあとのことだ。

紀子との縁談を辞退したいという
意向を受けたのは>

<家柄のことなど 私は これっぽっちも
気にしていなかったのに。

実際 昔から ずっと

私自身の社会的な地位を
まともに意識したことなど

ただの一度もない>

<現在でも
誰かの ふとした言葉によって

ようやく 自分が
かなり高い地位にあることを

思い出す始末だ>

(マダム川上)先生 お友達の方々に

また ここへ飲みに来るよう
誘ってくださいな。

そしたら あの懐かしい時代を
再現できるんですから。

(信太郎)いいこと言ったね ママ。

先生 昔の殿様は 戦いのあと
家来が ちりぢりになると

あまり間を置かぬうちに
みんなを呼び戻したものですよ。

ハッハッハッハッ
なんと たわけたことを。

いえ 信太郎さんの言うとおりですよ
先生。

昔みたいに 画家のお仲間を
みんな引き連れて来てくださいな。

そうですとも 先生!

<弟子の一人 この信太郎は

今でも 私に惜しみない尊敬と
感謝の念を向けてくれている。

特に 10年以上も前の
私のささやかな行為を

今も忘れずにいるらしい>

この度は 弟の就職のために
ご尽力いただき

まことに ありがとうございます。
まあ 上がりたまえ。

いえ とんでもないことです 先生。

こうやって お宅に伺うだけで
かましいかぎりです。

ほら 良雄。

(良雄)このご恩は 一生忘れません。

先生のご推薦を 決して裏切らぬよう

全力を尽くして頑張ります!

いやいや 礼を言われるようなことは
何もしてないよ。

良雄 こんな寛大な有力者の
ご恩にあずかるなんて

俺たちは大変な幸せ者だぞ。

<忙しい人生の途中で

自分が どこまで進んできたかを
突然かいま見ることがある。

しかし 繰り返しになるが

私は自分の社会的地位を自覚したことなど
一度もない>

おじいちゃん!

おじいちゃんは 元有名な画家だったの?

有名な画家?

そう言えるかもしれんな。

パパは おじいちゃんのこと
元は有名な画家だったって言ってた。

素一君が?

でも やめなきゃなんなかったって。

おじいちゃんは引退したんだ 一郎。

ある歳になると 人は誰でも引退をする。

パパは言ってたよ。 おじいちゃんは
やめなきゃなんなかったって。

日本が戦争に負けたから。

おじいちゃんの絵は どこにあるの?

さて どこにあるか。
どっかに しまってあるはずだ。

僕 おじいちゃんの絵を見たい!

これは 怪物かい?
映画館の前で見たんだ。

いや~ うまいもんだ。

ご褒美に
明日 この映画 連れてってやろう。

ママと紀子叔母ちゃんは
怖くって 震え出すかもね!

火 吹いてる。
うん 火。

明日? 明日は行けないわよ。

え?
渡辺さんの奥様のところに お寄りするの。

是非 一郎に会いたいって
前々から おっしゃっていたのよ。

しかし せっかく 一郎が
楽しみにしてたんだ。

お父様の気持ちは とても うれしいの。

でも 映画は
あさってに延ばした方がいいと思うわ。

元気をお出し 一郎。

あさって行こう。
おじいちゃんが約束する。

一郎 何してる やめなさい やめなさい。

見せて…。

おじいちゃんの絵を見せてよ。

♬~

はあ…。

(男性)どうも ありがとうございました。

益次 まだ持ってきていないものが
あるのではないか?

1枚か2枚なら… あるかもしれません。

(父親)そして ここにない絵こそ

お前が一番 誇りにしてる作品に
違いない。

お母さんから 妙なことを聞いたぞ。

お前が絵を本職にしたがっていると。

絵描きどもは 人々を意志薄弱な貧乏人に
堕落させようとする

退廃的な世界に生きているんだ。

わしの言ってることは間違ってるか?

(母親)いえ おっしゃるとおりです。

ただ そういう誘惑に陥らぬ方も
おいででしょう。

(父親)無論
並外れた意志の強さを持った者が

一握りほどはいるだろう。

しかし うちの息子は
そういった人物とは大違いだ。

ああいう危険から息子を守ってやるのが

わしら 親の義務だろ。

♬~

益次。

家の中 どこか知らないけど焦げ臭いよ。

焦げ臭い…?

ものが焼けるにおいがするんだ。

お父さんは?

お父さんが あそこで何をしてようと
僕には関係ないさ。

お父さんが燃やすのに成功したのは
僕の野心だけだ。

それを聞いて安心したよ。

誤解しちゃ困るよ。

お父さんが火をつけたのは

僕の野心なんだ。

ごめんなさい 焦げ臭かったかしら。

いや いいんだ。

しかし 節子 何もお前まで 留守番に
つきあわなくても よかったんだよ。

お父様と お話しする機会が
あまりなかったから。

あの… 紀子の縁談のことなんですけど…。

何だい?

話が本格的に進み始めたら

お父様は慎重な手順を踏んだ方が
いいんじゃないかしら。

もちろん こちらは
慎重に事を運ぶつもりだ。

ごめんなさい
特に調査のことを言いたかったの。

もちろん 必要なかぎり
徹底的にするつもりだ。

ごめんなさい 言い方が曖昧だったわ。

私が言ってるのは
実は 相手側の調査なの。

すまないが どうも話についていけない。

ごめんなさい お父様。

ただ 誤解の余地を
すっかり封じておくのが

賢明だろうと思っただけなの。

何についての誤解かね?

過去についての。

ごめんなさい 本当に余計なことを言って。

<その時 突然 あの日の

三宅二郎との やり取りを 思い出した>

(三宅)今日 職場で
悲しい知らせがありました。

親会社の社長が亡くなったそうです。

それは お気の毒に。

正直に言いますと 自殺なのです。

まさか。

大社長は戦時中に 私たちを巻き込んだ
事業の いくつかに対して

明らかに責任を感じておられました。

そうですか。

それにしても いささか極端な話ですな。

時々思うんですが

本来なら命を捨てて謝罪すべきなのに

自分の責任を直視できない 卑劣な人間が
たくさんいるんじゃないでしょうか。

しかし 祖国のために忠誠心を持って
働いた人々を

全て戦争犯罪人
呼ぶわけにはいかんでしょう。

でも 我が国を誤った方向に
引きずり込んだ人々がいることは

確かです。
彼らが過ちを認めまいとするのは

それこそ 卑劣きわまる態度です。

(運転手)発車しま~す。

<「卑劣きわまる」。

三宅二郎は 本当に そういう言葉を
使ったのであろうか>

<何か混同しているかもしれない>

<そうだ 素一だ。

私の息子 賢治の葬式の場で

素一が その言葉を使ったはずだ>

♬~

素一君 どうかしたのかい?

(素一)いろいろなことを考えると
腹が立ってくるんです。

命が無駄に失われたことなど…。

まったくだ。

しかし 賢治は

ほかの多くの兵隊さんたちと同じように

名誉な戦死を遂げたんだ。

お父さん。

僕が腹を立てている本当の理由は何か
分かりますか?

さて?

賢ちゃんたちを戦地に駆り出して

名誉の戦死を遂げさせた者どもは
今は どこにいます?

昔と同じように のうのうと
暮らしているじゃありませんか。

勇敢な若者は
バカげた目的のために命を奪われ

本物の犯罪人は まだのうのうと生きてる。

自分の正体を見せることを恐れ

責任を認めることを恐れている。

僕らに言わせれば それこそ…

卑劣きわまる態度です。

(一郎)パパは言ってたよ。
おじいちゃんは有名な画家だったって。

でも やめなきゃなんなかったって。

日本が戦争に負けたから。

<私は 父の教えに背き 絵の道に進んだ>

(男性)おう 終わったぞ。

<武田工房は
輸出用の日本画を請け負っていた。

期日が迫ると 日夜を分かたず
描き続けるのが普通であった>

<同僚に カメさんというあだ名の
画家がいた>

(後藤)おい カメさん
先週描き始めた その花びらに

まだ色を塗ってるのか?

(カメさん)ア… アハハハ…。

(山田)いいかげんにしてくれよな。

(後藤)あんたのせいで
締め切りに遅れるところだぞ。

勘弁してください。 もっと早く描こうと
努力したんですが…。

どこを どう努力したっていうんだ?

すみません。 急いで描いたおかげで

お粗末な絵になってしまったんです。

お前 一生終わんねえぞ
こんなんだったらよ。

先週から変わってねえだろうが 全然。
すみません すみません…。

お前 この仕事 なめてんのか お前?
辞めちまえ お前。

もうたくさんだろ!

彼は芸術的な良心の持ち主だ。

もし どこかの画家が

早さのために質を犠牲にするのは
お断りだと言ったら

みんな その態度に敬意を表すだろう。

<その朝 私が正確に そう言ったと
断言するわけにはいかないが

カメさんの味方として
そういうふうなことを言ったことだけは

はっきりと覚えている>

実はね カメさん。

幸運にも 僕の作品は

あの高名な森山誠治画伯の
お目に留まった。

えっ!?

実を言うと 森山先生は

このまま ここにいると

僕の才能に 取り返しのつかない
傷がつくと おっしゃったうえ

弟子にならぬかと誘ってくださった。

そうですか。

運がよければ 君も弟子に
取り立てていただけるかもしれない。

えっ!?

でも… 特別に寛大な態度で
僕を受け入れてくださった武田工房に

そんな恩知らずなことはできません。

忠誠心というわけかい。

近頃 人々は あまりにも安易に
忠誠を口にして

目上の者に盲従するが…。

せめて 僕だけは
そんな生き方をしたくない。

(黒田)失礼ですが 先生
その工房は まるで

マッチ箱か何かの
工場みたいじゃありませんか。

おいおい 黒田。

<やがて画家として 地位を確立した私は

当時のことを弟子たちに繰り返し語った>

武田工房の経験は この私に

決して群衆に迎合してはならんという
教訓を与えてくれた。

君たちも 時勢に押し流されるな。

ここ最近 我々に忍び寄り

我が国民の精神を 甚だしく弱めてきた

あの いかがわしい
退廃的な気風に逆らうんだ。

(黒田)もちろんですとも 先生。

僕らは 今おっしゃったことを
心に銘記して

時勢に流されぬよう努力します。

なあ みんな。
(弟子たち)はい。

あ~ ついでやれ ついでやれ。
ハハハハッ。

(弟子たち)頂きます。

<黒田は 私の一番弟子だった。

誰よりも筋がよく
才気にあふれた黒田を

私は とりわけ かわいがっていた>

<えこひいきしていたと言っても
差し支えない>

(せきこみ)
ハッハッハッ!

最初から そんなに吸い込んじゃ駄目だ。

(笑い声)

<戦後 一度だけ黒田に会った。

ある朝 雨の中で

全く偶然に会ったのだ>

♬~

(怪獣のほえる声)

(小声で)つまんないや。

何か面白いことが始まったら
教えてくれない?

(怪獣のほえる声)

あ~ おかしい。
こんなもの 誰が怖がるんだろう。

偽の怪獣だってことぐらい
すぐ分かるよ!

ハッハッハッ よっ。

(斎藤)小野さんではありませんか。

斎藤先生。
(斎藤)どうも。

どうも こんなところで 奇遇ですな。

いや まったく。 お孫さんですか?
ええ。

お名前は?
村上一郎

映画 面白かったかい?

今までで一番いい映画だったな。

そうか ハハハハハッ。

<斎藤博士と私の会話は
やや ぎこちなく始まった。

というのも 実は 現在進行中の
紀子の縁談の相手というのは

この美術評論家斎藤博士の
長男なのである>

そうだ 小野さん。
黒田さんと お知り合いだそうですな。

黒田さん。

ああ それは
以前 私が指導していた人物でしょう。

(斎藤)せんだって
初めて お会いしたのですが

その時 たまたま お名前が出ましてね。

黒田君は
私のことを覚えていてくれたんですね。

ハハッ 義理堅い お人だ。

(斎藤)新設の上町大学に
就職が決まったそうです。

美術教師として。

お会いしたのも そのためです。
大学側から助言を求められまして。

これからは 何度もお会いできるはずです。

先生に お目にかかったことを
お伝えしておきましょう。

それは 是非。

一郎 橋占をしようか。

はしうら?

橋の上でする占いだから 橋占だ。

おじいちゃんは 時々 ここで
ぼんやり考え事をする。

目を閉じると 通りすがりの人の声が
耳に飛び込んでくる。

「お~ なるほど」っていうような答えを
くれるんだよ。

それが 橋占?

一郎は近頃 考えてること あるかい?

紀子叔母ちゃんが 絵を見せてくれない。

おじいちゃんの絵を見せてって
頼んだのに

何で見せてくれないんだろ。

(女子)ずる~い!
(男子)や~い やるもんか!

(女子)お兄ちゃん ずる~い!

そうか。 叔母ちゃんは ずるいんだ。

(笑い声)

そうかもな 一郎。

紀子叔母ちゃんは ずるいぞ~!
ハハハハハハ。

ずるい! おじいちゃん!

何? 一郎。 さっきから人の顔見て
くすくす笑って。

そういえば 今日 映画館の前で
斎藤さんに会ったよ。

いや 別に 大した話をしたわけではない。

何を お話されたんですか?

ただの世間話だ。

斎藤さんは
私の昔の弟子に会われたそうだ。

ほかでもない 黒田君だ。

黒田君は 新設の大学に採用されるらしい。

<私が目を上げる直前

2人が目くばせを交わしていたのは
明らかだった>

(時報)

(節子と紀子の笑い声)

(物音)

(物音)

一郎よ。
寝つけないと いつも ああなの。

あんな映画に連れていくからよ。

バカな。 一郎は喜んでたよ。

お父様ったら ご自分が見たかっただけよ。

お父様。

近いうちに 黒田さんのお宅を
訪ねた方がいいんじゃないかしら。

お宅を訪ねる?

黒田さんの。 できれば ほかにも何人か
そういった 昔のお知り合いのお宅を。

どういうことか よく分からんのだが。

ごめんなさい。
お父様が 昔のお知り合いの何人かと

お話がしたいんじゃないかと
思っただけなの。

つまり 斎藤先生の側の人たちが
その方々と会う前に。

だって 無用の誤解が生じるのは
嫌ですもの。

ああ そりゃそうさ。

♬~

おい。

何か焦げ臭くないか?

えっ?

いいえ 台所の火は 全て落としました。

(汽笛)

♬~

(松田知州)久しぶりだな。

松田 すこぶる元気そうじゃないか。

(笑い声)

<松田に初めて会ったのは
森山誠治の別荘に住んでいた頃である>

<カメさんと私は 武田工房を去ると

すぐ その新しい師匠の別荘で
暮らすことになった>

(女性)ほらほら こぼす こぼす。 もう!

はあ? 何で俺には ついでくれねえんだ。
いいから いいから ほら 危ない 危ない。

もう~! 私 この人が 絵描いてるとこ
見たことない。

私も。
ね~! 何しに来てるの? ここに。

(笑い声)

(佐々木)小野
君と話したいという人が来てるよ。

はい。

小野さん?
ええ。

何か ご用ですか?

僕の名は 松田知州。

岡田美術協会に勤めています。
はあ。

僕は あなたの絵から
大きな感銘を受けました。

それは光栄です。

でも 僕が今日あるのは

明らかに森山先生の
優れた ご指導のおかげです。

分かってほしいな~。

僕は根っからの美術愛好家なんだ。

たまに僕の心を
本当に揺さぶる逸材に出くわすと

是非 なんとかしてあげたいと思うんだな。

道子さんは 気の毒だったな。

あれは 気まぐれな焼夷弾だった。

あ いや…
ひどいことを思い出させてしまった。

すまん すまん。
いいんだ。

実は…。

君の助けを借りたいと思って
やって来たんだ。

お~ 構わんさ。

どうせ 俺なんか
金を残す子どももいないしな。

ハッハッハッハッハッ。

ちっとも変わらないな。

下の娘の紀子に
今 縁談が持ち上がってるんだ。

そうなのか あの紀ちゃんに。 はあ~。

ただ…

紀子には 去年
別の縁談を進めていたんだが

最後のところで立ち消えになった。

その間 誰か紀子のことで
君に近づいた者は いなかったか?

いや。

今年は
ここに誰か 訪ねてくるかもしれない。

そうか。

いずれにせよ 君については
最善のことしか話さない。

恩に着るよ。

今度の話は すこぶるデリケートでね。

ここに どんな調べが来ても

ごく慎重に答えてもらえると ありがたい。

つまり…

過去に関しては…。

君の過去についても

最善のことしか話しようがない。

しかし
紀ちゃんのことを案じているなら

まずは黒田を捜すのが一番だ。

♬~

<黒田の住所を調べるのは
ちっとも難しいことではなかった。

しかし すぐに訪ねる気にはなれなかった>

<そうこうしているうちに

紀子の見合いの日取りも
決まってしまった>

(呼び鈴)

♬~

ご報告が遅れて 申し訳ありません。

実は いくつかの新設高校に
採用願を出したんです。

そうなのか。 それで有望なのかね?

はい。 東町高校という学校が

かなり好意的な反応を
示してくれています。

そうかそうか そりゃ よかった。

ただ先生 認容審議会は

まだ少し検討の余地があると
言ってるらしいんです。

過去の… 小さな問題に関して。

過去の?

実は先生
審議会宛に 一筆書いていただけると

大変ありがたいのですが。
どういうことだね?

あ いや…。

先生。 ずっと前に
先生と意見が分かれましたね。

シナ事変中の私の作品のことで。

君と言い争ったなんて 覚えがないな。

私が無礼千万にも
先生のご助言に抵抗したんです。

それが
今の何と関わっていると言うんだね?

すみません 先生。

実は ちょっと
重要な問題になってしまったんです。

何と言っても…

占領軍当局を納得させなければ…。

あの当時 私たちの絵画塾が
進もうとした方向に対して

私は大きな疑問を抱いていたと言っても
過言ではないと思います。

先生のご指示に
最終的には従ったとはいえ…。

(信太郎)
その前には疑問を持っただけでなく

あえて先生に
私の考えを申し上げたのです。

審議会に手紙を書いて

君が私の影響を受けてない
ということを伝えてほしい。

頼みというのは…

要するに そういうことだ。

それは誤解です。

私は 先生のお名前に連なったことを

今も昔と同じく 誇りにしています。

ただ…。
信太郎。

なぜ過去を直視しない。

今の世間が どう思おうと

君までが自分を偽る必要はないだろう。

審議会会長の お名前と
ご住所を書いておきました。

お差し支えなければ
ここに置かせていただきます。

失礼いたします。

(ドアの開閉音)

<私は 黒田を訪ねる決意をした>

≪(円地)は~い!

(円地)あっ 失礼しました。

どうぞ。

紛れもなく黒田さんの画風だね。

(円地)ハハッ 先生のレベルには
及びもつきません。

黒田さんの作品ではないと?

ええ。 私の習作にすぎません。

ほう あなたの。
ハハッ。

大した才能をお持ちだ。

筆の勢いが 黒田さんそのものだ。
ハッハッハ。

黒田先生から どれほどのおかげを
被っているか

とても 口では言い表せません。

ご覧のとおり 先生のお宅に
下宿まで させていただいています。

前の下宿から追い払われたのを
先生が助けてくださったのです。

下宿から追い払われたって?

いくら気を付けていても
絵の具を畳に散らしてしまって。

とうとう おばさんから
追い立てを食らったんです。

ハハハハ! ああ 失敬失敬。

私も初心者の頃 そっくりの問題に
ぶつかったことを思い出してね。

ああ。

しかし 辛抱していれば
今にいい条件で制作ができるようになる。

私が保証しますよ。
アハハ。 ハハハ。

黒田先生は
間もなく お帰りだと存じます。

お世話になったお礼を
申し上げる機会を得て

お喜びになるでしょう。

黒田さんが 私に礼を言いたい。
そう思うの?

えっ すみません。
コードン協会の方とお見受けしましたが。

コードン協会?
失礼だが それは何ですか。

失礼ですが
お名前を伺ってもよろしいでしょうか?

こりゃ すまない。
無礼なやつだと思ったでしょう。

私は 小野と申します。

そうですか。

ああ あっ…。

あまり お引き止めして
先のご用に差し支えてもいけませんよね。

まあ せっかくだから もうしばらく
待たせていただくことにしよう。

ご来訪のことは
先生にお伝えしておきますので。

こんなことを言っては悪いが

十分な事情を知らない事柄に関して

早急な結論は
出さないようにお願いしたい。

ハッ… 十分な事情?

失礼ですが あなたご自身
十分な事情を ご存じなんですか?

先生が どんな苦しみを味わわれたか
ご存じですか?

世の中のことは大抵
見かけより複雑なんだよ。

ハッ… 率直に言って
あなたのずぶとさには あきれました。

まるで 先生の親しい話し相手のような
顔をして ここに来るなんて。

しかし 私は
親しい話し相手として伺った。

小野さん。 十分な事情を知らないのは
明らかに あなたの方ですよ!

あなたは 黒田先生の脚のことを
全然知らないんでしょう。 きっと。

ものすごい痛みなのに

ご都合主義の看守どもは
その傷についての報告を わざと忘れた!

連中は 先生の脚の傷を
ちゃんと覚えていながら

何度も 何度も
殴る蹴るの乱暴を繰り返したんです。

「この国賊め!」。

先生を そう呼んだんですよ 連中は。

国賊と!

しかし 今 誰が本物の国賊
みんな 知っていますよ。

誰が本物の国賊

みんな ちゃんと知っていますよ!

(円地)誰が本物の国賊
みんな 知っていますよ。

誰が本物の国賊

みんな ちゃんと知っていますよ。

<私は できるかぎり
慎重な手順を踏む努力をした>

<しかし 目的を完全には果たせないまま

見合いの日を
迎えることになってしまった>

♬~

(斎藤夫人)紀子さん
ピアノがお好きと伺いましたけど。

お稽古が足りなくて…。
私も 今はさっぱり。

女には趣味を楽しむ時間なんて
ほとんど与えられていない。

そう思いません?
本当に。

母は 年中 僕のことを
音痴だと言って責めるんですよ。

(斎藤夫人)まあ いいかげんなことを。
(太郎)ハハハ。

<見合い相手の太郎は 知的で気品があり
責任感も強そうで

一目 見た時から 好印象を抱いた>

紀子さん。

ブラームスは お好きですか?

ブラームス
ええ。 それは もう 大好きです。

ほら。
でも 紀子さん…。

<しかし 次男の満男には
あまり いい印象を受けなかった>

(斎藤夫人)そ~ら…。

(斎藤)今日 また デモがあったようです。
昼過ぎ 電車に乗っていましたら

額に大きな傷を負った男が乗り込んで
すぐ隣に座りました。

「大丈夫か」と尋ねますと
「今 病院に行ってきたばかりだが

また すぐ仲間のところに戻るんだ」と
答えました。

いかがです? 小野先生。
こういう光景をご覧になったら。

ああ 多くの人が傷つくのは
全くもって 残念です。

<突然 一つの考えがひらめいた。

実は 斎藤家の人々は
皆 私を糾弾したいと思っているのに

満男だけが不器用だから 本心を
さらけ出してしまったのではないかと>

それは健康なものだと
そう お考えになりませんか? 小野先生。

うん まったく。

これ以上
犠牲者は出てほしくないものです。

(斎藤夫人)あなた これは この席に
ふさわしい話題と言えますかしら?

ん?
(太郎)そうですよ。
紀子さんに あきれられてしまいますよ。

(斎藤)アッハハ… そりゃ失敬。

先生 この次男の満男ですが

今 上町大学の学生でしてね

ご承知のとおり
黒田さんが教えておられる大学です。

そうですか。 では

黒田先生のことは
よく ご存じなわけだ。

よくは知りません。

小野先生は かつて
黒田先生と近しい間柄だった。

そのことは知っていたかね?

ええ。 聞いたことがあります。

(太郎)ねえ 紀子さん。

両親は ピアノの調律を
一度も頼んだことがないんです。

僕は昔から 毎日 毎日

母が 音程の狂ったピアノで練習するのを
いやおうなしに…。

きっと黒田先生から
私のことを 聞き及びでしょう。

僕は 黒田先生を
よく存じ上げないものですから。

(斎藤)私の知るかぎり 黒田さんは
小野先生のことを よく覚えておられます。

黒田君は 私のことを
高く買ってはおらんでしょうが…。

(斎藤夫人)それどころか 小野様を
一番尊敬しておられると思いますよ。

奥さん。

かつての私が
世の中に悪影響を及ぼしていると

信じている者もいるのです。

恐らく 黒田君も
そういった見解の持ち主かと思います。

(斎藤)そうですか。
そうなんです。

そして 現在の私は
そういった意見の妥当性を認めるのに

やぶさかではありません。

(斎藤)ご自分に対して つらく
あたり過ぎているように見えますが。

我が国に生じた
あの恐ろしい事態に関して

私自身 多くの過ちを犯してきたことを
率直に認めます。

国民に対し
筆舌に尽くし難い あの一連の

苦悩をもたらした社会的影響力に

私も加担していたことを
否定いたしません。

(斎藤)ご自分の芸術活動に不満だと
おっしゃるのですか?

自分の絵にも。 教育の仕事にも。

私は素直に そのことを認めます。

ただ 今 言えることは

当時の私は 信念を持って行動し

日本国民のお役に立つことをしていると
心から信じていたということです。

しかし 現在は ご覧のとおり

自分が間違っていたことを
躊躇なく認めます。

(せきばらい)

それでは ご自分に対して
あまりにも厳しすぎますよ。

どうなんです? 紀子さん。

お父様は いつも ご自分に対して
こんなに厳しい方なんですか?

ちっとも厳しくなんかありません。

私の方で
父に厳しくする必要があるんです。

さもないと 朝食に間に合う時間には
決して起きてこないんですから。

(太郎)えっ。 ハハハハッ!

うちの父も 朝寝坊でしてね

若い者と違って 年寄りは
宵っ張りの早起きだと言われていますが

我が家は全くそんなことないです。

(紀子)ずれているのは父親だけですわ
きっと。

(太郎と紀子の笑い声)

(斎藤)なかなか やりますな。
ご両人で 我々を…。

<両家の会合は この時を境にして
順調なものになったというのが

私の偽らざる実感である>

(太郎)どうぞ 肉が冷めないうちに…。

<過去の責任を取ることは
必ずしも容易なことではない>

ふう~…。

<しかし 自分の過ちを認められない。
あるいは

認めたくないという方が
よほど恥ずかしいことに違いない>

はあ…。 ふう~…。

どうかなさったの? 先生。

何だか 一仕事 終えたって顔よ。

はあ…。
(マダム川上)はい。

ふう…。

<紀子の縁談は 無事に まとまった>

節子 お前には感謝してるよ。

去年 注意してくれたろう。
「慎重な手順を」って。

私は その忠告を無視しなかった。

ごめんなさい お父様。 忠告って?

もう そんなに警戒する必要はないだろう。

今の私は 過去にいくつか
自慢できない部分があったことを

ちゃんと認める覚悟はできてるんだ。

悪いけど おっしゃることが
のみ込めないの。

見合いの場で
私は 紀子の幸せが

私の過去の経歴によって妨げられないよう
しっかりと手を打った。

紀子も斎藤家の皆さんも
あの日のお父様の態度には

すっかり面食らったらしいわ。

どういう意味で ああいうことを
おっしゃったのかって。

はあ… いいかね。

斎藤博士は 著名な美術評論家として
長年 私の仕事を見てこられ

私の最も遺憾な部分を
よく ご存じのはずだ。

だからこそ 私の態度表明を
高く評価してくださり

事は順調に運んだんだよ。

ごめんなさい。 こんなことを言って。

でも 太郎さんのお話だと

斎藤先生は お父様の経歴を
よく ご存じなかったみたい。

お父様が美術界に関係してることさえ
全然気付いておられなかったらしいわ。

<なぜ 節子が そんなことを言うのか
分からなかった>

<紀子の縁談のために
私は節子の忠告に従い

苦痛に耐えて 過去の過ちを認めた。

それなのに なぜ節子は
私の行いをたたえようとしないのか>

お父様 どうなさったの?

節子。

絵は どこに しまったんだったかな。

絵って 誰の絵ですか?

もちろん 私の絵だよ。

♬~

<一体 節子は
何を隠しているのだろう?

何があったというのか… 私の絵に。

私の過去に…。

私が 人生を懸けて
追い求めてきたものに>

この女が
きりっとして見えるのは

この独特の視点のおかげだ。

恐らく先生は

「物事をいつでも
お決まりのつまらぬアングルから

見る必要はない」と言っておられる。

この絵が 特に我々の心を打つのは
そのためだろう。

<私の師匠だったモリさんは

西洋の画風を取り入れた
新しい日本画を提唱し

「現代の歌麿」と呼ばれていた>

♬~

<我々は 長い年月
モリさんの価値観や生活様式に従い

大いに時間を費やして
「浮世」 我々全員の絵の背景を成す

夜の歓楽と酒の世界を探訪した>

♬~

(森山)小野。

先生… 近頃
疑問を感じることがあるのです。

(森山)何だね。 言ってみなさい。

私たち芸術家は…

こういう場所で…
ああいう方々と

これほど時間をかけて
つきあうべきなのかと。

(森山)画家が なんとか
捉えることのできる

最も微妙で
最も繊細な美は

夕闇が訪れたあとの
こういう 妓楼の中に漂っている。

そして こんな晩には
そういう美が多少とも流れ込むんだ。

そんなに はかなくて つかみどころの
ないものを美化するために

才能や技術を用いるなんて
全て浪費であり

デカダン趣味とさえ言えると
かつてのわしも そう考えていた。

しかし わしは…
そういう疑問をすっかり捨てた。

歳を取ってから振り返り
自分の生涯は

そういう世界のユニークな美しさを
把握するために

ささげられたと自覚できたならば

人生を無駄に過ごしたとは
決して思わないだろう。

<私は モリさんを敬愛していた>

<そのことに疑いの余地はない。

その証拠に
私は モリさんの口調までも受け継ぎ

弟子たちに 考えを言い聞かせる時は
独特の口調で…>

おじいちゃん
アイスクリームも食べていい?

ああ もちろんだ。

今頃 ママと紀子おばちゃんは女同士
あれやこれや買い物してるだろう。

俺たちも男同士
うんと楽しもう。

フフッ…。
フッフッフッ…。

(一郎)おじいちゃん
なぐちゆうじろうって人 知ってる?

なぐち… ああ それは

那口幸雄のことだろう。 知ってるよ。

でも知り合いじゃない。 どうしてだ?

(一郎)昨日 ママたちが話してた。

何を言ってたんだい?

那口さんって…
おじいちゃんみたいな人?

ママが そう言ってたのかい?

おじいちゃん。
那口さんは…

何で自殺したの?

悪い人だったの?
いや 悪い人じゃない。

那口さんが作った歌は 日本中で
学生にも 兵隊さんにも

酒場でも歌われてた。

ところが 戦争が終わったあと…。

う~ん… 何て言うか
那口さんは 自分の作った歌は

一種の間違いだと思うようになった。

あの人は…
自分の犯した過ちを素直に認めた。

勇気ある立派な人だ。

さあ お食べ。

<那口幸雄は自殺した。
自分の作った歌を悔いて。

私は 本当に
向き合っているのだろうか?

過去の過ちに>

♬「岩をも砕く ますらおの」

♬「勝ちどきの声 高らかに」

(赤ちゃんの泣き声)

(せきこみ)

このところ
貧乏人は増える一方だぞ 小野。

こんな所に住むしかなくなった連中が
大勢いる。

ひどい話だ。
なんとかしてやりたい。

ハッ… 善意の感傷だな。
誰もが口では そう言う。

僕は ほんとに…。

(せきこみ)
ハッハハハッ…。

政治家や実業家たちは

こういった所には
ほとんど目を向けない。

せいぜい 安全な距離を置いて
遠くから眺めているだけだ。

画家だって同じことだろう?

松田!

松田!

(男の子)もう死んだかな?

あっ 動いた。
まだ生きてるぞ。

ほんとだ。

行こうぜ。
あっ 待ってよ!

あっ 待ってよ…。
待ってよ。

あんなことでもするほか
楽しみがないんだな…。

君の計画…。

あれは えらく感動的だが

君ら 画家特有の無知さ加減を
見事に さらけ出している。

絵で稼いだ小銭袋 持って
貧困地区へ行き

出くわす貧乏人に
一銭ずつ くれてやるつもりか?

いや 僕たちだけのグループで
やるとは言っていない。

もっと多くの画家の協力を得て
大規模な展覧会を定期的に開けば

貧しい人々をかなり救えるだろう。

残念だが…
やっぱり 君たち画家は

どうしようもないほどに
世間知らずだ。

世界についての君の知識は
子ども並みだ。 例えば 君は…

カール・マルクス
何者であったかも知るまい。

バカ言っちゃいけない。

カール・マルクスくらい
無論 知ってるさ。

ほう! こりゃ失敬した。

では是非 話してほしいね。
マルクスについて。

マルクスは…
ロシア革命を指導したはずだ。

では レーニンはどうだ?
確か マルクスの副官だったと思う。

何らかの意味で
マルクスの同僚だった。

本当に無知なのは 君の方だ。

芸術家の関心は どこであろうと
見つけた美を捉えることにある。

小野…。

今や 我々の手で
日本を 英国やフランスに劣らぬ

大帝国にすべき時が来ている。

我が国には そうするだけの
十分な手だてがあると

俺は そう思っている。

だが その意志が…
まだ見えてこないんだ。

いいかい?
俺は よかれかしと思って

言っているんだよ。

こんな時に
君のような並外れた才能の持ち主が

退廃的な絵ばかり描いていて
いいのかな?

♬~

小野さん その絵は
あんたのお遊びかい?

はあ…。

とんでもない。
決して遊びなんてものじゃない。

先生は この絵のこと ご存じなの?

いや しかし
いずれ お見せしてもいいと思っている。

これからは ずっと こういうやり方で
描くつもりだ。

小野さん あんたは裏切り者だ。

♬~

<「獨善」。

「ソレデモ若者ハ
自己ノ尊嚴ヲ
守ル爲ニ

戦フ覺悟ヲ
決メテイル」>

♬~

<私は 既に 勢いよく湧き起こっている
私のアイデア

もはや隠してはおけないことを悟った>

先生 実は おととい

僕の作品の一部が
なくなっているのに気付いたのです。

(森山)絵は 今 わしの手元にある。

そうですか。

安心しました。

僕なんかの作品に関心を持っていただいて
ほんとに感謝しております。

いや 関心を持つのは ごく当たり前だ。

お前は 弟子の中でも技量抜群だからな。

わしは 長い年月 手塩にかけて
お前の才能を育ててきたのだ。

全くです。 先生。

どれほど おかげを
被っているか知れません。

作品を見て少々驚いた。

随分 不思議な道を探っているようだな。

絵が無事で喜んでおります。

でも 僕は 以前の作品よりも

むしろ最近の作品の方を
誇りにしています。

今 預かっている絵のほかに

最近完成した作品が 1つ 2つ
あるという話だが。

かもしれません。

別にしまっておいたのが
1枚か2枚 ありましたから。

別荘に帰ったら
その絵を持ってきてくれるだろうな。

残念ですが 先生

残りの絵は見つかりそうにありません。

ふう~。

先生。

現在のような苦難の時代にあって

芸術に携わる者は

夜明けの光と共に あえなく消えてしまう
享楽的なものよりも

もっと実体のあるものを尊重するよう
頭を切り替えるべきだというのが

僕の信念です。

僕の良心は 僕がいつまでも
浮世の画家でいることを許さないのです。

♬~

最近の絵を見て 少々驚いたよ 黒田。

随分 不思議な道を探っているようだな。

先生 自分では最近の作品が

一番 出来がいいように
感じてるんですが。

私は 弟子の中で特にお前を
高く買っている。

だからこそ 惜しみなく
全てを与えてきたんだよ。

<あれは… そう… あれは…
寒い冬の朝だった>

何の用だ?
黒田君は どこですか?

私は 小野益次。

画家でして
内務省文化審議会の一員です。

それに 非国民活動統制委員会の
顧問にも任命されている。

あなた方が ここに来られたのは
ほかでもない

私が提供した情報のせいです。

その件で何か誤解があった…。
(刑事)小野先生ですね。

はい。

黒田君は どこですか?

(刑事)取り調べのために 連行しました。

(炎の音)

こんなことになろうとは。

私は ただ 委員会に
誰かを派遣して注意をしてもらったら

黒田君のためになるだろう
そう 助言しただけなのに。

(炎の音)

焼き捨てる必要など まるでなかった。

この中には
優秀な作品も たくさんあったんです。

(炎の音)

先生。

もう あなたの出る幕ではありません。

ご心配になっておられる
黒田氏については

不当な扱いのないよう
配慮します。 フフ。

コホッ。 くせえ絵は
くせえ煙を吐きやがる。 ああ。

(炎の音)

<私は信念に従って生きてきた。
ただそれだけだ>

<私が師匠に背いたとか
弟子を傷つけたとか

そういった理由で
糾弾しようとする人がいるかもしれない>

<だが それは とんだお門違いだ>

<そうしなければ
成し得なかったことがある>

<そうしなければ
見られなかった景色がある>

<私は確信している。

何かを失ってでも
私が追い求めてきたものには

間違いなく価値が>

(素一)本物の犯罪人は
まだ のうのうと生きてる。

自分の正体を見せることを恐れ

責任を認めることを恐れている。

僕らに言わせれば それこそ…

卑劣きわまる態度です。

(炎の音)

<ものが焦げる においがすると
今でも不安になる>

<だが このごろ
ものが焦げる においといえば

大抵は 誰かが
庭掃除をしている証しにすぎない>

紀ちゃんは 幸せに暮らしてるかね。

万事順調でね
春には出産の予定らしい。

ほう~ 春には孫が。

いや~ そりゃ 楽しみだな。
ハハハハ…。

実を言うと…。

長女のところにも
もうすぐ2人目が生まれる。

おお。 それは それは。

いや 孫が2人増えるわけだ。
ハハハハハ…。

はあ~。

なあ 小野。

君や俺みたいなのが 昔やったことを
問題にする人間なんぞ

どこにもおらん。

みんな俺たちを見て

つえにすがった
2人の老人としか思わんさ。

ああ。 フフフ。 ああ…。

自分たちのことを
不当に非難する必要はない。

少なくとも 俺たちは
信念に従って行動し

全力を尽くして 事に当たった。

<その ひとつきほどあとに 松田は死んだ>

<松田とは よくけんかをしたけれども

人生に対する我々2人の態度は
共通していた>

<松田は言った。

「少なくとも俺たちは
信念に従って行動し

全力を尽くして事に当たった」と。

たとえ後年に至って
自分の過去の業績を

どう再評価することになろうとも>

次行こ 次行こ。

こっち?
行きますか~。

えっ どこどこ?

(サラリーマンたち)アハハハ…。
フッ。

<今となっては ただ
あの若者たちの前途に

祝福あれと心から祈るだけである>

<あの若者たちの前途に…。

祝福あれと…>

<心から…>

(一郎)おじいちゃ~ん。

おじいちゃ~ん。

ハッハハハ…。

フフフ。
ハハハハハ。

あ~ 重い重い重い。

ハハ…。

♬~