ドラマログテキストマイニング

テレビ番組(ドラマ)の字幕情報を対象に、テキストマイニングの研究をしておりますので、解析結果の公開をメインに関連グッズを交えた構成で記事にしてます。また、解析結果の信憑性が確認できるよう、解析用ソースも部分引用し掲載してあります。

満島ひかり×江戸川乱歩 宮藤官九郎、猫田直、岩井勇気、嶋田久作… ドラマの原作・キャストなど…

満島ひかり×江戸川乱歩 宮藤官九郎、猫田直、岩井勇気嶋田久作…』のテキストマイニング結果(キーワード出現数BEST10&ワードクラウド

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満島ひかり×江戸川乱歩 宮藤官九郎、猫田直、岩井勇気嶋田久作…』の解析用ソース(見逃した方はネタバレ注意)&EPG情報(出典)

 

解析用ソースを読めば、番組内容の簡易チェックくらいはできるかもしれませんが…、やはり番組の面白さは映像や音声がなければ味わえません。ためしに、人気のVOD(ビデオオンデマンド)サービスで、見逃し番組を探してみてはいかがでしょうか?

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満島ひかり×江戸川乱歩[字]

江戸川乱歩の3つの傑作短編を映像化。悪女が成功させる完全犯罪「お勢登場」。算盤を使った暗号「算盤が恋を語る話」。夫の浮気相手の正体は?「人でなしの恋」。

詳細情報
番組内容
エロスと幻想が交錯する独特の作風で“日本ミステリーの父”とよばれる江戸川乱歩。初期の傑作短編から「お勢登場」「算盤が恋を語る話」「人でなしの恋」を、気鋭のクリエイターがほぼ原作に忠実に映像化。ヒロインを満島ひかりが演じる。完全犯罪を成功させる妖艶な悪女。内気な男から算盤の暗号で恋を告白される事務員。夫の浮気に悩み相手の正体を突き止めようとする若妻…。「由々しき恋心」と、その衝撃的な結末とは?
出演者
【出演】満島ひかり宮藤官九郎,猫田直,岩井勇気嶋田久作高良健吾,【語り】久保田祐佳

 


♬~

(蓋を開く音)

♬~

♬~ (蓋をしめる音)

♬~

♬~

♬~

♬~

♬~

♬~ (せき)

♬~

♬~

♬~ (息を吹きかける音)

♬~

♬~ (ひっぱたく音)

♬~

あの~

お昼の用意が出来ましたのですが。

(格太郎)もう そんな時分かい。

じゃ 坊やを呼んで来るといい。

♬~

♬~

<格太郎の仏心に引きかえて…>

♬~

(女中)おじいさまの所へ
いらっしゃいましたの。

♬~

(正一)フン。

<と いったのであった>

パパ お友達を呼んで来てもいい。
ああ 呼んで来てもいいがね…。

嬉しい 嬉しい 嬉しい。

<と叫びながら 表へ飛び出して行った>

おとなしく遊ぶんだよ。

♬~

(子供たちの声)

♬~

(子供)おじさんがいらあ。

べー。

ここへ隠れるんだ。

♬~

♬~

坊や パパが面白いお噺をして上げるから
皆 呼んどいで。

やあ 嬉しい 嬉しい 嬉しい
嬉しい 嬉しい 嬉しい 嬉しい。

♬~

パパはね とてもお噺が上手なんだよ。

さア お噺しとくれ。

恐いお噺が いいんだよ。

昔 或る国に
慾の深い王様があったのだよ…。

♬~

<彼は 二つ三つと
お噺の数を重ねて行った>

おしまい。
(子供たち)もっと もっと もっと。

<そうして 彼は上機嫌になって>

お噺は よして
今度は 隠れん坊をして遊ぼうか。

(正一)ウン…

ここの家じゅうで隠れるんだよ。
いいかい。

(子供たち)うん。

さあ ジャンケンポン!

≪(子供)もういいかい。
まあだだよ

もういいよ。

≪(子供)めーっけた。
正一ちゃんも めっけた。

≪(子供)おじさん どこへ隠れたんだろう。

≪(子供)おじさん もう出ておいでよ。

≪(正一)パパは きっと
押入れの中にいるよ。

おじさん めっけた。

あらッ いないよ。

だって さっき 音がしていたよ。

きっと 鼠だよ。
おばけだあ!

(子供たち)ワーッ。

♬~

≪(子供)つまんないなあ
表へ行って遊ばない。

≪(正一)パパちゃん!

♬~

<格太郎は 飛び出して

じれきった子供たちを
ウンと驚かせてやろうと勢い込んで

長持の蓋を 持ち上げようとすると

どうしたことか ビクとも動かない。

何度も押し試みていた>

♬~

[ 回想 ] ≪(正一)パパは きっと
押し入れの中にいるよ。

♬~

(掛け金がかかる音)

正一! 正一!

<彼は大声を上げながら
ガタガタと蓋の裏を叩いて見た。

だが なんの答えもない>

女中! 女中!

♬~ (せき)

♬~

女中! 女中… 女中…。

♬~

正一! 女中… 正一!

≪(格太郎)女中! 正一!

♬~

♬~ はっけよい 残った 残った

♬~ 残った 残った 残った 残った…。

♬~

♬~ (時計が鳴る音)

♬~

(引っかく音)

<まだ救いの来ることを一縷の望みに
死をあきらめかねていた彼の身の上は

云おうようもない残酷なものであった。

それは どのような業病 或いは
死刑囚さえもが味わったことのない

大苦痛と云わねばならなかった>

♬~

<今日こそ破綻が来たのではないかと
心臓が躍り出すのだった>

(おせい)只今。

<誰も出迎えなかった>

♬~

只今。 誰も いないのかい。

(女中)ハイ ハイ…。

旦那さまは。
お部屋でございましょう。

お前 昼寝をしていたんでしょう。
困るじゃないか。 坊やは。

さいぜんまで
お家で遊んでいらしったのですが

あ 旦那さまもご一緒で 隠れん坊を
なすっていたのでございますよ。

まあ 旦那さまが?
じゃ 旦那さまも きっと表なのだよ。

お前 探しといで。

≪(引っかく音)

≪(格太郎)助けてくれ。

(格太郎)助けてくれ。

まあ あなた そんな長持の中に
いったい どうなすったんですの。

(格太郎)助けてくれ…。

ああ 隠れん坊を
なすっていたのですね。

でも どうして これが
かかってしまったのでしょう。

<ところが その時>

(蓋をしめる音)

(格太郎)助けて。

♬~

(ふすまをしめる音)

♬~

♬~ (うなり声)

♬~

♬~

大丈夫かしら。
あんなことをして大丈夫かしら。

大丈夫かしら。
あんなことして大丈夫かしら。

大丈夫かしら 大丈夫かしら…。

♬~

♬~

[ 心の声 ] 大丈夫。

え。

[ 心の声 ] 大丈夫。

大丈夫 大丈夫。

♬~

≪(格太郎)助けて。

大丈夫 大丈夫。

(女中の泣き声)

ハイ 旦那さまは
隠れん坊をなすっていたのでございます。

恐らく蓋をしめた時 金具が偶然おち

錠前をおろしたのと同じ形に
なってしまったんだろう。

(蓋を開く音)

ヒッ。

ハッ…。

<電燈が 醜くゆがんだ
格太郎の苦悶の姿を照らし出した>

♬~

旦那様 旦那様…。

♬~

<彼女自身でさえ どうしてこうも
落ちつくことが出来たのか

不思議に思うほどであった>

旦那様 旦那様。

♬~

♬~ ウッ…。

♬~

♬~ アッ…。

♬~

♬~ アッ! …アァ。

♬~

♬~ アッ… アァ。

♬~ ハァ ハァ…。

♬~ アッ…!

♬~

<最後の「イ」に至って その一線を画すると
同時に 彼は悶死をとげた>

♬~

そうですね。

それほど私のことを
心配して下すったのでしょうか。

♬~

(車のクラクション)

(蓋をしめる音)

大丈夫。

♬~

(格太郎)助けて。

どうも。 なんか すごかったですね。
僕は どんな男になるのかな。

え~ パツパツのやつとかね。

あ~ キチキチなやつとかも
いるよね。

う~ん どっちも嫌だな。

風の吹くままに。 ドンドン。

はい ピッピッピッピッ。

ドンドン。

おせいと格太郎
はい 夫婦の行進です。

う~ん 筋肉量の差が出てるかな。
ドンドン。

好き 嫌い。

好き 嫌い。

あっち見たら こっち見た。
フフッ。

やだ見ちゃった 見ちゃった。
フフッ。

♬~

<Tは だれもいないのを確かめると
自分の席へは着かないで

隣の 彼の助手を勤めている
若い女事務員のS子のデスクの前に

盗みでもするような恰好で

そこの本立ての中に たくさんの帳簿と
一緒に立ててあった…>

<デスクの端において
いかにも なれた手つきで

その玉を パチパチはじきました>

(T)…なりか。 フフ。

♬~

<間もなく 一人の事務員が
ドアをあけて はいって来ました>

(事務員)やア…

<彼は驚いたように
Tに あいさつしました>

お早う。

<Tは内気者らしく
のどへ つまったような声で答えました>

♬~

<バタンバタン音をさせて
帳簿などを取出すのでした>

(ドアを開く音)

(S子)おはようございます。

<彼女は隣席のTの方へ
丁寧に あいさつをしておいて

自分のデスクに着きました。

Tは一生懸命に
仕事をしているような顔をして

そっと彼女の動作に注意していました>

(T)気がつくだろうか。

<彼はヒヤヒヤしながら
横目で それを見ていたのです>

<さっさと それを脇へのけると

背皮に金文字で 「原価計算簿」としるした
大きな帳簿を取出して

机の上に ひろげるのでした。

それを見たTは
がっかりしてしまいました>

だが いちどぐらい失敗したって
失望することはない。

S子が気づくまで
なんどだって繰り返せばいいのだ。

<Tは心の中で そう思って
やっと気をとりなおしました>

<ほかの事務員たちは
てんでに冗談を言いあったり

不平をこぼしあったり
一日ざわざわ騒いでいるのに

Tだけは その仲間にくわわらないで

退出時間が来るまでは むっつりとして
こつこつ仕事をしていました>

<Tはその翌日も S子の算盤に
同じ金額をはじいて

机の上の目につく場所へおきました>

おはようございます。

<そして昨日と同じように
S子が出勤して席に着く時の様子を

熱心に見まもっていました。

すると 彼女は
やっぱり なんの気もつかないで

その算盤を 脇へのけてしまうのです>

<その次の日も また次の日も

五日のあいだ
同じことが繰り返されました>

おはようございます。

<その日は どうかしてS子が
いつもより早く出勤して来ました。

それは ちょうど例の金額を
S子の算盤において

やっと自分の席へ もどったばかりの
ところだったものですから

Tは少なからず うろたえました>

<彼はビクビクしながら
S子の顔を見ました。

しかし 仕合せにも
彼女は何も知らぬように

いつもの丁寧なあいさつをして
自席に着きました。

事務室には TとS子…>

こんどの××丸は もうやがて
ボイラーを取りつける時分ですが

製造原価の方も
だいぶ かさみましたろうね。

ええ 工賃をまぜると
もう八十万円を越しましたわ。

そうですか。
こんどのは だいぶ大仕事ですね。
はあ。

でも うまいもんですよ。
そいつを倍にも売りつけるんですからね。

<Tは それに気づくと
思わず顔を赤くしました。

この普通の人々には
なんでもないようなことが

Tには 非常に気になるのです>

<彼は変な空せきをしながら
あらぬ方を向いて

それを ごまかそうとしました>

<そうして二言 三言
話しあっているうちに

ふと S子は
机の上の例の算盤に目をつけました。

Tは思わずハッとして
彼女の目つきに注意しましたが

彼女は ただちょっとのあいだ

その ばかばかしく大きな金額を
不審そうに見たばかりで

すぐ目を上げて 会話を続けるのです。

Tは またしても
失望を繰り返さねばなりませんでした>

<でも 二日三日とたつうちには

S子も帰る時には
本立てへ かたづけておく算盤が

朝来てみると 必ず机のまんなかに
キチンとおいてあるのを

どうやら不審がっている様子でした。

そこに いつも同じ数字が
示されているのにも

気がついた様子です。

ある時なぞは 声を出して
その十二億四千うんぬんの金額を

読んでいたくらいです>

<そして或る日
とうとうTの計画が成功しました。

それは 最初から
二週間もたった時分でしたが

その朝は S子が いつもより長いあいだ
例の算盤を見つめていました。

小首をかたむけて
なにか考え込んでいるのです。

Tは もう胸をドキドキさせながら

彼女の表情を
どんな些細な変化も見のがすまいと

異常な熱心さで
じっと見まもっていました>

<息づまるような数分間でした。

が しばらくすると
突然 何かハッとした様子で

S子が 彼の方をふり向きました。

そして 二人の目が
パッタリ出あってしまったのです>

<というのは 彼女は
Tの意味あり気な凝視に気づくと

いきなり まっかになって
あちらを向いてしまったからです。

もっとも とりようによっては

彼女は ただ
男から見つめられていたのに気づいて

その恥かしさで
赤面したのかも知れないのですが

のぼせ上った その時のTには
そこまで考える余裕はありません。

彼は 自分も赤くなりながら
しかし非常な満足をもって

紅のように染まった彼女の美しい耳たぶを
気もそぞろに ながめたことです>

<読む人は すでに
推察されたことと思いますが

Tは 世にも内気な男でした>

<彼は学校を出て
まだ間もないのではありますけれど

それにしても三十近い今日まで
なんと いちども恋をしたことがない

いや ろくろく若い女
口をきいたことすらないのです。

むろん 機会が
なかったわけではありません。

ちょっと想像も出来ないほど
臆病な彼の性質が 禍したのです。

それは一つは 彼が自分の容貌に
自信を持ち得ないからでもありました。

うっかり恋をうちあけて
もし はねつけられたら

それが こわいのでした>

<そういったゾッとするような言葉が
容貌に自信のない彼の耳許で

絶えず聞こえていました>

<そして…>

<すると 或る日のことでした。

彼は算盤をはじきながら
ふと妙なことを考えつきました>

少しわかりにくいかも知れぬが
これなら申し分ないな。

彼はニヤリと
会心の笑みを浮べたことです>

<その際に 記帳の都合上
いつも何千というカードを

職工の姓名の頭字で 「いろは」順に
仕訳をする必要があるのです。

はじめのうちは机をとりのけて
広くした場所へ

それをただ 「いろは」順に
ならべていくことにしていましたが

それでは手間取るというので
一度 アカサタナハマヤラワと分類して

そのおのおのをさらに アイウエオなり
カキクケコなりに

仕訳る方法をとることにしました。

それを始終やっているものですから

会計部のものは アイウエオ五十音の
位置を もう諳んじているのです。

たとえば「野崎」といえば
五行目の第五番というふうに

すぐ頭に
浮かぶのです。

Tは これを逆に適用して
算盤にあらわした数字によって

簡単な暗号通信をやろうとしたのです。

つまり ノの字を現わすためには
五十五と算盤をおけばよいのです。

それがのべつに続いていては ちょっと
わかりにくいかもしれませんけれど

よく見ているうちには
日頃おなじみの数ですから

いつか気づく時があるに
相違ありません>

<では彼は
S子に どういう言葉を通信したか

こころみに それを解いてみましょうか>

<十二億は 一行目(ア行)の
第二字という意味ですから イです。

四千五百は 四行目(タ行)の
第五字ですから トです。

同様にして三十二万はシ 二千二百はキ
二十二円もキ 七十二銭はミです。

すなわち 「いとしききみ」となります>

<「愛しき君」 もしこれを口にしたり
文章に書くのでしたら

Tには恥かしくて
とても出来なかったでしょうが

こういうふうに算盤におくのならば
平気です。

他のものに悟られた場合には

なに 偶然算盤の玉が
そんなふうにならんでいたんだと

云い抜けることが出来ます。

だいいち手紙などと違って
証拠の残る憂いがないのです。

実に万全の策といわねばなりません。

さて この方法は
どうやら成功したらしく思われます>

<これなら いよいよ大丈夫だと思ったTは
こんどは少し金額をかえて>

<と おきました。

それを また数日のあいだ続けたのです>

<これも 前と同じ方法であてはめてみれば
すぐわかるのですが

「ヒノヤマ」となります。

樋の山というのは 会社から
あまり遠くない小山の上にある

その町の小さな遊園地でした。

Tは こうして あいびきの場所まで
通信しはじめたのです>

<その或る日のことでした。

もう充分 暗黙の了解が成立っていると
確信していたにかかわらず

Tは まだ仕事以外の言葉を
話しかける勇気がなく

あいかわらず帳簿のことなぞを
話題にして S子と話していました。

すると ちょっと会話の途切れたあとで
S子は Tの顔をジロジロ見ながら

その可愛い口許に
ちょっと笑みを浮かべて

こんなことをいうのです>

ここへ算盤をお出しになるの…

もう先からね。 あたし
どういうわけだろうと思っていましたわ。

<Tはギックリしましたが
ここで それを否定しては

折角の苦心が水のあわだと
思ったものですから

満身の勇気をふるい起して
こう答えました>

ええ 僕ですよ。

<だが なさけないことに
その声は おびただしくふるえていました>

あら やっぱりそうでしたの。
ホホホホ…。

<そうして彼女は すぐほかの話題に
話しをそらしてしまったことですが

Tには その時のS子の言葉が
いつまでも忘れられないのでした。

彼女は どういうわけで
あんなことをいったのでしょう。

肯定のようにも とれます。

そうかと思えば また

まるで無邪気に なにごとも
気づいていないようでもあります>

<彼は いまさらのように
嘆息するのでした>

だが ともあれ
最後まで やってみよう。

たとえ すっかり感づいていても
彼女も やっぱり恥かしいのだ。

<彼には それが まんざらうぬぼれのため
ばかりだとも考えられぬのでした>

<そこで その翌日 こんどは思いきって>

二二八五一三二一一四九二、五二。

<と おきました>

(S子 T)キヨウカエリニ。

<すなわち
「今日 帰りに」という意味です。

これで一か八か
かたがつこうというものです>

<今日 社の帰りに
彼女が樋の山遊園地へ来ればよし

もし来なければ
こんどの計画は全然失敗なのです。

「今日帰りに」 その意味を悟った時

うぶな少女は 一方ならず
胸騒ぎを覚えたに相違ありません。

だが あのとりすました平気らしい様子は
どうしたことでしょう。

ああ 吉か凶か
なんという もどかしさだ。

Tは その日に限って退社時間が
待ち遠しくて仕方がありませんでした。

仕事なんか
ほとんど手につかないのです>

<でも やがて待ちに待った
退社時間の四時が来ました。

Tは じっとはやる心をおさえて
S子の様子を注意していました>

(上司)お疲れ。
(事務員たち)お疲れさまでした。

<もし彼女が 彼の指図にしたがって
指定の場所に来るつもりなら

いかに平気をよそおっていても
帰りのあいさつをする時には

どこか態度に それが
現われぬはずはないと考えたのです>

<しかし>

お疲れさまでした。

<ああ やっぱり駄目なのかな。

彼女がTに いつもとおなじ
丁寧なあいさつを残して

そこの壁にかけてあった えり巻をとり

ドアを開けて
事務室を出ていってしまうまで

彼女の表情や態度からは

常にかわった なにものをも
見出すことが出来ないのでした。

思いまよったTは
ぼんやりと彼女のあとを見送ったまま

席を立とうともしませんでした>

ざまを見ろ お前のような男は
年がら年中

こつこつと仕事さえしていればいいのだ。

<彼は われと わが身を呪わないでは
いられませんでした。

ところが しばらくそうしているうちに
彼は ふと或るものを発見しました>

<彼が毎朝やる通りに あの算盤が
チャンとおいてあるではありませんか>

八三二二七一、三三。

<スーッと熱いものが
彼の頭の中にひろがりました。

そして にわかに はやまった動悸が

耳許で早鐘のように鳴り響きました。

その算盤には 彼のとおなじ暗号で>

<と おかれてあったのです。

S子が 彼に残していった返事でなくて
なんでしょう。

彼は やにわに外套と帽子をとると

机の上をかたづけることさえ
忘れてしまって

いきなり事務室を飛び出しました>

<そして そこにじっとたたずんで
彼の来るのを待ちわびている

S子の姿を想像しながら 息せききって
樋の山遊園地へと駈けつけました>

きっと彼女は 着物でも着かえるために
いちど家に帰ったのだろう。

<算盤の返事に安心しきった彼は
煙草をふかしながら

この生れてはじめての待つ身のつらさを
どうして つらいどころか

はなはだ甘い気持で味わうのでした。

しかし S子は
なかなか やって来ないのです>

<あたりは だんだん薄暗くなって
やがて夜が来ました。

こうなると さすがのTも 不安を
感じないではいられませんでした>

ひょっとしたら 家の首尾が悪くて
出られないのかも知れない。

それとも また
おれの思い違いではないかしら。

あれは 暗号でも
なんでもなかったのかも知れない。

<彼はいらいらしながら その辺を
あちらこちらと歩き廻るのでした。

心の中が
まるで からっぽになってしまって…>

<S子のいろいろの姿態が 表情が 言葉が
それからそれへと目先に浮かんで来ます>

きっと彼女も 家で おれのことを
くよくよ心配しているのだ。

<そう思う時には 彼の心臓は
熱病のように はげしく鳴るのです。

しかし また或る時は 身も世もあらぬ
焦燥が おそって来ます>

<そして この寒空に
来ぬ人を待って いつまでも

こんなところに うろついている我身が
腹立たしいほど おろかに思われるのです>

<二時間以上も
むなしく待ったでしょうか。

彼はハッとしたように
そこへ立ちすくみました。

ふと とんでもない考えが
彼の頭に浮かんだのです>

<彼は そのばかばかしい考えを
一笑に付してしまおうとしました。

しかし いちど浮かんだ疑いは
容易に消し去るべくもありません。

彼はもう それを確かめてみないでは
じっとしていられないのでした。

彼は大急ぎで 会社へ引返しました>

<そして やにわに
S子の机の前へいって

そこの本立てに立ててあった
原価計算簿を取出し

××丸の 製造原価を記入した部分を
開きました>

<これはまあ なんという奇蹟でしょう>

<今日S子は その締高を計算したまま

算盤をかたづけるのを忘れて帰った
というに過ぎないのです。

そして それは
決して恋の通信などではなくて…>

<ただ魂のない
数字の羅列だったのです。

あまりのことに
あっけにとられた彼は

一種異様な顔つきで

ボンヤリと そののろわしい数字を
ながめていました。

すべての思考力を失った彼の頭の中には

彼の十数日にわたる惨憺たる焦慮などには
少しも気づかないで>

(笑い声)

<あの快活な笑い声をたてながら
無邪気に談笑しているS子の姿が

まざまざと浮かんで来るのでした>

(笑い声)

う~ん どうしよう?
どうしよう? どうしよう?

う~ん なかなかハンサムなような
気もするけど

こっちの人も いい感じ。

どうしよっかな?
迷っちゃうな 迷っちゃう。

う~ん あっ いいね その顎。
あっ この顎もすてき。

う~ん あっ でもこの人の顎も
もっとすてきかな。

あっ ネクタイ ネクタイ。
あっ 似合ってるな。

なかなかセンスもいいし
どうしよっかな? どうしようかな?

迷っちゃうな~。 どうしよう?

う~ん 迷っちゃうな。 どっちかに
決めなきゃいけないのかしら?

え~!?
2人が くっつくんかい。

何で? 何で?
え~!? 2人で くっつくんか~い。

♬~

(京子)こんなに月日がたちますと
門野と口に出していって見ましても

いっこう 他人様のようで

あの出来事にしましても
なんだか こう夢ではなかったかしら

なんて思われるほどでございます。

<申すまでもなく お嫁入り前に
お互いに好き合っていたなんて

そんな みだらなのではなく
仲人が母を説きつけて

母が又 私に申し聞かせて
おきまりでございますわ

畳に のの字を書きながら つい
うなづいてしまったのでございます>

<ええ ご承知かも知れませんが
門野というのは

それはそれは 凄いような美男子で
病身なせいもあったのでございましょう

どこやら陰気で
青白く 透きとおるような

ですから それが ただ美しい以上に

何かこう
凄い感じを与えたのでございます>

<お友達なども少なく
多くは 家の中に引っ込み勝ちで

それに 一ばんいけないのは…>

もっとも そんなハッキリした
噂を聞いたわけではなく

誰かが ちょっと口をすべらせたのから

私が 独り合点を
していたのかも知れません。

いいえ…

あの時分の娘々した気持を思い出すと
われながら可愛らしいようでございます。

(ティーカップを鳴らす音)

(りんの音)

<先方からは 立派な結納が届く

お友達には お祝いの言葉やら
羨望の言葉やら

誰かに逢えば ひやかされるのが
なれっこになってしまって…>

やったぁ!

<舅 姑が どのような方なのか
召使たちが幾人いるか

挨拶もし 挨拶されていながらも

まるで 頭に残っていないという
有様なのでございます。

そうして 案ずるよりは生むが易いと
申しますか

門野は 噂ほどの変人というでもなく
かえって世間並よりは物柔らかで

私などにも それは
優しくしてくれるのでございます>

<私は ほっといたしますと…>

♬~

<大げさに申しますれば

浦島太郎が 乙姫さまの
ご寵愛を受けたという竜宮世界

あれでございますわ>

♬~

<いいえ そう申すよりは
そのつらいところまで行かぬうちに…>

こまごましたことなど
忘れても居りますし

それに このお話には
大して関係のないことですから

おのろけめいた思い出話は
止しにいたしましょうけれど…

<妙に冷たい空虚を
感じたのでございます。

私を眺める愛撫のまなざしの奥には
もう一つの冷たい目が

遠くの方を
凝視しているのでございます。

これは きっと
あの人の愛が 私から離れて

どこかの人に移りはじめた
しるしではあるまいか…>

<はて知れぬ地獄へ
吸い込まれて行く感じなのでございます>

(ふすまをしめる音)

<ところが 私は何一つ…>

<あの人の心持を確かめ得るような跡は
少しも見つかりはしないのでございます>

<一度 根を張った疑惑は
どう解こうすべもなく

物思いにふけっている
あの人の姿を見るにつけ…>

と云いますのは
門野は引っ込み思案で

一間にとじこもって
本を読んでいるような時間が多く

それも 書斎では
気が散っていけないと申し…

<それが 私が参ってから
半年ばかりというものは

忘れたように 土蔵のそばへ
足ぶみもしなくなっていたのが…>

<この事柄に
何か意味がありはしないか。

私は ふとそこへ
気がついたのでございました。

最初は 土蔵の中が怪しいなどと
ハッキリ考えていたわけではなく

どうか そこに私を安心させるような
ものが あってくれますようにと

祈りながら…>

<田舎町の
広い屋敷のことでございますから

しんと静まり返って
蔵までまいりますのに

まっ暗なしげみを通るのが
こわいようでございました>

<しげみの中には
大きな蝦蟇が住んでいて

いやな鳴き声さえ
立てるのでございましょう>

<もし 心の中に
嫉妬の火が燃えていなかったら

十九の小娘に どう まあ
あのような真似が出来ましょう>

<二階への階段まで近づき
そっと上を覗いて見ますと…>

<私は息を殺して 一段々々と
音のせぬように注意しながら

ソッと落し戸を
押し試みて見ましたが

門野の用心深いことには

上から締まりをして 開かぬように
なっているではございませんか。

どうしようかしら。
ここを叩いて あけていただこうかしら。

いやいや この夜更けに
そんなことをしたなら

はしたない心のうちを見すかされ

なおさら疎んじられはしないかしらなどと
とつおいつ思いとどまって

落し戸の下に たたずんでいました…>

男の声は いうまでもなく
門野のでしたが

相手の女は
いったい全体 何者でございましょうか。

♬~

<そして 極度に鋭敏になった私の耳は

女が門野の膝にでも もたれたらしい
気配を感じるのでございます。

それから何か いまわしい衣ずれの音や
ロづけの音までも。

まあ ご想像なすって下さいませ。

私の その時の心持が
どのようでございましたか。

込み上げて来る悲しさを
袂の端で じっと押えて

おろおろと その場を立ち去りも得せず
死ぬる思いを続けたことでございます。

やがて ハッと気がつきますと
ハタハタと 板の間を歩く音がして

誰かが落し戸の方へ
近づいてまいるのでございます。

今ここで顔を合わせては 私にしましても
あんまり恥かしいことですから

私は急いで下りると 蔵の外へ出て
その辺の暗闇へ そっと身をひそめ

一つには そうして女めの顔を
よく見覚えてやりましょうと

恨みに燃える目を
みはったのでございます>

(落し戸が開く音)

<ガタガタと落し戸を開く音がして
足音を忍ばせて下りて来ましたのは

まがうかたなき私の夫

そのあとに続くやつめと
いきまいて待てど暮らせど…>

<蔵のことゆえ 一方口で
ほかに出口はないはず>

だいいち 門野が そんな大切な女を
一人あとに残して

立ち去るわけもありません。

<そして そこで 夫たちの
さまざまの睦言を立ち聞きしては

どのように 身も世もあらぬ思いを
いたしたことでございましょう。

その度ごとに どうかして
相手の女を見てやりましょうと

いろいろに苦心をしたのですけれど

いつも蔵から出て来るのは
夫の門野だけで

女の姿なぞは チラリとも
見えはしないのでございます>

<またある時は 夫の隙を窺って
昼間 蔵の中へ忍び込み

隅から隅を覗きまわって
もしや 抜け道でもありはしないか

さまざまに検べて見たのですけれど

蔵の中には 鼠一匹逃げ出す隙間も
見当らぬのでございました>

<なんという不思議でございましょう。

それを確かめますと 私はもう
悲しさ 口惜しさよりも

いうにいわれぬ不気味さに 思わず
ゾッとしないではいられませんでした。

そうして その翌晩になれば
どこから忍んでまいるのか

やっぱり いつもの艶めかしい囁き声が
夫との睦言を繰り返し

又 幽霊のように いずことも知れず
消え去ってしまうのでございます>

<それは 蔵の二階で 門野たちの
いつもの逢う瀬が済みまして…>

<よく考えて見れば この物音は

いつの晩にも 必ず聞いたように
思われるのでございます。

蔵の二階で
そのような音を立てるものは

そこに幾つも並んでいます
長持のほかにはありません。

さては 相手の女は 長持の中に
隠れているのではないかしら。

そこへ気がつきますと
もう じっとしてはいられません。

どうかして 長持の鍵を盗み出して
長持の蓋をあけて

相手の女めを見てやらないでは
気が済まぬのでございます。

なあに いざとなったら
ひっ掻いてでも 喰いついてでも

あんな女に負けてなるものか。

もう その女が長持の中に
隠れていると きまりでもしたように

夜の明けるのを待ったものでございます>

<門野家は 町でも知られた
旧家だものですから

蔵の二階には 先祖以来の
さまざまの古めかしい品々が

まるで 骨董屋の店先のように
並んでいるのでございます。

まさか そんなことがと思いながら
でも なんとなく薄気味わるくて

一つ一つ 長持の蓋を開く時には
身体じゅうから冷たいものがにじみ出し

ハッと息も止まる思いでございました。

ところが その蓋を持ち上げて
まるで 棺桶の中でも覗く気で

思いきって グッと首を入れて見ますと

予期していました通り
或いは予期に反して

なんの疑わしいものも
出ては来ないのでございます。

やがて ふと気がつきますと…>

<それを開いて 中の物を
一と目見ますと

ハッと何かの気に打たれて 私は思わず
顔をそむけたのでございます。

そして その瞬間に

霊感というのは ああした場合を
申すのでございましょうね

数日来の疑いが もうすっかり
解けてしまったのでございます>

<ですが それは あなたが
まだ ほんとうの人形というものを

昔の人形師の名人が 精根を尽くして
こしらえ上げた芸術品を

ご存知ないからでございます。

あなたはもし 博物館の片隅なぞで
ふと古めかしい人形に出あって

そのあまりの生々しさに
なんとも知れぬ戦慄をば

感じなすったことはないでしょうか。

まっ赤に充血して何かを求めているような
厚味のある唇

唇の両脇で二段になった豊頬

物云いたげにパッチリ開いた二重瞼

その上に鷹揚に頬笑んでいる濃い眉

そして何よりも不思議なのは

羽二重で紅綿を包んだように
ほんのりと色づいている

微妙な耳の魅力でございました。

その花やかな情慾的な顔が
時代のために 幾ぶん色があせて

唇のほかは 妙に青ざめ

手垢がついたものか
滑らかな肌が ヌメヌメと汗ばんで

それゆえに 一そう悩ましく
艶めかしく見えるのでございます。

まあ なんということでございましょう

私の夫は 命のない 冷たい人形を
恋していたのでございます。

あの人は ずっと最初から

蔵の中で 本なぞ読んでは
いなかったのでございます>

<そのような恋をするものは

一方では 生きた人間では
味わうことの出来ない 悪夢のような

或いは又 お伽噺のような
不思議な歓楽に魂をしびらせながら

しかし又一方では
絶え間なき罪の呵責に責められて

どうかして その地獄を逃れたいと
あせりもがくのでございます>

<そう思えば あの睦言の
「京子に済まぬ云々」という言葉の意味も

解けて来るのでございます>

さて…

長々と
つまらないおしゃべりをしました上に

「まだ続きがあるのか」と
さぞ うんざりなさいましょうが

いいえ ご心配には及びません。

その要点と申しますのは
ほんのわずかな時間で

すっかり お話し出来ることなので
ございますから。

<当時の私は 恋に目が
くらんでいたのでございましょう。

私の恋敵が 相手もあろうに
生きた人間ではなくて

冷たい一個の人形だと わかりますと

そんな無生の泥人形に見替えられたかと
もうロ惜しくて

もし このような人形がなかったなら
こんなことにもなるまいと

はては 人形師さえ
うらめしく思われるのでございました。

ええ ままよ この人形めの
艶めかしい しゃッ面を叩きのめして

手足を引ちぎってしまったなら

門野とて まさか相手のない恋も
出来はすまい>

♬~

<昨日に変る 醜いむくろを
さらしているのを見ますと

私は やっと胸をさすることが
出来たのでございます>

♬~

<申すまでもなく
人形との逢う瀬を急ぐのでございます。

そうして どれほど待ったことでしよう。

待っても待っても
夫は帰って来ないのでございます。

壊れた人形を見た上は 蔵の中に
なんの用事もないはずの あの人が

もう いつもほどの時間もたったのに
なぜ帰って来ないのでしょう>

♬~

<それを思うと 気が気でなく
私は もう辛抱がしきれなくて

もう一つの雪洞を用意して 闇のしげみを
蔵の方へと走るのでございました>

♬~

<ある予感にハッと胸を躍らせて
一と飛びに階上へ飛び上がって

「旦那さま」と叫びながら
雪洞のあかりに すかして見ますと

ああ 私の不吉な予感は
的中したのでございました。

そこには夫のと 人形のと
二つのむくろが折り重なって

板の間は血潮の海
二人のそばに 家重代の名刀が

血を啜って
ころがっていたのでございます>

♬~

<それが 滑稽に見えるどころか
なんとも知れぬ厳粛なものが

サーッと私の胸を引きしめて
声も出ず 涙も出ず

ただもう茫然と そこに立ちつくすほかは
ないのでございました。

見れば 私に叩きひしがれて
半ば残った人形の唇から

さも人形自身が
血を吐いたかのように

血潮の筋が一としずく

その首を抱いた夫の腕の上に
タラリと垂れて…>

♬~

♬~